そんな出会いを求めて街を練り歩いていたところ、あるのぼりが目に留まりました。そこに踊るは「チョリパン」の文字。耳慣れないながらも、何やら楽しげな響きです。近づいてみると、どうやら飲食店のよう。チョリパンは食べもの!そうとわかったら食べてみるしかありません。まだ見ぬ「チョリパン」との出会いに胸をときめかせつつ、お店のドアをくぐりました!
■「チョリパン」の専門店、Mi Choripan(ミ・チョリパン)
「チョリパン」ののぼりを掲げるお店の名は「Mi Choripan(ミ・チョリパン)」。最寄りの代々木上原駅から徒歩5分ほどの、井ノ頭通り沿いに建っています。のぼりのほか、カラフルな屋根が目印。
店内に入ると、右手には客席、左手にはキッチンとレジを兼ねたカウンターが。
オープンなキッチンでは、フライパンでソーセージが焼かれ、香ばしいにおい、ジュージューという音、焦げ目のつけられていく姿と、さまざまな角度から食欲がそそられます。
■チョリパン、エンパナーダ、アサイーオレンジをオーダー
メニューの説明によると、チョリパンは“アルゼンチンのソウルフード”。極太のチョリソーをパンに挟んだアルゼンチンのサンドイッチだそう。うっすら理解したところで、メニューの「オススメ」を参考にオーダー。
注文したのは、サルサやネギマヨネーズ、野菜などをお好みでトッピングできるという「カスタムチョリパン」(1100円)に、こちらも未知のメニュー「エンパナーダ ケーソ(チーズ)」(450円)、ドリンクには「アサイーオレンジ」(450円)をチョイス。どれも味はおろか姿のイメージすらつかず、ほとんど呪文を唱える気分でのオーダーです。果たしてどんな出会いが待っているのでしょうか!
◆ カスタムチョリパン
チョリソー&パンのスタンダードな「チョリパン」に、カウンターで自分好みのトッピングができる「カスタムチョリパン」。
つまり、載せ放題!腕が鳴るぜ!…と思いましたが、なにせ初チョリパン。スタンダードな味を体験するために、カウンター脇のポップ「店主のオススメ盛り付け例」を参考にトッピングすることに。トッピングには、レタスやトマト、炒め玉ねぎ、ネギマヨネーズ、サルサソース、アルゼンチン発祥の「チミチュリソース」などがあります。
スタンダードな盛り付けでも、長さ・厚みともにボリュームたっぷりのチョリパン。チョリソーとパンの香ばしい香りがたまりません。バーガー袋に入れて、いざ!
アツアツのチョリソーは、粗びきで肉感たっぷり。スパイスの風味はしっかり感じるものの、辛さはなく、肉のうまみが前面に出ています。パンは香ばしくふっくらとして、ジューシーなチョリソーにマッチ。スパイシーで酸味のあるチミチュリソースが全体の味を引き締めます。さらに爽やかなサルサ、クリーミーなネギマヨなどが加わり、口の中がカラフルなお店のように賑やかに!さまざまな個性を持つトッピングですが、すべてがチョリソーを引き立て、バランスよく調和しています。これが、チョリパン!
◆ エンパナーダ(ケーソ)
「エンパナーダ」は見たところ、ふんわり膨らんだ揚げ餃子のよう。「お好みでどうぞ」と、はちみつの小瓶が添えられます。
ナイフを入れるとサクッとし、皮が層になったパイ生地であることがわかります。中からはとろりとしたチーズがお目見え。たっぷりはちみつをかけて口に運ぶと、チーズの塩気、はちみつの甘さ、パイ生地の油分が一体となって…たまりません!ホロホロと軽い食感の生地は、はちみつなしでもほんのり甘みがあります。おやつにもおつまみにもデザートにも、何個でも食べたくなる一品です。
◆ アサイーオレンジ
紫色のとろりとした「アサイーオレンジ」。
色にはオレンジの気配はありませんが、飲んでみるとオレンジの爽やかな酸味が。甘みと酸味のバランスが良く、口の中をさっぱりさせてくれるので、しっかりした味わいのチョリパンによく合います。
■ チョリパンの謎に迫れ!
おいしさを体験して、もっと知りたくなったチョリパンのことやお店のこと。店主の中尾さんに質問してみました!
◆ チョリパンとの出会いから、お店を開くまで
アルゼンチンではポピュラーな料理だという「チョリパン」。日本ではあまり耳にしませんが、中尾さんはなぜ、チョリパンのお店をはじめたのでしょうか?
えん食べ:チョリパンとの出会いと、なぜお店をはじめたのかを教えてください。
中尾さん:「チョリパンは、婚前旅行で世界中を回っていたとき、アルゼンチンで食べたのが最初です。その時はお店を開こうとは思っていなかったのですが、帰国して、旅行の延長線上にあるような仕事をしたいと考えた時にチョリパンが浮かんだんです。当時日本では誰もやっていなかったので、紹介の意味も込めてチョリパンのお店を開くことに決めました」
えん食べ:ここが日本初のチョリパン店なのですね。
中尾さん:「はい。お店をやると決めてから、もう一度アルゼンチンに渡って、チョリパンのお店で3か月間修業をしてきました。日本で他にないということは、うちのものがチョリパンだと認識されるので、半端なものは作りたくなかったんです」
◆ 現地そのままのレシピ、手作りチョリソーのこだわり
えん食べ:チョリパンへのこだわりを教えてください。
中尾さん:「現地の味をそのまま再現しているところと、チョリソーを全て手作りしているところでしょうか。チョリソー含め、レシピは現地そのままで、日本人向けのアレンジなどは加えていません。ただ、現地とは手に入る肉の質が違うので、パンはそれに合わせて変えています」
えん食べ:このパンが、チョリソーによく合っていますよね。
中尾さん:「ハンバーガー屋さんにバンズなどを卸しているパン屋さんに、チョリパン専用のパンを作ってもらっています。はじめはチョリパンと言っても伝わらず、取り合ってもらえなかったのですが、チョリソーを持って行ったらすぐに快諾してもらえて。作っていただいた15種類くらいのサンプルから、チョリパンとして一番おいしく感じたものをお願いしています」
◆ カラフルな屋根は、アルゼンチンの『ボカ地区』をイメージ
えん食べ:カラフルな屋根や壁が特徴的ですが、何かコンセプトがあるのでしょうか?
中尾さん:「ブエノスアイレスにある『ボカ地区』をイメージしています。外壁などがカラフルにペイントされている地区で、屋根は特にここをイメージして作りました。アルゼンチン人のお客さんには『あぁ、あそこね』と言われたりします」
えん食べ:アルゼンチン人のお客さんも多く見えられるのですか?
中尾さん:「よくいらっしゃります。うちのチョリパンを食べに、他県から東京にいらして下さったアルゼンチンの方もいました」
中尾さん、ありがとうございました!
その名に惹かれ、出会うことができた「チョリパン」。スパイシーながらも意外なほどスッとなじむおいしさで、もしかして自分にはアルゼンチンの血が流れているのか…?という疑惑が生まれるほど。新しい食べ物に出会い、新しい自分にも出会う。出会いの季節にもぴったりの、新鮮なおいしさを提供してくれた「ミ・チョリパン」でした。
住所:東京都渋谷区上原2-4-8