概要
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「酷鐵廣島」、「國鐵廣島鐵道管理局」とも呼ばれる。なし崩し的に「国鉄広島」も可。似たような言葉には、「國鐵金澤」や「國鐵新潟」・「國鐵千葉」が存在する。
かつては金沢支社・岡山支社と並ぶ国鉄型車両最後の楽園・聖地であり、JR西日本の中古車市場同然の状態であった。何だかんだでよくネタにされていたが、それでもボロの吹き溜まり同然であった時代の神戸支社網干総合車両所よりまともな待遇を受けていた。
だが、2015年以降「國鐵廣島」のイメージは急速に弱まり、現在この単語は事実上の死語と化している(後述)。
なぜ國鐵廣島と呼ばれていたのか?
広島支社には2014年までは新車を入れてほしいという沿線住民の悲鳴もむなしく、山陽新幹線と県北のキハ120形を除いて国鉄型車両しか配備されていなかったからである。しかもそれらの車両には、首都圏や京阪神間で使用されてきた中古車両も少なくない。
製造から30~50年は経過している車両が使用されており、2014年時点では、クハ103-86、クハ104-601、クハ111-812、クハ115-152(いずれも各系列において当時の最古参車)など、偉大なる産業遺産とも言えるような車両達がしぶとく残存していた。ただ古いだけでなく、ガムテープやダンボールを用いたお粗末すぎる補修(詳細は後述)、チクビームや先頭車化改造車などの珍車、末期色化、真っ白の前面方向幕等、国鉄時代より状況が悪化していた。
車両面以外においても、車両同様に老朽化で朽ちつつある駅、パターンダイヤの崩壊→減便改正ラッシュと、120万都市とは思えない有様を呈していた。「國鐵廣島」とは、単に古い車両の巣窟であることに留まらず、JR広島地区そのものの退廃具合を指す表現とも言える。
なお、お隣の支社も以前の広島と似たような状況にはあるが、こちらについては、
- 定期の特急列車が設定されている
- ピカピカの錆の無い車両が投入されている(マリンライナー用に導入した213系や223系)
- 拠点駅である岡山駅は既にリニューアル済
- 岡山は政令指定都市の中では人口が少ない方なのでやむを得ないが、岡山よりも人口が50万人近く多い広島の方がインパクトが大きい
などの理由で「國鐵岡山」などと呼ばれる事はあまり無かった。しかし、広島に新車置き換えで先を越されると、かわって国鉄岡山呼ばわりされるようになっている。
ガムテープ
國鐵廣島を語る上で外せなかったのがガムテープである。広島支社では駅の椅子などの修理はもちろんホームのライン引き、さらには鉄道車両そのものの補修にガムテープを用いている。
基本的には隙間風対策など車体の内側に対しての補修(ガムテープライナー)に使われるが一時期は車体の外側に対しての補修(ガムテ塗装)にも使用されていた。
このガムテープを用いた車体補修は費用が安く済む上に手軽に行える為、同業他社にも広まりつつある模様。
また、2011年8月ごろから前面幕をダンボールで埋めた電車も走り始めた。信じられないかもしれないが、事実である。ソースはこちら
ガムテープでもあるだけマシ?
JR東日本では、103系を外板抉れ塗装だけして放置・配電盤損傷で中央・総武緩行線で立ち往生、起動時に主電動機から爆発のような火花、TX開業前の常磐線では、403/415系からの雨漏りが複数回起きた。(いずれも一昔前の事だが)
JR北海道でも、キハ283系1編成の全焼以降、整備不良が原因での特急列車の出火が数件あった。(2011~2013年の間に)
それよりはマシと言えるだろう・・・と思いきや。
2012年1月5日、山陽本線岩国駅で、過電流による火災が発生。車両の不具合によるもので架線の切断も伴った。幸いにも負傷者は出なかったが、運行中ならまだしも停車中に発生した事もあり、殆どの人がこの過電流火災を疑問視していた。
中国新聞の取材に対し、JRは定期点検の周期を短くするとコメントしていたが、一歩間違えれば甚大な被害になりかねない事件であった。
終焉へ
そんな國鐵廣島ことJR西日本広島支社であったが、2014年以降は近代化が急速に進んだ。
広島駅を中心に主要駅の改良工事を進め、新たに「JRシティネットワーク広島」としてラインカラーと路線記号を設定した。2015年には新白島駅が開業しアストラムラインとの接続を改善。2016年春のダイヤ改正では、土休日に山陽線の快速シティライナーが復活。
2017年春には可部線の一部区間の復活延伸、2018年度には山陽本線白市 - 岩国間において「新保安システム」と称されたATS-DWが導入。
更にこのプロジェクトの大目玉となるのが新車投入。
2014年に約30年ぶりの新車「227系」の大量投入が始まり、2015年3月より広島近郊の国鉄型電車の置き換えが進められた。これは、沿線の利用客や自治体にとってまさに悲願である。
そして2018年12月14日、2019年3月16日ダイヤ改正を以て広島地区の電車を227系に統一することが正式に発表された。(プレスリリース)
こうして、長らく広島地区で走り続けた国鉄型電車たちは平成の終わりと共に姿を消した。
長らく続いた広島地区から岡山・山口地区への相互乗り入れも終了。
糸崎駅(または三原駅)と岩国駅で系統分割が行われ、他地区に残存している国鉄型も広島地区へ姿を現すことは無くなった。
広島地区は227系に統一され、ここに近代化は達成された。
現在、広島地区で定期運用を持つ国鉄車は、芸備線および呉線臨時快速「etSETOra」に用いられる、キハ40系のみとなっている。
「なんだ、まだ国鉄車は現役じゃないか」とも思われそうだが、國鐵廣島のイメージの根源は115系を初めとする電車群であったため、彼らの退役を以て國鐵廣島は終焉を迎えたと見なされている。
國鐵山口
なお、広島支社の内、広島県内の國鐵廣島は終焉を迎えたものの、山口県内の山口支社(広島支社の下部組織)は「國鐵山口」として「國鐵岡山」と並ぶ115系・キハ47等の国鉄型の天下となっている。
ただし、こちらも広島への227系投入と同時期に経年車や珍車を一掃したため、ネタとしての度合いは薄い。しかも2016年3月末以降は227系が徳山駅に、2022年3月からは新山口駅にも定期運用を開始したことから、国鉄型だけが走る区間は新山口駅〜下関駅〜門司駅のみとなっている。(下関駅〜門司駅間はJR西日本ではなくJR九州の管轄であるが、旅客列車は国鉄415系のみが使用されている。)