BP債券を買ったビル・グロス(PIMCO)
ロイターで報道されていました。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15855920100616
ご存知のとおり、メキシコ湾の流出事故ではすでに大規模な被害が報じられており、その流出もまだ止まったわけではありません。アメリカ政府はオバマ大統領が異例とも言える執務室演説まで放送してBPの責任追及姿勢を明らかにしており、BPも200億ドルの預託勘定(escrow account)への寄託を受け入れたようです。そして今後3四半期にわたって無配とすることを決めました。
CDSレベルでは1年ぐらいのところが1000ベーシスポイント(紛らわしいのでbpとは書かないことにしますね)を超えてきてカーブもインバートしてきているのは明らかに市場が「やばい」と思っていることを意味しています。格付けもFITCHが6ノッチも一気に下げてBBBにしましたし。
この状況の中でPIMCOが本当にBP債券(短期債)を買ったということですが、それは極めて冷静な継続企業性判断と損益信用判断に基づくものと評価できるでしょう。もちろん債券ファンドといっても顧客のリスク許容度にはさまざまなばらつきがありうるのであって、たまたま高リスク許容度のお客さんのファンドだったのかもしれませんが、いずれにしても短期的につぶれると思っていたら(そしてつぶれたとき投資が回収できないと思っていたら)投資できないでしょう。
まずは損益信用的な判断から。今回損害補償として寄託された200億ドルについて、今後さらに被害拡大する可能性はあるとしても当面オバマ大統領も「十分な金額」と評しています。この金額はBPの年間純利益程度の金額であり、1000億ドル以上の純資産を抱えるBPにとっては、それだけで終わるのであれば債務返済能力を損なうレベルの金額ではありません。問題はそれ以上の被害が拡大してしまった場合で、今後も流出がとまらずそれこそメキシコ湾全体が油だらけになってしまうような事態が発生したらそれはどうなるかわかりませんし、そもそも売り上げも落ちるし借り入れコストも増えるし、業績へのマイナスが加速度的に効いてくる可能性は否定できません。しかし「短期債」たとえば1年以内という範囲内であれば、その拡大は限定的というかある程度折込済みなのだと思います。
さらに、継続企業性判断としても冷静な判断だと思います。このケースは企業が大規模な公害問題と補償問題を突然抱えてしまったケースです。日本で言えば水俣病クラスの問題またはそれ以上といえるでしょう。でも、水俣病の原因となった「チッソ」は結局破綻していません。それは皇室とのつながり以前にやはりここまで問題が大きくなったらきちんと問題が解決するまでは破綻させられないという厳しい現実があります。そもそも、本件の場合きちんと対策ができるのはそれをやった会社だけです。流出を止めて再発防止を行うことができるのはたぶんBPだけです。ここでBPを破綻させてしまうと、その当事者能力を失わせ問題の解決に障害となると言うことです。
補償の問題もしかり。結局チッソが当事者となって補償交渉を行っていったのは、やはりその方が被害者救済にプラスとなると言う面もあるからだと思います。公害加害企業が破綻した場合、ない袖は触れないのでそこで限られた資産を被害者を含む債権者で分配することになります。政策論を別にすれば日本法であれば不法行為による損害賠償請求権者も一般債権者も同等に扱われるとおもわれ、海外の法律でもそれほど大きな違いはなさそうに思います。となれば、倒産によって片をつけさせるのは被害者にとって不利になるばかりか結局行政が何らかの対応を迫られる可能性が強いことになり、財政問題が深刻になりつつある各国などにとっては慎重な対応を検討すべきところなのだと思います。
BPの場合すでに純粋な民間企業であるとはいえ、英国の代表企業であり、ある程度外交問題として扱うことも可能でしょう。これを破綻させてしまうと、それは極めて純粋な資本主義の論理で解決を図ったことになり、その後外交などの手段もとりづらくなると言うことです。
と言う意味では、少なくとも1年程度の先までは、財務的にも対策としても、BPが破綻することはまずありえない、というのが正しい判断だと思います。財務的に可能性は薄いですが、もし短期的にキャッシュフローの問題が生じるならば、間違いなく公的支援が入るべき対象です。
それよりも、PIMCOがこういう評判(レピュテーション)問題のある企業の社債を買うということにちょっと違和感はありますが、まあ今回は「事故」ということで社会的な非難性が大きくないと言うことなのでしょうね。なお、公的支援を期待した継続企業性判断について問題があると言う意見もありそうですが、それを言っちゃあアメリカではなかなか大きな債券ファンドなどやってられませんでしょうね。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15855920100616
ご存知のとおり、メキシコ湾の流出事故ではすでに大規模な被害が報じられており、その流出もまだ止まったわけではありません。アメリカ政府はオバマ大統領が異例とも言える執務室演説まで放送してBPの責任追及姿勢を明らかにしており、BPも200億ドルの預託勘定(escrow account)への寄託を受け入れたようです。そして今後3四半期にわたって無配とすることを決めました。
CDSレベルでは1年ぐらいのところが1000ベーシスポイント(紛らわしいのでbpとは書かないことにしますね)を超えてきてカーブもインバートしてきているのは明らかに市場が「やばい」と思っていることを意味しています。格付けもFITCHが6ノッチも一気に下げてBBBにしましたし。
この状況の中でPIMCOが本当にBP債券(短期債)を買ったということですが、それは極めて冷静な継続企業性判断と損益信用判断に基づくものと評価できるでしょう。もちろん債券ファンドといっても顧客のリスク許容度にはさまざまなばらつきがありうるのであって、たまたま高リスク許容度のお客さんのファンドだったのかもしれませんが、いずれにしても短期的につぶれると思っていたら(そしてつぶれたとき投資が回収できないと思っていたら)投資できないでしょう。
まずは損益信用的な判断から。今回損害補償として寄託された200億ドルについて、今後さらに被害拡大する可能性はあるとしても当面オバマ大統領も「十分な金額」と評しています。この金額はBPの年間純利益程度の金額であり、1000億ドル以上の純資産を抱えるBPにとっては、それだけで終わるのであれば債務返済能力を損なうレベルの金額ではありません。問題はそれ以上の被害が拡大してしまった場合で、今後も流出がとまらずそれこそメキシコ湾全体が油だらけになってしまうような事態が発生したらそれはどうなるかわかりませんし、そもそも売り上げも落ちるし借り入れコストも増えるし、業績へのマイナスが加速度的に効いてくる可能性は否定できません。しかし「短期債」たとえば1年以内という範囲内であれば、その拡大は限定的というかある程度折込済みなのだと思います。
さらに、継続企業性判断としても冷静な判断だと思います。このケースは企業が大規模な公害問題と補償問題を突然抱えてしまったケースです。日本で言えば水俣病クラスの問題またはそれ以上といえるでしょう。でも、水俣病の原因となった「チッソ」は結局破綻していません。それは皇室とのつながり以前にやはりここまで問題が大きくなったらきちんと問題が解決するまでは破綻させられないという厳しい現実があります。そもそも、本件の場合きちんと対策ができるのはそれをやった会社だけです。流出を止めて再発防止を行うことができるのはたぶんBPだけです。ここでBPを破綻させてしまうと、その当事者能力を失わせ問題の解決に障害となると言うことです。
補償の問題もしかり。結局チッソが当事者となって補償交渉を行っていったのは、やはりその方が被害者救済にプラスとなると言う面もあるからだと思います。公害加害企業が破綻した場合、ない袖は触れないのでそこで限られた資産を被害者を含む債権者で分配することになります。政策論を別にすれば日本法であれば不法行為による損害賠償請求権者も一般債権者も同等に扱われるとおもわれ、海外の法律でもそれほど大きな違いはなさそうに思います。となれば、倒産によって片をつけさせるのは被害者にとって不利になるばかりか結局行政が何らかの対応を迫られる可能性が強いことになり、財政問題が深刻になりつつある各国などにとっては慎重な対応を検討すべきところなのだと思います。
BPの場合すでに純粋な民間企業であるとはいえ、英国の代表企業であり、ある程度外交問題として扱うことも可能でしょう。これを破綻させてしまうと、それは極めて純粋な資本主義の論理で解決を図ったことになり、その後外交などの手段もとりづらくなると言うことです。
と言う意味では、少なくとも1年程度の先までは、財務的にも対策としても、BPが破綻することはまずありえない、というのが正しい判断だと思います。財務的に可能性は薄いですが、もし短期的にキャッシュフローの問題が生じるならば、間違いなく公的支援が入るべき対象です。
それよりも、PIMCOがこういう評判(レピュテーション)問題のある企業の社債を買うということにちょっと違和感はありますが、まあ今回は「事故」ということで社会的な非難性が大きくないと言うことなのでしょうね。なお、公的支援を期待した継続企業性判断について問題があると言う意見もありそうですが、それを言っちゃあアメリカではなかなか大きな債券ファンドなどやってられませんでしょうね。

この記事へのコメント
買った債券はトータルリターンファンドに入れるのかなあ?
マスコミ君は何かこういう問題があると、大企業は悪なので、全部つぶすべしみたいな論調になりがちですが、よくある詐欺事件同様につぶして誰もいなくなれば(この場合は計画的ですが)、泣きを見るのは被害者です。ハイ。
かるさんどうもです。特に短い債券の場合、償還期限までの間にキャッシュフローが尽きなければ「勝ち」となります。ただ、いまではそれ以外の要素(時価評価、レピュテーション、監督官庁などからの指導など)も考慮しなければならず、なかなか大変です。