ナマコの仲間は全世界で1,500種以上と言われていますが、なかでも最大級の大きさを誇るのがこのオオイカリナマコです。
日本では奄美や沖縄諸島以南の海でみられ、体の幅こそ5cm程度と細いものの、体長はなんと2m、最大級のものでは3m以上にもなる巨大なナマコです。
体が細長く、まるでヘビのような縞模様があるため英語ではそのまま”snake sea cucumber”と呼ばれていますが、日本ではなぜかオオイカリナマコという名前がついています。
確かに、頭部の15本の触手と細長い体が特殊なタイプのいかりに見えなくもないですが、一体なぜでしょうか?
実はこのオオイカリナマコの名前の由来は、顕微鏡ではないとわからないのです。
名前の由来は顕微鏡でないとわからない
日本の光学機器メーカーであるニコンは、毎年最も優れた顕微鏡写真を競うコンテスト「Nikon’s Small World」を開催していますが、かつてのコンテストの受賞作品のなかに、オオイカリナマコの名前の由来を示す素晴らしい作品があります。
Nikon SMALL WORLD 2017 Photomicrography Competition ”Synapta (sea-cucumber) skin ”
こちらはフランスの写真家であるクリスチャン・ゴーティエさんによって撮影された、オオイカリナマコの皮膚を偏光顕微鏡によって100倍に拡大して撮影したもので、まるで船の錨(いかり)のような構造があるのがお分かりでしょうか。
実は、ナマコは骨格を持たない代わりに、体壁に骨片(こっぺん)と呼ばれる石灰質の硬く脆い小さな”骨”を持っており、ナマコの種類によって骨片の形は異なるため、これらの形状の違いはナマコの種類を判別するのに役立ちます。
オオイカリナマコの場合は他のナマコとは違って1~2mmほどと大きく、顕微鏡で観察するといかりのような形をしているため、オオイカリナマコと呼ばれるようになりました。
オオイカリナマコのいかり型の骨片は、その見た目通りよく引っかかるため、ナマコを触るとざらざらしており、ウェットスーツや網などに引っ付くとなかなか取れないのだとか。
また、オオイカリナマコでは上の写真にもみられるように、いかり型の骨片とは別に6~8個の穴が開いたれんこんのような骨片も観察されます。
Nikon SMALL WORLD 2000 Photomicrography Competition ”Synapta sp. (medusa worm) skin”
名前の由来が顕微鏡を使わないとわからないのはちょっと意地悪ですが、実際の顕微鏡写真をみると納得の名前であることがよく分かりますね。
エピネシスでは最近、海に生息する不思議な生き物であるウミケムシの不思議な性質についてもご紹介していました。
ウミケムシにブラックライトをあてるとめちゃくちゃきれいに光る
また、オオイカリナマコにも負けない不思議生物、ガイコツパンダホヤの記事もぜひご覧ください!
ダイバーからの目撃情報しかない、謎の生物ガイコツパンダホヤとは?
Reference
じつはナマコは骨のあるヤツ!? -東京ズーネット-
DAVID MAITLAND’S IMAGE -NATURAL HISTORY MUSEUM-