飯島敏宏
いいじまとしひろ
1932年9月3日生まれ。東京都出身の江戸っ子。チャンバラごっこで遊び、火星人に思いを寄せる少年だったという。
慶應義塾大学文学部在学中に放送研究会に入り、放送劇コンクールに送るための脚本を多数執筆。そのうちに受賞者常連となる。
その縁から1957年にTBSの前身であるKRTに呼ばれ、アルバイトを経て入社。
テレビ放映が開始されてからはテレビドラマのADを数本担当し、『ますらを派出夫会』が演出としての初仕事となった。依頼した脚本の遅れから、自ら執筆することも多かったと語っている。
その後も実績を積み重ね、映画部に異動の命を受け、国際放映に出向し監督となった。
1965年には円谷プロに出向し、『ウルトラQ』の怪獣路線を決定づけたエピソードの脚本と監督を多数担当、続く『ウルトラマン』では、放映第2話のバルタン星人の登場する「侵略者を撃て」(制作は第1話)を含めた複数回の脚本及び監督を担当した。
特にバルタン星人の生命に対する地球人との認識の違いなど、各種SF的設定を考案したために「バルタン星人の生みの親」と称されることがある。
『帰ってきたウルトラマン』から始まる2期ウルトラシリーズに登場する、地球文化に染まったものは「認めていない」との発言があり、1993年の未制作に終わった映画『ウルトラマン/バルタン星人大逆襲』では、自身の考えるバルタン星人のオリジンを込めた脚本を書いている。
後にその脚本に書かれた設定の一部は、自身が監督した『ウルトラマンコスモスTHE FIRST CONTACT』と『ウルトラマンマックス』の登場話で活かされた。(幼体は小動物のような姿で地球の子供と交流する 肉体は環境汚染に強い昆虫状生物に命を移植したもので本来の姿は美しいなど)
『シトロネラアシッド』など各種SF設定の原点となったのは『子供の科学』や『少年倶楽部』などで得た知識であり、TBSのプロデューサーである栫井巍氏のアドバイスを受け、視聴者層に合わせて中学生レベルの科学知識を盛り込んだだけでなく、『Q』第1話にジロー少年を登場させたのは自分の中の少年心が呼び起こされるのが一つ、もう一つは少年の気持ちになって書かないと大人の感覚で嘘臭く見えてしまうためであると語っている。
また、パゴスやケムール人を『Q』に登場させたのも、高度経済成長期の裏で公害問題の影が忍び寄っていた時期であった事が関わっているようであり、科学が発展していく事が本当に良い事なのかという批判精神が怪獣誕生に結び付いているとの事。ただし、こうした要素はあくまでも少量のワサビを効かせた程度であると語っている事には留意されたし(出典:KKベストセラーズ・2014年刊『語れ!ウルトラ怪獣【永久保存版】』P86〜P87より)。
なお脚本家としては千束北男名義で執筆している。
1970年には親しかった実相寺昭雄のTBS退社につきそった際、自身が木下恵介プロダクション(現ドリマックス・テレビジョン)への出向を命じられ、1992年のTBS退社後には木下プロの社長となり、さらに会長にまでなった。
2003年の木下プロの子会社化に伴う社名変更の際には退任し、プロデューサー、ディレクターという形で残り映像作品に関わっている。
2007年には会社から離れフリーとなった。
ウルトラシリーズ
『ウルトラQ』
第10話「地底超特急西へ」(M1号)※脚本・山浦弘靖と連名
第18話「虹の卵」(パゴス)※監督
第19話「2020年の挑戦」(ケムール人)※監督/脚本・金城哲夫と連名
第26話「燃えろ栄光」(深海怪獣ピーター)※脚本
『帰ってきたウルトラマン』
第32話「落日の決闘」(キングマイマイ)※脚本
テレビシリーズ
映画
- 『怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス』(ダイゴロウ ダイゴロウの母 ゴリアス)※監督/脚本
- 『ウルトラマンコスモスTHE FIRST CONTACT』(呑龍 クレバーゴン バルタン星人ベーシカルバージョン チャイルドバルタン ネオバルタン)※監督/脚本
書籍
- 『バルタンの星のもとに』
- 『飯島敏宏「ウルトラマン」から「金曜日の妻たちへ」』
- 『ウルトラマン誕生大作戦』
- 『バルタン星人を知っていますか?~テレビの青春、駆け出し日記~』
小説
- 『ウルトラマンジャイアント作戦』(モルゴ ナポレオン 鋼鉄巨人G バルタン星人)
- 『ギブミー・チョコレート』※自伝的小説
ウルトラシリーズにおいて担当回の怪獣の設定を詳細におこなうために、デザイナーとは念入りに打ち合わせをしてデザインを決定したものがいくつか見られる。
2期ウルトラシリーズ以降バルタン星人の設定がぶれてしまったために、キャラクターの大切さを認識した円谷プロによって、平成に入ってからのバルタン星人が登場するエピソードを任せられている。飯島も「最初に登場したバルタンが本物。それ以降の作品に登場したバルタンを自分は認めていない」と発言したこともあり、バルタンの設定や登場に関しては彼の一存が大きかったことがうかがえる。
逆に平成以降の作品で、飯島が関わっていない作品およびエピソードでバルタン星人がメインキャラクターとして登場したことはこれまで一度もなく、有名キャラクターなのに結果的に殆ど活躍の機会が与えられていないという事態に繋がっている面もあり、これについてはファンの間でも賛否が分かれており、「設定を大事にしたいという気持ちはわかる」「『マックス』で過去作怪獣を復活させた結果以降のシリーズで同じ怪獣の使い回しが増えたからバルタンもそのようになってほしくない」という擁護論がある一方で、「かえってバルタンというキャラクターの表現の幅を狭めることになっているのではないか?(最近のシリーズでは、既存のキャラクターも描き方やアプローチを変えることで新た魅力を作り出すことに成功した事例も少なくないため)」「最早ここまでくるとただのキャラクターの私物化でしかない」「バルタンにテレビ出禁という呪いをかけたようなもの」と飯島を批判する意見も近年では増えてきている。
特撮班との関係は、特撮シーンを大幅にカットするため軋轢があったといわれる実相寺とは違い、演出案や特撮のアイデアを自ら考案し、撮影されたものはカット割りして有効活用するために良好であったといわれる。
実相寺は同じTBSから出向した監督として、飯島が正統派エピソードを担当してくれるので、自身の変化球的な演出がゆるされたと感謝していた。