GX脱炭素電源法案、衆院経産委員会で意見陳述

福島支援と脱原発2023.7.10

GX脱炭素電源法案について、衆議院経済産業委員会において、4月14日、参考人質疑が行われ、FoE Japanの満田も参考人の一人として意見陳述を行いました。

この日、参考人として招致されたのは、以下の4名でした(敬称略)。

  • 山口彰(原子力安全研究協会理事)
  • 満田夏花(FoE Japan事務局長)>資料 
  • 山内弘隆(一橋大学名誉教授、武蔵野大学経営学部特任教授)
  • 大島堅一(龍谷大学政策学部教授)>資料

参考人質疑の模様は衆議院TVから見ることができます。>こちら
満田からは、(1)福島原発事故は終わっておらず、事故原因の解明も道半ばであること、(2)GX基本方針に国民の声が反映されていないこと、(3)原子力基本法に「国の責務」として、原子力産業に対する支援を詳細に書き込んでいること、(4)原子炉等規制法の運転期間に関する現行規定を削除する正当性がないこと、(5)運転期間の許認可を規制委から経産省へ移管することは、安全規制の緩和となること、(6)「運転停止期間の除外」には合理性がないこと--などを述べ、同法案は、福島原発事故の教訓を蔑ろにし、現世代・将来世代に大きな負担を負わせることになると反対を訴えました。

また、福島における国会主催での公聴会の開催、国民参加のもとでの開かれた議論を丁寧に行うことを求めました。

発言要旨は以下の通りです。

FoE Japanの満田と申します。本日は意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。

FoE Japanは、気候変動や森林保全、エネルギー政策などに取り組む、国際的な環境NGOです。3.11のあと、原発事故の被害者支援に取り組んできました。

GX脱炭素電源法案に関して意見を述べさせていただきます。

まず申し上げたいのは、「福島原発事故は終わっていない。事故原因の解明も道半ば」ということです。

多くの人々がふるさとを失いました。生業、人とのつながり、四季折々の自然の幸を分かち合う喜びを失いました。

私の友人知人、親戚も、断腸の思いで避難を強いられ、今もふるさとに帰れない人が多くいます。

原発事故はまた、日本全国の電力供給に大きな影響を与えました。当時、街の明かりは消え、計画停電が実施されました。すなわち、電力供給の不安定化を招いたということをわすれてはなりません。

原発事故に対する国および東電の責任は、あいまいにされたままです。

原子力損害賠償法の賠償措置額(1,200億円)は据え置かれていますが、賠償・廃炉・除染などの費用は政府試算で21.5兆円にものぼります。東電は賠償を払いきれないため、国は「原子力損害賠償廃炉等支援機構」をつくり、それを通じ、多くの公的資金、私たちの電気料金、未来世代からのお金を東電にまわす仕組みをつくりました。

万が一次なる事故が生じたときに、原子力事業者だけは賠償金が払いきれず、再び、国による手厚い支援が行われ、そのツケは国民および将来世代にまわされるということがくりかえされるでしょう。

事故当時、福島第一原発1号機は運転開始後40年の高経年化技術評価による審査に合格したばかりでした。高線量が続き立ち入れない場所も多く、高経年化が事故の進展にどのような影響を与えたのかは不明です。最近、ようやくカメラが入り、原子炉を支えるペデスタル部分で、コンクリートが溶けてなくなり鉄骨がむき出しになっていることがわかりました。たいへん危険な状態だと思います。私たちは、まだ原発事故に人知が及ばない部分があることを謙虚に認識すべきでしょう。

ここでみなさんにお願いしたいことがあります。

国会主催の公聴会を、福島で開催してほしいのです。

「福島原発事故に対する真摯な反省」に立つのであれば、国会主催で福島において公聴会を実施してほしいのです。多くの人たちの声、原発事故によりそれまでの生活を失った人たちの声をきいてほしいと思います。

国会主催の公聴会の前例もあると思います。ぜひご検討ください。

第二に指摘したいのが、プロセスに関する問題です。

GX基本方針について、「案」が固まってから、年末年始にパブリックコメントが行われ、3,966件が寄せられました。しかし、その内容について、GX実行会議など公式な場で検討されたわけではありません。

また、1月から3月にかけて、北海道、仙台、富山、大阪、福岡、沖縄で、経済産業省による「説明・意見交換会」が開催されました。

参加者からは、原発推進政策、とりわけ運転期間延長に関して、批判や疑問の声があがりました。「出された意見をきちんとGX基本方針に反映してほしい」と述べた人も多かったです。

しかし、経済産業省は、「ここでだされた意見は、GX基本方針に反映されるわけではない」と発言しました。

国民の声が反映されていないことは大きな問題です。

また、国会審議のやり方も、今回「束ね法案」として一括して提案されています。しかし原子力基本法のように、原子力行政にかかわる法案の大きな改定や、いままでの運転期間の規制の在り方を覆すなど、多岐にわたる論点がある中、「束ね法案」としてでは、丁寧な審議を行うことができません。個別の審議をお願いしたいと思います。

いまからでも遅くありません。国民参加のもとで、開かれた議論を丁寧に行うことが必要だと思います。

第三に原子力基本法の改定の問題について述べたいと思います。

今回の改定では、「国の責務」を詳細に書き込みました。「国の責務」としつつ、実際は、国民の理解の促進、地域振興、人材育成、産業基盤の維持および事業環境整備などを含み、原子力産業を手厚く支援する内容です。

これは以下の観点から問題です。

エネルギーの安定供給や、エネルギー部門における脱炭素化は、原子力のみならず総合的に考慮すべきです。現行の「エネルギー政策基本法」で十分に対応できるのではないでしょうか。

また、たとえば「再エネ特措法」においては、ここまで詳細に国による支援が書かれていません。お手元の資料の2ページ目の表に、再エネ特措法との比較した表を掲載しました。著しいアンバランスが生じていることがおわかりいただけるかと存じます。「原子力」のみを特別扱いしているのではないでしょうか。

本来、原子力事業者が自らの責任で実施すべき内容を、国が肩代わりすることになります。結果的に原子力事業者を過度に保護する内容となっており、市場原理をゆがめ、公平性に欠くと思います。

また、原発がエネルギー安定供給、自律性の向上に資するかは疑問です。たとえば、大規模集中型電源である原発の事故やトラブルは、電力供給に広範な影響を与えることは、現に福島第一原発事故が示している通りです。また、ウラン燃料は100%輸入に依存しています。つまり国産エネルギーではありません。国際情勢の不安定化と無縁ではないのです。

第4に、原子炉等規制法の運転期間の上限に関する現行規定を削除することの問題点について述べたいと思います。

2012年当時、運転期間上限に関する定めは、明らかに「規制」の一環として原子炉等規制法に盛り込まれました。このことは、今国会において岸田首相も答弁している通りです。

2012年6月26日付内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室の資料によれば、原子力安全規制の3本柱として、①重大事故対策の強化、②バックフィット制度、③40年運転規制の導入が挙げられています。この3つは福島原発事故の教訓を踏まえたものです。

その後、運転期間の上限を撤廃する理由となる、新たな事象が生じたわけではありません。すなわち、これを削除する立法事実はないのです。

政府は、運転期間の上限は「利用側の政策」として整理したと説明し、その根拠として、原子力規制委員会の令和2年7月29日の文書(「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化の関係に関する見解」)をあげています。しかし、当該文書の主旨は、運転期間から長期停止期間を除外することに否定的な見解をまとめたものであり、策定過程において、運転期間の上限の撤廃の可否について委員の間で議論が行われたものではありません。根拠とするには不適切です。

運転期間の上限に関する規定を原子炉等規制法から電気事業法に移すことに伴い、原発の運転期間の延長についての認可権限は、原子力規制委員会から経済産業大臣に移管されます。認可にあたっての基準も、劣化評価に基づく安全規制から、利用上の観点からの認可となります。たとえば、電力の安定供給を確保することに資するか、事業者の業務実施態勢を有しているか、などが基準になります。

政府は、原子炉等規制法に30年を超える原発の劣化評価を規定することにより、規制は強化されるとしています。しかし、従来から、原子炉等規制法に基づく規則で、30年超の原発に対する10年ごとの劣化評価は、高経年化技術評価として行われてきました。今回、これを法律に格上げすることになりますが、基本的には、従来の制度の延長線上であり、新しい制度というわけではありません。

つまり、今回の改定は、原子力規制委員会の権限を縮小し、規制を緩和するものとなります。

第5に「運転停止期間の除外」は合理性がありません。

今回、電気事業法に運転期間の延長に関する認可が移管されることに伴い、延長申請の際、①関連法令の制定・変更に対応するため、②行政処分、③行政指導、④裁判所による仮処分命令、⑤その他事業者が予見しがたい事由――によって運転停止を行っていた期間については運転期間に上積みできることとしています。

運転停止が事業者にとって予見できない事由に起因するものであったとしても、当然、経年劣化は進行します。

利用側の観点にたったとしても、運転延長を認めるか否かの判断基準は、その時点および将来における電力の需給状況であり、過去においての運転停止の事情は、将来的な電力需給とは関係ありません。停止期間を運転期間に上積みできるという合理的な理由はありません

ここにあげられている運転停止事由に関しては、運転停止を命令もしくは要請すべき社会的なあるいは法令上の要請があり、法律に基づく権限により、それぞれの行政機関あるいは司法により判断されたものです。「運転停止の必要がなかった」と経済産業省が後から認定することは適切ではありません

以上の理由により、私は、GX脱炭素電源法案を国会で承認することは、福島原発事故の教訓を蔑ろにし、国民の安全を脅かし、未来世代に大きな負担を負わせると思います。将来にわたって禍根を残すと考えます。

ぜひ、慎重なご審議をお願いいたします。

ご清聴ありがとうございました。

  1. 原子力産業を長期にわたり官民資金で支援する
  2. 経済産業省への白紙委任
  3. 脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
  4. 将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する
  5. 資金の流れが不透明、監視、検証ができない

【Q&A 原発の運転期間の延長、ホントにいいの?】

※B5パンフレットができました。下の画像をクリックするとB4サイズのPDFをダウンロードできます。B4で印刷して二つ折りにしてください。
B5判4ページのダウンロードこちら ウェブ版はこちら

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