モバP「今日はクリスマスイブらしいですよ」ちひろ「そうですか」
ちひろ「そうなりますね」
モバP「世間では聖夜っていうらしいですよ」
ちひろ「そうなんですか」
モバP「……」
ちひろ「……」
モバP「帰らないんですか?」
ちひろ「そっちこそ」
ちひろ「そうですか。ところでこれどうなりました?」
モバP「先方に送っておきました。回答は年明けまで待ちです」
ちひろ「あれは?」
モバP「こっちのフォルダに置いてます。経費もまとめておきました」
ちひろ「終わってるじゃん」
モバP「……」
ちひろ「しかも私の分まで」
モバP「……」
ちひろ「なーんでーかなー?」
モバP「一緒にやったほうが楽だったんですよ」
ちひろ「ふーん。まぁいいですけど」
ちひろ「こっちも仕事ですよ。発注した備品や機材、小物類の納期と見積もり回答待ちです」
モバP「そうですか。遅くまで待ってるんですね」
ちひろ「遅くにメール送るって言ってましたから」
モバP「回答は明後日に欲しいってちひろさんから送ってるのに?」
ちひろ「……」
モバP「しかもそのあと先方も了解したうえで、今日は帰るってメール来てるのに?」
ちひろ「……」
モバP「ふーしぎーだなー?」
ちひろ「他の企業と合わせたんですよ」
モバP「ふーん、まぁいいですけど」
モバP「……」
ちひろ「誰か待ってたりするんですか?」
モバP「急にどうしたんですか?」
ちひろ「なんとなく」
モバP「いえ、ちひろさんが仕事終わるのなんて全然待ってないですよ?」
ちひろ「そうですか」
モバP「はい。そういうちひろさんは?」
ちひろ「急にどうしたんですか?」
モバP「なんとなく」
ちひろ「いえ、Pさんの上がりに合わせようなんてこれっぽっちも思ってないですよ?」
モバP「そうですか」
ちひろ「はい」
ちひろ「……」
モバP「ところでちひろさん」
ちひろ「ところでPさん」
モバP「……お先にどうぞ」
ちひろ「……じゃあ、遠慮なく」
モバP「はい」
ちひろ「じつは今日、たまたま、偶然、お昼にですね、その、ケーキが、売ってたんですよ」
モバP「はい」
モバP「そうなんですか」
ちひろ「でもよく考えたら、ちょっと大きくて。Pさんが良ければ、その、食べませんか? ほら、仕事ばっかりだと頭使いますし」
モバP「いいんですか?」
ちひろ「はい。えっと、お口に合うかわかりませんけれど」
モバP「まるで手作りのような言い方ですね。売り物だったんじゃ?」
ちひろ「……安物だったんですよ」
モバP「そうなんですか。その割には凝ってるなぁ。本当に手作りみたいだ」
ちひろ「……気のせいだから」
モバP「ふーん。まぁいいですけど」
モバP「あ、えっとですね、偶然、営業先でですね。その、お土産もらったんですよ」
ちひろ「はい」
モバP「いつもならやんわり断るんですけどね? 今日は妙に推しが強くて、受け取っちゃったんですよ」
ちひろ「何をですか?」
モバP「ワインです。その、2011年の」
ちひろ「そうなんですか」
モバP「だからなんというか、一人だともったいなくて。ちひろさんさえ良ければ、一緒に飲みませんか? ほら、もういい時間ですし」
ちひろ「いいんですか?」
モバP「はい。その、気に入ってくれるといいんですけど」
ちひろ「まるですごく悩んだような言い方ですね。貰い物なのでは?」
モバP「……何本か選べたんですよ」
モバP「……たまたまだから」
ちひろ「未成年グループのロケに同行してお酒もらってくるのもたまたま?」
モバP「そうです」
ちひろ「帰りにお酒屋さん寄るのも?」
モバP「そうです……えっ? なんで知ってるの?」
ちひろ「数日前からずっと2011年のお酒探してて、いろんな人に相談して、やっとお酒が届いたのか今日なのもたまたまなのかなぁ?」
モバP「たまたま! 偶然だから! って、そんなこと言うけどこの可愛らしいケーキも数日前からいろんな人に相談してたらしいじゃん!」
ちひろ「なっ!? それこそ偶然ですよ! 別にPさんの好みとか調べてないし、ケーキ作りも教わってません!」
モバP「へぇー? 何やら最近、愛梨やらかな子やらに『楽しみにしててくださいね♪』って言われるんですが? なんででしょうねぇ?」
ちひろ「なっ! あの子たち、あんなに黙っててって言ったのに……まったく」
ちひろ「まぁ? 薫ちゃんやみりあちゃんに『すっごい大事そうなもの持ってるね!』と言われて動揺するよりはマシですかねぇ?」
モバP「うぉい! 見てたんか!?」
ちひろ「たまたまですよー? そういえば、最近菜々さんや楓さんにお酒の銘柄聞いてましたねー? あれなんだったんですかー?」
モバP「そんなことまで!?」
ちひろ「そうまでして手に入れたいワイン、そりゃー大事でしょうねー! いったいなんでか教えてもらえないですかー!?」
モバP「しょうがないじゃん! おれ詳しいわけじゃないんだから!」
ちひろ「はい言質とった! やっぱり買ったんだ!」
モバP「うるせー自分は毎日家帰ってからケーキ造ってたくせに! しかも一回半べそで『おいしいのできないー!』とか言ったらしいじゃん!?」
ちひろ「Pさんこそどこまで知ってるんですか!? っていうか知ってても言うか普通!?」
モバP「お互いさまだろ!?」
ちひろ「ぐぬぬ……」
モバP「うぐぐ……」
モバP「もうそれでいいですよ。こっちもたまたまもらったワインってことで」
ちひろ「はい。……じゃあ、食べましょうか」
モバP「ええ。じゃあさっそく……」
ちひろ「あ、待ってください。私が切ります」
モバP「え?」
ちひろ「なんとなくしたいんですよ、本当にそれだけです。はい、どうぞ」
モバP「あ、ありがとうございます」
ちひろ「さ、食べてみてください」
モバP「はい。あむっ……え、なんだこれうま。しっとりとしたミルククリーム、ふわふわスポンジ、程よい酸味の苺……すげぇ、いくらでも食えそう」
ちひろ「そりゃ材料からみんなに手伝ってもら安物ケーキなのに当たりでしたね!」
モバP「おい」
ちひろ「当たりでしたね!!!」
モバP「……まぁいいです。えぇ、こんな美味しいケーキ食べれて俺は幸せですよ。ありがとうちひろさん」
ちひろ「……すぐそういうこという。ずるいなぁもう」
ちひろ「よろしくお願いしますね」
モバP「子供じゃないんですから。……はい、どうぞご賞味ください」
ちひろ「では失礼して。……ん、ん……ふぅ。これ、いいですね。しっかりした味なのに渋くなく、でも程よく苦い。私、この味好きです」
モバP「よかったちゃんといろんな人に好み聞いて貰いものなのにラッキーでしたね!」
ちひろ「おい」
モバP「ラッキーでしたね!!!」
ちひろ「……ふふっ、じゃあ、そういうことにしておきましょう。ホント、ラッキーです。ありがとうPさん」
モバP「……はぁ。やっぱりこの人には勝てないなぁ」
ちひろ「Pさんには感謝の気持ちをこめて、あーんでもしてあげましょうか?♪」
モバP「え、もう酔ってる?」
ちひろ「まだ酔ってないですよ失敬な。人がせっかくお礼をしようと思ったのに」
モバP「別にお礼だなんていいですよ。こうしてちひろさんと二人でいられるだけで」
ちひろ「え?」
モバP「あっやば」
モバP「さぁ、何か聞こえました?」
ちひろ「わたしの名前が聞こえたようなー? おかしいですねー?」
モバP「幻聴じゃないですかね」
ちひろ「『ちひろと二人で』なんですってー?」
モバP「ほとんど聞こえてるじゃん! ……っていうか、自分で言ってて恥ずかしくない?」
ちひろ「……そういわれると、確かに」
モバP「ほら、幻聴ですよ、幻聴。そういうことにしておきましょう」
ちひろ「むむむ……まぁ、今日はそれでいいです。不思議なことがよく起こる日ですからね」
モバP「そりゃそうでしょう。今日はクリスマスイブで、聖夜ですから」
ちひろ「そっか……そうですね」
モバP「はい」
モバP「また急ですね」
ちひろ「いいんですよなんでも。はいグラス持ってください」
モバP「はいはい、それじゃあ、この偶然だらけの不思議な聖夜に」
ちひろ「メリークリスマス、Pさん♪」
モバP「メリークリスマス、ちひろさん」
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ちひろ「やっぱり外は冷えますね」
モバP「ちょっと事務所に長居し過ぎましたね。もう日付変わっちゃうな」
ちひろ「ふふ、まぁいいじゃないですか。なんと、明日はどっちも休みなんですから」
モバP「ホント、まるで誰かが狙ったように一緒なんですね」
ちひろ「不思議ですねー♪ ……不思議ついでに、一ついいですか?」
モバP「なんでしょう」
ちひろ「もうちょっとだけ、一緒にいたいな、なんて。ほら、今日寒いですし、一人で帰るのはさみしいな、とか」
モバP「……じゃあ、もうちょっとだけ」
ちひろ「本当にもうちょっとだけ、ですか?」
モバP「……うちは汚いですよ」
ちひろ「気にしませんよ……コスプレばっかりの我が家に比べたらましだと思うので」
モバP「おおぅ……なら一緒に帰りましょうか」
ちひろ「はい……あ」
モバP「これなら、手、あったかいから」
ちひろ「……はい、あったかいです♪」
ちっひのかわいさが少しでも伝われば重畳。
HTML依頼出してきます。
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