電人ザボーガー
でんじんざぼーがー
マグマ大使などの特撮作品を手がけてきたピープロダクションが制作した特撮テレビ番組。変身ヒーローならぬ、バイクから変身したスーパーロボットと一緒に主人公が悪と戦うというかなり変わった作品である。全52話。
『鉄人タイガーセブン』が鬱展開だった反省から、当時ブームのロボットアニメの要素と空手アクションをミックスした熱血ヒーローアクション番組となり、仮面ライダーというきっついライバル番組があったにもかかわらず商業的にも視聴率的にも成功をおさめた。
その独特な設定、主人公大門豊の暑苦しいまでのテンションの高さから放送後もマニアックな人気を博し、今でも根強い支持を得ている。
2011年に全二部構成で劇場版が公開される事になり、多くのファンを驚かせた。
前半 青年時代の主役を『炎神戦隊ゴーオンジャー』で江角走輔を演じた古原靖久、後半 熟年時代の主役をタレントの板尾創路が演じた。
昨今珍しいほどの熱血展開、俳優陣の熱演、溢れんばかりの原作リスペクトぶりから
上映早々に満足度一位を獲得。 2011年度日本オタク大賞にノミネートされた。
Σ団編(1話~39話)
大門豊は秘密刑事としての訓練を終えて帰国。父の親友だった新田刑事から遺品と遺書を手渡され、父・大門勇博士は悪之宮博士率いる犯罪組織Σ団に殺されたと知る。
大門は遺書に従って教会の地下室を発見。そこには父が残した犯罪捜査用ロボット電人ザボーガーが残されていた。
主要人物
本作の主人公。警視庁の秘密刑事で、暑苦しいまでの熱血漢。
幼い頃に交通事故で瀕死の状態になり、父である大門博士の手で心臓に電極回路(一種のペースメーカー)を埋め込まれて一命を取り留める。電極回路のおかげで簡単には死なないタフな体になった。
ザボーガーはこの電極回路から発生される「怒りの電流」で起動する。
カンフーのような格闘技の達人で、主に徒手空拳で敵に立ち向かう熱い武闘派。拳銃は所持しているが滅多に使わない。
その実力は凄まじく、パンチでコンクリートの壁をぶち抜いたり(コンクリートの壁越しに敵戦闘員を殴り倒したこともある)、ザボーガーそっちのけで敵のロボットを倒しちゃう程である。ザボーガーいらなくね?
必殺技は飛龍三段蹴り。ジャンプして空中からキックし、反動で少し戻ってから(空中にとどまったまま)2回目のキック、同様に3回まで連続キックを行なう。物理的にあり得ない技だが、山口氏の熱い演技と映像編集で「何が何だか分からんが、すごく強そう」というインパクトを与える。
普段は明るい好青年で、テニスを趣味とする。
新田浩
新田大五郎警部の長男。大門を兄の様に思い懐いている。
恐竜軍団編ではザボーガー基地から豊をサポートする。
中野刑事
新田大五郎警部の部下。少し頼りない印象もあるが、いざという時は体を張って犯罪に立ち向かう。
29話以降は新田警部に代わって豊のサポート役になる。
大食漢で、好物はでんろく豆。水虫持ちで、緊張すると足の水虫がかゆくなる。
元々は殺陣師として起用されたきくち英一が顔出しでの出演を希望したために追加した役で、役名は奥中惇夫が童謡『かかし』の歌詞「山田の中の一本足のかかし」から命名した。
当初は相棒として山田刑事が設定され、序盤の数話に登場していたがフェードアウトしてしまいひとりで登場するようになった。
Σ団
正式名称は秘密殺人強盗機関Σ。
悪之宮博士
犯罪組織Σ団を率いる。顔の右半分が機械化されており、足が不自由で専用の車椅子で移動する。車椅子には機関銃などが隠されている。
大門博士と交流があったがΣ団への協力を拒んだため、彼を殺してダイモニウム発生装置を奪った。
当初は、世界中の宝物を蒐集する事を目的としていたが、次第に世界征服へと野望を膨らませていった。
用心深く、虚像(ホログラフ)などを用いて目を欺き、実物が実際に姿を現す事はめったにない。自分の部下であるΣ団の幹部たちに対してもそれは同じで、裏切り者を炙り出し、粛清した事もあった。
女性の姿をしたアンドロイド。顔以外は、全身銀色のスーツに身を包んでいる。悪之宮博士の秘書的存在。ボディガードもつとめており、ロボットや戦闘員を指揮して現場に赴く事も多い。
形勢不利になると、一人だけで逃亡する事もある。
はおっている黒いマントには、防御機能がある。ザボーガーのチェーンパンチやブーメランカッターも跳ね返した。
第一話および二話のみ、戦闘体である「変身ミスボーグ」に変身した(顔を含む、全身を覆う着ぐるみである)。この姿では女性らしさは無くなり、手の先から火炎や毒ガスを噴射、かかとからのロケットで飛行する事が可能になる。しかしなぜか、二話から後は変身しなくなった。
悪之宮博士に育てられた孤児。恩を返すために大門と戦う。大門と互角に戦える格闘技の達人。
だが卑怯なことを嫌うため、博士の作戦を邪魔したりもする。
結果、頭に鉄の輪をはめられてしまう。この輪は電流を流す事が可能で、悪之宮の意思で放電が可能。
頭部の鉄の輪は、大門との戦いで壊れて外れてしまう。しかし悪之宮は、秋月が孤児の少女からもらったブレスレットを改造し、腕に付ける第二の鉄の輪にしてしまった。
必殺技はサンダーパンチ。後に修行し、新たな必殺技・ハリケーンパンチを身に付ける。
マシーンザボーガーに匹敵する性能のオートバイ、マシーン・ホークを駆る。
戦闘員
黒いライダースーツに黒いヘルメットという黒ずくめの装束。主な武器は金属製の長い棒で棒術のような格闘技を使う。また金属棒は機関銃が内蔵されている場合もある。
生身の人間なのかサイボーグ化されているのかは不明。
レディボーグ
ミスボーグの後任として、37話から登場。独自の機能や個性を見せる事もなく、39話で三ッ首竜軍団と戦い、爆死してしまった。
※その他、詳細は当該記事を参照。
恐竜軍団
魔神三ツ首
恐竜軍団の首領。巨大な3つの首を持つ竜。長い間遺跡に眠っていたが、悪魔ハットによって目覚め、世界征服を目論む。首から下は化石化しているために動けない。
42話以降は「三ツ首竜」と呼ばれるように。
悪魔ハット
魔神三ツ首を目覚めさせた異端の科学者。恐竜軍団の幹部となり前線指揮をとる。
王女メザ
魔神三ツ首に仕える神官の様な存在。三ツ首と共に遺跡に眠っていた。悪魔ハットと同様に前線指揮をとる。
手には、不気味な顔の付いた杖を有している。
竜面隊(竜マン)
首から上がドラゴンの様になっている人間。恐竜軍団の戦闘員。
Σ団の戦闘員同様、金属性の棒を武器に戦うほか、組み体操のようにフォーメーションを組んで口から火を吐く。
メカアーミー
恐竜軍団の尖兵。Σ団から奪ったダイモニウムより、悪魔ハットが製造したものと思われる。
Σ団のメカアニマルや各サイボーグ、Σメカなどと比較しても遙かに強力。ザボーガーの武器は全く歯が立たず、そのためにストロングザボーガーへの強化改造の必要に駆られた。
※詳細は恐竜軍団の当該記事を参照。
主人公の関係者たち
新田大五郎
警視庁の警部。大門博士の親友で帰国した大門を下宿させている。仇討ちのため血気にはやる大門を「勉強が足らんよ」と冷静にたしなめる。
29話でインターポールに抜擢され海外へ。代わって中野刑事が大門のサポート役に。
映画版ではフルネームが新田吾郎に変更されている。
新田美代
新田警部の娘で高校生。亡くなった母の代わりに新田家の家事を取り仕切る。Σ団に誘拐されたりした。
新田警部が海外へ行ってからはザボーガー基地で通信などを担当。
恐竜軍団編では海外留学したために登場せず。
大門勇博士
大門豊の父。悪之宮への協力を拒んだために殺され、ダイモニウム発生装置を奪われた。息子の豊にザボーガーを残す。
武田博士
大門博士の親友。博士の依頼でザボーガー基地を設計した。またストロングザボーガーへのパワーアップにも協力する。
松江健
浅尾由紀の幼馴染。由紀に想いを寄せていて大門に嫉妬することも。
バズーカ砲を搭載した武装バイク「マシン・バッハ」を駆る。
浅尾由起
浅尾博士の一人娘。博士は三ツ首に関する遺跡調査をしていて殺害され、その関係で彼女も恐竜軍団に狙われる。
大門と出会ってからはザボーガー基地に住み込む様に。
ザボーガー
大門博士が豊に残した等身大の犯罪捜査ロボット。
動力源はダイモニウム。
起動するためには大門の心臓に埋め込まれた電極回路から発生する「怒りの電流」が必要。
大門は専用ヘルメットや持ち運び式のマイクで、口頭によりザボーガーへ指示を出す。
指示の内容は「ザボーガー、ファイトだ!」といったアバウトなものでも動くので、ある程度の自律行動は可能な模様。大門の声以外では動かない。
ヘルメットからの電波と大門の肉声を遮断され、敵に捕まってしまう事も。
その体内には、小型の支援メカが搭載されており、情報収集や戦闘サポートなどに活躍する。
詳細は当該記事を参照。
マシーンザボーガー
ザボーガーがバイクに変形した姿。大門豊の足である。
ヘリキャッツなどの支援メカやチェーンパンチなどの武器はこの形態でも使用できる。
ストロングザボーガー
恐竜軍団のメカアーミィにザボーガーが倒されたあと、パワーアップした姿。
武田博士は「ザボーガーは基本設計が完璧すぎて改良の余地がない」と悩んだが、マシン・バッハとザボーガーを合体させるというアイデアを出してこれをクリアした。
ストロングザボーガーはザボーガーと異なり、松江健の命令にも従う。
詳細は当該記事を参照。
26話から登場した、大門たちの本拠地。
大門博士の親友である、武田博士により設計された。
普段は地下に沈んでいるが、マシーンザボーガーが出動する際には地上にザボーガーの頭部を模した建物が出現。その口部分が展開し、マシーンザボーガーを発進させる。
周囲には、敵の動きを感知するレーダー装置や、侵入者撃退用のレーザー砲を装備。
秘密の出入口にも強靭な遮断装置を備え、完璧に近い防備を有する。
要塞攻略の専門家「ドクロ大佐」曰く、
「あれほどの基地は見た事が無い、現代科学の最高傑作の一つだ」
50話で、爆弾のプロフェッショナル・爆弾ハットに侵入され、彼の作った強力な特殊爆弾で爆破されてしまった。
上記の様に三十年以上の時を経て、誰もが予想しなかった復活を遂げた。
基本設定は変わらないものの、ストロングザボーガーへの改造経緯が変わったり、松江健や恐竜帝国が登場しないなど様々な改変が行われている(おそらく、尺と予算の都合や初見向けへの配慮)。
敢えて古臭さを残していたり、井口昇監督の作風にクセがある等の理由で若干人は選ぶが、全体としては中年以上の人間への応援歌であると、同時に今時珍しいまでの熱血特撮ヒーロー物となっている。
また、映画に溢れる過剰なまでの原作愛も見逃せない。
軽く列挙するだけで・・・
- ストーリーでの役割上は一人で足りる筈なのに幹部連中はちゃんと全員登場。
- ビジュアル的にやたらインパクトのあった怪人「ブル・ガンダー」もファンの声に応えて登場。亜種も含めれば前後篇二回に分けて登場という破格の扱い。
- 大門豊(青年期)とミスボーグのラブロマンス。アンドロイドの彼女が妊娠!?
- 秋月玄も登場。大きく設定は変更されたが二部の話の核にかかわるTV版以上の重要人物となった。もちろん、マシーン・ホークも登場します。企画段階で考えられてたネタまで引っ下げて。
- BGMも特撮音楽の雄・菊池俊輔が作曲したものを再録。主題歌も子門真人のオリジナル版とオペラ歌手・高野二郎氏が歌うバージョンの二つを採用。
- ワンカットのみオリジナルキャストの一人、きくち英一氏が大門豊(老年期)を演じている
ぶっちゃけ、大小含めて余りにネタが多すぎて列挙しきれないレベル。
そのあふれんばかりの原作リスペクトぶりと、熱い展開から想定以上の人気を獲得。当初の予定より公開期間を延ばしてのロングラン上映となった。
- 「beatmania」シリーズの「電人(電人イェーガー)シリーズ」の元ネタであったりもする。
- 主人公、大門豊を演じた山口豪久は同じピープロダクションが制作した『快傑ライオン丸』にも出演し、『仮面ライダーV3』で結城丈二/ライダーマンを演じており、新田大五郎を演じた根上淳は『帰ってきたウルトラマン』で伊吹竜隊長を演じている。
- 本作の「ロボットの顔が付いた愛用バイクで現地に急行し、戦闘時にはバイクが人間形に変形して主人公をサポートする相棒になる」というアイデアは、様々な方面に影響を与えている(オートバジン、チダ・ニック等)。現代でも、「まるでザボーガーのようだ」という分類ジャンルの一環としても有名である。
- 本作はピープロダクション作品ではあるが、ピー・プロが直接製作したわけではなく、ピー・プロから友映に製作が委託されていた。当時のピー・プロはこのような形にしなければ製作が難しいほど経営が厳しかったそうだ。
- 「原作者」として小池一夫の名がクレジットされているが、うしおによれば、当時フジテレビの夜7時台はピー・プロの独占状態だったことから、他のプロダクションとのトラブルを避け、企画の通りを良くするために名義を借りただけであり、「番組そのものに小池はまったくタッチしていない」とのこと。
- 上原正三も小池には会っていないと証言している。
- 企画当初の作品タイトルは『仕掛けロボット ジュピターQ』。
- マシーン・ホークのカウル部分が鷹のような形状をしているのは、当初ザボーガー同様にロボット形態に変形する設定だった名残。
- 第49話で少年時代の大門を演じたのは本職の子役ではなく、山口豪久の甥にあたる少年。山口が「そういうシーンがあるのなら使ってください」と甥の写真を持参して売り込んだとされる。
コメント
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今回はピー・プロのロボットアクションドラマから、前半のボスです。ただし、直接戦って白黒つける シーンは無いので、ほぼ私のオリジナルです。 大門豊は、『アイアンキング』の静弦太郎と並ぶ「ヒーローやロボットより強そうな生身の主人公」だと思います。4,221文字pixiv小説作品 - 新・スパロボ風戦闘前会話
vs魔神三ツ首(電人ザボーガー)
前回に続き、ザボーガーから後半のボスです。こちらも部隊でぶつかるような状況は原作に無いので、シチュエーションはオリジナルです。ネーミングが色々とかぶってる気がします。3,991文字pixiv小説作品 帰ってきたドクターマッドネス ~ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター異聞~
2012年冬コミで頒布された『特撮が来た25』に寄稿した小説です。 前年公開された『電人ザボーガー(劇場版)』と、『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』が、公開されたいます。 ふと昨今のAIブームは、果たしてどこに行きつくのか…そんな応えをぼんやりと探しているときに10年以上前に書いたこの小説を思い出しました。 人工知能と人工生命の境界はどこにあるのか? そんな答えを、私たちはジャイアントロボや大鉄人17の時代から特撮を通じて考えていたのかもしれません。 冬のコミックマーケット103に当選しました。 土曜日東F29b『プロジェクトPS story』 アニメその他の中で、宇宙戦艦ヤマトのジャンルにいます。今年は、仕事やプライベートが多忙だったので、 予定通りに新刊が出せるかわかりませんが、何かだそうと悪戦苦闘しています。 また平行して、『特撮が来た38』の新刊に向けて、ゲスト原稿を書いています。 この冬のネタは『ゴジラ-1.0』を予定していますお楽しみに。6,285文字pixiv小説作品