本項目では共通する設計・機構を持つコキ200形についても取り上げる。
1987年に発足したJR貨物ではコンテナを輸送形態の柱と定め、輸送力と速度の向上を目指した。しかし国鉄から引き継いだコンテナ貨車では、高速走行に対応しているが整備性の悪い形式と、効率的だが鈍足な形式の一長一短な2つしかなかった。また大柄で鉄道用コンテナより柔らかい海上コンテナの輸送には、低床式かつ衝撃緩衝に配慮した専用車種を使用しなければならず、海上コンテナの鉄道輸送はなかなか普及していかなかった。
そこでJR貨物は110km/h走行と効率的な積載に加え、海上コンテナにも対応した新たなコンテナ貨車を製造することとなった。鮮やかなブルーに塗られ登場したその貨車は、床面高さ100cmからコキ100系と名付けられた。
高速走行のために必要なのは優れたブレーキ性能である。これは従来のブレーキ装置にあったタイムラグを解消する「電磁弁」を搭載することで、制動距離を短縮し110km/h走行を可能にした。
効率的な積載には、国鉄時代に登場したコキ50000系の車体長さを踏襲することとした。それ以外にもコキ50000系は台枠や台車の元設計となっており、コキ100系との共通点は少なくない。
国内で一般的な鉄道コンテナに比べ海上コンテナは背が高いため、コキ50000系に載せると鉄道車両の限界高さを超えてしまう。コキ100系では車体を薄型にすることで床面高さ1mちょうどを実現。しばらくの試験運用の後、コキ106形の登場で本格的な輸送がスタートしている。
コキ100系は登場以来改良を繰り返し量産されており、現在8形式目のコキ107形が最新形式とされ増備中である。
2000両以上存在する形式もあれば、わずか5両しかない超激レア車まで存在し、遭遇・通過するコンテナ列車を観察しても形式ごとの差異を楽しむことができる。
以下にこれまで誕生したコキ100系の仲間を挙げ特徴を説明する。なお、複数形式でユニットを組む場合は同時に扱う。
JR貨物が発足してまもない1987年に登場したのがコキ100形、試験運用の後、1988年に加わったのがコキ101形である。合計66ユニット264両。
コキ100形は長大編成を想定し、4両1組のユニットを組んだ。また連結作業も不要と考えたためか、作業員が乗るためのデッキが無い。
しかしいざ試験運用をしてみると、普段の入れ換えであまりにも使いづらいと酷評であった。そのため4両ユニットという形態はそのままに、デッキを備える形式を新たに作り車両を組み替えることとなった。
コキ101形は車端にデッキを備え、ユニットの両端に連結され2両のコキ100を挟む。現在の両形式は、コキ101-コキ100-コキ100-コキ101の4両ユニット(上イラスト)に組み直され運用している。
コキ100とコキ101に小改良を加えたのがコキ102形とコキ103形である。1989年~90年に合計115ユニット460両が製造された。
110km/h走行に必要なブレーキの電磁弁はひとつで複数の車両を制御可能なため、コキ100・101のユニットでは両端の2両に搭載されていた。
新形式とされたコキ102・103のユニットでは、中間のコキ102の片方のみへと一カ所に集約。
コキ103-コキ102-コキ102-コキ103の4両ユニットであるが、形式番号以外の外観からコキ100・101と区別することはほぼ不可能である。
コキ102の後期に製造された25ユニットは31ftコンテナ積載に対応するため、車体長をコキ103と同じに揃えてあり、500番台に区分される。
これまでのコキ100系とは違い、1両ずつ運用可能にしたのがコキ104形である。1989年~96年に製造された。
自車用の電磁弁とデッキを備え、4両単位ではできないきめ細かな輸送力の調整を可能とした。基本的な設計はコキ101やコキ103に準ずる。
あまりに便利すぎたのか4両ユニットが不便だったのか、総勢2948両とコキ100系の中でも最大派閥となった。現在のコンテナ列車に組み込まれる貨車のうち、大半がコキ104であることは多い。
現在のコンテナ貨車ウォッチは、大勢力のコキ104・106・107とその他の形式を分別することから始まると言って過言ではない。
5000番台(36両)はさいたま新都心建設時の残土排出用に埼玉県資源活性化財団所有の私有貨車として専用の無蓋コンテナとともに製造されたもの。後にJR貨物に売却され一般車と混用されている。
10000番台(4両)は山陽本線瀬野八区間での走行中補機解放に対応したタイプ。
4両ユニットのコキ100・101と単車のコキ104の中間として、奇数番車と偶数番車の2両ユニットを組んだのがコキ105形である。1990年~91年に製造された。
デッキ付きの同一形式が2両背中合わせに組成されたユニット。ブレーキの電磁弁は一方のみに搭載されている。
デッキなし車のような特徴がないため、単なるコキ104の2両として見落としがちでなかなか気づくことができない。また全部で40ユニット80両しか存在しないため、以下のコキ110ほどではないがレアな形式である。
単車・コキ104の後継として、海上コンテナに本格対応させたのがコキ106形である。1997年~2007年に1162両が製造された。
コキ100系の床面高さが海上コンテナに対応していることは先に述べたが、実際に積載するには別途固定金具を取り付ける必要があった。また車体強度の関係上、載せられない重量コンテナも存在した。
コキ106では別添だった固定金具の標準装備に加え、車体強度を大幅向上させる大規模な設計変更が行われた。車体台枠の形状が明らかに異なるのを上のイラストでも比べられるだろう。
これら機能の向上により従来の形式と区別するため、量産途中で車体色がブルーからグレーへと変更された。現在はほぼ全ての車両がグレーに塗り直されている。
コキ106をベースに、新規格15ftコンテナの導入に向け2001年に登場したのがコキ110形である。
コキ100系は、12ftコンテナ*5個、20ft*3個、31ft*2個のいずれかの積載によって満載となる(つまり荷台は62ftくらい)。このコキ110は、4個の積載によって満載となる15ftコンテナの供用開始に伴い誕生した。
その奇抜なからし色が特徴的だが、残念ながら15ftコンテナは24A型有蓋コンテナが10個製造されただけで全くと言っていいほど普及せず、コキ110もわずか5両の製造に終わった。・・・10個だと全部集めてもコキ110形2両半にしかならないんだが。
その15ftコンテナも20ftサイズに変換するためのM12B型無蓋コンテナという下駄を履かせてコキ110形以外にも搭載できるようにして運用されるなど、何のために作られたのか分からない散々な結果に終わり2012年3月に全廃された。本来の用途がなくなった現在はコキ106に混じって運用されている。しかし全国を飛び回り、色なんてザラザラに汚れて分からなくなるコンテナ貨車の中からコキ110を発見するのは運としか言えない。数千両存在するJR貨物のコンテナ車から5両しかないコキ110に出会えたらドクターイエローどころじゃない幸運が舞い込む・・・という都市伝説があってもいいと思うが、残念ながら知名度皆無なのでそんな伝説発生しないだろうなー。
コキ104・コキ106に続く汎用コンテナ貨車として、現在最新の形式がコキ107形である。2006年に試作車1両が製造された後、2008年からコキ106に代わって量産がスタートした。登場当初からグレー塗装。
当初はコキ50000形の完全置き換えのために登場したが、現在は初期のコキ100系全般の置き換えのため量産されている。
コキ106の量産の裏で登場していた超重量コンテナ用貨車・コキ200形の設計をフィードバックし誕生した。コンテナ積載の面ではコキ106の機能を踏襲しているが、車体側面が再びスリム形状となり補強も減った。
またデッキには従来車体側面にあった手ブレーキのハンドルがデッキに移設され、突放が可能になった入換え作業の便が向上しているという。
製造数は2020年時点で既に2000両を突破しており、初期車の置き換えが始まっているコキ104に代わって最大勢力になるのもそう遠い話ではないだろう。
濃硫酸・苛性ソーダなどの劇物を輸送する私有タンク貨車を20ftタンクコンテナで置き換えるため、2000年に登場した。コキ200が154両、コキ2000が2両製造。
コキ106・107には1個しか積めない、満載時の自重が24tに達する20ftタンクコンテナを2個積めるよう全長を15mに切り詰め、新型台車・小径車輪を採用し重量コンテナに対応させた。
コキ2000形はコキ200形の私有貨車版として計画されたものの、取り扱いが煩雑になるなどの理由から鹿島臨海鉄道所有車となったものである。あまり使用されないまま2004年に除籍されたが、現在でも神栖駅に留置されている。
積み荷の性質上、登場当初から2011年3月まで運用されていた三菱化学鹿島事業所-四日市コンビナート間や、北九州貨物ターミナル-南延岡間の液化酸化エチレン輸送列車などで見られる、コキ200形のみの専用編成で運行されることが多いが、コキ100系コンテナ列車の編成末端に1~数両だけ連結されていることもある。
各形式とも全国を結ぶコンテナ列車に使用され、自慢の俊足を遺憾なく発揮している。
最高時速110km/hや100km/hに設定された列車は、必ずコキ100系のみで組成され旧来のコキ50000系は編成に混ざらない。また海上コンテナは積載可能な形式がコキ106以降に限られる。
また近年ではコキ100系限定として海上コンテナのように背の高いコンテナや、コキ106(以降)限定として重量タンクコンテナが国内で誕生し、少しでも効率的な輸送を追求する流通事業者が運用している。
コキ100系はまさに現在の鉄道貨物輸送の主役と言えよう。
長らく事故以外での廃車はほとんど発生していなかったが、2010年代末から使い勝手に問題があるユニット式車両(コキ100・101、102・103、105)とコキ104の初期車は徐々に置き換えが進行している。
掲示板
11 ななしのよっしん
2015/09/10(木) 13:22:07 ID: KsSBrmiZ9A
12 ななしのよっしん
2018/10/22(月) 10:15:11 ID: duQa/5c7oH
120km/hで走ったら前を走っている新快速に追いついてケツを追いかけることになりそう
旅客各社の引いたスジの間に貨物が挟まるという都合上、旅客列車の平均速度を超えた速度を出すことはまずないので、110km/hですら運用上の余裕であって常に出すわけじゃないから
13 ななしのよっしん
2019/03/31(日) 17:05:59 ID: gAV0ecAaiE
この記事みたいな趣味関連の妙に詳しい記事すき
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最終更新:2025/06/14(土) 08:00
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