証拠を見つけてから仰って
いつもの教授がまた何か言ってる件。
これはちょっと前のエントリで紹介した記事中のブラジルでの会議の話なんですが、このエセル・クエールという人は規制派として有名人で、未だに強力効果論に執着するも、「性犯罪者の4割は、子どもの写真やアニメを収集していたという調査もある」程度の根拠しか挙げられてなかったりする教授さん。わざわざ説明するのも野暮かもしれませんが、そもそも性的メディアが性犯罪を助長することを証明するためには、性的メディアを与えた集団とそうでない集団との間で性犯罪を犯す率に有意な差があるかどうかを検証すべきであって、性犯罪者を母集団として絞り込んで調べても意味無いです。性犯罪を犯すような輩にとって、抵抗力の低い弱者として児童を狙うのはその犯罪目的において合理的であって(ペドファイルでないチャイルドマレスター)、そのためにそういうメディアを持っててもおかしくない。強盗犯の4割がナイフを所持してましたとかそんなレベル。個人的感想で言えば「性犯罪者の4割程度しかそういうメディアに興味ないの?むしろ少なくね?」って感じ。
というか強力効果論はTwinkie defenseと表裏一体の主張であって、これに固執するってことは「性犯罪者が悪いんじゃないんです!彼の触れていたメディアが悪いんです!」という犯罪者擁護による罪状の減免をも(程度はあるにせよ)認めるってことにつながると思うんだが。児童保護を訴える人々がしばしば強力効果論を引き合いに出す思考回路が未だに理解できません。
まあ、強力効果論には科学的なエビデンスが無いことを本人も自覚しているのか、日本ユニセフ協会への寄稿においては、「子どもポルノをオンラインで見るということと、(実際の子どもへの)接触犯罪を犯すということとの正確な関係ははっきりしていません」と自白しています(続いて紹介されている研究例とやらは犯罪者を対象としているらしいので前述同様に根拠たりえません)。まあ日本ユニセフ協会のような団体にとっては都合のいい学者なので、こういう話題で名前を目にする機会が多くて、正直「他の学者さんはいないんですか?」と言いたいところ。
で、そのへんを踏まえて改めて上掲の記事中の主張
「英国などでは、子どもの性的な姿態や虐待を描いたマンガも違法としている。日本は実在の子どもの写真を法律で規制しているが、マンガやアニメは規制していない。その結果、問題のある画像が世界中に出回っている」
つまり、「漫画には被害者がおらず、また漫画が犯罪を誘発することも証明されてませんが、日本より性犯罪発生率の高いイギリス(日本の9倍)では漫画も規制しているので日本でも規制してください」という。これ学者の態度じゃなくて単なる活動家じゃん。従う理由も義理もないですよね?
いちばん最悪なのは、こんな根拠の無い話を国際的な会議でやっているということ。前の記事から指摘しているとおり、日本における性犯罪の発生頻度は諸外国と比べても低水準に抑えられているのに、なぜあえてその優良国を槍玉に挙げることに血道をあげるのか。それも実効性の疑わしい漫画規制なんぞについて。せっかく多くの国々が集まっているのにそんな議論をするのは、時間と金のムダであって、お前ら本当に児童を救ったり守ったりする気があるのかと。もっと有意義な議論にまわせよと。
ここまでくると、科学的根拠に基づかない規制推進を求める人物・団体は、もはや児童を守るどころか、児童を守る活動のためのリソースを浪費させ阻害する存在にしか思えませんね。