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コロナ禍の収束以来、賑わいを見せている訪日外国人。
玄関口の一つである羽田空港では、現在国際線の増便を進め、
機能強化を図っている。その大きなメリットとは。
文/張替裕子(ジラフ) デザイン/スープアップデザインズ
制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot. ADセクション
日本の空の玄関口として、国内外を旅する多くの人々が連日行き交う羽田空港と成田空港。日本政府は現在、この二つの首都圏空港の機能強化を目指し、国際線の増便に取り組んでいる。
成田空港では、2030年代に年間航空旅客数が現在の4千万人から7500万人、年間貨物取扱量が現在の200万トンから300万トンに達することが見込まれている。そのため、年間発着枠を現在の30万回から50万回へと増やすことを目標として、3本目となる新滑走路等を整備中だ。(※1)
また羽田空港では、20年3月に新飛行経路の運用を開始。これにより国際線を1日約50便増便することが可能となり、すでに就航していた14カ国・地域(※2)に加え、七つの国・地域への新規就航が可能となった。
あいにく新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により就航延期や減便などの措置が取られることとなったが、22年10月以降は国際線の復便・増便や新規就航が徐々に進み、24年10月現在での就航先は24カ国・地域、47都市に。24年度後半にはミラノ線やストックホルム線も新規に就航する。また、国際線旅客数も23年には約1789万人と、19年の約1871万人と同水準まで回復してきている(※3)。足元では、24年6月までの半年で約1096万人と19年を上回るペースとなっている。
むろん、空港の機能強化は航路下や空港周辺の住民の理解があってこそだ。着陸地点の移設による飛行高度の引き上げや低騒音機の導入促進などの騒音対策を実施し、落下物防止や安全運航のための対策も、世界に類を見ないほどの厳しい基準を策定して強化している。
※1 成田国際空港株式会社「成田空港の現状と将来」から
※2 2019年夏ダイヤの昼間時間帯の就航便数等
※3 日本空港ビルデング株式会社「羽田空港旅客ターミナル利用実績」から
都心に近く、国内線網の中心として全国49都市との間に1日約500便が就航している羽田空港(24年3月末現在)。その利便性から貨物の取扱量も年々増加しており、23年の国際航空貨物総取扱量は約56万3千トン、前年比で62.9%増となった。(※4)
国際線旅客便の貨物室を活用し、海外から輸入した鮮度の高い果物や海産物を羽田空港から都心や地方に輸送している。果物ではチェリーやマンゴー、魚介類ではサーモンの輸送が多く、意外なところでは切り花の需要も高まっているのだという。同時に、日本の地方で生産された農作物や果物・海産物を国内線で羽田へ運び、さらに海外へと輸出する役割も担っている。
食料品や生鮮品だけでなく化粧品や医薬品の輸出入も多く、コロナ禍においてはワクチンの輸入も行われていた。羽田空港の国際線増便は、旅客だけでなく、人々の生活や地方の産業の活性化にも貢献している。羽田空港はまさにヒトとモノの往来拠点、世界に名だたるハブ空港になっているのだ。
※4 東京税関羽田税関支署「羽田空港 貨物取扱量 2023年」から
羽田空港の国際線を増便し、機能強化を図ることには、三つの大きなメリットがある。まず一つは、言うまでもなく「インバウンドの増加」。そして二つ目は、「首都圏の国際競争力の強化」。国際競争を勝ち抜くためには、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスなどを複合的に評価した“総合力”の向上が必要であり、国際線の増便がそのエンパワーに大きく貢献することは間違いない。
もう一つのメリットは、「地方を元気にすること」。23年度の輸送実績においては、羽田空港発着の15もの路線で年間100万人以上の旅客流動が見られており(※5)、羽田空港はまさに国内線ネットワークの中心拠点となっている。訪日外国人旅行者もこのネットワークを利用し、地方での観光やショッピングを楽しんでいる。また、居住地域の空港に国際線が就航していなかったり、国際線が少なかったりする場合、国内線で羽田空港に向かい、そこから国際線に乗り継いで海外に渡航することが可能だ。羽田空港の国際線が増便し、海外と日本の地方を往来する観光客やビジネスパーソンの利便性が高まれば、地方と世界の結びつきも強まり、地方活性化の新たなきっかけとなるだろう。
羽田空港では現在、「首都圏の国際競争力の強化」「インバウンドの増加」「地方の活性化」の三つを目的に掲げ、
国際線のニーズが高い時間帯に限り新飛行経路を運用し、国際線の増便を推進している
24年、羽田空港は成田空港とともに、英国の航空サービスリサーチ会社「スカイトラックス」社が実施する国際空港評価において、空港の総合評価である「World’s Best Airports」部門のトップ10にランクインした。海外からも高い評価を受ける二つの首都圏空港がさらなる機能強化を果たすことは、首都圏や地方の成長・発展と、豊かな生活の実現に大きく貢献するにちがいない。
※5 国土交通省「航空輸送統計年報令和5年度(2023年度)分」から
提供:国土交通省