素敵な紋様の教習所を探してみよう
今回は自動車教習所の紋様を思う存分堪能することができた。とはいえ教習所の数は膨大であり、私はまだ神奈川県を中心としたごく一部の教習所しか見ていない。日本全国にはさらに魅力的な紋様を持つ教習所がきっと存在することだろう。
まだ見ぬ素敵な教習所紋様に思いを馳せつつ、作成したスタンプをブックカバーとか封筒とかに押してみたり、さりげなく使っていきたいと思う。
最近、自動車教習所の紋様がおもしろいことに気が付いた。教習所の紋様とはなんぞやと思われるかもしれないが、看板やロゴマークのデザインとかではなく、コースの形状である。
ある日のことである。「冬も旅行したいし、原付だけじゃなく自動車の免許も取りたいなー」と思った私は、近所にある教習所について調べてみることにした。その位置をGoogleMapで確認すると、教習所のコースがなんとも不思議な紋様を見せていたのである。
地上からだと普通の道路と同じように見える教習所のコースであるが、GoogleMapで見ると不思議な紋様を描いていることが分かる。
言わずもがな、自動車教習所は運転技術を習得するための場所である。コース内の島(正式名称が分からないので、当記事では格子状に区切られた部分を島と呼ぶことにする)にはクランクやS字カーブ、縦列駐車や車庫入れなど運転の練習に必要なコースが配されている。それが地図にも反映され、独特の紋様を呈しているのだ。
コースの形状に色を付けてみると、より紋様っぽく見えるようになった。直線と曲線で構成される紋様は、幾何学的ながらどこか原始の息吹を漂わせている気がする。
中南米の遺跡から出土しそうな、トラディショナル&トライバルな紋様である。
ま、まぁ、なにに似ているとかはともかく、自動車教習所というのはなかなかに面白い紋様を見せているものではないか。他の教習所はどうなのか、確認してみよう。
ふむ、コースを構成する個々の要素は先ほどと共通した部分が多いが、土地が東西に広く、各島に刻まれたコースも多い。実に良い感じの紋様である。こちらも色を付けてみよう。
特に目に付いたのが中央上下のTともトともいえる形状のコースである。これが連続していることで無機的な印象が強まり、右の突出部分が取手っぽいことも相まって鍵のように見えたのだろう。
ウォーキング中にこのコースを偶然見付けた時に「こんな住宅街に教習所があったのか」と驚いたところである。学科講習を行う教室は駅前の便利な場所にあるようだ。
特筆すべきはやはりそのコンパクトさであろう。コース内の島はわずかに2つ。教習に必要な最低限の要素で構成された、最小単位のコースなのではないだろうか。色を付けても紋様というよりアイコンやマークに近い感じである。
――と、このように私の身近にある3件の教習所を比べてみただけでも結構な違いがあるものだ。より好みの紋様を探すべく、様々な教習所を見ていこうではないか。
丸みを帯びた敷地内に、やはり丸みを帯びたコースが細かく配されている。パッと見て、ミトコンドリアとか葉緑素などを内包する細胞組織のような印象を受けた。
鋭角のカーブや二輪車の教習に使用する8の字型のコースなど新たな要素もあり、バリエーションが豊富なので幾何学性がやや薄れているのも有機的に見える要因だろう。
敷地が矩形に近い形状であり、島は左から右へ少しずつ小さくなっている。規則的で実用に特化した感じだが、少し硬めな印象でもある。人間であればキッチリ仕事をこなすタイプであるに違いない。
これは非常に機械っぽい。下に取り出し口がある自動販売機というか、あるいは左上に大きなカメラが付いたスマホというか。各島が小さくて紋様も細かく、まるでアプリのアイコンのようである。
正方形の敷地に微妙に大きさの異なる島が配置されている。左右に通る直線に勢いを感じる一方、上から下へいくにつれて余白(色の付いた部分)が増え、その辺りに動と静のコントラスト的な美しさが感じられる。「余白の妙」というべき紋様である。
子供が描く車のような、実にわんぱくな紋様である。今にも右に向かって走り出しそうではないか。各島のコース数も控えめで素直な印象だが、個人的にはもう少し芸術性が欲しいところではある。
道路を隔てて南に自動車用、北に二輪車用のコースがある教習所だ。8の字型のコースがちょうど目の位置にあり、胴体部分も十字架型に島が切られており骨組みだけのロボットみたいである。なんとも愛嬌があり、思わず手足を付け加えてあげたくなる紋様だ。
この紋様を見た時には思わず「おぉ」と唸りを上げた。東海道線の鉄道施設と河川によって囲まれた土地を巧みに利用して作られたコースであり、形状自体におもしろみがある。島のバランスも良く、引き付けられる魅力がある。
こちらも東海道線と河川に囲まれた自動車教習所だ。奇妙な形状と紋様であり、見方によってはヤギの顔のように見えるし、腕をL字型に伸ばした姿のようにも見える。いずれにせよ、コミカルでひょうきんな印象だ。
神奈川県民にとって運転免許と言えば二俣川のここである。自動車教習所とは少し違うが、神奈川県の運転免許を統括する場所なだけあって、巨大な運転技能試験コースを備えている。
近年コースの改修が行われたらしく、GoogleMapと衛星写真では形状が少し異なる(右側が削られ、下側が拡張された)。ここは新しい方を採用すべきと考え、衛星写真準拠で色付けをした。
規模こそ大きく様々な紋様が見られるが、いかんせん、キレイにまとまりすぎていていまいちグッとこない。ただたくさんの島が整然とならんでいるなぁという感じで心にフックしないのだ。どうやら大きければ良いというものでもないらしい。
こちらも自動車教習所ではないが、佐川急便の研修センターである。ウォーキング中にたまたま見かけ、大手の宅配会社ともなれば自前で研修コースを持っているのだと感心したものだ。
一般向けではないからかGoogleMapには紋様が表記されておらず、こちらも衛星写真準拠である。
おぉ、これはおもしろい。中核を成す主要部の左右にサブ的な島が連なっており、右手を下げ、左手を上げたハニワみたいだ。丸みがあってかわいらしくもある。紋様も多種多様ながら統一感があり、コミカルであるが良くまとまっている。かなり好きなタイプだ。
これまで神奈川県内の自動車教習所を見てきたが、全国にはまだまだたくさんの教習所が存在する。より魅力的な紋様を求めて探索の範囲を県外にも広げたところ、目に留まったのがこの教習所だ。
郊外の教習所であるためかGoogleMapには紋様が表記されておらず、これもまた衛星写真準拠である。
複雑な形状の土地になんとかコースを作った感じであるが、それが功を奏して複雑かつトリッキーな紋様となっている。
じっと見ていると、まるで腰をくねらせたセクシーポーズの美女のように見えてくる。よくよく見ると紋様にセクシーのアルファベット4文字が含まれているような気さえする。これは日本一セクシーな教習所紋様に違いない。
これまで様々な自動車教習所を見てきたが、その金字塔といえるのがここである。なにはともあれ、紋様を見て頂くのが早いだろう。
今回私が見た中で最も緻密な紋様の教習所だ。各島に刻まれたコースは幾何学的でありながら有機性が感じられ、ポリネシアの伝統的なタトゥーのようである。
自動車用の大きいコースと二輪車用の小さいコースを上下に組み合わせた形状も素晴らしく、デフォルメされた神像のようでさえある。これぞ最高クラスの教習所紋様といえるのではないだろうか。
さて、これまで計15箇所の教習所を紹介したが、いずれも異なる風情があって素晴らしい紋様ばかりであった。
せっかくなので、これらの紋様をなにかのデザインに活かすことはできないだろうか。――と考えたところで、スタンプにしたら良いのではないだろうかと思い立った。
LINEとかのやつではない、物理的なスタンプである。お気に入りの紋様を消しゴムに彫れば、紙や布に押し放題だ。
生まれて初めて消しゴムスタンプというものを作る私は、この時点で既にふたつのミスを犯していた。
ひとつは、消しゴムの粉を落とさなかったこと。セットに付属している練り消しを使って消しゴムに付いている粉を取らなければ、図案がうまく転写できないのだ。
もうひとつは、図案のサイズが小さすぎたということ。不器用な私にとって、この細かさは文字通り手に余るものであった。
最初に作ったものとはいえ線がガタガタ、クランクがはみ出ていたりするし、元の図案のスマートなカッコ良さがかけらもない。完全に私の力不足である。
この失敗を反省しながら2つ目に取り掛かろう。とりあえず、図案はかなり大き目にする。
図案を大きくしたのに加え、デザインナイフや彫刻刀の扱いに慣れてきたこともあり、2つ目、3つ目は手前味噌ながらかなりうまくできたと思う。
さて、作成したこれらのスタンプを何に使おうかと部屋を見渡すと、資料入れに使っている無地のトートバックが目に留まった。
今回は自動車教習所の紋様を思う存分堪能することができた。とはいえ教習所の数は膨大であり、私はまだ神奈川県を中心としたごく一部の教習所しか見ていない。日本全国にはさらに魅力的な紋様を持つ教習所がきっと存在することだろう。
まだ見ぬ素敵な教習所紋様に思いを馳せつつ、作成したスタンプをブックカバーとか封筒とかに押してみたり、さりげなく使っていきたいと思う。
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