ソニーは「フルサイズでもミラーレスはたいしたことない」と一眼レフメーカーに油断してもらう戦略だった

日経ビジネスに、ソニーの元デジカメ開発者の石塚茂樹氏のインタビューの第10回が掲載されています。

「写真」を撮るカメラでは、ソニーは"弱者"だった

  • (カメラをαに集中した理由は)このままじゃデジカメが食われちゃうのは間違いない。だから、土俵を変えたほうがいいと思った。その先としてαがあった。レンズ交換はスマホにはできないですから、差異化もできる。ポテンシャルがあるよね、と。
  • まずサイバーショットに大判(1.0型)のイメージセンサーを入れたRXシリーズが人気になり、フルサイズ搭載のRX1が続いた。そしてRX1はソニーとして初めてカメラグランプリ2013「大賞」を受賞した。「ついにカメラメーカーとして認められた」という思いで、「フルサイズとミラーレスでいける」と僕も社内も盛り上がった。

  • α7の見た目が正統派である理由の一つは、「ソニーのフルサイズミラーレスは、なによりも『写真を撮るための王道を歩むものなのだ』」という、我々の決意を出したかったから。
  • α7は最初は売れた。レンズ交換式カメラで単独1位を取った。だけど長続きしなかった。画質は問題ないが、ピントが合うスピードが遅い。動くものが相手だとサクサク気持ちよく撮れない。そして、まだ交換レンズの種類が非常に少なかったことが大きく影響していた。

  • 「やっぱりフルサイズでもミラーレスはたいしたことない」と、デジタル一眼レフで天下を取っている上位メーカーに油断してもらうことも、実は計算していた。対外的には、「ナンバーワンになるぞ」という話はあえて1回も言わなかった。要するに、ソニーはレンズ交換式カメラではシェアが低い、いつまでもカメラのことを分かっていない電機メーカーだ、って思わせたほうが。
  • もちろん、そんなに単純な話ではないけれど、「プロやハイアマの世界では、ミラーレスはデジタル一眼レフにはかなわない」という〝常識〟が、こちらの逆転の準備が整うまで持ってくれたらいいなと。知らない間にひたひた、ひたひたと行って、戦に勝つために名より実を取るというか。
  • 我々は「写真」を撮るカメラの分野ではまごうかたなき「弱者」だった。だから、弱者の戦略を採り、弱者の戦い方をしようと思った。

 

ソニーはニコン、キヤノンに油断してもらう戦略だったと言う話は、なかなか興味深いものですね。確かに、α7が出た当時は「家電メーカーはカメラのことを分かってない」という声が結構あったように記憶していますが、このような声が出ることも戦略のうちだとすると、ソニーはなかなかの策士ですね。