米サッカー協会を相手取って女子代表チームが男女間の代表出場給の格差を問題として訴訟を起こしています。サッカーの男女での経済規模の格差はアメリカを除く全ての国で巨大なのでしょうが、ことアメリカだけに限ると事態が違うのもまた事実。訴訟の内容自体もアメリカぽくておもしろいです。
訴状の内容もおもしろいです。曰く「女子代表の方が男子代表よりも多くの収入をもたらしているのに、女子代表選手たちの受け取る補償は男子の1/4以下だ」というくだりなんかもあって、他の国ではあり得ないアメリカサッカー独自の問題なんだなあと思わされる訴訟になりそうです。
アメリカで最も人気のあるサッカーチームが米女子代表チームなのは間違いありません。ひょっとしたら男子メキシコ代表チームが米女子代表より上かもという疑いはありますが、少なくとも米女子代表が米男子代表を上回っていることは確実です。しかしそれが訴状の言うように「女子の方が収入が多い」というのは微妙な点が多く、訴状が正しいかどうか訴訟を通じて米サッカー協会の帳簿の精査がなされるという点に最も意義があるということになりそうです。
男子の方はつい先日プレーオフに敗れてリオ五輪出場失敗。ロンドン五輪に続いて二大会連続での五輪本戦出場失敗となってます。ご存じの通り男子五輪はU-23なので、フル代表の女子の五輪チームとは意味が違いますがそれでも「女子サッカーは世界最強、男子サッカーは弱い」という一般のイメージをまた強化させる結果に終わったと言えます。メディアへの露出でも女子人気選手の方が圧倒的に多いし知名度も高い。Clint Dempseyでは「誰?」という人が多いでしょうがAlex Morganや(引退しましたが)Abby Wambachなら知らない人は少ないはず。
ただ訴状の言うように女子の方が収入が多いという点は本当のところどうなのかはよくわからない。ざっと私の視線から観察すると、女子の方が細かく全米行脚して親善試合興業で稼いでいるのはわかります。女子代表の親善試合の場合の相手の国はどこが相手でもほぼ関係なく動員でき、たぶん相手国への出場支払いも極低い金額でしょう。男子の方は女子ほど試合数を国内でこなせないし、公式戦は女子より多いですがCONCACAFへの上納金もあるので女子の親善試合ほど米協会に入るカネは多くないはず。弱小国相手の試合だとお客もあまり入ってくれないのも女子と違う。女子の場合は弱い国を相手に10-0とかいう試合をやってもファンは喜んでくれますが、男子だとそういうカードではチケットが売れない。わざわざ会場に来てくれない。大箱のスタジアムでの動員が見込めるサッカー強豪国を相手を招請しようとすると多額の出場コストがかかる。そんなこんなを考えると一試合ごとの協会への実入りだと女子の試合の方が儲かるという可能性は十分にあるのです。その上女子代表の方が試合数が多いですから訴状の言うような女子の方が収入が多いというのは一面の事実があるのかもしれないわけです。
他方、サッカーの一大イベントであるワールドカップからの分配金のことを考えると男子側の収入は大幅にアップする。女子W杯からも分配金はありますが微々たるもの。男子とは文字通り桁違い。
協会側からの言い分としては、まったく経済性のなかった女子サッカーに長年投資してきて今があるのだから、女子サッカーの人気がピークになった昨年を基準に論ずるのはおかしい、という言い分もある。それもこれも実際にこの訴訟を通じて協会の帳簿を精査できるという点で決着がつきそうで、その辺ははっきり白黒つけられて良いんじゃないかと思います。
尚、この訴訟の原告の弁護士代理人はスポーツ訴訟のベテランで、最近だとNFLの例のDeflategateでの出場停止問題でTom Bradyの代理人としてNFLを打ち負かした方です。そういうプロ中のプロの方が引き受けたということは勝ち目がある訴訟なのであろうと考えられます。
待遇改善の要求をしたことがありました。
サッカー日本代表の待遇改善要求については、日当1万円は
安すぎると好意的な声もあったようです。
しかしながら、国旗を背負って代表として試合に出るのは
名誉ある義務なのに手当が少ないとか文句をいうのは
おかしいとか、クラブでそれなりの給料をもらっているのに
これ以上報酬を要求するのはいかがなものかなどと
批判されたりもしています。
米国女子代表の待遇改善要求については、大統領選で民主党
の有力候補者になっているヒラリー・クリントンが支持している
そうですが、アメリカのメディアや世論の反応は
どんなものでしょうか。