特集 2019年9月9日

あの清瀬の名店「みゆき食堂」の2階がこうなっていたとは

西武池袋線の清瀬という駅の近くに、創業から約50年になる老舗の定食屋があります。
店名を「みゆき食堂」といい、なんでも安くてボリュームたっぷり、さらにお酒やおつまみメニューも膨大で、飲み屋としてもかなり素晴らしいお店。
人気TV番組「孤独のグルメ」や「吉田類の酒場放浪紀」をはじめとして、各種メディアに取り上げられることも多く、沿線屈指の有名店でもあります。
僕はここが大好きで、何年も前から通っていたんですが、そんなお店に関して、割と最近になって気づいたことがあるんです。
それは、「実は2階がカラオケ居酒屋になっているらしい」という新事実。
これだけの有名店でありながら、2階がどうなっているかの情報はネット上などにもほとんど見当たりません。
これ、行くしかないでしょう。
 

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:焼酎採集


まずは1階「みゆき食堂」へ

「みゆき食堂」

というわけでやってきました。
この味わい深き建物、左側に「やきとり佐賀屋」というお店がありますが、こちらはテイクアウト専門の焼鳥屋さんで、道路に面して売り場と焼き場があるのみの別のお店。その横にみゆき食堂の入り口があり、中へ入ると、佐賀屋のうしろ側もみゆき食堂のスペースになっていて、店内はけっこうな広さです。
営業がちょっと変則的で、定休日が日、月、木曜日。
営業時間は、11:45~23:00(22:30ラストオーダー)となっております。

今日は夕方の16時頃にやってきたんですが、あらためてその人気ぶりを実感。
だって、

その時間からず〜っとこんな感じですから

しかも基本的にみんなあれこれおつまみを頼みつつお酒を飲んでいる。
清瀬の人たち、スタート早!

さて、さっきから有名店と連呼していますけども、みゆき食堂がどんなお店かを知らない方も、もちろん多いかと思います。
そこで今日は、そちらの魅力もレポートできればと、まずみゆき食堂へおじゃましました。
メンバーは、編集部古賀さん、そして清瀬がご近所の知人編集者Tさんと、野島慎一郎さん。

野島慎一郎さん

ちなみに野島さんは、ライターや漫画家として活躍しながら、「世界一美味しい『どん二郎』の作り方」という、インパクト絶大なB級レシピ本を出版されたりもしている、けっこう古いお友達。

では、我々もかんぱ〜い!

見てくださいこのたっぷりとしたホッピーのナカの量=良い店の指針。

みゆき食堂といえば、

壁を埋め尽くす短冊メニュー

も圧巻。
何時間見ていても飽きることがなく、その膨大な量は、逆にメニューを選ぶ気持ちを放棄したくなってしまうほど。
年季の入った飴色の短冊は長年のお値段据え置き加減を、鮮やかな黄色い短冊はメニューの新陳代謝っぷりを表しており、見るたびに、なんて素晴らしいお店なんだろうと感動してしまいます。
で、ご覧の通りどれもこれも安い!

さらに、

「まいたけ天ぷら」(350円)
「ピーマンの天ぷら」(300円)

何を頼んでも盛りが良すぎ!
マイタケにしろピーマンにしろ、八百屋さんで買ってきた1袋ぶんぜんぶ揚げてないっすか? っていうボリューム。
揚げたてなのでそりゃ〜も〜うまいです。

焼鳥(1本120円)

焼鳥を頼むと、表の佐賀屋から焼きたてがテイクアウトされて届くという合理的なシステムなんですが、専門店のものだけあってこれも最高に美味しい。

これは昔食べた「カツカレー」(800円)の写真

でかい皿! でかいカツ! 大量のカレー! 至福。

地元民である野島さんにおすすめメニューを聞いてみたところ、「僕はここでは、もっぱら『あげ出しどうふ』ですね」とのこと。
揚げ出し豆腐? なんてあるの? 視界に入ってなかったな〜。

「あげ出しどうふ」(200円)

そしたらこれが、確かにすごかった。
濃い色のツユに浮かんでいるのは、なんとパン粉をつけて揚げられた、豆腐のカツ!
外はカリッ、中はトロ〜で、香ばしさとしっかりとしたダシのハーモニーが、完全に未体験の味わい。
さすがの地元民情報ですね。

さて、久々のみゆき食堂を堪能し、だいぶ満足しました。
そろそろお会計をしようと思うんですが、この店で忘れられないものといえば、

20円ぶんのサービス券

もありました。
もともとがめちゃくちゃ安いのに、会計をするたびにバサバサとくれる。
で、これを使ってお会計をすると、

またたっぷりもらえる

その質感を見るに、ただ渡したぶんが返ってきただけなんじゃないかとおも思える大ざっぱさが最高です。

店内にはお店を訪れた有名人のサインもたくさん
いったん広告です

いよいよ未知の2階ゾーンへ突入

さて、もはやここで記事を終えてしまってもじゅうぶんなインパクトだった、みゆき食堂のご紹介でした。
が、本題に続きます。
先ほどの店頭の写真、よかったらもう一度見返してもらえますか?
右から、みゆき食堂、佐賀屋とあって、その左側、さりげな〜く擬態するように、もうひとつ入り口らしきものがあるでしょう?

ここです
「カラオケ居酒屋みゆき」営業中

長年みゆき食堂に通っていて、この入り口と看板に気づいたときは、自分の目の節穴っぷりを反省しましたよ。
飲み仲間の間では、「あれ? こんな場所にこんな渋い店あったっけ?」というタイプの酒場を「見える人にしか見えない店」と称しているんですが、ここなんかまさにそれ。

そして一度見えてしまうと
強烈に存在感を発揮してくる

しかもですね、前回来た時、こんな情報にも気づいたんです。

みゆき食堂の壁

「とんかつ定食」のメニュー札で完全に隠れてるけど、

「お知らせ 食事の後で二階のカラオケ利用の場合 ビール or ウーロン or サワー付で1000円」

と書いてあるんですね、実は。
表の看板にあるシステムと比べると、だいぶお得。
なんだか街を舞台にしたリアル謎解きゲームみたいになってきてますが、いよいよ未知の2階ゾーンへ足を踏み入れてみることにしましょう!

細い階段を上がるとそこには……
ぜんぜん予想してなかった感じの風景が!

年季の入りまくった1階とは違い、小ぎれいな店内には、お客さんが誰もいません。
というか店員さんらしき人もいません。
一通り店内を見回してみたところ、

インターホンを発見

これを押してみると「あ、お客さん? はいはい」という感じで、オーナーさんがやってきて、あれこれとセッティングをしてくださいました。

具体的なシステムは看板通りなのですが、1階からの流れで来た場合は、やはりひとり1000円。
これは「下から来ました」と、ただ申告すればいいそうです。
で、

烏龍茶とか
お水とか氷とかの

焼酎を割るセットと、我々4人に対してボトル1本の焼酎がテーブルにやってきて、これも料金内。
それが飲み放題。
みゆき食堂の壁にあった「ビール or ウーロン or サワー付」とは違うけど、むしろお得感はだいぶ増しています。
っていうか、最初に「ビールがいいです」とか申告するとそうなるのかな?
ともかく、何人でボトル何本と決まってるわけでもなく、けっこうアバウトな感じっぽいです。
時間制限もないようだし、「とにかく、下から来たなら1000円で好きにやっていいよ」というような。

サービスのおつまみもひとり1皿

オーナーは準備が終わるとまた1階に戻っていってしまうので、

食器なども棚から取って自由に使うシステム

で、さらに耳寄り情報なのが、

基本500円均一のおつまみメニュー

1階で作ってもってきてくれるんだそうで、つまりはみゆき食堂の料理がそのままここで味わえるということ!
っていうか、ここに書いてなくても、下にあるメニューならなんでも頼んで大丈夫なんだそう!
もちろん、みゆき食堂の渋い味わいを感じながら飲むのは最高なのですが、人気店ゆえ、あまり長いするのも気がひける。
そんなとき、早めに上に上がってきて、余裕のある店内でゆっくりと名店の味を堪能するという選択肢もあるというわけなんですね。

しかもですよ。

カラオケ居酒屋なので、ステージでカラオケも歌える
もちろん我々も
堪能しました
常連さんも
ちらほらとやってきますが
その歌を聴きながら飲むのもまた良し
何の歌の決めポーズだろう? とにかく楽しかったことだけは覚えてます

聞けばカラオケ居酒屋みゆきは、長年空きスペースになっていたみゆき食堂の2階部分を、20数年前に改装して始められたお店だそう。

お客さんが来たらオーナーが対応し、あとは基本的に自由にやってもらえば、アルバイトも雇わずに営業できるということで、このようなスタイルになったんだとか。

なので、営業時間もみゆき食堂とほぼ同じで、正午からここで飲むこともできるそう。

あぁ、次からはみゆき食堂とこの2階、必ずセットで来ちゃうなぁ。

 

それにしても、あの名店の2階がこうなっていたとは……。

オーナーさん、また来ます!
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