スプラッシュ・マウンテンは楽しい
スプラッシュ・マウンテンはディズニーランドの人気アトラクションだ。
高いところからすごい速さで水場に落下し、びしょ濡れになるのが特徴の「急流すべり」的なやつである。あれが好きだ。
先日ひとりでディズニーランドに行ったときも、入園するなり最初に乗った。
「シングルライダー」というおひとり様優遇制度があるにもかかわらず、一般の列にひとりで並んで、しっかり2時間並んだ。そのくらい好きである。
(シングルライダーを利用しなかったのは色々な心の屈折のせいなので触れないでおく)
スプラッシュ・マウンテンの肝となる概念は、「勾配を滑り落ちたとき、水がかかる」だ。
スピード感と、水に濡れるさわやかさ。今回はその“概念”を持ち運んで身につけられるようにしたいのだ。
スプラッシュ・マウンテンをウェアラブル化した
まずは完成形を見てほしい。
これが今回開発した、ウェアラブル型スプラッシュマウンテンだ。
水と、電動スプレー、そしてそれを制御する回路でできている。
これを画板のように胸のあたりに身につけて、滑り台を滑る。
そうすると滑り台がスプラッシュ・マウンテンになるのだ!
ウェアラブル化の過程をどうぞ
電動スプレーというものがある。
トリガーを引いている間、液体が噴射され続ける便利アイテムだ。
これがウェアラブル型スプラッシュ・マウンテンの「水をかける」心臓部分になる。
(上のスプレー部分だけを目当てに買ったら、薬剤の入ったボトル部分が余ってしまったので、もう1セット買ってお風呂掃除に活用しようと思う。)
で、このスプレー、電動で噴射し続けられるのは便利だが、滑り台を滑る自分自身でトリガーを引くと、きっとみじめな気分になるだろう。
さらにこのスプレー部分を改造して、自分でトリガーを引かなくてもタイミングよく水が出るようにしたい。
そこで今回用意したのがこのデバイスだ。
これを電動スプレーの回路にかませる。
そうすると、電動スプレーをリモコンで遠隔操作できるようになるのだ。
これで、滑り台を滑っているとき、誰かにリモコンのボタンを押してもらえば、「勾配を滑り落ちたとき、水がかかる」ことになる。
実をいうと、当初はこの部分に加速度センサーを使い、全自動で制御しようと思っていたが、電子工作に詳しいテクノ手芸部のよしだともふみさんにアドバイスをいただき、この形に落ち着いた。
確かによく考えると、加速度で制御をした場合、歩いているだけでスプラッシュしそうだ。それは困る。
さて、スプレー部分の内部はこのようになっている。
もっと複雑な構造をイメージしていたが、電池・モーター・ギアだけでできていた。
トリガーを引くとモーターが回り、ギアが回転することでスプレーを噴射しているのだ。
さっそくそこに受信機をかませてみた。
リモコンを操作するとしっかり動く。感動である。
これでスプレーのリモコン制御はクリアできた。
ウェアラブル型スプラッシュマウンテン、心臓部は完成!
あとは、赤色のままでは無機質すぎるので、塗装を施し…
画板にのせて、「いばらの茂み」を添えたりして…
ウェアラブル型スプラッシュマウンテン、爆誕!
いてもたってもいられず、ディズニーが好きな大学の後輩に「スプラッシュマウンテン作った!」と伝えたところ、「どこのスプラッシュマウンテン作ったんですか?! 東京?!」と興奮させてしまってなんだか申し訳なくなった。
「ごめん、作ったのは概念なんだ」と返すしかなかった。
でも後輩は「いま、おうちでディズニーとか流行ってますもんね、これもおうちでディズニーですよね」と必死にフォローしてくれた。いい後輩!
公園でスプラッシュしてみる
というわけで、滑り台を求めて公園にやってきた。
さっそく滑ってみよう。
めちゃくちゃ楽しい!!
水を噴射する操作は人に任せてしまっているので、意外なタイミングで水がかかってびっくりする。「うわぁ!」と声を上げて興奮してしまうのだ。
水がかかってからの滑りもまた爽快だ。水に風が当たって、涼しくて気持ちいい。最高か。
「スプラッシュ・マウンテン」を夏の季語にしてもいいんじゃないかとさえ思う(字余り)。
こうやって考察してみるとどうだろう。
「楽しい」の要素が本家スプラッシュ・マウンテンとほぼ重なっているのではないだろうか。
ただ、これが楽しいと感じているのが自分だけだと少し寂しいので、友人にも試してもらった。
総じて、本家スプラッシュ・マウンテンでの記念撮影のときと同じような顔をしている。
(本家スプラッシュ・マウンテンでは、落下の瞬間に顔写真を撮影されていて、帰りに購入することができるシステムがある)
友人たちもしっかり楽しんでいる。笑顔がはじけ飛んでいておもしろい。
よしよし。もしかしてすごいものを発明しちゃったのかもしれない。
どうせならストーリーに沿って
ディズニーランドに行ったことのある方はわかると思うが、本家スプラッシュ・マウンテンには物語性がある。
うさぎのキャラクター「うさぎどん」が主人公の、冒険の物語なのだ。
工作の段階で触れた「いばらの茂み」も、この物語の鍵となっている。
どうせならそのストーリーに沿って、リアリティを追求したい。
やってみよう。
そんな旅の途中、ヒールである「くまどん」「きつねどん」に追い回されてしまう。
そしてついに。
うさぎどんは、くまどんたちに捕まってしまう!
うさぎどん、絶体絶命の大ピンチ!
ここでうさぎどんは一言。「いばらの茂みにだけは投げ込まないでくれ!」
その一言を聞いたくまどん達は、うさぎどんをいばらの茂みに投げ込んでしまう。
…が!
そのいばらの茂みは、なんとうさぎどんの故郷。
うさぎどんは機転をきかせ、彼にとっての「笑いの国」である故郷に、無事に帰ってきたのだ!
というストーリーである。
追体験だ!
ストーリーを追うとなおさら楽しい!
なんでもスプラッシュマウンテンになるのか
「滑り台をスプラッシュ・マウンテンに変える」のは成功したと言ってもいいだろう。
楽しかった。
では滑り台以外の遊具ではどうなるのだろう。試してみよう
ブランコ
こいでいる途中に断続的に水がかかるように操作してもらった。
ブランコの速さと水の冷たさが相まってとても気持ちいい。
ただ、基本的にずっと動いているのでスプラッシュ・マウンテン感はまったくない。
別のベクトルで楽しい遊具になった。
鉄棒
逆上がりで1回転できれば「レイジングスピリッツ」だなあと思ったが、機材がごつすぎて無理だった。
濡れながら棒を掴んでいる人でしかない。意味不明だ。
座るとゆれるやつ
支えがバネになっていて、前後にゆれるやつだ。
が、遊具自体が劣化していたのか、あまりゆれなかった。
必死に前後に体をゆらすものの、遊具はゆれず、顔は濡れていく。
なんだか惨めな気持ちになった。もっとゆれる遊具を選んだほうがいい。
いくつか遊具を試してみたが、最もスプラッシュ・マウンテンなのはやはり滑り台だった。なんでもかんでもスプラッシュ・マウンテンに変えてしまうのは難しいようだ。
でも滑り台はスプラッシュ・マウンテン!
今年の夏はこれで決まり
この原稿を書いている途中、大きなニュースが入ってきた。
本家スプラッシュ・マウンテンが点検のため、今年の9月3日まで休止となるとのこと。
今年の夏は、東京ディズニーランドに行ってもスプラッシュ・マウンテンは動いていないのだ。
夏の季語にしてしまいたいスプラッシュ・マウンテンだが、動いていないのなら仕方がない。
ウェアラブル型スプラッシュ・マウンテンを持ち運んで、そこらの公園で気分を味わうしかないじゃないか!
それにしても、滑り台がスプラッシュするだけで楽しくなるだなんて大きな発見だった。
オリエンタルランドさん、ウェアラブル型スプラッシュ・マウンテン、商品化のチャンスですよ!