ミニサイズメニューの裏にある店側の「やさしさ」
10軒プラスαの飲食店を巡ってわかった。「もうちょっと食べたいな」という時点で完食する喜び。そして、こうしたメニューを導入する裏にある店側の「やさしさ」。
話は飛ぶが世界は今、SDGs(持続可能な開発目標)に向かって走り出している。その取り組みのひとつが食品ロスの軽減。こうした追い風を受けてミニサイズメニュー、ますます増えていくかもしれない。
年々、食が細くなってきた。先日の健康診断では173cmの身長に対して、体重は55kg。ちょっとマズい気がする。しかし、食欲が湧かない。正確に言えば、食欲は湧くがたくさん食べられない。
結論としては、飲食店に少なめのメニューがあればよい。今回は「ミニ」「小盛」「ハーフ」「Sサイズ」などのメニューを提供する10軒を巡った。同様の悩みを抱える方々の参考になれば嬉しい。
最後に大盛りを頼んだのはいつだろうか。サービスとして「大盛り無料」を掲げる飲食店も多いが、自分には響かない。
この企画を思いついたきっかけは、西永福にあるネパール料理店「ネパーリチューロ」で見たメニュー。
メニューを開く。カレーはLサイズとSサイズがあった。
カレーを食べたいが一人前はいけるだろうか。残すのも申し訳ない。今まさにそんな心境のときに、この心配りはありがたい。
カトマンズ出身だという店員さんにSサイズメニューを導入した理由を聞くと、「いろんな種類を食べたい人がいるから」。なるほど。
この店を1軒目のナイスミニメニュー店に認定しよう。
2軒目は二子玉川の「100本のスプーン」。
ここは、いわゆるお子様メニューではなく、子どもも大人と同じものを食べてほしいという思いからハーフサイズの料理を用意している。もちろん、大人も注文できる。
さて、何をいただこうか。どれも美味しそうだが、迷った末に「花咲オムライス」にした。
やがて運ばれてきたハーフは予想以上にボリューミーだった。というよりは、同行してくれた編集部・橋田さんが頼んだフルが大盛り気味なのか。
さらに、ランチタイムはサラダも付いてくる。参考までにと思い、店員さんに「ハーフを残した人はいますか?」と質問。答えは「いませんね(笑)」だった。
結果的には問題なく完食。ふわふわの半熟玉子にリゾット風ライス、特製のデミグラスソースも含めて非常に美味でした。
3軒目は都内を中心に100店舗以上を展開する「名代 富士そば」。ミニ丼やミニカレーとそばのセットは有名だが、中にはミニカレーが単体で注文可能な店舗もある。
ほうれん草おひたし(110円)も追加しちゃいますよ。単品のミニメニューがなかったらビタミンAを摂取できなかった。
美味い。なんというか“ちょうどいい”カレーなのだ。ごちそうさまでした。
続いて向かったのは「餃子の王将」。いつの頃からか、一部のメニューにジャストサイズ、いわゆる小盛メニューを導入した。
公式サイトにはこうある。「ボリュームたっぷりな料理も王将の魅力のひとつですが、時にはボリュームを抑えて注文したいこともありますよね」。ありますあります。
醤油豚骨味ラーメン(385円)を注文した。
お腹に余裕があるときは、これにジャストサイズの餃子(143円)を付ければ完璧ではないか。
5軒目は、みんな大好き「吉野家」。
ミニサイズのメニューを掲げる牛丼チェーンは多いが、吉野家では小盛、並盛、アタマの大盛、大盛、特盛、超特盛の6種類から選べる。
注文したのは、もちろん牛丼の小盛(365円)。
はい、6軒目です。丸亀製麺と並ぶ2大うどんチェーン、「はなまるうどん」だ。
ちなみに、はなまるうどんは地下に店を構えるケースが多いが、これは賃料の節約とともに外から見られるのを嫌う女性客への配慮らしい。うどんの小サイズを用意しているのも同様の配慮のようだ。
小サイズは594円。
グランドメニュー以外で小盛を注文できると得した感が強い。
7軒目は「熱烈中華食堂 日高屋」。ランチ、餃子、生ビールでも1000円でお釣りがくるという「ちょい飲み」を推している。
男性グループの1人が「唐揚げ定食、ご飯大盛り、マヨネーズ多めで」と注文していた。そんな対応もしてくれるのか。
半ラーメンやタンメンの麺少なめなどがあるが、半チャーハンを単品(270円)で頼めるのは珍しいかもしれない。絵的にちょっと寂しい気もするが、それで行こう。
あっさりとした味付けだが、胡椒、ラー油、お酢、醤油で味変が楽しめる。
エンジンがかかってきた。お次はデカ盛りで有名な「伝説のすた丼屋」だ。
ここは普通盛ですら、かなりの特大サイズ。100円引きのミニサイズを注文できるのは嬉しい。
20年以上前から慣れ親しんだ味。時々、無性に食べたくなる。昔は普通盛を食べていたが、今はミニで十分だ。
にんにくと豆板醤を乗せればゴングが鳴る。ネットに出回っているレシピをもとに自分でも何度か作ってみたが、本物の味は出せなかった。
偶然の出会いもある。渋谷の宮益坂を歩いていたときのこと。「釜揚げうどん そば 澤乃井」という看板が目に入った。
ミニ丼単品メニューがあった。しかも、価格が高騰している鰻丼が730円で食べられるというのだ。
どんなに小ぶりでも、この価格なら文句を言うまい。すると、運ばれてきた丼に存在感のある鰻が鎮座していた。
よく見ると店内の壁には著名人のサイン色紙がびっしり。
あとで調べると、釜揚げうどんの元祖とされる宮崎うどんの名店で修業した店主が昭和59年に創業した名店だった。リピート決定。次は居酒屋として利用させてもらおう。
ラストの10軒目は意表を突いてデザートを堪能した。向かったのはファミレスチェーンの「COCO'S」。
ここのココッシュは熱狂的なファンが多く、一時期メニューから消えたときはネットが騒然となったほどだ。
ちなみに、ココッシュとは温かいデニッシュに冷たいアイスと生クリームを乗せたCOCO'Sのオリジナルスイーツ。
番外編もある。数年前からファミレスで仕事をすることが増えたが、ミニサイズメニューにはお目にかからない。しかし、ファミレスの雄たるロイヤルホストなら融通を利かせてくれるのではないだろうか。
以前、別の店舗でワインを飲みきれなかったとき、ダメ元で「持ち帰れますか?」と尋ねたところ、「テイクアウト用の容器がないので」と断られたことがある。しかし、数分後、店員さんが持ってきたのが下のカップ入りワイン。
そんなことを思い出しながら、朝の和定食(759円)をオーダーした。「半分ぐらいのサイズってできますか?」と添えて。「ご飯をですか?」「いや、全体的に」「目玉焼きもでしょうか…」「可能な範囲で結構です」。
困らせてしまって申し訳ない。運ばれてきたのは「頑張ってはみました」という感じの量だった。
しかし、ロイホの焼き鮭は身が柔らかくて皮はパリパリ、本当に美味しいんですよね。
ごちそうさまでした。そして、ありがとうございました。
10軒プラスαの飲食店を巡ってわかった。「もうちょっと食べたいな」という時点で完食する喜び。そして、こうしたメニューを導入する裏にある店側の「やさしさ」。
話は飛ぶが世界は今、SDGs(持続可能な開発目標)に向かって走り出している。その取り組みのひとつが食品ロスの軽減。こうした追い風を受けてミニサイズメニュー、ますます増えていくかもしれない。
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