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美女と液体人間

びじょとえきたいにんげん

『美女と液体人間』とは、1958年に公開された特撮ホラー映画。
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概要編集

1958年6月24日に公開された東宝制作の特撮映画。

前年に死去した東宝の専属俳優海上日出男の遺した『液体人間現る』が原作。

特撮映像を駆使したホラー・サスペンス映画として制作され、後に製作された『電送人間』『ガス人間第一号』と並び『変身人間シリーズ』と呼ばれるようになった。


高年齢層を対象に作られているため、キャバレーも舞台になり女性の出演時間も多く、当時としては性的な描写も多い。

劇中では当時まだ記憶に新しい第五福竜丸事件をヒントにした事件が起こるなど、時代を垣間見ることができる。


あらすじ編集

 ビキニ環礁の核実験による日本の漁船『第二竜神丸』遭難の一報が、新聞の片隅に載る。

そして、行方不明の筈の『第二竜神丸』は、何処とも知れぬ闇夜の海原を航行し続けていた。まるで幽霊船のように…。


 ところ変わって、ある雨の夜の東京。

麻薬密売に関わっているギャング・三崎(伊藤久哉)が麻薬を詰め込んだ鞄を持って下水道から這い上がり、雨の中で待つギャング仲間の内田(佐藤允)の乗る自動車のトランクに鞄を積み込もうとしていた。

しかし、三崎は苦悶の表情を浮かべると拳銃で自分の足元を撃ち始めた。内田は突然の事態に逃走し、三崎はそのままタクシーに轢かれるも何故か服だけを残して消えてしまった。

この事件に対して、警視庁の富永(平田昭彦)を筆頭とした捜査陣は三崎の恋人であるキャバレー「ホムラ」の歌手・新井千加子(白川由美)をマークして調査する。捜査の最中、富永の大学時代の友人であり科学者でもある城東大学助教授・政田(佐原健二)が千加子に接触したため、刑事達にギャングの関係者として疑われて連行されるも、富永のとりなしもあり事なきを得る。

政田も三崎が行方不明になった事件を独自に追っており、放射能の影響を研究をしていた彼は富永に自身の仮説を伝える。


 三崎は逃げたのではなく、雨に含まれた放射能によって溶かされたのではないか?


 すなわち、三崎は既に死んでいる…余りに突拍子もない政田の仮説に、富永をはじめ捜査陣も一笑に伏す。しかし千加子の周辺では、彼女に迫ってきた三崎との関係のあるギャングが突如消失するなど不可解な現象が起こる。

千加子をマークしつつ、富永と政田はそれぞれ独自に捜査を続けていき、政田はある事件での原爆症で入院している2人の漁師を発見し、彼らの証言を聞くべく富永と共に面会に向かった。

彼らの証言によれば、ある夜行方不明になっていた第二竜神丸を漁業の最中に発見し、自身達を含め6人の乗組員と乗船した。

そして船内は無人であったこと、船内を探索している途中で4人の乗組員が突如として溶解し消失したこと、自分達は命からがら船に逃げ戻る事が出来たが、第二竜神丸の甲板には亡霊の様な存在が立っていた事を事細かに語った…。

 その後、政田は大学の研究室に富永たちを招き、先の船員によって回収された第二竜神丸の航海日誌を見せる。ビキニ環礁で核実験のあった当日、甲板から6人の船員が行方知れずになった事を伝え、加えて放射能の影響下で、ガマガエルが細胞変異を起こし、液状生物に変質する過程の実験を見せる。

しかし警察からは三崎の事件とは結び付けられないと、またしても相手にはされず仕舞いであった。

 その一方で、世間では三崎のように衣服だけを残し人間が消失する事件が続発し、三崎の一件も進展せず警察も頭を悩ませていた。千加子に迫ってきた男に拳銃を売った男が殺害されたため、事態は動き出したかと思われたが、再度暗礁に乗り上げてしまう。

 調査を続けていた政田も第二竜神丸の浮き輪を発見し、その浮き輪から放射能が検出された事で、政田と研究室の真木教授(千田是也)は、三崎の一件との密接な関係を確信する。

また事件を通じて千加子と政田も交流を深めていき、千加子の証言からキャバレーに怪しげな男が出入りしているとの証言を経て、事態を打破すべく、キャバレー「ホムラ」への捜査を決定する。

 そして雨の降りしきる夜、客で賑わう「ホムラ」の中には、あの内田の姿もあった。

ギャングの関係者が次々と店から出た先から警察に拘束される中、富永たち捜査班が「ホムラ」へ客として潜入している事を察した内田は店内から密かに逃亡を図るも、逃げ出そうとした窓から突如として液体状の怪生物が侵入し、内田を手引きしたボーイ島崎(桐野洋雄)と居合わせたダンサーを溶かしてしまう。

更に政田に液状生物を見たとの連絡を取ろうとした千加子にも液状生物が迫るが、自身に攻撃を加えてきた坂田刑事(田島義文)に標的を変え、今度は彼を溶解させてしまう。更に、政田が到着した直後に窓から逃走する液状生物を、富永をはじめ多数の人間が目撃する。

 一方、内田はこの騒動に乗じて衣服を脱ぎ、自身も液状生物の犠牲になったかのように偽装し、身を隠す…。

 翌日の城東大学にて、政田が先日ガマガエルに対して行った放射能下での細胞変異実験の結果を警視庁幹部も目の当たりにする。そこで、この液状生命体は動物を溶かして捕食することが判明し、東京に現れた最初の液状生物は『第二竜神丸』の乗組員の成れの果てである事、また帰巣本能によって東京に出現した事が判明する。

 液体でありながら、人間の精神活動を持つ…正に「液体人間」と呼べる第2の人類の存在が証明された。

 即座にこの一件は実験結果を含めて世間に公表され、早急に警察・研究室・政府との共同対策本部が立ち上げられた。

 液体人間となった人間は元に戻す事は不可能な上、一人でも取り逃せばまた別の人間を餌食にしネズミ算式に繁殖する可能性もある。そのため、真木教授の提案のもと高電圧による放電と火炎による焼却が決定され、事件の発生した地域を徹底的に焼き払う作戦を決行する事が決定する。

 事態の深刻さをようやく理解した富永たち警察も、液体人間殲滅を最優先に動き出す。

 だが、その矢先に逃亡中の内田が千加子を誘拐し、行方を眩ましてしまう。

 警察による捜査も空しく、内田も千加子も行方が知れぬまま、液体人間殲滅作戦の当日となり、該当区域住民の一斉避難が開始された。

 厳重な警備の中、下水道の中を内田に連れられて歩く千加子がいた。内田たちは麻薬を下水道の一角に隠しており、内田はこの騒動に乗じて回収し、逃亡しようと目論んでいたのだ。

 内田は、千加子に衣類を一枚脱がせて彼女の死も偽装し、更に下水道を進む。彼女の衣類を川で発見した政田も、彼女を救うべく液体人間が徘徊する下水道へ潜っていく。

 その最中、とうとう液体人間殲滅作戦が実行され、ガソリンの満ちる下水道に着火命令が下された…!


液体人間編集

 核実験に巻き込まれて死の灰を浴びたマグロ漁船「第二竜神丸」の乗組員の6人が強い放射能の影響で突然変異した液状生命体。

他の生物を体から出す液体で餌食にして液状化し、液状化させた犠牲者を自分と同じ液体人間にすることもできる。

「第二竜神丸」の他の乗組員を全て溶解し、日本近海に近づいた際には漁船に接触。乗り込んでいた乗組員をも溶解させた。その後は東京に戻り人間を無差別に溶解させていった。

 銃や火等の武器は通用しないが、強力な火炎や電流には弱い。

また犠牲者の精神活動が少し残ると言われており、液体人間が東京に戻ってきたのはそのためとされている。

どこまで犠牲者の精神が残っているのかは不明だが、千加子の周囲には、液体人間が何度か現れ、千加子に危害を加えた人間を溶解しているため、三崎の犠牲によって誕生した液体人間には、三崎の精神活動が色濃く残っていたと考えられる。


余談編集

本作のメインテーマは前半は弦楽器の高音が主体の恐怖感を煽るメロディだが、後半はマーチ調の軽快な音楽であり戦争映画の予告編にも多用されている。

クライマックスの下水道は本物の下水道でロケを行っており、佐原健二は臭いがひどかったと語っている。

夏木陽介のデビュー作(アベックの男役)である。東宝所属の数日後の撮影で「カメラテスト代わりだったのだろう」と語っている。


関連タグ編集

東宝特撮

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