概要
世界的に普及しているISO 668規格の海上コンテナの高さは、通常の8'6''(8フィート6インチ、2,591 mm)とハイキューブ(HC)と呼ばれる9'6''(9フィート6インチ、2,896 mm)の2種類が大半を占める。
20 ftでは通常サイズ、40 ftではHCサイズのコンテナが主流である。前者は一般的なJRコンテナと同等の高さであるため、多くの区間にて輸送が行われている。しかしながら後者は国内の鉄道貨物輸送では建築限界が厳しく、既存の貨車(コキ100系)に積載しても通過出来ない線区が多く存在している。
そこでコキ200程度の全長を維持しながら、床面の高さを740 mmまで引き下げることで、海上コンテナの輸送範囲を拡大するべく開発された。
緒元
全長 | 16,000 mm |
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車体高 | 740 mm (積載部の床面高さ) |
荷重 | 48 t (40 ftコンテナ1個積載時) / 30.5 t (20 ftコンテナ2個積載時) |
自重 | 17.5 t |
換算両数(積車) | 4.0 (20 ftコンテナ積載時) / 6.5 (40 ftコンテナ積載時) |
換算両数(空車) | 1.8 |
台車 | FT16(1の登場時) / FT17 (1の換装後、2~4) |
車輪径 | 610 mm |
軸距 | 2,000 mm |
最高速度 | 110 km/h |
製造両数 | 4 両 |
現状
2024年現在、1から4までの計4両が製造されている。
1は2016年1月に甲種輸送されたが、FT16台車の不具合により東京タにて長期間留置の後、2022年7月に外部へ搬出された。10月に2で採用されたFT17台車に履き替え川崎車両所に戻り、翌2023年1月から運用入りしている。
2は1の不具合を受け設計を見直したFT17台車を装備し、以降の車両は全てFT17にて出場している。2019年2月に陸送が行われ、翌3月に吹田タ~大阪タ間で試運転を実施。6月に大井機関区に搬入された。2020年1月から再び試運転を繰り返し、2021年10月から本形式では初となる運用を開始した。
3,4は先の不具合に関連してか、製造後も出場(=入籍)せず日本車輌製造豊川工場内にて留置されていたが、2022年10月に川崎車両所に搬入されているのが確認された。2023年1月から4が、3月から3が運用入りし、トップナンバーの落成から7年越しに晴れて全車運用入りを果たした。
運用
本形式は4073~3071/3070~4072レ専用になっており、東京タ~盛岡タにて運用されている。
2023年11月には横浜本牧~大館での海上コンテナ輸送の実証事業に供された。
2024年10月、3070~4072レにおいてフラットラックコンテナに載せた96式装輪装甲車が輸送される事例があった。区間は仙台タ(特発)~東京タ。(記事)目的は不明であるが、コキ73にて自衛隊の機材輸送を行った初の出来事である。
課題
国内にて40 ftのHCコンテナ輸送が本格化する目途は立っていない。
理由は幾つか挙げられるが、
- 本形式の設計が特殊であり、イニシャルコスト・ランニングコストがコキ100・200系に比べ高価。
- 40 ftコンテナは駅にて一時的に留置するにもかなり広いスペースが求められ、取り扱いを開始するには駅の拡大、もしくは移転の検討が必要。
- 40 ftコンテナに対応したトップリフターを配備しないと荷役が行えない。
- 以上の設備改修費をJR貨物単独で負担できない。
が主。
余談ではあるが、現在コキ100系の後継となる次世代型低床貨車として、床面高さを900 mmに引き下げた(通称)コキ90系が開発されている。(ソース)導入目的として「31 ft背高コンテナの輸送範囲拡大」が挙げられるが、若干でも高さの制約が緩和されることで、コキ73を使わずとも海上コンテナの輸送範囲拡大を行える可能性がある。