the Yardbirds [ザ・ヤードバーズ]
origin: London, England, U.K.
Five Live Yardbirds [ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ]
1st studio album
released: 1964/12/04
producer: Giorgio Gomelsky
- Side one
- Too Much Monkey Business
- I Got Love If You Want It
- Smokestack Lightnin'
- Good Morning Little Schoolgirl
- Respectable
- Side two
- Five Long Years
- Pretty Girl
- Louise
- I'm a Man
- Here 'Tis
[comment]
ブルーズやR&Bをカヴァーしたライブ盤で且つデビュー・アルバム。
リード・ギターはエリック・クラプトン!
ライヴ盤をデビュー・アルバムにしたアーティストと言えば、MC5 [エム・シー・ファイヴ] や Jane's Addiction [ジェーンズ・アディクション] がいるのだが、その始まりは、この the Yardbirds なのではないだろうか?
シンガーのキース・レルフは何かにつけ歌が下手だと言われるが、著しく音を外すようなタイプではなく、個性に乏しいタイプのシンガーなのだと思う。
その代わりといっては何だが、ブルース・ハープは上手い。
エリック・クラプトンの若き日のライヴ演奏が収録されているので、ロックの史料として重要な価値を持つライヴ盤でもある。
For Your Love [フォー・ユア・ラヴ]
compilation album
released: 1965/07/05
producer: Giorgio Gomelsky
- Side one
- For Your Love
- I'm Not Talking
- Putty (In Your Hands)
- I Ain't Got You
- Got to Hurry (take 3)
- I Ain't Done Wrong
- Side two
- I Wish You Would
- A Certain Girl
- Sweet Music (stereo, take 3)
- Good Morning Little Schoolgirl
- My Girl Sloopy
[comment]
1曲目に収録されているヒット曲の "For Your Love" はサイケデリック・サーフ・ポップという感じであり、この曲での the Yardbirds はデビュー盤リリース時とは別のバンドになっている。
米国では、1stスタジオ・アルバムという扱いなのだが、その実態は、アーティストの意向が反映された作品ではなく、米国市場向けに編集されたコンピレーション・アルバムだ。
デビュー・アルバムがライヴ盤で、次がコンピレーション・アルバムというリリースの流れは何とも変則的だ。
エリック・クラプトンは "For Your Love" でバンドに嫌気が差して脱退しており、収録曲はクラプトンが弾いた曲と、後任のジェフ・ベックが弾いた曲が混在している。
ブルーズっぽい演奏も残ってはいるのだが、確かにこの方向性に舵を切ったバンドに対し、クラプトンが脱退を決意したのは仕方のないことだと思う。
Having a Rave Up with the Yardbirds [ハヴィング・ア・レイヴ・アップ]
compilation album
released: 1965/11/30
producer: Giorgio Gomelsky
- Side one
- You're a Better Man Than I
- Evil Hearted You
- I'm a Man
- Still I'm Sad
- Heart Full of Soul
- The Train Kept A-Rollin'
- Side two
- Smokestack Lightning
- Respectable
- I'm a Man
- Here 'Tis
[comment]
米国では、2ndスタジオ・アルバムという扱いなのだが、前作に引き続きコンピレーション・アルバムだ。
A面(Side one)はジェフ・ベック、B面(Side two)エリック・クラプトン、しかも、Five Live Yardbirds と被っている。
めっちゃ中途半端な編集だが、"I'm a Man" がベック版とクラプトン版であえて被らせて収録されているのは逆に嬉しい。
しかし、このアルバムの価値は "The Train Kept A-Rollin'" が収録されていることだ。
今となっては Aerosmith 版の方が有名だが、Yardbirds 版の "The Train Kept A-Rollin'" を聴くと、これが後のハード・ロックの原点であることが理解できるはずだ。
Roger the Engineer [ロジャー・ジ・エンジニア]
1st studio album
released: 1966/07/15
producer: Simon Napier-Bell, Paul Samwell-Smith
- Side one
- Lost Woman
- Over Under Sideways Down
- The Nazz Are Blue
- I Can't Make Your Way
- Rack My Mind
- Farewell
- Side two
- Hot House of Omagararshid
- Jeff's Boogie (Rechanneled)
- He's Always There
- Turn into Earth
- What Do You Want
- Ever Since the World Began
[comment]
英国における正式な1stスタジオ・アルバム。
リード・ギターはジェフ・ベック!
これは全2作のようなコンピレーション・アルバムではなく、the Yardbirds というアーティストの意向が反映されたアルバムだ。
後の the Jeff Beck Group ~ ソロのようなベックを中心に据えたアルバムではなく、バンドの一員としてのベックの演奏が記録された貴重なアルバムだ。
とは言え、やはり、ベックの自由奔放で切れ味の鋭いギターが目立つ曲が多い。
このバンドお得意のブルーズだけではなく、当時の流行だったインド風の曲やサイケな曲もある。
キース・レルフは声が細いのでブルーズには向いていないのだが、インド風の曲やサイケな曲にはけっこう合っている。
Little Games [リトル・ゲームズ]
1st studio album
released: 1967/07/24
producer: Mickie Most
- Side one
- Little Games
- Smile on Me
- White Summer
- Tinker, Tailor, Soldier, Sailor
- Glimpses
- Side two
- Drinking Muddy Water
- No Excess Baggage
- Stealing Stealing
- Only the Black Rose
- Little Soldier Boy
[comment]
英国における正式な2ndスタジオ・アルバム。
リード・ギターはジミー・ペイジ!(というか、このアルバムでのギターはペイジ一人だけであり、4ピース・バンドになっている)
Yardbirds 史上、ブルーズから最も離れ、且つ、最もポップなアルバムであり、最後のアルバムでもある。
前作から引き続きインド風の曲があり、これが後に New Yardbirds を経て、Led Zeppelin にも引き継がれていくことになる。
しかしながら、このアルバムに Led Zeppelin のプロトタイプ的な要素が有るかと言えば殆ど無い。
このアルバムはポップな Yardbirds を楽しむためのものであり、Led Zeppelin の源流を求めるためのものではない。
Birdland [バードランド]
studio album
released: 2003/04/21
producer: Ken Allardyce
- I'm Not Talking
- Crying Out for Love
- The Nazz Are Blue
- For Your Love
- Please Don't Tell Me 'Bout the News
- Train Kept a Rollin'
- Mr. Saboteur
- Shapes of Things
- My Blind Life
- Over Under Sideways Down
- Mr. You're a Better Man Than I
- Mystery of Being
- Dream Within a Dream
- Happenings Ten Years Time Ago
- An Original Man (A Song for Keith)
[comment]
92年に再結成して活動を再開した Yardbirds が、35年振り、2003年にリリースしたスタジオ・アルバム。
オリジナル・メンバーはクリス・ドレヤ (rhythm guitar) とジム・マッカーティ (drums) の二人だけだが、Yardbirds 往年の名曲が現代の録音技術で蘇っている(とは言っても録音は 2001~2003 なので今となってはけっこうな過去なのだが)
この手のアルバムは深いことを考えずに、ただただ楽しんで聴けばいい。
超有名なギタリスト達がゲスト参加しているのだが、注目すべきは "My Blind Life" でのジェフ・ベックの参加だ。
個人的には "For Your Love" でのジョン・レズニック (Goo Goo Dolls) 、そして、"Shapes of Things" でのスティーヴ・ヴァイの参加が嬉しい。
~ 総括 ~
the Yardbirds と言えば、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジという3大ギタリストが在籍していたバンドということばかりが取り沙汰され、バンドそのものの魅力が語られることは少ない。
たぶん、その理由の1つはオリジナル・アルバムが少ないからではないだろうか?
「自分のロック感を作ったアーティスト」と題して文章を書くにあたっては、そこそこ長い活動期間があって、リリースしたアルバムの枚数が多いアーティストを取り上げるようにしているのだが、あまりにも長すぎる場合は逆にちょっと取り上げにくい。
例えば、the Ventures は、間違えなく「自分のロック感を作ったアーティスト」であり、大好きなバンドなのだが、あまりにもディスコグラフィが膨大なので、どのような切り口で取り上げたらいいのか分からない。
今回取り上げた the Yardbirds は、64年にデビューし、68年に解散しているので、そもそもバンドの寿命そのものが短い。
この時代のバンドは1年に2~3枚のオリジナル・アルバムをリリースするのが普通だった。
そんな時代において、Yardbirds は、ライヴ・アルバムが1枚、スタジオ・アルバムが2枚という少なさである(コンピレーション・アルバムは除く)。
ロックの歴史に燦然と輝くような名盤を残していないので、上述のとおりバンドそのものの魅力を語ることが極めて難しため、the Beatles、the Rolling Stones、the Kinks、the Who、Small Faces あたりと比べると、どうしても地味な印象がある。
かと言って the Pretty Things のようなマニアックな人気があるわけでもない。
しかし、演奏技術、特にギタリストの演奏技術に関しては他のバンドを寄せ付けない凄味がある。
クラプトンもベックもペイジも、3人それぞれに上手いのだが、特にベックの上手さはこの時点で既に神懸っている。
ギターの音には歪みが無く、細くて軽い録音なのだが、演奏技術に関しては、後の the Jeff Beck Group 以降と同じくらいのレベルで弾いている。
もし、ベックは好きだけど、Yardbirds には手を出していないというのであれば絶対に聴くべきだ。
一般的に60年代における英国の3大バンドと言えば、the Beatles、the Rolling Stones、the Who だと言われているが、筆者にとっての3大バンドは、Small Faces、the Pretty Things、そして、the Yardbirds なのである。