いきなり古典はハードル高い、「本の本」「100分de名著」をお薦めする
「古典を読むべきか」という問いが面白かった。
古典は基礎体力のようなものだからやはり若いころに読むのがふさわしいのだろうけど、年齢を重ねてからでは読む価値が薄いという意見を聞くたびに、うるせえなじゃあ読まねえよなんて思ってしまう。読むのはせいぜいラノベなおっさんが古典を読む価値はあるのだろうか?ていうかそもそも読めるのだろうか?
これへの応答[はてなブックマークコメント]がタメになる。説得力のある見解をコメントする人もいれば、答える形で優越感ゲームを仕掛ける人もいる。ここでは、わたしの考えをまとめてみる。
まず、「古典は若いときに読んだほうがいい」という意見について。
これは体力の話。ある種の勢いというか、読了したという自意識を求め、体力まかせのイッキ読みは、若いからできること。古典を読んだからエラいとかいう優越感(?)も、若いからもてるもの。では、トシとったら読めないかというと、そうではない。若さにまかせて読めないけれど、じわじわと読めばいい。むしろトシとって経験積んだ分、「わかりみ」が増してる。
次に、「古典はトシとったら読む価値が薄い」という意見について。
トシ関係ない。好きで読むなら価値のありなしはご自分で、と言うしかない。ただ、自信を持っていえるのは、人生は有限であること。ラノベに限らず、新しい本を新しいからという理由で追いかけるのは得策ではない。次から次へと出てきてキリがないし、新刊はあっという間に古くなるから。
一方、古典なら、時間の洗礼を受けている分、それを受け継いできた人によって「価値あり」と判断されたと言える。その「価値あり」は、これから読もうとする人にとって「価値あり」かどうかは、やっぱり分からないけれど、試しに手に取るだけの価値はあると思う。
また、これは文学に限るが、古典の名作のリストはアップデートされるということ。「世界名作全集」とか「読むべき名作」みたいなリストは、入れ替わりがある。時代の「価値あり」の変遷によって、日が当たったり陰ったりするのを見ても面白い。これがリベラルアーツだと話が違ってくる。プラトンとか四書五経とかのリストは変わらない。
文学限定だが、別冊本の雑誌の『古典名作・本の雑誌』が最新にアップデートされた古典名作リストだ。これが良いのは、そのジャンルの最高の読み手に任せているところ。海外文学、国内文学、エンタメと、鉄板から掘り出し物まで、「これは!」というものばかりが並んでいる。ざっと見て、興味の湧いたものをまず図書館で借りてみるのがお財布に優しい。その上で、きちんと読みたければ買えばいい。
書評の雑誌は、選書している「人」を選ぶ本でもある。わたしが好きな作品を紹介している「人」がお薦めしている、知らない本なら、きっと面白いだろう。まさに「わたしが知らないスゴ本を読んでいる人」を探す本になる。
また、ラノベ読みならラノベから入るルートもある。モチーフから辿って『這いよれ!ニャル子さん』からラヴクラフトとか、テーマから辿って『紫色のクオリア』からボルヘスみたいな併せ読みをすると楽しいかも(kaienさんがやっていなかった?)。
他に、Eテレの100分de名著シリーズがお薦め。古今東西の名著を、25分 × 4回 = 100分で紹介する番組だ。「読む」前に「観る」ことでウォーミングアップを図ったり、読み解きサポートやモチベを上げるのに良い。いまちょうど、スタニスワフ・レム『ソラリス』をやっているので、ぜひお薦め(初回からネタバレ炸裂しまくっているけれどwww)。
最後に。「古典」といっても、いろいろある。「本の本」や「100分de名著」であたりを付けたら、図書館で試そう。これも自信を持って言えるけれど、あなたに合うものは必ずある。ただ、出会えていないだけなんだ。
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