人生は短いからこそ、妥協が大切だ
僕らの人生は短すぎる。全て最初からプレーしてクリアするのは難しいから、最後だけプレーしてエンディングを見て達成感を味わうだけでも、ちょっとは慰みになった。
そしてこんなプレーですら達成感を味わえる、ドラクエシリーズのエンディングの作り込み度にあっぱれと言いたい。
僕らが魅了された国民的RPGゲーム、ドラクエシリーズ。でもクリアできたタイトルって、意外と少ないのではないだろうか。
かく言う筆者もちゃんとクリアできたのはドラクエ4だけ。一生制覇できず死ぬ前に、冥土の土産にクリアしてみたい。ならば、
など、とことん「ズルをしまくる」ことで、限られた〆切前の時間の中で、ドラクエをどこまでクリアできるのか。やってみた。
まずはドラクエを買い出しにと、秋葉原にやってきた。
生産本数の多かったドラクエシリーズは安く投げ売りされていることが多いと聞いていたが、思ったより値段が高い。
だがもう乗りかかった船なので、自腹覚悟でいろいろ購入した。
”ズルいプレー”のしやすいドラクエ1~6から、どうにか300~500円台ぐらいのソフトを探して買った。当時あれだけ欲しくても購入できなかったドラクエを、いくつも買えてちょっと感慨に浸る。
まずは1986年5月発売、ドラゴンクエスト(1)からやっていこう。微妙に筆者と世代が違うので、ほとんどプレーしたことがない。
今回は「ズルをしてでもクリアする」である。セーブ機能が普及する前でふっかつのじゅもん(パスワード)が使われている1と2。この2つに関しては、最強パスワードを使わせてもらおう。
そのため、ドラクエ1の最高レベルである30からいきなりスタート。あとはボスを倒すだけのお膳立てまでできている。
しかし一番はじめに降り立つ場所がスタート地点のところで、竜王の城までは歩いて行かなくてはいけない。スライムを軽く蹴散らしながら進む。
何の苦労も無いまま、あっという間に来てしまった竜王の城。
中は本来強敵が集まっているはずの最後のダンジョンだが、最高レベルだけあってほとんどの敵は楽勝である。
しかしドラクエ1最強の難敵とも言われるダースドラゴンにはちょっと苦戦。ラリホーで眠らせられての波状攻撃を食らい、HP190→60まで減った。ふつうに戦ったらパニックだったろうな。
しかしそれ以上の苦労はなく、スルスルと最終ボス・竜王のもとへ到着する。
そして竜王と対決。初代ドラクエの大ボスとついに対面できてちょっとうれしいぞ。
しかしレベル30の主人公が強すぎて、そんな感傷に浸る間もなくいつの間にか竜王は倒れていた。こっちのレベルが高すぎてゲームバランスがおかしくなった。
わずか35分ほどでクリアしてしまった。むなしいけど、「それでもクリアしてよかった」などと謎の達成感がわき上がる。
続いては、1987年1月に発売されたドラゴンクエスト2である。発売からしばらく経って、確か兄が借りてきたものをちょっとやらせてもらった記憶がある。
劇中のBGMの良さはシリーズNo.1だと思うし、2はなかなか好きだ。でも中盤ぐらいで挫折したと思う。
こちらも、最強パスワードを参考にさせていただいた。
主人公のレベルが50、サマルトリアの王子が45、ムーンブルクの王女が35と、こちらもこれ以上上がらない最高のレベルである。
しかも、シリーズ最難関の難所と言われる「ロンダルキアへの洞窟」はもうクリアしている。「あとはどうぞクリアしてください」だ。
ちなみに名前の”はにまる”は、恐らく1983~1989年の間に放送されていた「おーい!はに丸」(NHK教育)が由来だろう。最強パスワードで付けられた名前が、図らずもタイムカプセルになった。
ダンジョン内に出てくるモンスターは楽々倒せる。ザラキを連発するバズズにやられる場面はあったものの、それ以外は危なげなく大ボスのところまでやってきた。
いくらズルをしても、ドラクエのエンディングが織りなすこの達成感は味わえる。2のエンディングテーマ曲「この道わが旅」は特にいい。
当時はエンディングがやたらあっさりしたゲームが多かったけれども、ドラクエはちゃんと作り込んでくれた。
ドラクエ1~2は最強パスワードを入れればいいので、カセットは1つで大丈夫だった。しかし、1988年2月発売のドラゴンクエスト3以降はどんな強いセーブデータが入っているかに委ねられる。
そのためにドラクエ3、5、6は各4コずつ買った。
中古市場でも安いのは、カセットに名前を書き込んでしまったソフトだ。スーパーポテト秋葉原店の場合だと、これが418円(税込)で売られていた。
しかし僕は運に見放された。電源を入れると、このうち2つが[▶ぼうけんのしょをつくる]だけになっている状態だった。
データを消されたか、はたまたバッテリーバックアップが切れているのか。
ほかの2つはデータが残っていたが、レベル10でロマリアからはじまるまだ前半のものと、さらに序盤のレベル4のセーブデータしかなかった。
これは〆切までにクリアすることはむずかしい……泣く泣く放置することにした。
3に関してはそんな体たらくだが、その代わりに1990年2月発売のドラゴンクエスト4をクリアしよう。クリアしたのも30年前だから、ぶっちゃけ色々と忘れているし。
新宿の駿河屋にて箱入り300円という格安価格だったので、1コだけ買っていたのだ。
1つだけ買ったソフトのメンバーのレベルは運良く軒並み50超え。
ちなみにシリーズの中でも個人的に一番好きなのが4だ。性格の違うシナリオごとに新鮮な楽しさが味わえるし、当時は夢の大容量だった、4メガビット(512KB)をフルに使ってプレイヤーを楽しませている感がいっぱいだ。
ホントなら、ゆったりとドラクエ4の世界線を堪能したいところであるが、何せ〆切に追われているのでさっさと最終ボスのダンジョンまで来て、早めにコトを遂行していく。
ちなみにドラクエ4のクリアの目安レベルは40ぐらいらしい。それで55あるのだから余裕だ。当時苦戦した覚えのある「だいまどう」もサクッと倒して、大ボスのデスピサロのもとにたどり着いた。
ドラクエ4のボス戦で有効なのは「8逃げ」だ。システムのバグで、8回「にげる」コマンドを選択すると、こちら側の通常攻撃が全て「かいしんのいちげき」になる裏ワザがある。
「レベル55+8逃げ」は、最終ボスのデスピサロがかわいそうになるほどの強さ。あっという間にやっつけた。
エンディングを見て、ふつうにクリアした当時を思い出す。この天空城が改めて登場するシーンもうれしかったな。
今はなき船橋のディスカウントショップ「ショッカー」で奇跡的に手に入れて、熱中したドラクエ4。30年前の喜びが少しよみがえった。
ファミコン版は4まででおしまい。1992年9月発売のドラゴンクエスト5からはスーパーファミコン版となる。ちなみにここから「冒険の書が消えました」が頻発するようになる。
ちなみにファミコン版の3~4では、一度も見なかったこの表示。年数的にはスーパーファミコン版のほうが新しいためにデータ保持の観点では有利なはずだが、妙である。
今回もレベル46のセーブデータがあった。さっそくクリアしていこう。
いきなり最後のダンジョンである、エビルマウンテンへ行ってみた。しかし……すでにクリア済みの場合、もう一度最終ボスを倒すことはできない模様?だった(ここは確認中です)。
これではクリアができない……しかし、ドラクエ5にはもう一人裏ボスがいる。クリア後に登場する謎の洞窟に住む、ウラの最終ボス・エスタークだ。
苦肉の策ではあるが、せめて彼を倒してクリアした気分を味わおう。
しかし、エスターク戦ではちょっと苦戦。回復手段が全キャラのHPを50強回復させる「けんじゃのいし」ぐらいだったので、ダメージを受けたキャラをその都度馬車に入れる苦しい戦いぶり。
長期戦になるも、どうにか倒した。
裏ボスのエスタークを倒すも、ホントの最終ボスではないのでエンディングはなし。それでもちょっとクリアしたような気分になれた。
最後は1995年12月発売のドラゴンクエスト6である。当時購入した僕は半分ぐらいまで進めたが挫折した。そのリベンジの機会がやってきたぞ。
しかし、ぼうけんのしょが1~3まで全て消える悲劇が続く。やっとデータありのカセットがあると思ったら、勇者「ああ」でレベル1。
しかしあきらめかけていたときに、レベル52という強いセーブデータがあった。救われた!
自腹をはたいて4つも買ってきた甲斐があったぞ。レベルは十分なはず、さっそく最終ボスを倒すためデスタムーア城へ。
そして一気に大ボス・デスタムーア戦へ突入。
デスタムーアはドラクエシリーズ最強の最終ボスとも言われているほどで、このレベルですらかなり強い。
特に最終形態で「本体・右手・左手」の3つで攻撃してくる際はなかなかの恐ろしさであった。
今回もダメージを大きく受けたキャラをその都度馬車に入れつつ、「ハッスルダンス」なる全体のHPを回復させる特技を連発してどうにか対応。長い時間をかけてどうにか倒した。
ちなみにドラクエ6のエンディングは、今回見た4までとは比較にならないほど長かった。
最初からストーリーを把握しつつやれば、長いエンディングも感慨深くなっただろうが、「最後だけやる」ズルい遊び方と〆切に追われる境遇のため、ちょっとかったるく感じてしまったのも事実である。
ちゃんとエンディングを楽しむには、やっぱり最初からプレーするのが一番だな。
それでも、やり残したことを果たせて満足できた。
僕らの人生は短すぎる。全て最初からプレーしてクリアするのは難しいから、最後だけプレーしてエンディングを見て達成感を味わうだけでも、ちょっとは慰みになった。
そしてこんなプレーですら達成感を味わえる、ドラクエシリーズのエンディングの作り込み度にあっぱれと言いたい。
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