こんにちは、取締役の id:onishiです。
Hatena Developer Blogでは、新しい連載企画として、卒業生訪問インタビューをはじめます。創業からはてなの開発に関わってきた私 id:onishiと、CTOの id:motemen、チーフエンジニアの id:onkが、いま会いたい元はてなスタッフを訪問してお話を伺っていきます。不定期更新で続けていければと思いますので、ぜひお付き合いください。
初回にお迎えしたゲストは、現在シリコンバレーのスタートアップ企業Launchableでアプリケーションエンジニアをしている id:ninjinkun(敬称略)こと、浅野慧さんです。はてなブログで近況を定期的に発信してくれているので、身近に感じていましたが、しばらく直接お話できていないので、この機会にお話を聞きたいと思ってお願いしてみました。id:ninjinkunとの出会いは2008年の第1回 はてなサマーインターン。翌年春の新卒メンバーとしてはてなに入社していただき、2013年までの5年間、一緒にサービス開発をしていました。
いまはシリコンバレーの会社で主に英語を使って仕事をしているということなので、開発のやり方やコミュニケーションなどを含め、Launchable社の様子を中心に、思い出話も含めて懐かしくお話させていただきました。
浅野慧さん(id:ninjinkun) / Launchable Inc. Senior Software Engineer
2008年 はてなサマーインターン参加 / 2009年-2013年 はてな在籍
- ブログ:ninjinkun's diary
- Twitter:@ninjinkun
はてな卒業後のid:ninjinkun
id:onishi(以下「」) ごぶさたしています。はてなブックマークTシャツを着てきてくれている!!ありがとうございます。
id:ninjinkun(以下「」) もちろんです。お声がけいただいてありがとうございます。
ひさびさにお話したかったのでうれしいです。今日はよろしくお願いします。ちなみに僕もたまたまブックマークTシャツです。
ninjinkunはいまはLaunchableさんに所属されていますが、はてな卒業してからはFablicさん、一休さんを経て、3社目になるんですかね。節目節目にブログを書いてくれているので、振り返るときに便利!
ブログの通り、はてな卒業後は、株式会社Fablicで国内初フリマアプリ「フリル」(現:楽天ラクマ)の開発に携わりました。楽天に買収されて利益が出るまでの事業成長を見届けて、株式会社一休に転職。「一休.comレストラン」のアプリ開発、決済システム開発を手掛けて3年間在籍しました。
2020年3月からは、Launchableの日本法人に勤めています。
Launchableさんご紹介テキスト
- Launchable Inc.はデータ駆動アプローチによりソフトウェアの開発を効率化するSaaS、 Launchableを開発しています。Jekinsの生みの親である川口耕助らにより2020年に米国で創業されました。機械学習によりテスト実行時間を削減するPredictive Test Selectionをはじめとして、不安定なテスト(Flaky Test)の検出やテストの状況を可視化するダッシュボードなどを提供しています。
米国スタートアップ企業、Launchableの入社に至るまで
Launchableさんでninjinkunはどんな業務を担っているんですか?
僕が入った2020年3月は、日本法人を創設したばかりで、何もないところからのスタートでした。2020年末にようやく製品をリリースでき、それから約2年半経った現在では事業も拡充しています。僕の役割はユーザーインターフェース開発などのフロントエンド。サーバサイドをやることもありますが、ユーザーが触れる部分のUIを担当することが多いですね。
ninjinkunは、はてな入社以前にJTPA (Japan Technology Professional Association)さんのシリコンバレーツアーに参加してたのを覚えています。そのころから将来的にはシリコンバレーの企業で働くビジョンはあったんですか?
海外企業への憧れはずっとありましたね。修士1年時に、そのシリコンバレーツアーに参加したのですが、その時に現地ベンチャーの勢いに刺激を受けました。「大企業ではなくベンチャーに行こう」と決めたきっかけになり、そこから、はてなへの入社にもつながったと思います。
Fablicや一休は人のつながりからオファーをもらって入社しましたが、Launchableには自分から応募したんです。「2019年夏に立ち上がったスタートアップが、2020年春に日本でエンジニアを募集する」というニュースを見て、このチャンスは逃したくないとすぐに動きました。自分なりに英語の勉強は続けていましたし、チャレンジしてみようと思って飛び込みました。
テキストで書き残す、という共通点
ビジネス展開が最初からグローバル規模なところですね。ヨーロッパ、アメリカの大企業に導入してもらいながら製品開発していく環境なので、そこはこれまでと大きく違うかなと思います。BMWさんとか、有名なグローバル企業と一緒に製品をブラッシュアップさせていく経験ができています。
利用者数の違いを感じます。BtoCに比べると利用者数自体は少なくなりますが、一社一社と丁寧に向き合えるところはいいですね。業務用SaaSの進化は世界的にも激しく、BtoBサービスにおいても、カスタマ向けのサービスの質や使い勝手を求めるニーズは高まっていると感じます。
5-10年前と比べると業務用SaaSのUIやデザインというのは本当に進化しましたよね。その点ではこれまでの経験が活きる場面が多そうに思います。
操作性を高めるかという観点で、これまでのtoC向けの開発経験はとても役立っています。
Launchable Japanは日本人と外国籍メンバーが半々ほどという状態です。リモートワーク中心で言語も違うため、意識的にコミュニケーションの機会を増やそうとする雰囲気はあります。みんなで月に一回何かイベントをする、みたいな日があって、今朝はジャマイカ人の先生を呼んでダンスをするアクティビティをやってきました。
Launchableとはてなでいうと、「文章で残す」カルチャーは共通しています。Launchableでは、Confluenceという社内Wikiにドキュメントや議事録を集めながら仕事を進めています。時差もあるので非同期にコミュニケーションできるように、書いて残すというカルチャーは根付いています。はてなも、“何でも書いて残す”文化があるので、そこは同じですね。
そうです。不具合とかがあったときに、それを解消して仕事が終わるのではなく、そこから共有のためのドキュメントを書かないといけないのは、なかなか大変ではあります。書き残すことではなく英語が大変という意味なんですが。書き残すカルチャーははてな時代からいいなと思っていたので、積極的に続けていこうと頑張っています。
スマホアプリからWebフロントエンドへ
ninjinkunは、はてはでは主にスマートフォン領域を担当でしたが、現在はUI領域が中心なんですね。そのあたりの変遷について聞いてもいいですか?
UIにはずっと興味があったので、関心領域としては一貫しているかなと思います。Webのフロントエンドに軸足を動かしたのは、スマホアプリ市場の成長がゆるやかになったと感じたからです。スマホUIの経験を活かして、これからは別のことをしようと考えました。
現在は、去年まで一緒にやってきたデザイナーが辞めてしまったこともあり、デザイン業務も兼務しながら、さらにキャリアの幅を広げています。
フロントエンドとデザインは切り離せなくなってますから自然な流れに感じます。はてな時代も、はてなダイアリーの一部デザインをninjinkunが担当していたこともありましたね。
その経験も活きてるかなと思います。デザインはPMと一緒にやってるんですが、いまはそのPMと働けていることがすごく楽しいんです。
アメリカ人のとても優秀なPMです。エンジニアではないのですが、技術に関する知識もあり、僕らエンジニアが開発しやすくなるかも考えながら、顧客の声と仕様のバランスを決めてくれます。優秀なPMはスコープの広さが大事なのだと、学ぶことが多いですね。
id:ninjinkunがはてなに残してくれたカルチャー
はてな時代のninjinkunの活躍についてもちょっと振り返っていきたいと思うのですが。2008年の最初のインターンに参加してくれて、その翌年4月に新卒入社していただきました。その後もはてなは毎年サマーインターンを続けていて、今年で14年です。こうして続けられてるのも、最初のインターンで優秀な学生さんが参加してくれたおかげだなと感謝しています。
すごいメンバーでしたよね。一緒に参加していた人たちの技術力が高くて、自分との差を痛感しました。
入社後は僕が担当していた「運用チーム」(当時)に所属してもらいました。
「花形サービスの開発じゃないのか」と、実はちょっとがっかりしていたんです(笑)
はてなで働きたいという思いだけが通じて採用してもらったものの、はてなブックマークの広告用モジュール作成や、「簡単ログイン」などのシステムを支える仕事で、バグを出してしまったことも...
踏みそうな地雷はすべて踏んでた気がします。でも、onishiさんはいろんな領域に手を出す自分を信頼してくれて、任せてくれた。体当たりで勉強させていただいたと思います。エンジニアとしての学びの原点は、社会人最初の上司であるonishiさんにあると思ってます。
はてなでは、2010年5月の「はてなダイアリー」のバージョンアップから、大きな仕事をどんどん担当してもらうようになったのを覚えています。
はい、その後、位置情報共有サービスの「はてなココ」のiPhone対応や「はてなブックマーク」の iPhoneアプリ開発などを手掛けるようになりました。
さっきも少し話が出ましたけど、「はてなダイアリー」のリニューアルではスマホ用画面デザインを含めすべて作っていた。iPhone対応が遅れていたはてなで、「もっとやっていきましょう」とリードしてくれていたのがninjinkunでした。
そこに至るまでは、何をしても失敗ばかりでうまくいかなくて。周りの開発メンバーがみんなとても優秀で、話していることもよくわからない…と悶々としつつ勉強していました。自分の得意分野だと自信が持てるようになってからは、「スマートフォンエキスパート」と名乗り、名刺も作ってました。自分で肩書を作れる自由度の高さが、はてなの魅力ですよね。
そのカルチャーは今も続いていて、「フロンドエンドエキスパート」などいくつかの肩書がメンバーの希望で誕生しています。
あとは、はてなで初めてハロウィーンの仮装をやろうと盛り上げてくれたのもninjinkunでした。
いまのはてなはどう見える?
はてなを卒業して約9年ですが、社外から見て、今のはてなに伝えたいこと、もっと頑張ってほしいという意味での「喝」をぜひいただきたいです!
卒業してからもユーザーとして、はてなブログやはてなブックマークを使っているので、順当に進化しているなと感じています。ただ、僕がはてなにいた頃は、開発者がブログを書いてサービスや機能について説明するといった発信に力を入れていましたが、減っているのではないかと感じていました。ただ、最近ブックマークの告知とかを見ていると、それもまた変わってきていて、昔のような告知をまた意識しているのかなと期待しています。開発者とユーザーが意見を交わすコミュニケーションがオープンに見えるところが、はてなの好きなところ。そのカルチャーが、また復活してほしいと期待しています。
ありがとうございます。まさにブックマークは先行してそうしたアクションを増やしている最中だったので、しっかり見てもらえてることが分かってうれしいです。引き続き、がんばっていきます!
事業としてはBtoBがとても成長していると思いますが、コアはBtoCであるというメッセージをいつも受け取っていますよ、というのはお伝えしたいです。
一方で、BtoBのことが成長のわりにあんまり世に知られていないようにも思います。
広く知っていただくための発信がまだまだ足りてないねという話はしているので、もっと頑張らないとですね。ありがとうございます!
ということで、あっという間でしたけど、今日はありがとうございました。こうしてお話できて楽しかったです。また取材じゃない場で話しましょう(笑)
でもあんまり久しぶりな感じもしませんでしたね。現はてなメンバーやはてなの卒業生とは、今でもSNSやチャットツールでコミュニケーションしてて、いまのはてなの様子が入ってきやすいからかもしれません。
自分もそうですが、ほかの卒業生が、卒業後の組織にはてなのカルチャーをインストールしている話を聞いて、「いい環境だったんだな」と実感することが多いんです。テキストで書き残すカルチャーとかもそうですし、オンラインでスムーズにコミュニケーションすることとか、ツールの選定とか、エンジニアのレベルの高さとか。離れてから実感することも多かったので。今日はそういうことを振り返る良い機会にもなりました。
はてなでは、エンジニアには「ビジネスを大きく左右する力と責任がある」とたたき込まれました。技術力を過信せずに、エンジニア職以外のメンバーとコミュニケーションすることの大切さも学んできた。これからも“はてなカルチャー”を広め続けていきたいです。
id:ninjinkunこと浅野さん、ご協力ありがとうございました!次回の「はてな卒業生訪問企画」は2023年2月更新予定、担当はid:motemenです。
id:onishi
大西 康裕(おおにし・やすひろ)
取締役 組織・基盤開発本部長 兼 人事部長
2001年に創業メンバーの1人として有限会社はてな(当時)に入社。その後「はてなブログ」の立ち上げや事業化を指揮。はてなのサービス・システムの開発本部長を経て、2022年5月より現職。組織開発及びシステム基盤開発を統括する本部長と人事部長を兼任し、経験を活かした多角的な組織開発に取り組む。
Twitter: @yasuhiro_onishi
blog: 大西ブログ