2014年の世界をちょっと予想する

 あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。
 Une bonne et heureuse année !
 
 2014年の世界をちょっと予想する。といっても、フィナンシャルタイムズ(FT)が今年の世界予測をしていて、ふむふむと読んだのでそれの感想をちょっと書くくらいのこと。

今年の欧州議会選挙で反EUの極小政党は議席数を大幅に伸ばすか?
 FTの予想は、イエス。5月に予定されている欧州の議会選挙で、極右・極左など反EU勢力が劇的に躍進するだろう。特に気になるのが右派政党で、FTはフランスの国民戦線(FN)、英国独立党、ギリシャの急進左翼連合(SYRIZA)、そしてオランダの自由党を挙げている。
 このブログでの最近の関連記事は「フランスでロマの女学生が学校で拘束され強制送還された事件の意味」(参照)に書いた。


 これをフランスがどのように解消していくのかは注目されるが、現状のオランド政権の対応を見るかぎり、実態はサルコジ政権と同様なナショナリズムに向かっている。つまり、EUの理念の内実が徐々に崩壊していく過程のように見える。

アベノミクスは2014年末までに日本のコアインフレ率を2%に引き上げられるか?
 FTの予想は、ノー。FTの理由は、「上記の目標を1年あまりで達成するには不十分である公算が大きい」ということだが、私も単純に今の速度では無理ではないかと思う。
 FTはさらに消費税について、「不適切なタイミングで消費税率が引き上げられる予定であることを考えれば、特にそうだと言える」と言及しているが、これが実に不適切なタイミングになる。
 このブログでの最近の関連記事は「消費税増税。来年の花見は、お通夜状態になるか」(参照)。


 8兆円の増税に対して、5兆円規模の経済対策、というのだが、問題は単なる引き算ではないことだ。消費税は一年で終わるのではなく、恒久措置となる。さらに2015年にはさらに2%上がって10%になる。デフレ脱却もしれない状態でこれが続く。
 困ったことになったと思うが、とりあえず、8%に上げようとして、ずどーんと日本が沈むか、散りゆく桜の風景とともに静観するしかないだろう。

原油価格は1バレル100ドルを割り込むか?
 FTの予想は、2014年も1バレル100ドルを上回る可能性が十分にある、とのこと。理由は、世界経済が存外に好調なので原油需要があるとのこと、中東の不安定化の要因が影響するとのこと。
 この問題は私はよくわからない。が、需要が減る要素もないことから上がるほうに賭けるほうが無難には思える。
 その場合、当然ながら、日本にはじわじわと負担が来ることになる。

中国の成長率は7%を割り込むか?
 FTの予想は、ノー。「中国のGDPは2013年に見込まれる7.6%の成長に続き、2014年に7%を若干上回る伸びとなりそうだ」としている。理由は、「力強い消費支出の継続、好況に沸くサービス部門、そして、恐らくは世界で最も注目されていない重要なトレンドである中国の巨大な農村経済の貨幣化」としている。
 そうだろうか。昨年の中国経済の動向を見ているかぎり、上手に運営している様子はうかがえるので、FTの推測も頷ける。あと、FTは指摘していないが、中国国有鉄道の利権なのども事実上解体されてきたこともよい兆候だろう。
 では、その結果が日本にどういう影響をもたらすかだが、強気の中国はそのまま維持されるので、現状の険悪な状況への荷担とはなるだろう。だが、中国経済が落ち込んだときのほうの日本へのとばっちりのほうが大きいので、中国の経済成長は概ね好ましい。
 問題は、FTがこの件について政治的な要因、加えて、環境要因を加えていないことだ。それらの不安定要素がどの程度経済に影響するかは、わからない。強権弾圧が進んでいるので、概ね、大事件はなさそうに思える。

「オバマケア」は死のスパイラルに入るか?
 FTの答えは、ノー。これはけっこう難しい。オバマ政権はかなりレイムダック化しているが、ダメダメになるほどでもない。FTは「11月の議会中間選挙で民主党が悪い結果に終わる一因になるだろう」ともしているが、これも概ね当たるだろう。
 FTは、紆余曲折があっても最終的に、オバマケアがオバマ大統領を歴史に刻む遺産になるとまで見ているが、これは物の見方にすぎないのではないか。制度としては定着する可能性が高いが、大騒ぎしたほどの意味があったかは、近未来的に結論が出るのではないか。

ジュリアン・アサンジ、エドワード・スノーデン両氏は2014年末時点でまだ逃亡犯のままか?
 FTの予想は、アサンジは投降。スノーデンはロシアのまま。
 FTはアサンジを小物としているが、これも概ねそうだろう。大騒ぎした外交文書リークはマニングによるもので、スノーデンの一連の問題がなければ大統領恩赦で事実上の問題は終わったことだろう。
 スノーデンの問題もその流れにあって、彼自身の問題はそれほど大きくはないが、彼が持ち出している情報の扱いがどうなるかにかかっている。小出しにいろいろ出てくるが、米政府としては時間をかけて無関心下に持ち込むのではないか、とすれば結果的にFTの予想とほぼ同じ。

スコットランドは2014年に独立に賛成票を投じるか?
 FTの予想は、ノー。まあ、これはそうでしょ。

ビットコインの価値は50ドルを割り込むか?
 FTの予想は、イエス。このあたりもそんなものだろう。

 というわけで、FTの取り上げた話題は英国に偏っているが、世界を見渡して気になる話題はどうなるか。

イランの核開発疑惑は終わるか?
 私の予想は、ノー。ロウハニ大統領は穏健派に見られているが、実際のリザルトをみていると、イランの核化に大きな変更はない。しかも、どうも隠された核施設がありそうな気配だ。
 しかし、にも関わらず、イランへの緩和ムードが報道されるのは、欧米がそうであってほしいという幻想の演出をしているためだろう。この構図は、日中の緊張を嫌う心情と似ている。
 イランの問題はいずれ次の顕在化を迎えるだろうが、これはイランの経済成長をバネにイランの近隣国への圧力を、イスラエルよりもサウジアラビアが嫌うというあたりで起きそうに思える。

シリア問題は緩和されるか?
 私の予想は、ノー。というか、情勢を見ていると、すでにこの問題はアサドの事実上の勝利に終わりそうに思える。
 国際社会の本音としては、アサド政権が倒れて、アルカイダを交えての混乱を極めるよりは、アサド政権のほうがマシだということだ。

アラブの春はどうなるか?
 そもそもそんなものはなかったということで、問題設定のミスに思われる。

国王の高齢化がもたらす不安定要因
 サウジアラビア、タイ、日本、ともに国民の敬愛を集める国王がかなりの高齢になっていてるので、その関連から思わぬ不安定化が起きるのではないかと不安に思っている。