前代未聞、されど有力
Do 335は、第二次世界大戦末期にドイツの航空機メーカードルニエで開発された双発のレシプロ戦闘爆撃機。
愛称は「Pfeil」(プファイル:矢の意)。
1,800馬力を発揮する強力なダイムラー・ベンツ製DB603液冷エンジンを操縦席の前後に搭載、プロペラもそれに準じて機首と機尾に配置されている『串型機』という特異な様式の機体で、その外見からすれば珍兵器の類のようにも捉えられる。
...しかし、その性能は超兵器と呼べるほどに優秀なもの。
全長・全幅ともに14m近くに達し、全備重量10トン程度にもなる大型機にもかかわらず、高度6,000m台で最高速度750km/h以上を発揮するというのは、当時としては間違いなく驚異的なスペックと評せるだろう。
他機体との比較・高性能の理由
Do335 | Me410B | モスキートMk.XVI | Bf109K-4 | P-51H | |
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全備重量 | 約9.6t | 約9.7t | 約8.2t | 約3.4t | 約3.8t |
エンジン馬力(PS)×基数 | 1,800×2 | 1,750×2 | 1,730×2 | 2,000×1 | 2,250×1 |
最高速度(km/h) | 760 | 624 | 668 | 715 | 763 |
大戦中の他の双発機どころか単発の高速機とも同等以上の速度性能は、串型配置の恩恵によってもたらされる低抵抗に依るところが大きい。
というのも、一般的な双発機ではエンジンの搭載部分が大きく膨らみ、空気抵抗の要因が胴体+翼+エンジン部×2となるのだが...
一般的な双発機 | Do335 |
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Do335の場合は2つのエンジンが胴体と一体化されているため、イメージの通りに胴体+翼だけ。これだけで空気抵抗は格段に減り、速度性能の向上がもたらされる訳だ。
なお、Do335は双発機としては運動性能にも優れていたという。
運用・戦史
...とは銘打ったものの、Do335が実用化したは大戦も末期の1945年のことで、実戦投入されたかどうかについては資料の散逸もあってイマイチ不明点が多い。
ただ、少なくとも試作機は飛んだし、1945年4月のソ連赤軍が迫るベルリン上空でDo335が見かけられた、というような目撃情報もあるにはある。
余談
- 複座型
奇怪と思われるかもしれないが、このような別個キャノピー・操縦席はスピットファイアやMiG-25の複座型でも採用されており、さほど珍しいものでもなかったりする。
- 脱出時の特殊機能
プロペラや巨大な垂直尾翼が機体の後部に配置されたDo335。パイロットが脱出するとき、これらに切り刻まれる可能性は極めて高い...。
そこで、Do335には座席ごとパイロットを脱出させる射出座席が採用され、またプロペラと垂直尾翼は脱出直前に爆砕される仕様となっている。
総じて、パイロットの脱出時安全性に十分な注力がなされていることがよく分かるだろう。
- エンジンがノーパワーになっても...
通常の双発機の場合、片方のエンジンが出力低下、もしくはノーパワーになってしまえば左右の出力バランスが大きく崩れてスピンまっしぐらとなり、飛行の維持などままならない。
しかし、Do335では両エンジンとも機体の中央に位置しているため、出力のバランスなど全くもって気にする必要が無い。
たとえどちらかのエンジンが停止しても、飛行の維持自体に大した支障はきたされないのだ。(性能は低下するが)
登場作品
ドイツ機として登場。
同格機体比で異常なまでに強大な火力を有し、旋回性能も良好なため戦闘機として運用されることが多い。