男「ポイントカード・会員カード・スタンプカードがどんどん増えていくんだが」
男「オッケー!」ギチッ
友「……ん?」
男「なんだよ?」
友「お前の財布……ずいぶん膨らんでないか? 札束でも入ってんのか?」
男「ああこれ? カードだよ」
友「カード!?」
男「なるって」
友「よかったらどんなカード入れてるか見せてくんない?」
男「別にいいけど」
男「えーと、まずよく使ってるクレジットカード、キャッシュカード、電子マネーのカード」
友「うん」
男「テレホンカード、Tカード、WAONカード、マツキヨのカード、dカード、図書カード」
男「近所のスーパーのカード、行きつけの喫茶店のポイントカード、ネカフェのカード、スパ銭のカード」
男「ブックオフのカード、ゲーセンのカード、図書館のカード、ガソスタのカード、歯医者の診察券……」
友「……」
男「こんなとこかな」
友「こんなとこって……ずいぶん多いな! 山になってんじゃん!」
男「いやー、でもこんなもんでしょ」
友「いや、多いって。なんでこんなにカード持ってんだよ」
男「会計の時“カード作りますか?”っていわれるとつい作っちゃうんだよね」
友「そうやって、それっきりのカードがどんどん増えてったわけか」
男「使わないカード?」
友「たとえばこれ、隣の県のローカルスーパーの会員カードだろ?」
男「うん、たまたま立ち寄った時、つい作っちゃって」
友「もう二度と行かないだろ。捨てろよ」
男「いやー、でももしかしたら行くかもしれないじゃん」
男「その時、捨ててたら損するのはこっちだぜ?」
友「損ったって、その時ポイントがつかない程度のもんじゃん」
男「それがでかいんだよ! チリも積もれば山となる!」
友「山にならないチリもあるっての……」
男「ああ、多分もうすでにカード作ってるの忘れて、もう一枚作っちゃったんだろうな」
友「これこそ無駄だろ。頼めば統合してくれることもあるし、一枚にしちゃえよ」
男「いやー、だけど二枚あればなにかと心強いし」
友「心強いって何が!?」
男「二枚あった方がなにかと得だろ?」
友「得なんか何もねえよ! ポイントカードだったらそれぞれにポイント貯まって面倒じゃん!」
男「そうやって分散させた方がよくね?」
友「戦力を分散させないのは兵法の基本だぞ!」
男「バックアップ取っておくのはパソコンやる時の基本だろ」
友「同じ財布に入れてたら意味ねえだろ!」
友「断捨離ってやつだ」
男「銀シャリ?」
友「だ・ん・しゃ・り!」
男「なによ、断捨離って」
友「ようするに、いらねーもんは思い切って捨てるってことだ」
男「いらないカードなんかないんだけどなぁ……」
友「とにかく……少しずつでいいからやってけよ」
男「分かった……やってみるよ」
男「よう」
友「おう、久しぶり」
男「これ、見てくれよ」サッ
友「?」
友「あっ、財布! ちょっと見ないうちにすげースッキリしてんじゃん!」
男「お前のアドバイスを受けて、カード類をだいぶ整理したんだ」
友「そりゃよかった、やればできるじゃん」
男「お礼もかねて、今日はうちで飲まないか?」
友「お、いいのか? だったらお邪魔するよ」
ハハハ… アハハハハ…
友「そういや財布からほとんどカードを抜いたけど、抜いたやつはどうしたんだ?」
男「ああ、こっちの部屋にあるよ」ガチャッ
友「いるのだけとってあるわけか」
友「――!?」
ドッチャリ…
友「なんだ、このカードまみれの部屋は……!」
男「カードはこの部屋で保管することにしたんだ」
友「ええ……?」
男「まさか! 一枚も捨ててないよ!」
友「マジかよ……」
友「捨ててないのはいい。増えたのはなんでだ?」
男「あれからまた、色々カード作っちゃって」
友「ただでさえ多かったのに増やしてどうすんだよ!」
男「だけどここに保管すれば財布は膨らまないし、別に問題ないだろ?」
友「うん……そう、かな……」
男「よっしゃーっ! 断捨離成功だーっ!」
友「断捨離ってなんだっけ……」
友「おーい、遊びに来たぞー」
男「入ってくれ」ガチャッ
グチャッ…
友「うおわっ!?」
友「なんだこれ!? 玄関までカードであふれ返ってるじゃねーかよ!」
男「そうなんだよ……」
男「あれからますますカードが増えて、一部屋じゃ収まりきらなくなって、みるみるうちに……」
友「ゴミ屋敷ならぬカード屋敷だな……」
男「うん……実際バレて怒られた。どうにかしないと出て行ってもらうって」
友「そりゃそうだ」
男「どうしよう……」
友「今からでも遅くない! 心を鬼にして必要なカード以外全部捨てろ! いいな!?」
友「いやいっそクレカとキャッシュカードだけ残すぐらいのつもりでやれよ!」
男「ああ、分かった……今度こそやってみるよ」
友「もしもし」
男『あのさ、やっぱりカードを捨てるなんて無理だわ。一枚も捨てられない』
友「ハァ?」
友「だけど捨てないとマンション追い出されるだろ! どうすんだよ!」
男『だからさ、引っ越すことにしたよ』
友「引っ越すってどこに?」
男『すっげー安い土地見つけたから、そこを買って、そこに家を建てることにしたんだ』
友「マジか」
友(住所は聞いてるし、会いに行ってみるか)
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
スタスタ…
友(ったく、えらく辺鄙な場所だな。土地が安いだけある)
友(カードのためだけにこんなところに引っ越すなんて信じられねえよ)
男「おーい、こっちこっち!」
友「元気そうでなによりだよ。ところで、家は?」
男「ああ、あれだよ」
ジャン!
友「へぇ~、立派な家じゃん」
友「――!?」
友「おい、もしかしてあれって……」
男「ああ、持ってたカードを組み立てて家を建てたんだよ」
友「うそぉぉぉ……」
友「ホントだ。壁も床も天井も、全部カードでできてんじゃん」
男「接着剤でくっつけたんだ。すごいだろ?」
友「ああもう“すごい”としか言いようがないよ」
男「これでもう、どんなにカードを増やしても文句をいわれないし」
男「それどころか増えたカードは家の材料にすることができる!」
男「好きなだけカードを溜めて、いずれこの家を大豪邸にしてやるのさ!」
友(これじゃカードが必要な時どうすんだ、電気や水道どうしてんだとか、色々と突っ込みたくなるけど)
友(本人が幸せそうだからいいか……)
グラグラ…
友「……ん?」
ガタガタ… ゴトゴト…
友「うわわっ、地震だ!」
ガタガタガタガタガタ…
友(メチャクチャでかい! 震度5……いやもっとあるかもしんない!)
友「!」ハッ
友(そういやあいつの家は大丈夫かな? カードで作った家なんか耐震性ないようなもんだろ)
友(電話してみよう)
プルルル…
友「……」
プルルルル… プルルルル…
友「繋がらない……まさか!?」
友(俺の不安は最悪の形で“的中”してしまう――)
友「……!」
グチャッ…
友「カードの家が崩れて、山になって……」
それから俺は警察などを呼び、なんとか救助作業を試みたが、
一時間後、あいつはカードの瓦礫から変わり果てた姿で発見された……。
遺族「ありがとうございます」ペコッ
友「……」
友(あいつはカードを作りすぎて、溜めすぎて、ついにカードに埋もれてしまった)
友(しかし、あいつは最後の最後の瞬間まで、幸せだったんだろうと思っている)
友(なぜなら、大好きなカードとともに死ぬことができたんだから……)
友(これからはカードのない世界でゆっくり休めよ……)
……
男「……ん」
男「ここは……?」
天使「ここは天国です。あなたはカードに押し潰され圧死して、ここに来てしまったんです」
男「天国? そうか、地震があって、カードが崩れてきて……」
天使「さいわいあなたは地獄行きを免れましたし、天国には痛みも苦しみもありません」
天使「これからは天国暮らしをお楽しみ下さい」
男「はい、そうします」
男「ぜひ!」
天使「あ、そうだ」
天使「私の演奏を一曲聴くごとにポイントが貯まるカードを今すぐお作りできますが、どうしますか?」
男「作ります!!!」
END
「男女」カテゴリのおすすめ
- オタク「クリスマスは嫁と過ごすwwwwコポォwww」同僚「嫁!?」
- DQN「10万円持ってこい」男「僕は今1億円持っている」
- 男「ぼくには、幼馴染がいる」
- 先生「おいデブ」中学生俺ブヒブヒ「ひゃい」
- 男「まさか女さんがあんなにデレるとはな」幼「はぁ・・・」
- 夫「浮気してるだろ」妻「あなたこそ」
- 幼馴染「ちっちゃい……」
- 女「女になってもう一年か」
- エイリアン「人間の宇宙船に間違って乗ってしまった……」
- 嫁「おちん○ちんが子宮口ノックしてイクううううう!」俺「異議あり!」
- 不良♀「おい、なんだよおめーは」男「まぁまぁwww」
- 女「はやく今月分の恋人料金払って」
- 男「最近、溜まっちゃってさ」友「!?」
- 男「なあお母さん」 幼馴染「!?」
- 幼馴染「いいかげん気付けよ・・・」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 武内P「のぞき魔が出ました」
- ミカサ「進撃の小人」妖精さん「ようせいしますか?」
- 永沢「藤木くん、まさかVIP板なんて見てないよな?」
- 【Fate】士郎「お前は…?」コナミ「――」【遊戯王TF】
- ゴレイヌ「インキュベーター、えげつねぇな…」
- 勇者「すごい美人で有能な僧侶と魔法使いをお願いします」【前編】
- P「アイドルのお股に顔押し付けて深呼吸してみる」
- 佐久間まゆ「あらぁ?何かしら…」星輝子「フヒヒ…」
- モバP「横須賀鎮守府から仕事の依頼ですか?」
- 小林幸子「ワルプルギスの夜?」
- ほむら「魔法勇者☆まどマギカー!!」
- モバP「相思相愛だから」
- 城之内「勝てねぇ」遊戯「なんで狙ったカードを引けないの?」
- やよい「チーズバーガーをくーださいっ!」
- 【食戟のソーマ】緋沙子「お、おあがりよ…//」
<%= article.count %>PV
<% } else if (retweet) { %>
<% } %>
<%= article.title %>
<%= article.count %>PV
<% } else if (retweet) { %>
<% } %>
<%= article.title %>