いまやスマホのカメラが進化して、綺麗な写真が親指ひとつで撮影できるようになった。以前だったら重たい一眼レフを三脚にセットして息を止めて撮っていたような写真が、スマホひとつで誰でもすいすい撮れる。
つまり簡単にきれいな写真を撮りたいのならスマホが正解なのだ。
なのになぜ僕たちは、こうもお金をかけて機材を買いそろえているのか。その疑問について考える前に、ちょっと僕が最近買ったカメラレンズを紹介させてください。
レンズの明るさについて
カメラのレンズの話をしよう。
カメラのレンズにはf値という数字がある。レンズの端に1:2.8とか書かれていたら、この2.8というのがf値だ。f値の数字が小さければ小さいほど、それは明るいレンズといえる。同じ50mmのレンズでもf3.5よりもf1.4の方が明るい。
このf値が写真にどう影響するかというと、f値が小さく明るいレンズほどピントの合う範囲が前後に狭くなる。つまり撮りたいものを浮き上がらせることができるのだ。
作例でしめす。
明るいレンズはおもしろい。ピントの合う範囲が狭いので、目だけにピントを合わせて他をぼかすなんてこともできる。背景のボケもとろけるようだ。
上の二つの写真は深圳の「銘匠光学」という会社が「TTArtisan」というブランドで販売しているレンズで撮った(下のリンクは名前が違いますがたぶん同じものです)。焦点距離は75mm、f値は1.25。この1.25というf値は実はかなり明るい。
カメラに詳しい人なら「なんだその無駄な明るさは!」とつっこむところである。そんなに明るくする必要あるのかと。明るければそれだけ性能のいいガラスをたくさん使う必要があるので必然的に価格が高くなる。ライカが同じスペックのレンズ(75mmf1.25)を販売しているが、これは150万くらいする。ハーレーダビッドソンか。
しかしこのTTArtisanのレンズは新品でも5万円くらいだ。これはちょっと何かの機会に買ってみようかなとなる値段だろう。僕は国から10万円支給されたときに買った。そういう時に勢いで買うのにちょうどいいレンズなのである。
ではレンズというのはf値が小さくて明るい方がいいのかというと、そういうわけでもない。f値を大きくする(絞り込む)ことで手前から遠くまでピントが合うようになりダイナミックな写真が撮れるようになるのだ。
たとえば焦点距離15mmのレンズをf8くらいまで絞ると、これはもう手前から無限まで全体にピントが合う。焦点距離の話はまたいろいろあるのでいずれちゃんと説明したいが、要するに短いほど広角となる。
つまり適材適所、撮りたい写真によって僕たちはレンズを替える必要があるのだ。
この時使ったレンズはフォクトレンダーというブランドの15mmの広角レンズである。
フォクトレンダーはかつてはドイツのブランドだったが、いまは日本のコシナというメーカーがその名前を使ってレンズを作っている。このコシナのフォクトレンダーシリーズは最高にすばらしいのでおすすめです。
同じ場所で明るいレンズを使うとこうなる。
あつまれレンズの沼
ここで最初に投げかけた疑問に戻る。きれいな写真が撮りたいならスマホで十分なのに、なぜ僕らはわざわざレンズを何本も買う必要があるのか。
それは楽しいからである。
どこでもドアが発明されたら新幹線に乗らなくなるだろうか。たぶん乗るだろう。狭いトレーの上で仕事がしたいし硬いアイスだって食べたい。品川に着くまでを逆算して車内販売でハイボールの本数で悩みたい。
結果は同じなのにあえて面倒な方を選ぶのは、その過程に面白さがあるからだ。
写真機材を集めるのは面白い。買ったレンズがぼんくらで思い通りに写らなかったりしても、それはそれで楽しいのだ。
機会があれば次はカメラ本体についても説明したいと思っています。そのためにも新しいカメラを買わなきゃいけないですね、まいったなあ。