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『栞と紙魚子』は、諸星大二郎によってネムキに不定期連載されているホラーマンガ。

クトゥルフ神話の怪物や化け猫、霊などが出没するなどホラー方向にずれた街・胃の頭町(東京都の井の頭がモデル)を舞台に、やはりどこかずれた二人の女子高生、新刊本屋の娘・栞と、古本屋の娘・紙魚子の日常を描いた物語。

胃の頭町

物語の中心となる町。何処か見覚えのある幾つかの地名には、人の体に由来した名前がつけられている。

色々とホラーな出来事が絶えず、しまいには町そのものが消滅の危機に陥ることも幾度かあったが、主人公達住民は至って普通に日常を過ごしている。

隣町には耳鳴町が、近隣には腸腑市が存在する。

胃之頭高校に通う女子校生で、四人家族の長女。実家は書店を経営。

妙にズレた倫理観を持っており、捨てられたバラバラ死体の生首を好奇心から持ち帰るというかなりぶっ飛んだ行動を第一話から見せた。

それでも部屋にお気に入りのアイドルのポスターを貼る等、歳頃の少女らしい一面もある。

また頼まれると断れないというお人好しな一面もあり、それがきっかけで胃の頭や、時には異界に住む“普通ではない住人”達と知遇を得ていく。

とはいえ本人は面倒ごとが嫌いな性質であるため、時には弱音や愚痴を吐いてしまうこともしばしば。

髪をロングにした正統派美少女であるが、そうした積み重ねもあり、クラスメイトからは微妙な扱われ方をされている。

という弟がいるが、姉に引っ張られる形でおかしな現象の巻き添えを食らいがち。

紙魚子

栞と同じ高校に通う同級生。胃の頭で古本屋を営む「宇論堂」の一人娘。

かなり博識な少女で、眼鏡を掛けていることも相まって理屈屋っぽい一面を持つ。

栞にはその知識を頼りにされているが、お陰で様々な怪奇事件に巻き込まれる羽目に。とはいえ異常な事態に置かれても終始冷静さを崩さない。

悪霊を躊躇なく張り飛ばして、説教するなど豪胆さも併せ持っており、胃の頭の“普通では無い住人”達からは一目置かれるようになっている。

また普段は栞を諌めるブレーキ役でありつつも、根っからの古本マニアであるため、希少本や珍本を見つけると、栞にも呆れられる形振り構わなさを見せることも。

普段は髪をおさげにしているが、下ろして、眼鏡を外した素顔は結構な美少女。

お化け屋敷

つい最近まで空き家だった平屋住宅。元々幽霊屋敷として周囲から不気味がられていたが、ホラー作家である段一知が家族と共に越して来てからは文字通りの怪奇スポットに変貌した。

また家の中は段夫人の手によって様々な仕掛けが施されており、見た目に反してかなり生活感のある作りになっている。

段一知

面長の顔が印象に残る壮年の男性。ゲロゲロノベルズという文芸誌に連載を持つ作家で、ホラーが専門。

奇行で有名と言われるが、本人は社交的で温和な性格をしており、至って普通。初対面の人間には人形の振りをして驚かせるという愉快な一面も。

しかし若い頃は、世界を守るために悪の魔道士と対決するというどこぞのTRPGのような生活を送っていたらしい。そのせいか該博な知識とホラーな出来事もあっさりと流す図太さを持っている。

夫人とはこの頃に出会ったようで、今でも仲睦まじいおしどり夫婦である。夫人との間には一人娘がおり、クトルーと名づけて、甚く可愛がっている。

しかし何かと忙しい作家生活では、構ってやることは一苦労な様子。その為ベビーシッターとしてよく来てくれる栞には一家共々感謝しており、彼女が洒落にならない事態に陥った際には助力した。

紙魚子とも、彼女の実家が古本屋であるため蔵書整理の際には何かと世話になっており、二人組とはかなり親しい関係にある。

段夫人

段先生の奥さん。ここではない何処か遠くから来た「外国人」らしく、常人よりも遥に大きな顔を持つ。人では無いのは明らかだが、本人は日々の天気や夕食の献立に気を揉む、至って普通の主婦。性格も天然気味なところがありながら、夫に似て温厚。

段先生とは仲睦まじく、万年新婚夫婦とも言えるラブラブっぷり。とはいえ一度喧嘩になると、先生は彼女には全く頭が上がらず、完全に尻に敷かれている。

その際、嵐と溶け合ったかのような恐ろしい形相に変貌することもある。実際に嵐としての力もあるようで、その威力は廃墟になったとはいえ、ビルを一撃で崩落させてしまう程。

このように尋常ではない力を持っており、何気に胃の頭で起きる怪奇現象の一端を担っている。

とはいえ本人をよく知る周囲からは、親しみを込めて「クトルーちゃんのお母さん」や「段先生の奥さん」と呼ばれている。

またその力を見込まれて“普通ではない住人”たちに助力を求められることもあり、彼らからは胃の頭一の実力者と見られている。

クトルー

段一家の一人娘。ボサボサとしか形容し得ない黒髪に、隈の濃い目が不気味な印象を与える。

見た目は人間の女の子ではあるが、体の部位を自由に入れ替えたり、バラバラになっても平気だったりと明らかに母方の血が入れ濃く出ており、本人の活発さも相まって周りを振り回しがち。

車や遊具と言った器物を壊すのは序の口で、挙句の果てには落雷を受けた拍子にパワーアップして、更に暴れ回ったりと、本人はただ遊んでいるだけなのに様々な被害を与えてしまう。

こうした行動から、子供たちの教育に良く無いという事で幼稚園から初日で出禁を食らう羽目になった。

とはいえそんな娘を両親は可愛がっており、ベビーシッターとして何くれとなく面倒を見てくれる栞も現れ、なんやかんや言われながらも本人は幸せそうである。

テケリ・リ」と言う言葉が口癖。

ヨグ

本当ならば無いところに頭が生えているトカゲのような怪生物。段一家のペットで、夫人が「故郷」から連れてきた。

元はクトルーの遊び相手であったが、今では他にライバルが出来た事でサボりがち。

体をバラバラにされても、再び繋ぎ合わせる事で蘇ったり、なんなら放っておいても自力で再生出来るという既存の常識を超えた奇っ怪な生態をしている。

知能も相応に高いが、性格は凶暴。様々な陰湿かつ殺意の高い罠を仕掛けたり、時には得物(?)の包丁を振り回して本当に殺しにかかってくる。

栞と紙魚子にとっては、初遭遇から恐怖の対象であり、クトルーの方が遥にマシであると思われている。

胃之頭高校

栞たちが通う、何の変哲も無い普通の高校。

しかし勝手に化け物たちの同窓会の会場にされたり、異界からやって来た魚に校舎を半分飲み込まれたりと、胃の頭町で起きる怪奇事件のとばっちりを頻繁に受けている。

指定された制服はブレザーで、男子はネクタイ、女子はリボンを着用している。

早苗、マチ子

栞たちの同級生。仲が良いクラスメートではあるのだが、友人たちの怪奇事件の巻き込まれっぷりに恐れをなしている所がある。

怖いもの見たさで怪奇現象に首を突っ込むこともあるが、根は至って普通の一般人であるため、大抵は栞たちに後を丸投げして逃げ出すのが定番。

特に委員をやっている早苗は、自分の手には負えない案件(例外なくホラーな物ばかり)をちょくちょく押し付けてくる為、その筋の専門家だと栞たちが思われる一つの要因を作っている。

洞野

紙魚子と親しい男子学生。文芸部に所属しているが、自主的に仲間を集めて映画を撮るほどの筋金入りのマニアでもある。

しかしその嗜好は少々偏っており、彼の撮る作品はどれも濃厚なポンコツ臭が漂う逸品ばかり。

大抵はSFホラーを軸にしたエド・ウッド寄りのはちゃめちゃな作風だが、撮影に機械仕掛けのロボを使ったりと高校生にしては凝っている部分も。

脚本は自分で用意しており、ワープロを使って執筆している。だが、このワープロが度々おかしな語変換を起こす為、それが原因で妙な事態を引き起こす事もしばしば。

蔦屋敷

壁一面を蔦で覆われた御屋敷。一見すると廃墟のように見えるが現役の住宅であり、鴻鳥一族が代々住んでいる。

お抱えの使用人を雇える程の資産家一族だが、一度没落の危機に陥った事があるらしい。その時代の先祖が幽霊となって未だに夜の廊下を彷徨ついており、外見に違わない一面も。

鴻鳥友子

栞たちとは同学年の女学生。いつも柔和な表情を浮かべており、言葉遣いも丁寧。

インスタント食品やコンビニのおにぎりを食べた事がないという正にTHEお嬢様。しかし、わざわざ自分で料理を調理するという一面を持つ。

実際趣味の域を通り越してプロ級の腕前を持つのだが、それが却って怪異を引き寄せる事もしばしば。

特に数代前の先祖であり、屋敷を彷徨く幽霊の正体である鴻鳥和子とは親和性が高いのか、ちょうちょく憑依される。

その度に人肉料理(!)を所望する危険人物と化す。本人もいつの間にかで人肉料理を作りたがるようになっており、折々その悪癖を発露させては事態を掻き回すトリックスターと化す。

彼女の「癖」には家族も薄々勘付いている様だが、「料理が美味しくなるから放っておこう」(意訳)と半ば黙認している。

胃の頭公園

胃の頭町にある胃之頭池を擁する大きな公園。市民の憩いの場でもあり、弁天様が祀られる有難い御堂がある。

しかし最近では異界からやってきたムルムルという生物の一大繁殖地と化しており、胃の頭の生態系に大きな影響を与えている。

因みに栞がバラバラ死体の頭部を拾ったのはこの公園である模様。

菱田きとら

各地を彷徨う流浪の女流詩人。

血と臓物に溢れる文字通り猟奇的な作風を得意としており、度々「ぐるがる」という文芸誌で奇抜な詩を発表している。

顔立ちはお世辞にも美人とは呼べないが、見る人に忘れ難い印象を与える。例えるならば狐の様な異貌の持ち主。

短気かつ粗暴な性格で、女性らしい細身のスタイルからは想像も出来ないほどの暴力性を発揮する。その力は凄まじく、とあるパーティでは大の男三人を病院送りにする程の暴れっぷりを見せた。

その際、たまたまその場に招待されていた段一知に一目惚れ。先生の妻になるべく胃の頭町にわざわざ襲来してくる。

段先生に対する愛は一途であるが、障害となる段夫人を強くライバル視しており、彼女を排除するべく様々な策を講じている。

その一環として日夜段一家を監視。ゴミ袋が出されれば素早く回収し、中身をじっくりと検分して情報収集を行うなど並のストーカーを遥に越える執念を見せる。

しかし肝心の段先生はきとらのアプローチには困惑気味。夫人に至っては娘と遊んでくれた“良い人”という認識で、そもそも土俵にすら立てていないのが現状。

普段は胃の頭の各地で野宿しており、割合に顔は広い。日常的に起きる怪奇事件にもさして動じず、寧ろ血生臭い一面を持つ彼女にとっては居心地が良い様で、かなり充実した毎日を過ごしているらしい。

生態的にも一種の凶暴な外来生物とそう大差ない為、誰も彼女に強く出られず、半ば放置された結果、(不幸なことに)完全に胃の頭の地に馴染んでしまっている。

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