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マイクロソフト「Ignite 2024」発表の最新事例:AIエージェント化するCopilotの進化とは?

「Microsoft Ignite 2024」レポート#01


 米マイクロソフトは、顧客企業、パートナー企業、開発者を対象に、現地時間11月19日から21日にかけてシカゴで「Microsoft Ignite 2024」を開催した。本稿では19日の基調講演から、Microsoft Copilotに関する新発表を重点的に取り上げる。

AIエージェントの3つの能力:推論・計画・マルチモダリティ

マイクロソフトCEO サティア・ナデラ氏
マイクロソフトCEO サティア・ナデラ氏

 「指数関数的に向上している3つの能力がある」とマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は切り出した。1つ目が「ユニバーサルインターフェース」である。AIの裏側で動くモデルは、テキストだけでなく、音声、画像、動画まで扱うマルチモダリティを備えるようになってきた。2つ目が「推論と計画」で、パターン検知のように、複雑な問題を解決する能力が向上している。そして最後の3つ目が、モデルにツールの利用方法を教える「メモリー&コンテキスト」の能力である。「この3つの能力を統合することで、『AIエージェントの世界(Agentic World)』を構築できる」とナデラ氏は訴えた。

 エージェントは、個人のためのものから、チームのため、ビジネスプロセスのため、複数の組織のためのものまで多くの適用領域が考えられるが、いずれも明確な権限と役割を持ち、私たちに代わって自律的に行動するものになる。マイクロソフトは「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ことをミッションに据える。このミッションに忠実であるためにも、ビジネス成果への転換を実現するテクノロジーを提供しなくてはならない。ナデラ氏は基調講演のテーマを「AIドリブンのビジネス変革」と紹介し、その実現に向けて、マイクロソフトでは「Copilot」「Copilot Devices」「Copilot & AI Stack」の3つのプラットフォームを提供していると語った。

 ここからは3つのうちのCopilotに関するアップデートを取り上げる。「CopilotはAIのUIに相当するもので、業務の進め方を整理するレイヤーになりつつある。ナデラ氏は、「リーン生産方式が製造業にもたらしたことを、知識労働者にもたらしたのがAIである」と指摘し、2023年11月に「Microsoft 365 Copilot」の一般提供を開始して以来、多くの導入企業が成果を出したことを紹介した。

Copilot導入がリスク分析を1日に短縮した豪州銀行の事例

 たとえば、豪クイーンズランド銀行グループでは、リスク分析のプロセスでCopilotを利用している。以前の同グループでは、インシデント発生時、膨大な数の文書に目を通し、レポートを作成しなくてはならなかった。Copilotの導入で、数週間かかっていたレポートの下書き作成を1日に短縮できたという。また、通信キャリアのボーダフォンでは、法務部門が基地局の契約管理でCopilotを利用中だ。導入後、全ての契約の有効期限のモニタリングの負荷が大きく軽減した。また、カスタマーサービスのパーソナライゼーションにもCopilotを利用中で、今ではバーチャルアシスタントが月45万件もの顧客との対話に関与するまでになった。

 提供開始以降も、マイクロソフトではCopilotに関して何百もの機能アップデートを実施してきた。最新のCopilotレスポンス評価では、スピードは平均で2倍以上速く、回答への満足度は3〜4倍向上している。

Microsoft 365のUIの進化

 ナデラ氏は、Copilotの展開戦略で重視する要素として「導入」「拡張」「ROIの測定」の3つを挙げた。最初の「導入」は、組織の中で、Copilotやエージェントを利用する人たちが増えるほど、成果をより早く実現できると考えてのことだ。Copilotは、エージェントのためのプラットフォームにもなる。組織の中で働く1人にCopilot1人が付き、そのCopilotは数千人のエージェントを従えるようになるビジョンを描いている。

 現在、CopilotはTeams、Word、PowerPoint、Outlook、ExcelなどのMicrosoft 365アプリケーションで使える。Copilot in Teamsでは、会議中に共有されたスライドやドキュメントについての質問をすると、回答を提示してくれる。Copilot in Wordでは、他のドキュメントやスライド、メール、会議の議事録を基に、新しいドキュメントの下書きを作ってくれる。Copilot in PowerPointでは、プロンプトに何をしたいのかを入力するだけで、Narrative Builderが新しいスライドの下書きを作ってくれる。空白ページから作り始める必要はなく、ユーザーは下書きを編集するだけだ。Copilot in Outlookでは、受信トレイの中身を分析し、メールの内容だけでなく、送信者の役割のような文脈を理解した上で優先度の高いメッセージを示してくれる。

Excelがデータアナリストになる

 Copilot in Excelはデータアナリストとしても優秀だ。たとえば、「私の仕事はデータアナリストで、生産プラントにいて、生産性の改善方法を探している。分析結果を教えてほしい」とプロンプトに入力したとする。それだけで、Copilotは高度な推論能力を発揮して現状分析を行い、改善に向けての計画案を示してくれる。ユーザーは計画を評価し、調整し、実行するだけでよい。

 また、ビジネスユーザーが必要とする可視化も得意としている。ヒートマップ、散布図、ヒストグラムなどのグラフを作り、重要な指標の特定をサポートする。ユーザーは、多くのグラフから現状を評価し、インサイトを得てアクションプランを考える。Copilotはこのプロセスを数分で行い、要約も提示してくれる。「Excelが数字感覚を磨いてくれるのに対し、Copilot in Excelはアナリティクス感覚を磨いてくれる。全てはCopilotがMicrosoft 365システム全体に統合されているからできること」とナデラ氏は説明した。

Copilot Actionsによる自動実行

 続けて、2つ目の戦略的要素である「拡張」に関連し、新しい強化ポイントとしてナデラ氏は「Copilot Actions」を発表した。これは、日常の反復的なタスクに費やす時間の短縮に焦点を当てた機能で、チームからのステータス更新の要求、週次レポートの編集、メールのスケジュール送信、ドキュメントに対するフィードバックの要求などを、ルール設定で自動化できるようにするものだ。単純だが、利用効果は高い。

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AIエージェント化するMicrosoft 365とMicrosoft Dynamics 365

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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