武内P「私の愛が重い?」
・武内Pもの
・武内Pもの
加蓮「凛ってさ、愛が重いよね」
凛「は?」
武内P(――その会話は、廊下の曲がり角の向こう側から聞こえてきました)
武内P(社内での移動中のことでした。忘れ物が無いかとふと気になり、立ち止まってバックの中身を確認していた時のことです)
武内P(姿こそ見えませんが、この声は渋谷さんと北条さんで間違いないでしょう)
武内P(盗み聞きしてはいけないと思いましたが、それ以上に会話の中身が気になってしまいました。立ち去ろうとする足が重いまま、二人の会話は続いてしまいます)
凛「何それ? 愛が重そうって言うならまだ百歩譲ってわかるけど、愛が重いって決めつけるのは何?」
加蓮「え? だって実際に重いじゃん」
凛「私が? 誰に?」
加蓮「CPのプロデューサーに」
武内P「……ッ!?」
渋谷凛
北条加蓮
加蓮「へぇ、違ったんだ。てっきり凛はプロデューサー大好きっ娘で、他のアイドルへのよそ見なんて許せない娘だと思ってたのに」
凛「加蓮、怒るよ」
加蓮「うん、ちょっと言いすぎだったね。凛を大切にしながら他の娘の面倒を見る分には、むしろ手伝ってあげるもんね。正妻の余裕ってやつ?」
凛「やっぱり怒らせたいんだ」
加蓮「でもそういうとこ、あるでしょ?」
凛「……まあ、無くは無いけど」
加蓮「ほら、やっぱり♪」
凛「だ、だからって別に重くは……っ」
加蓮「不器用なCPのプロデューサーを手伝いながら『もう、私がいないとダメなんだから』って考えてたりは?」
凛「……ないもん」
加蓮「そうかなー。まあ凛がそう言うなら、そうなんだろうねー」
武内P(確かに神崎さんとどう接すればいいか悩む私に助言をくれた時など、そういう風に見えなくもありませんでしたが……)
凛「だ、だいたいさ! 仮にそうだとしても、私の愛が重いって話につなげるのは無理があるからね! 普通に見たら、普段お世話になっているプロデューサーの力になれて嬉しいってだけだから。邪推するにもほどがあるよ」
武内(はい。渋谷さんのおっしゃる通りです)
加蓮「ふーん。まだとぼけるんだ」
凛「ふーん。まだ難癖つけるつもりなんだ」
加蓮「凛ってさ。真面目でしっかりしてて、クールの代表っぽいとこあるけど、実はけっこう構ってちゃんなところもあるよね」
凛「は?」
加蓮「まあそれなのにクールなイメージが保たれるのはさ、構ってちゃんなのに構ってほしい対象が一人に絞られているからで、けっこう親しくないと凛のそういうとこ気がつけないからかな?」
凛「ちょっと。まさかとは思うけど、その絞られている一人って――」
加蓮「凛は自分に厳しく他人にも厳しいけど……CPのプロデューサーにはその傾向が強くない?」
アニメ13話「私をすこってよ、プロデューサー」のシーン
加蓮「CPのプロデューサーも大変だろうなあ。構ってちゃんの構ってを一身に引き受けて。凛はまだ十五歳だから甘えん坊な部分があって当然だけど、もうちょっとソフトに甘えないと」
武内P(私としては、頼ってもらえるのでしたらいくらでも力になりたいと思うので、何も問題はないのですが)
加蓮「とりあえず甘える対象を増やしてみる? 年上の私とか、奈緒とか」
凛「こんな意地悪に言う加蓮に甘えたくなんかないし、そもそも奈緒は愛でるものだし」
凛「……まあでも。加蓮の言いたいことはわかったよ。確かに私はちょっと……ちょっとだけ、プロデューサーに甘えているところがあるかもしれない」
加蓮「ちょっと?」
凛「うん、ちょっと」
加蓮「あれだけ重くしてちょっとか。かわいそうなCPのプロデューサー。あー、ここは私が優しく慰め『はあ?』……ほら重い」
凛「……違うから。真面目で不器用なプロデューサーを、意地悪な悪魔にいじめられるのを守護ろうとしただけだから」
加蓮「ひっどい言い方だなー。あー、でもさ。ああいう人って、年下の小生意気な娘に振り回されるのって好きそうじゃない?」
武内P(困るので、どうか止めてください……)
凛「自分で自分のこと小生意気って言う?」
加蓮「私は自分が小生意気な小悪魔系っていう自覚があるから良し。凛は自分の愛が重いっていう自覚が足りないからダメ」
凛「まだ言うか」
加蓮「まだとぼけるか」
凛「……そもそもさ、前提が違うんだよね。億万歩譲って、私のプロデューサーへの信頼が重かったとしてね」
加蓮「うん、信頼じゃなくて愛だと思うけど、とりあえず続けて」
凛「それ以上にね。プロデューサーの私への愛が重いんだ」
武内P(………………………………え?)
加蓮「………………………………ん?」
加蓮(あ。蒼ってきた)
凛「あの時のプロデューサーの瞳。夢見がちな情熱さと、不器用さがこもった眼で私を真っすぐに見てた。あの歳であんな眼ができるのは、きっと不器用だからだろうね」
凛「不器用だから、回り道ができない。真っすぐにしか進めない。真っすぐにしか進めないから――情熱が冷めないまま。たとえ苦しくて膝をついても、その熱が再び駆け出す力をくれる」
凛「なんでそんな眼で私を見るのか、最初はわからなかった。けどね、しばらくしたらわかったんだ」
凛「ああ、この人。私のことが好きで好きでたまらないんだって」
武内P「」
加蓮「へえ。そこまで言うからには、CPのプロデューサーと何か特別なこととかあったんだよね?」
凛「いや、ないよ」
加蓮「へ?」
凛「何驚いているの加蓮。私のプロデューサーが担当しているアイドル、それも未成年とそんなことあるはずないでしょ」
加蓮「え、ええ~?」
武内P(良かった。渋谷さんは私のことをしっかりと理解――いえ、信頼してくれていた。はい、私は貴方たちをそのような汚れた眼で見てはならないと、常日頃から戒めています)
凛「信頼が込められた穏やかで静かな瞳で、私を優しく見守ってくれたりするけど、加蓮が考えているようなことは無いよ」
加蓮「いや、だって。確かにあの人が未成年の担当アイドルに手を出すところなんて想像つかないけど、だったら凛のその自信はなんなの? CPのプロデュサーから手を出さないことに業を煮やして、自分から押し倒したり、外堀を埋めまくって手を出さざるをえない状況に追い込んだんじゃないの?」
凛「加蓮は私のこと、何だと思ってるの?」
加蓮「愛が重すぎるプロデュサー大好きっ娘」
凛「だから違うし。仮にそうだとしても、プロデューサーの方が重いから」
加蓮「じゃあそろそろ、CPのプロデューサーの方が重いっていう理由を教えてよ。恋人とか奥さんにはこれでもかってぐらい一途になりそうだけど、それ以外の人になら分け隔てなく優しそうな感じじゃない」
凛「うん、そこには同意するよ。本当に一途で、不器用な人。私のことが好きでたまらないけど、未成年の担当アイドルに手を出すなんてするわけない。だからだろうね」
凛「プロデューサーは、私のことが好きって自覚がないんだ」
武内P(………………………………え?)
加蓮「………………………………ん?」
加蓮「え、あ……うん」
武内P(……ホハッ、ヤハウェ)
凛「プロデューサーが必死になって私への想いを押し殺している以上、気づかないフリをするのがプロデューサーのためだと思ってた。でもね、最近気づいちゃったの」
加蓮「え、さらに妄そゴホゴホッ、気づいたの?」
凛「このまま私が気づかないフリを続けて、大人になって、誰かと恋に落ちて――アイドルを止めて、結婚した時。プロデューサーは十年以上にわたって押し殺していた気持ちに、ようやく気づいてしまう」
凛「十年越しの想いに気づくと同時に失恋だなんて、どれだけプロデューサーは傷ついてしまうんだろう。不器用なプロデューサーはそこから立ち直るのに、どれだけ時間をかけてしまうんだろう」
凛「立ち直った時にはもう白髪混じりで、浮いた話も無くて……仕事に一生懸命で、真面目すぎて……私のことを、想いすぎたせいで」グス
武内P(……私の将来は、泣かれるほど悲惨なようです)
加蓮「え、えーと。いくらなんでも考えすぎじゃない? だいたい凛を好き? っていう自覚が無いんなら、凛より先にCPのプロデューサーが結婚するんじゃない?」
凛「うん、問題だね」
加蓮「え?」
凛「心の奥底では私のことを好きなままの結婚生活なんて、うまくいくはずないでしょ? そうじゃなくても女心がわからない口下手で不器用なプロデューサーとうまくいく相手なんて、かろうじて卯月と未央ぐらいなものだし」
加蓮「えーっと、楓さんと美嘉ちゃんをツートップに、蘭子ちゃん小梅ちゃんきらり『ぐらいなもの』アッハイ」
凛「私ね、お世話になって信頼もしているプロデューサーが不幸になる姿なんて、見たくない。見たくない、のに」
加蓮「え、何々? 蒼いオーラが出てるんだけど」
凛「……来週の土曜」
武内P(来週の土曜……? 来週の土曜!?)
凛「プロデューサーったら、婚活に行くんだ。私に内緒で、まゆPと二人で」
武内P(なぜ……そのことを?)
加蓮「へえ? なぜ内緒なのに凛が知っているかを置いておくとして、婚活に行くんだ。周りの女の娘放っておいて。ふーん」
凛「感心……できないよね? 自分から不幸に行くなんて。それを止めるのは、お世話になっている担当アイドルとして……ううん、本当は一番愛されている私が止めなければいけないよね?」
加蓮「後半の寝言は置いておくとして。CPのプロデューサーは、年下の女の娘の面倒を見るのが大好きで、年下の女の娘に振り回されるのが大好きなんだから。頼りがいのある年上の男性に甘えるのが大好きで、真面目で不器用な人を振り回すのが大好きな北条加蓮ちゃんをスルーしてそんな集まりに行くのは……感心できないね」
凛「良かった、加蓮にわかってもらえて。でもプロデューサーは互いに高め合うような、蒼い意志を持つ女の娘が一番好みってこともわかってほしいな。婚活に行こうなんて考え、蒼穹の歌詞のように砕けてバラバラにするの、手伝ってくれる?」
加蓮「うん、凛の愛が想像していた以上に重くて面倒くさいことはわかったけど、全力で手伝うよ」
凛「フフフ。わかってくれて嬉しいよ加蓮」
加蓮「アハハ。凛の方はわかってるのかなあ?」
凛「フフフフフフフフフフフ」
加蓮「アハハハハハハハハハハ」
凛・加蓮『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
武内P(……ここは魔界です。早く逃げなければ)
武内P「いったい、なぜ……渋谷さんはあのような思い違いを」
武内P「それになぜか婚活に行くことを知っていましたし……まゆPにはくれぐれも担当に知られないよう、細心の注意を払えと言われてその通りにしていたのですが」
武内P「私はてっきり、うちのアイドルを通じて佐久間さんに知られないためだと思っていたのに……まさか、こんなことに――うん?」
藍子「未央ちゃん。なんだか最近元気ですよね?」
未央「え? やだなー、あーちゃん。未央ちゃんはいつでも元気ですことよ!」
藍子「それはそうなんですけど……普段通りのポジティブさに、から元気が加わっているような気が」
未央「ギクッ」
武内P(から元気? まさか体調が悪いのに、無理をして隠そうと!?)
藍子「元気が無いから元気があるフリをするのはわかるんですけど、いつも通り元気なのにそこからさらに元気なフリをする理由がわからなくて」
藍子「数日前から気がついていたんですけど……尋ねにくい理由もあってですね」
未央「え、何? 何なの? 未央ちゃんから元気を出してた自覚はあるけど、もう一つの方は知らないよ?」
藍子「未央ちゃん。最近キレイに……えーっと、キレイといえばキレイなんですけど、あの……」
未央「お、未央ちゃんの魅力に磨きがかかってたの!? いやー、まあ未央ちゃんは成長期だからね! 日々美しく成長して、あのタカモリエルですらその魅力の前にたじたじ――」
藍子「なんだか……エッチな雰囲気が」
未央「ブフォッ!」
本田未央
高森藍子
藍子「から元気と、エッチな雰囲気が混ざりあってて、気にはなったんですけど尋ねにくくて……悪いことは起きていないようだから、数日ほど様子を見ちゃったんです」
未央「え、エッチって。清らかなあーちゃんの口から出していい言葉じゃないからね!」
藍子「き、清らかって、そんな……それよりも今は! 未央ちゃんのから元気とエ、エエッ――大人な雰囲気のことです!」
未央「ぬぐ。えーと、話さなきゃダメ? ほら、未央ちゃん元気だから! から元気な部分もあるけど、朝からご飯もたくさん食べて、レッスンも日野っちに負けないぐらい動いたし」
藍子「それも不安なんですよ。あの茜ちゃんと同じぐらい一心不乱に動いちゃって……無理に元気を出しすぎて、体を壊しちゃいそう」
未央「あ、あはは~。あの時はダンスの事だけ考えてたかったんだ。あーちゃんが想像している通り、目を背けたいことがあって」
藍子「……話して、くれますか?」
武内P(これは、私が聞いてはいけない話なのでしょうが……今下手に動くと、気づかれてしまいますね)
未央「えーっとね。学校の友達が顔を真っ赤にしながら雑誌を持ってきて、一人じゃ恥ずかしいから一緒に読もうって誘ってくれたんだ」
藍子「顔を真っ赤にって……どんな雑誌なんですか?」
未央「ちょ、ちょっとエ口いやつ。男の人の落とし方とか、体験談とか」
藍子「……ど、どうでしたか?」
未央「た、多分? 私たちにちょうどいいレベルだったというか? 参考になったというか? あ、あの時プロデューサーの様子が不自然なのはこのせいだったのか? だったらもっと畳みかければ良かったな? とか?」
藍子「……み、未央ちゃん? その雑誌、その……私にも」
未央「ダメです」
藍子「な、なんでですか!?」
未央「あーちゃんには早すぎます!」
藍子「いいじゃないですか! 私の方がお姉さんなんですよ!」
未央「天使は穢れてはならぬのです。いつまでも変わらぬ、あーちゃんでいてほしいのです」
藍子「どんな雑誌だったんですか……イジワル」
未央「ま、まあそれはともかく! なーんか未央ちゃん、普段から男の人の落とし方をけっこう実践してたみたいなの」
武内P(いったい、誰に……!? これはスキャンダルに発展しかねませんし、何より本田さんの身を守らなければっ!)
藍子「念のために聞きます……誰にですか?」
未央「プ、プロデューサーに」
武内P(ん――? ああ、確かに)
未央「プロデューサーが慌てるのが楽しくて、ついつい抱き着いたり。からかったり。あと一番致命的なのは、私の弱くてダメなとこ、とことんさらしてて……なんか、男の人って。そういうのすごいくるんだって」
藍子「く、くるんですか!?」
未央「この娘は俺がいてやらないと! って感じるし、ときめくんだって」
藍子「なるほど、なるほど」
未央「さ、さらにね。未央ちゃんのボディタッチって、もういけないことを誘っているレベルらしくって! それでプロデューサーはきっと我慢に我慢に重ねてて! そんでもってそろそろ限界を迎えて!」
藍子「む、迎えると!? どうなるんです!?」
未央「プロデューサーの……××な××を×の××××へ××に×××で、さんざん××××させたあげく――」
藍子「!!?」
武内P(!!?)
未央「ム リ ヤ リ 凸 凹 × っ ! ! ! 」
藍子「ム リ ヤ リ 凸 凹 × っ ! ! ? 」
武内P「」
藍子「CPのプロデューサーさんに限って、そんなこと無いと思いますけど……そうですね、抱き着いたりそういったことはもう止めた方が……あれ?」
武内P(……いえ、むしろ)
藍子「未央ちゃん。このままじゃ危ないって気づいているのに、昨日CPのプロデューサーさんに抱き着いていませんでしたか? それもいつも以上に大胆に」
武内P(はい。むしろここ数日悪化しているように思えます)
未央「……あのね、あーちゃん。タバコは体に悪いから止めろって言われて、すぐに止められるものじゃないでしょ? うちの叔父さん、禁煙に四回も成功している猛者なんだよ」
藍子「それ、一回も成功していませんよね? それにそのいい方だと、まるで未央ちゃんが中毒になっているみたいじゃないですか」
未央「うちのプロデューサーはエッチィから。ちかたないね」
武内P「」
未央「そ、それにね? 未央ちゃんね? 気づいちゃったんだ?」
藍子「……なんだか、嫌な気づきのようですね。ホラー映画でパニックになっている時に、気づいたらいけないことに気づいたような」
未央「プ、プロデューサーがムリヤリ凸凹×しようとしたら……絶対抵抗なんかできっこないよね? あのプロデューサーがそんなことするとしたら、もう相当追い詰められていて、顔つきも普段と全然違って……きっと怖くて」
武内P(……本田さん。大丈夫です、私は間違ってもそのようなことは――)
未央「――で、事が終わった後、涙が乾いてぐったりと横たわる私を見て、正気に返るんだ。そうなったら――どうなると思う?」
武内P(……え?)
藍子「下手したら自首。そこまでいかなくとも、罪悪感で――え? 未央ちゃん、もしかして?」
未央「み、未央ちゃんの初めてを、そんな風に乱暴に奪っちゃったんだからさ……プロデューサーさ、これまでのようにずーっと――ううん、これまで以上に優しく、そしてずーっと私と一緒にいてくれるんじゃないかな?」
未央「ムリヤリは嫌だけど……プロデューサーがこれで未央ちゃんとずっと一緒にいてくれるっていうのなら……まぁ塩梅にもよるんだけど、松竹梅でいうと――」
未央「……松です!」
武内P(どういう事ですか!?)
藍子「……なるほど」
武内P(わかるのですか!?)
未央「いやね、うん。松といえば松だけど、やっぱり怖いじゃない? それにいつプロデューサーが限界を迎えるかわからないから、毎日怖くってから元気出してるの」
藍子「……で、エッチな雰囲気は」
未央「か、覚悟しているからかな? ちゃんと下着も、ね? 毎朝『うわぁ。こんなエッチなの身に着けていいのかなぁ』とドキドキしながら着けているせいもあるかも」
藍子「そういえば以前はオレンジが多かったのに、最近はピンクとか黒ですよね」
武内P(聞いてはいけないことを聞いてしまいました。いや、今更なんですが)
未央「……でもね。あーちゃんが心配してくれたけど、この状態が長続きしたらとてもじゃないけど身が持たないよ」
藍子「えーっと。もしかしてですけど、CPのプロデューサーさんへの甘え方を控えるどころか、悪化している理由は」
未央「身が持たないから、さっさと限界を迎えて手を出してもらおうと思って」
武内P「」
藍子「なるほど。CPのプロデューサーさんにしてみたら、とんでもない話ですけど……未央ちゃんと結婚できるなら安いものですね」
未央「けけ、結婚って!? あーちゃんは気が早いなあ! 新婦友人の挨拶はお願いしよう!」
未央「ま、まあそんなわけだから! もし暗い顔をしながら、これでもかってぐらい私を気遣うプロデューサーと、すごく幸せそうなのに小幅でしか歩けない私を見かけたら……その、察してね」
藍子「何も言わないで、お赤飯の準備ですね♪」
未央「もう、あーちゃんったら!」
藍子「うふふっ♪」
アハハハ♪ キャッキャウフフ♪
武内P(……いったい、何が起きているのですか?)フラフラ
武内P(まさか本田さんが、あのような事を考えていたとは……)
武内P(まずは本田さんの思い込みを解かなければ。そのような事をしなくとも、私はこれからも見守り続けると伝えましょう)
武内P(本田さんは寂しがり屋なところがあります。それが今回は、信頼と愛情を錯覚させてしまったのでしょう)
武内P(……そうに、違いありません)
――ったい、――ですよ!
武内P(この声は……? 言い争っている……わけではないようですが、念のため様子だけ見ていきましょう)
???「そ、そんな事ありえまんよ」
???「ううん、絶対にそうです」
響子「CPのプロデューサー、絶対に卯月ちゃんのことが好きですよ!」
卯月「え、ええ~!?」
武内P(!!?)
卯月「そ、そんなはずありませんよ。確かに私なんかにすごく優しくしてくれますけど、それはプロデューサーさんが優しい人だからで」
響子「確かに。好きという言い方は間違っていました」
卯月「そうですよ。す、少しは気に入られているかもしれませ――」
響子「愛ですね!」
卯月「あ、愛!?」
武内P(何故そこで愛ッ!?)
島村卯月
卯月「え……? プロデューサーさんの目は普段からカワイイし……そ、それにカッコイイ時も」
響子「うわぁ。恋は盲目って、こういうことを言うんだ。怖カッコイイのはわからないでもないけど、カワイイはわからない」
卯月「え?」
武内P(え?)
響子「とにかく! アイドル皆に優しい人だけど、卯月ちゃんには特に優しいんです」
響子「ただちょっと、卯月ちゃんを本当の天使か何かのように神聖視して、恋愛対象から外れちゃっている可能性もあるけど」
武内P(その通りです! 未成年の担当アイドルを恋愛対象にしたりなどしません! 神聖視は……少し、あるかも、しれません)
卯月「て、天使って! 私プロデューサーさんの前でさんざんドジしてるし、迷惑だってかけちゃって。そもそも養成所にいる私を拾ってくれたのがプロデューサーさんで……困っている時はいつも力になってくれて、頼りになる人で……救われた私を神聖視なんか、しませんよ」
響子「うわぁ。CPのプロデューサーは卯月ちゃんのことを天使。卯月ちゃんはCPのプロデューサーを白馬の王子様と思っている。とんだバカップルだぁ」
卯月「バカッ!?」
武内P(プル!?)
響子「バカップルはバカップルのまま放置した方がいいのかもしれないんだけどね、最近妙な噂があるの」
卯月「バカップル……私とプロデューサーさんがバカップル……えへへ」
響子「卯月ちゃん、卯月ちゃん。聞いてってば」
卯月「……えっ!? うん、頑張ります!」
響子「誰かはわからないんだけどね。今度うちの事務所のプロデューサーたちが、婚活に行くんだって」
武内P(なぜ、噂になっているのですか……?)
響子「私のプロデューサーはそんなことする予定は無いって確認はとれたし、今後もしないように釘を刺したから大丈夫なんですけど、どうやら婚活に行く一人はまゆPのようなんです」
卯月「え、それじゃあもしかして」
響子「うん。まゆPと仲が良い、CPのプロデューサーも行くかもしれないの。CPのプロデューサーが卯月ちゃんを愛しているのは間違いないけど、愛しているからこそ無理に諦めようとして、こんな担当アイドルを見捨てて裏切るような畜生な催しに血迷って参加するかもしれないよ」
武内P(……耳の調子が悪いようです。五十嵐さんらしからぬ毒を含んだ言葉が聞こえるはずがありません)
五十嵐響子
響子「かもしれない、だよ。だから卯月ちゃん。念のため確認して、そんな愚劣な振る舞いをしようという考えを夢にも思わないように、根絶しなきゃっ」
卯月「で、でも。プロデューサーさんのプライベートに口出しする権利なんて、私にはありません」
響子「大丈夫! 卯月ちゃんの言う事ならちゃんと聞いてくれます! 天使様のお願いなんですから」
卯月「だ、だからプロデューサーさんは私のこと、そんな目で見てないってば」
響子「卯月ちゃん、そんなに自信が無くてどうするの!? いつCPのプロデューサーに告白されるかわからないんだよ!」
武内P(しませんからね!?)
卯月「な、なんでそうなるの!?」
響子「そりゃあ愛している卯月ちゃんに婚活に行くんじゃないかって心配されたら、いくら女心がわからない朴念仁さんでも両想いだって気づいちゃいますよ。あの人は未成年の担当アイドルに手を出すような人じゃありませんけど、卯月ちゃんの勇気を出した行為に誠意を見せない人でもありません」
響子「卯月ちゃんが大人になって、将来アイドルを辞める時に私と――という風に、告白してくれるに違いありません!!」
卯月「そ、そんな……困ります」
響子「……え?」
武内P(……当然の結果です。十以上も年の離れた凶悪な人相の男に言い寄られて、困らないはずがありません。私と島村さんは良好な関係を築けてはいますが、それはあくまで仕事の上であって、男女の関係となればまったく別の話です)
武内P(まあ……困ると言われて、少し悲しい気持ちもありますが)
卯月「だって……プロデューサーさんに告白されたら……断れない、といいますか」
武内P(……うん?)
響子「お?」
卯月「こ、断る理由が――無い?」
武内P(……?)
武内P(……………??)
武内P(…………………………島村さんは、何を言っているのでしょう???)
卯月「――あ、アア! 無しです! 今の無しでお願いします!」
響子「いやぁ、卯月ちゃん。それは聞けない相談ですよ。今の卯月ちゃん、最高にカワイかったよ! 告白された時のことを考えて、初めて自分の恋心に気づいた決定的な瞬間!」
武内P(……五十嵐さんも、何を言っているのでしょうか???)
卯月「いや、だって! ありえません! プロデューサーさんが私に……ここ、告白だなんて! 凛ちゃんや未央ちゃんがいるのに――もう! 響子ちゃんのせいで、さっきからプロデューサーさんで頭がいっぱいじゃないですか!」
響子「ええ~? 自覚が無かっただけで、普段から好きな人のことで頭がいっぱいだったんじゃない~?」
卯月「もー! もー! 響子ちゃんはもう!」
アハハハ♪ キャッキャウフフ♪
武内P(……わかりません。いったい、何が起きているのでしょうか?)フラフラ
卯月「……プロデューサーさん?」
武内P「なぜ、なぜこんなことに……?」
武内P「私と皆さんとの距離が、近すぎた……? だからあのような誤解や、一時の気の迷いをまねいてしまった?」
武内P「距離をとらなければ。それも少しではなく、ずっと遠く、冷たく――シンデレラたちを舞踏会に黙々と送る、車輪に徹しよう」
武内P「――いえ、ダメです。それでは過去の過ちを繰り返すだけ!」
武内P「しかし……他に打つ手は」
???「打つ手ならある!」
武内P「……誰ですかッ!?」
???「うちの事務所のプロデューサーが男根活動(コンカツ)に行くという噂を聞き、まさかと思いおっとり刀で駆けつけてみれば……危ないところでした」
武内P「貴女は……」
???「アイドルたちの信頼を失わず、今の距離感のまま! それでいてスキャンダルも起きない唯一にして最高の手段! それは!」
武内P「それは!?」
由里子「ホモであることをカミングアウトするんだじぇ!!!」
武内P「」
♂♂♂よくわかるユリユリの脳内♂♂♂
①まゆPを含むプロデューサーたちが婚活? ホモであるまゆPが普通の婚活に行くはずがないじぇ。つまり婚活を装った男根活動(コンカツ)に違いない。
②まゆPの男根活動の相手は当然CPのプロデューサーだじぇ!!!
③ハッ!? CPのプロデューサーをノンケだと思い込んでいるアイドルたちが、男根活動のことを婚活だと勘違いしたらまずい。
④CPのプロデューサーのプロデューサー(♂)はうちが守護る……ッ!
用語解説
男根活動……コンカツをホモ翌用語にできないかと十秒ぐらい考えて浮かんだ造語。ググっても出ないよ。男と男が前後めいた動きをすること?
大西由里子
武内P「」
由里子「最初のうちは驚かれるかもしれないけど、大丈夫。みりあちゃんぐらいの歳でも、ユリユリ・ワールドを理解できる娘は珍しくないから」
武内P「いえ、あの……」
由里子「なあに、今の世の中は同性同士に理解があるじぇ。それこそ未成年の娘と関係を持つより、よっぽど健全だという風潮だよ」
武内P「……ッ! 確かに」
由里子「カミングアウトが勇気があるのはわかります。だからこそ、今このタイミングを逃してはダメ! ユリユリも協力するから! さあ!」
武内P(……再び車輪に徹するか、ホモであると嘘をつくか。どちらの方が皆さんが傷つかないかを考えれば、答えは決まっています)
武内P(ホモでない私の嘘は、すぐにボロがでるかもしれません。しかしそこは、私をホモだと信じて疑わない大西さんが全力でフォローしてしまうでしょう)
武内P(私のことなどどうでもいい。皆さんのためにも、私は――)
由里子「さあ、さあ、さあ! まゆPのまゆPにどのようにプロデュースされているシンデレラなのか、今日こそ白日の下にさらす時!」
武内P「わ、私は――」
武内P(さようなら、今日までの私――)
卯月「待ってください!」
武内P「……島村さん?」
由里子「ん? ちょうどいいところに来たね。卯月ちゃんには少し刺激が強いかもしれないけど、これも勉強――」
卯月「プロデューサーさん、お話しがあります」
武内P「……はい」
由里子「……ん?」
卯月「今の大西さんとのお話、聞かせてもらいました。私たちのせいで、プロデューサーさんを困らせてしまったんですね」
武内P「そんなことは……」
由里子「あれ? ひょっとしてユリユリお邪魔? あ、ちょっと端っこの方に寄ってるから、気にしないでください」
武内P「……わかりました。どうぞ続けてください」
卯月「私は多分――多分、というあいまいな気持ちでこんなこと言ってすみません」
卯月「私は多分、プロデューサーさんのこと、好きだと思います」
武内P「島村さん。それは――ッ」
卯月「プロデューサーさん」
武内P「……話を聞く約束でしたね。わかりました。島村さんの想いを、最後まで教えてください」
卯月「はい!」
卯月「私はこれまでプロデューサーさんに褒めてほしい、喜んでほしいと思ってました。私を見つけてくれて、何度もチャンスを与えてくれたプロデューサーさんのためになりたいと思ってました。そしてできれば、これからも一緒にいたい。困らせたくなんかないって……思ってたのに」
卯月「プロデューサーさんが他の誰かと結婚するかもしれない。そんなことを考える機会があって……胸が締め付けられて、そんなわけじゃないのに、プロデューサーさんが私を置いて、どこか遠くに行ってしまうような感じがしたんです」
卯月「嫌なんです。でも、私に口出しする権利なんてありません。だって、私はプロデューサーさんのお世話になっているアイドルの一人にすぎなくて……まだ子どもで……嫌というだけで、自分の想いに確信も持てていないんです」
武内P「島村さん……」
卯月「それでも、待ってください」
卯月「お願いです。私がこの想いに確信を持てるまで。私が大人になって、アイドルを辞めて、プロデューサーさんに迷惑をかけなくてすむまで。何年かかるかわかりません。それでもお願いします。勝手だってわかっています」
卯月「私が大人になるまで、待ってください。嘘をついてまで、私たちを遠ざけないでください」
武内P(……心を鬼にすべきです。私のことなど、どうでもいい。皆さんと、会社のためを思えば。島村さんのこの想いも、きっと何かの間違いに違い――)
卯月「お願い……します」
武内P「……ッ!?」
武内P(彼女が大人になって、今の想いを持ち続けていなかったとしても――この瞬間は本物であることに違いが無い)
武内P「――わかり、ました」
卯月「……え?」
武内P「その時が来るまで、私は待ちます。貴女が大人になって、自分の想いに確信を持てるその時まで、一人でいましょう」
卯月「い、いいんですか? だって、だって……子どものたわごとだって、流さないんですか?」
武内P「ええ」
武内P(たとえ将来、あの時の気持ちは間違いだったと言われても構いません。今この時の、彼女の笑顔を守れたのなら)
武内P「今にも泣きそうな島村さんの言葉を、たわごとと言って流すことなどできません」
卯月「ご、ごめんなさい。私のせいで」
武内P「謝らないでください。結婚についてまだ焦っていたわけではありませんし、そもそも婚活に行ったからといって、簡単に誰かと結ばれるわけでもないのですから」
卯月「……そんなこと、無いと思います」
武内P「島村さん?」
卯月「あ、いえ! 何でもないですから!」
武内P「は、はあ」
由里子「やっぱカズナリは最高だじぇ。初期の大人の余裕あふれる妖しい色香に、フロイドに掘られてからの哀れで愛らしい姿。クールとキュートの両方が備わり最強に見える」ペラペラ
由里子「ん、話は終わった?」
武内P「はい。私を助けようと案を持ってきていただいて、ありがとうございました。しかし嘘はつかず、距離もとらずに、彼女たちと向き合っていこうと思います」
由里子「わかったじぇ。それがCPのプロデューサーが選んだ道なら、どれだけ険しくてもアタシは応援するから」
武内P「大西さん……っ。ありがとうございます」
由里子「じゃあお邪魔なようだし、ユリユリは帰るから。バイバーイ」
武内P「はい、お疲れさまでした」
卯月「……」
武内P「島村さん? どうかしましたか」
卯月「……なんだか、由里子さんらしくないなって思って」
武内P「そうでしたか……?」
由里子(フッ……あんな光景を見せられて察せないほど、ユリユリは無粋じゃないじぇ)
由里子(カミングアウトして周りに認められるより、世間の目から隠れて背徳感を味わいたい。つまりはそういうこと!)
由里子(大西由里子はクールに去るじぇ!)
――何一つ理解するつもりがない大西であった(ナレーション:キートン山田)
~おしまい~
まゆ「結婚したんですね……まゆ以外の女と」
まゆP「」
まゆ「プロデューサーさんと結婚するのは、まゆだと思っていました」
まゆP「」
まゆ「……今夜は、帰りたくありません」
まゆP「なな、何を突然言い出すんだ!?」
まゆ「うふふ。ビックリしまたか?」
まゆP「あ、ああ。心臓が止まるかと思ったよ。お願いだから、もうこんな事を言うのは止めてくれ」
まゆ「でも、言わせようとしてますよね?」
まゆP「……何の話だ?」
まゆ「来週の土曜日」
まゆP「……ッ!? お、俺の久しぶりの休みの日だな? もしかして、どこかに連れて行ってほしいのか? で、でもさー、その日はまゆは仕事が入ってるし、今度な?」
まゆ「まゆにお仕事が入っているから、代わりにCPのプロデューサーさんと出かけるんですか?」
まゆP(完全にばれてしま――ハッ!?)
まゆP「武内!? 武内は無事なのか!?」
まゆ「……? まゆは、何もしていませんよ。婚活に行こうとするプロデューサーさんを止めなかったのはいただけませんが、CPのプロデューサーさんはただ誘われただけで、悪いことはしていませんから」
まゆP「よ、良かった」
まゆ「……ただ」
まゆP「ただ?」
まゆ「プロデューサーさんがこんな酷いことをするから、まゆはすっかり取り乱しちゃって、凛ちゃんに相談に乗ってもらいました」
まゆP「おまっ……」
まゆ「今ごろ凛ちゃんに加蓮ちゃん、そして美嘉ちゃんに楓さんに囲まれて問い詰められる四面楚歌の状態です。さらにそのすぐ隣では、我が友と結ばれるのは自分だと信じて疑ったことが無い蘭子ちゃんが膝から崩れ落ちて、そんな蘭子ちゃんを慰めているうちに悲しみが追い付いてきた未央ちゃんが、一緒に泣いている頃でしょう」
まゆP「地獄絵図じゃねえか……っ」
まゆ「そんな、地獄絵図だなんて」
まゆ「あと三年待ってくれなかったことに静かに怒りに燃えて、ありとあらゆる手段を用いて既成事実を作ろうとする小梅ちゃん」
まゆ「そして気丈にも明るく振る舞おうとするけど、無理をしているのが見え見えなきらりちゃんが駆け付けるのはこれからなんですよ?」
まゆP「死体蹴りはやめなさい……やめてあげて」
佐久間まゆ
四面楚歌(天国)
まゆP「……言っておくがな。俺は、いや俺たちは独身だ! 彼女もいない! 咎められるようなことは何一つしていない!」
まゆ「……」
まゆP「まゆが俺のことを慕ってくれているのはわかる。けどな、それは一時の気の迷いなんだ。読者モデルである程度知ってたとはいえ、まだアイドルの仕事に慣れていない時に力になれた俺のことを、良くとらえ過ぎているだけなんだ」
まゆ「ふふ」
まゆP「もちろんまゆみたいな素敵な女の娘に慕ってもらえるのは素直に嬉しいよ。たとえそれが若気の至りでも。嬉しいからこそまゆが将来出会うに違いない、俺なんかよりずっと素敵な男と巡り合う時のために、まゆとそういう仲になるわけにはいかないんだ」
まゆ「うふふ」
まゆP「……なあ、まゆ。俺の話聞いてくれてる?」
まゆ「はぁい。大好きなプロデューサーさんのお話です。一言一句漏らさずに聞いてますよ」
まゆP「うん。聞いてくれいるのはわかったけど、ちゃんと理解してくれているのか不安になってな」
まゆ「ちゃんと理解していますよ。お話ししている、プロデュサーさん以上に」
まゆP「え……?」
まゆ「さっきからプロデューサーさん、まゆに言い聞かせているんじゃなくて、自分に言い聞かせています」
まゆP「……ッ!?」
まゆ「まゆのことが好きだ、大好きだ。自分だけのものにしたい。結婚して、二人で幸せになりたい。けど……そんなことは許されない。ここは大人の自分が、我慢しなければ」
まゆ「そんな想いが伝わってきて、嬉しくってつい笑っちゃいました」
まゆP「ち、違う……っ!! お、俺はオマエのためを想っているのは事実だが、それはプロデューサーとして、親御さんから預かっているアイドルを心配してのことなんだ!」
まゆ「ダメですよぉ、プロデューサーさん。自分も騙せないようなウソ、誰よりもプロデューサーさんを理解しているまゆには通じません」
まゆP「違う……違う……お、俺は……未成年の……それも、担当しているオマエをそんな目で、見たりなんか……」
まゆ「……いいんですよ、プロデューサーさん」ギュッ
まゆP「ま、まゆ……?」
まゆ「本当はまゆしかいないって気づいている以上、どうしたって相手は妥協することになります」
まゆ「そんな気持ちで選んで……まゆを守るために他の女性と結婚して……その女性を幸せにできますか? 幸せな家庭を築けますか?」
まゆP「あ、ああ――」ガタガタ
まゆ「お互い真面目なら、最初の数年はなんとかなるかもしれません。けど子どもができて、奥さんはプロデューサーさんのことを二の次にして、それを見て育ったお子さんもプロデューサーさんをないがしろにして……少しずつ、少しずつ暖かいはずの家庭からプロデューサーさんの居場所が無くなっていきます」
まゆ「居場所の無い家庭を避け、外を歩いていると――あれからもう十年以上たつのに、純潔を守ったままのまゆと出会います」
まゆP「そんな……そんなにも、待たせてしまって」
まゆ「家族を裏切ることに胸が痛むのも一瞬のこと。すぐに奥さんとお子さんの冷たい目を思い出し、何よりまゆをこんな長く悲しませてしまった罪悪感と、十年以上もの間せき止められていたまゆへの想いがあふれ出し――まゆを抱きます」
まゆ「……わかりましたか。このままだとプロデューサーさんは、奥さんとお子さんを裏切り、自分自身も傷つけ、まゆも悲しませます」
まゆ「どうすればいいか、わかりますよね」
まゆP「で、でも……でも、俺は」
まゆ「よしよし、いい子」ナデナデ
まゆP「ま、まゆ……?」
まゆ「今までずっと、まゆのために手を出すことを我慢してましたもんね? だからまゆも他の女が近づかない限り、今のままでいいと思っていました」
まゆ「でもそのせいで、プロデュサーさんがこんな悲しいマネをするほどに追い詰めてしまいました」
まゆ「もう、我慢しなくていいんですよ」
まゆP「だ、ダメだ。俺は……俺は、まゆのためにも」
まゆ「我慢したら……どうなってしまいますか?」
まゆP「――あ」
まゆ「皆、不幸になるだけ。だから、我慢したらいけないんですよ」
まゆP「我慢したら……ダメ」
まゆ「プロデューサーさんがしたいことは、なんですか?」
まゆP「お、俺は……俺は! 俺はずっと前からまゆを――ッ!!」
まゆ「はい。まゆのこと、思いっきり愛してください」
まゆP「ま、まゆううううううううううぅ!!」ギュっ
まゆ「あっ……んっ、いいですよ。もっと、もっと強く抱きしめてください。壊れるぐらいに、まゆが決して離れることがないように!」
まゆP「まゆ、まゆ……俺だけのまゆ……! もう離さない! 愛している!」
まゆ「はい、離さないでください。まゆを、プロデューサーさんだけのモノにしてください!」
まゆ「うふふ」
まゆ「うふふふふふふふふふふふふふ」
~Happy End~
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