ナオ:
最高でした。
パリ:
普通に一軒飲みに行ったみたいな満足感。
ナオ:
そしてすごい食べた気がする。
パリ:
同時に、なんだか疲れました。
ナオ:
楽しいけどちょっと疲れる店だったわ。
パリ:
「もう来ねーからな!」って、さっきの店員さんに言って帰るんだけど、また行く店。
ナオ:
ついついね。で、「お会計! あと、サイコロステーキ!」って。
AIに描いてもらった「肉豆腐」
パリ:
AIに絵を描いてもらうというのがすごい流行ってますけど、あれって、気分だけはドラえもんの世界じゃないですか。欲しいものがぱっと目の前に現れるという意味で。
ナオ:
ああ、なにかお願いすればすぐ描いてくれるんですもんね。
パリ:
家でチューハイ飲んでて、つまみにしたいものなんかを描いてもらうと、気分だけだけど、少し楽しいんじゃないかと思って。そういうサービスを見つけて、好物の「肉豆腐」を描いてもらったんです。そしたら、出てきたのがこれで。
パリ:
「???」っていう。
ナオ:
あれ? どうなってるんだこれ。左奥に豆腐がありますかね。いや、肉か?
パリ:
肉で作った豆腐みたいな。
ナオ:
はは。まさに肉豆腐。
パリ:
その発想はなかった。
ナオ:
手前も四角いなー。長方形の。
パリ:
肉で作った肉豆腐をに田楽風の味噌を塗って焼いたものかな?
ナオ:
凝った料理だな。
パリ:
そもそも、雰囲気が京懐石っぽいのも笑えるし。細部に至るまでぜんぶ変ですよね。野菜っぽいのとか。
ナオ:
奥にぼんやりしてるのはキムチなのか?
パリ:
鶏の照り焼きにも見えるんだよな。
ナオ:
とにかく、これは間違いなく変な店ですよ。
パリ:
ね。このように、1枚1枚にツッコミだすとキリがない。それが妙に楽しくて。もう1枚だけいいですか?
ナオ:
はい!
パリ:
居酒屋といったらまずはお通しだよなと思って「お通し」を描いてもらったんですが。
ナオ:
はは。なんだ!
パリ:
とりあえずまた、凝ってはいる。
ナオ:
サツマイモの上に、クリームチーズか?
パリ:
クリームチーズっぽくて、その上に、パセリ?
ナオ:
奥にはパセリだけのったものも。
パリ:
パセリイモありますよね。どういう精神状態で作ったんだ。
ナオ:
あとはラズベリーイモ。
パリ:
小粒のチェリーイモもある?
ナオ:
これがお通しで出てきたとしたら、もうけっこうお腹いっぱいだな。
パリ:
胸もいっぱい。「いや〜、変わったお通しだったね! ……あのさ、帰ろ?」って。
ナオ:
それか、「うん。帰……いや、こうなったら!」というこわいもの見たさか。
編集部より:
今回酒の穴のお二人は日本語でAIにオーダーを出しています。
おそらくAI以前の機械翻訳で「お通し」が「Appetizer」と訳されてこのような画像が生成されたのだとは思うのですが、ご覧の皆様におかれましては、以降どうかそのあたりは気にせず余興としてお付き合いいただければ幸いです。
パリ:
はは。「マジかお前! よし、今日はとことんつきあうよ! じゃあ、梅水晶」お願いします!
ナオ:
わー! 素敵!
パリ:
素敵な宝石! じゃなくて〜。
ナオ:
じゃないわ。
パリ:
っていうのがおもしろくて。
ナオ:
はい。だからここからは、「AI酒場」にふたりで入ったという気持ちで、それぞれ口頭で店員さんに注文してる気分で飲みましょうよ。
パリ:
わくわくします!
まずはドリンクオーダーから
ナオ:
飲みものどうします?
パリ:
飲みものか、どうしよっかな〜。
ナオ:
生ビールにしようと思って、いったん注文したんですが、
ナオ:
これが来ちゃったんで、ちょっと再検討しようかな。
パリ:
はは。
ナオ:
「DRIAF」「BEFS」
パリ:
なにかのジャケット? かっこよさはある。
ナオ:
まあね。こんなラベルのビールがあってもいい気はする。星が7つもあるよ。
パリ:
味に相当自信はあるんだな。僕、ちょっとビールはやめておいて、ホッピーセットにしときます。あ、ホッピーセット、きました。
パリ:
想像と違うのが!
ナオ:
ははは。いやーな感じの。
パリ:
そもそも、ジャケじゃなくて飲みものがほしいんだよな〜。
ナオ:
「HPPP」ホピピピ。
パリ:
こういう世界観のキャラだと思い込んでこわさを封じ込めてるけど、凝視はできない。
ナオ:
確かに、直視できないこわさがあるわ。っつうか飲みもの出てこないなーこの店。私は「ホッピー」で頼んでみようかな。
パリ:
あ、シンプルに。セットじゃなくてね。そのほうが伝わりやすいかも。
パリ:
わはは!
ナオ:
かっわいいなー!
パリ:
ホッピーちゃん。
ナオ:
「お前、ホッピーっていうのかぁ」
パリ:
プレーンチューハイならどうかな。お、来た来た!
ナオ:
え! なんだこれ。
パリ:
プレーンチューハイといえば、甲類焼酎を炭酸水で割っただけの我々の大好きな酒で、浮かんでても許せるのはレモンくらいなもんですが、もう、盛り盛り。
ナオ:
右のこのオレンジの液体がすでに、なみなみと入ってるのに、さらに瓶もある。これはミントかな?
パリ:
ミントが添えてあって、瓶の、なにこれ。けど、2杯ぶんきたし、そもそもやっと飲みものだから。
ナオ:
お得な感じはありますね、この店。
パリ:
オッケーですよ。アジアの国で身振り手振りでこれが出てきたら。
ナオ:
変な酔いかたしそうだけどな。
パリ:
あと、あっまそう!
ナオ:
いやー驚いたんですが。私もプレーンチューハイを注文したんですよ実は。そしたら。
パリ:
あら!
ナオ:
なんでだー! 同じ注文なのに。
パリ:
発音が違ったのかな。
ナオ:
かもしれない。それか注文を受けた人なりのプレーンが出てくる店なのかな。
パリ:
プレーンの意味とは……。
ナオ:
まあ緑茶ハイっぽいから、たぶん美味しいですよこれ。
パリ:
グラス凍らしてあってね。
ナオ:
はは。霜がはってるって感じ。とりあえずこれで乾杯できますね!
パリ:
ですね。
ナオ:
乾杯!
パリ:
ぐい〜っ!
ナオ:
見たことない飲みものを一気にぐい~っ!
パリ:
ふぅ、酒ならなんでもいいや〜!
食べたいものがなかなか来ない
ナオ:
AI酒場にはメニュー表はないでしょう?
パリ:
確かに。逆に頼めばなんでも出てくるから。
ナオ:
そうそう「とりあえず言ってみ?」っていう。
パリ:
だからなんか、序盤はわかりやすいほうがいいのかもですね。刺身の盛り合わせなんかどうですか?
ナオ:
おお、いいですね!
パリ:
おー!
ナオ:
お、おお……なんだろう?
パリ:
グミ?
ナオ:
質感はグミっぽい。未来の刺身っていう感じだ。代替魚肉みたいな?
パリ:
未来の刺身、これですね。
ナオ:
100年後、刺身はこうなる!
パリ:
「未来の刺身」で頼んだらどうなるんだろう。
ナオ:
あー! 未来の刺身でオーダーをね。
パリ:
ちょっとこれまだ残ってるけど、あんま食いたい感じじゃないし、いってみますわ。
ナオ:
見てみたい。
パリ:
わはは!
パリ:
こわいよ〜。
ナオ:
こわいなー! フルーツのようでもある。
パリ:
未知の生物のようでもあり。
ナオ:
にんじんを器用に切った物がファサッと置かれていて。
パリ:
アボカドのベッドですやすや。
ナオ:
はは。確かにアボカドたくさん使ってるわ。さっきの、普通の刺身盛り合わせにもあったでしょう。
パリ:
あった。
ナオ:
「アボカドに醤油つけて食べたらマグロっぽい」っていう話があるけど、刺身とそれを両方食べられる。
パリ:
AI、その小ネタ好きなんだな。「わー、本当だ!」っていう。
ナオ:
試せるセットね。
パリ:
こいつは平らげるの手こずりそうなんで、ナオさんなんかあったらいってください。
ナオ:
私はまあだいたい、ちょっとしたおつまみが好きなので「なめこおろし」と思ったんだけど。
パリ:
なめこおろしか。なんか嫌な予感がする……。
パリ:
うわー!!!
ナオ:
これで来ちゃったんだよなー。
パリ:
来たっていうかこれ。行かされてますよね、現地に。
ナオ:
はは。そうですね。
パリ:
「はいなめこおろし一丁〜!」って、おもむろに目隠しとヘッドホンをされ。
ナオ:
おろしたてのなめこね。新品のジーンズみたいな意味での「おろしたて」。
パリ:
そもそもこれ、なめこか?
ナオ:
確かに。なめこにしてはでかいんだよな。
パリ:
これは、食えないわ〜。なめこかどうかの確証が持てない謎のきのこは。
ナオ:
ね。気を取り直して、ナムル盛り合わせにしますわ。好きなんですよー、ナムル。
パリ:
お? 食えるんじゃないすか? これ。
ナオ:
小皿が4つもきた。やっぱりかなりサービスのいい店ですよ。でも4分の3は激辛そう。
パリ:
はは。左側ふたつほとんど同じ味なんじゃないか。いやでも、これでなんとか飲めますよ。
ナオ:
これはね、酒が進む味ですよきっと。
パリ:
マッコリとか飲みたくなる。あ、マッコリ頼もうかな!
ナオ:
おお、いいですね。絶対相性いいですよ。
パリ:
よーし!
ナオ:
マッコリ軍団だ。
パリ:
とにかくたくさん来た。みそ汁も来てる?
ナオ:
奥ね。
パリ:
いちばん手前のはいける。
ナオ:
とにかく葉っぱ入れたがりますよね。
パリ:
ね。AI、葉っぱ好きだな〜。基本、薬味系が好きですよね。
ナオ:
なんというか、すごく見栄えを大事にしてますよね。この店は。
パリ:
はは。確かに。
ナオ:
「ただの白いマッコリじゃつまらないでしょう……?」っていう気遣い。
パリ:
ただの白いマッコリを出してほしいんだよな。さっきからずっと。
ナオ:
これからもずっとね。えーと、私はさっきのプレーンチューハイを飲みきってしまったので、生搾りチューハイを注文してみていいですか?
パリ:
お、いいすね〜!
パリ:
ウソつけ!
ナオ:
2個来たんですけど、飲みます?
パリ:
いやいや。なんの生を絞ったんすかこれは。きれいな砂?
ナオ:
ははは。とにかくすっごいきれいに仕上げてくれたわ。ラテアートかのように。
パリ:
でさ、ミントはいらないんだってば。
ナオ:
しかも片方だけなのね。パリッコさんミントのほうでどうぞ。
パリ:
いやもう、さっきからずっと飲みものにミントのってるんで。
ナオ:
いやいやどうぞ。そのかわり、さっきのみそ汁もらうんで。
パリ:
はは。めちゃくちゃなやりとりだな。なんかこう、AIさんにも伝わりやすいのないかな。
ナオ:
ちょっと普通に、おでん盛り合わせをもらいます。
パリ:
あ、それは間違いなさそう!
パリ:
ははは。めっちゃ来る。
ナオ:
思い出のアルバムのようにいろいろと来た。
パリ:
どうぞ! どうぞ! どうぞ! ……どうぞ!!!
ナオ:
しかも、どれも違うんだよなー。いや、美味しそうな気はするんだが。
パリ:
その、狭い世界でしか生きてこなかったからかもしれないんですが、ぜんぶ知らない具で……。
ナオ:
はは。そうなんですよ。見たことないものばかり。とりあえず、私からとっていきますね。右下のをもらいます。これは、ゴボウとにんじんのおでんじゃないか?
パリ:
じゃあ、右上もらおうかな。玉子と大根のおでん
ナオ:
これ、玉子かな? 桃じゃないですか?
パリ:
はは。「桃のおでん」、さくらももこのエッセイのタイトルみたいな。
ナオ:
「ん? なんかおもしろそうだぞ」っていうタイトル。
パリ:
っていうかさ。そもそもぜんぶ同じものじゃない? これ、質感が。
ナオ:
よく見るとそうだな……。
パリ:
もちっとしたなにか。
ナオ:
イモでできてるのかも。
パリ:
食べきれないですよこれは。なんかこう、気分がぱーっと明るくなるもの頼みたいっす。あ! ナオさんも好きな、ポップコーンどうですか?
ナオ:
いいですねー! 好きですよ。そうしよう。ちょっと軽めのおつまみが食べたいわ。
パリ:
頼みますね!
ナオ:
お願いします
パリ:
うおー!
パリ:
やったー!
ナオ:
はは。初めて「これこれ!」っていうのが来た。
パリ:
ね。これでちょっと安心して飲めますよ、ミントマッコリを。
ナオ:
ブルー生搾りもありますから。
パリ:
はは。
ナオ:
あ、頼んでたの忘れてたんですが、たたききゅうりがきました。
パリ:
あ、僕好きなやつ。
パリ:
1週間叩いた?
ナオ:
叩いたねー。1万回超えると赤みが出てくるのかな。
パリ:
それを無造作に敷いたブルーの布の上にトン、じゃないよ!
ナオ:
「こちら、スプーンでどうぞ」じゃないよ! パリッとした食感を返してほしい。まあでも、これをポップコーンにちょっとつけるのも、またよしか。
パリ:
ですかね? それにしても、たくさん頼んだわりには、物足りないんだよな〜。これまた好きな「かつ煮」をいこうかな。ちょっとがっつりしたものを。
ナオ:
いいですね。不思議とまだまだ食べれらる気分。
パリ:
かつ煮、調理中に消えてなくなりました。
ナオ:
おっと、バーニング。
パリ:
そもそも調理前の段階で、カツの要素ないし。これはもう「花火」みたいなもんなんですかね、きっと。「ここらで花火1発お願いします」っていうような。
ナオ:
ははは。「こちら、味ではなく音と光を楽しんでいただくお料理でございます」。
パリ:
それを運ぶ新人が「こんなことのために料理の道に入ったんじゃないのに……」って。
ちょっと過剰なところがある店
ナオ:
え〜と、ちょっと、春雨サラダなんてどうでしょう。ほら!
ナオ:
ようやくこれ、ちょっと美味しそうじゃないですか? 少し生の春雨も混ざってるっぽいけど、まあいけるでしょ。
パリ:
いける! ツナみたいななにかの旨味も効いてそう。ちょっと細かいことを言うと、プラスチック製の箸が熱で春雨になりかけてるけど。
ナオ:
はは。そこだけ間違って食べないようにすれば。あと、これは運ばれてきて驚いたんですが、私は「干し豆腐」って好きなんですよ。中華料理屋さんにあるような。
パリ:
あ、僕も大好きです。豆腐を干して薄べったくした、麺みたいなやつね。
ナオ:
あれを注文したんですが、
パリ:
はは。知ってる干し豆腐と違った。大豆のお肉みたいな。
ナオ:
だいぶ違うんだけど、まあ美味しそうではある。
パリ:
急に商品名も上に描いてあるし。
ナオ:
「奉拝」みたいなね。
パリ:
たいそうな名前だな! いやこれは、なんだかわかんないけど食えるし、美味しそうです。
ナオ:
たまらずスパイスチューハイをオーダーしましたよ。
パリ:
3杯来た! でもこれはいいじゃないですか。
ナオ:
オシャレですね。シナモンスティックが刺さってて。
パリ:
ね。で、あえてグラスの外に八角を。
ナオ:
「こちらの八角、たまに香りを楽しんでください」
パリ:
八角はコースターにしても良さそうです。
ナオ:
「よかったら記念にどうぞお持ち帰りください」
パリ:
はは。素直にチューハイに入れといてくれればいいのに! なんかさ、もう、よくわかんなくなってきたから、タイ料理とか頼んでみましょうか。カオマンガイとか。チキンライス風の。
ナオ:
スパイスチューハイにも合いそうだしぜひ!
パリ:
あ〜……。
パリ:
とんぺい焼き定食が来ちゃいました。
ナオ:
はは。「トンペイ」って聞こえちゃったんだな。
パリ:
そう聞こえる要素あるかな? 「マンガイ」の部分? 発音が悪かったか……。
ナオ:
お腹いっぱいだわこれは、だって、メインディッシュが2皿。
パリ:
ねぎたっぷりのスープもあるし。ちょっと飲みものほしいな。なにならちゃんとくるんだろう。
ナオ:
そうなんですよね。この店、ドリンクが難しいんだわ。
パリ:
あれかな、銘柄指定で「黒霧島ロック」とか。
ナオ:
ああー。それは伝わりやすそう。
パリ:
もう、ボトルがもろに出てくるんじゃないすか。
ナオ:
ワクワクするなー。
パリ:
違うんだよ〜。
ナオ:
ははは! そっち連れてかれたか。
パリ:
目隠しパターン。ロックだけ急に本物の岩ととらえなくても!
ナオ:
いやー絶景。パリッコさんが絶景に連れていかれてる間、こちらは日本酒を飲んでいようかな。
パリ:
はは。「獺祭」のパチモンだ!
ナオ:
シンプルなラベルだな。
パリ:
読めそうで読めない。小学校のころ、漢字テストのわからないところをあえて雑に書いた字みたいな。
ナオ:
「獄猪猪」かな? 「ごくちょちょ」。
パリ:
ほんんのりとした獣臭っぽさが特徴の酒ですね。人を選ぶけどクセになる。
ナオ:
ここでしか飲めない酒。
パリ:
もうこういう酒来ちゃうと、珍味系になるかな、つまみは。からすみでもかじりますか?
ナオ:
日本酒に合わせるとなるとそういうのですね。
パリ:
うわ、こわ!
ナオ:
光の当たりかたがこわいよ。でもからすみってまあ、こういうものか。
パリ:
確かに。つーか、素材をそのまま出してくるからこわいんだよな。あと、部位が2種類あるのもこわい。
ナオ:
この店、そういうところあるからね。ちょっとこう、過剰なところが。
この店の名物料理
パリ:
単体で、これこれ! っていうのが欲しいんだけどな。
ナオ:
そうなんですよねー。
パリ:
なにならばシンプルにやってくるんだろう。
ナオ:
ちょっと今さらって感じですが、冷やしトマトなんかどうか。
パリ:
お!
ナオ:
ね、こういうのはいけますよ。なんか左に添えてはあるものの。
パリ:
ちょっとなんかでも、よく見れば見るほど気持ち悪いな! このトマト。
ナオ:
「こちら、あんまり見ずにお召し上がりください」
パリ:
食べようとしたら「シャー!」って襲ってきそう。
ナオ:
なんか生命っぽいですよね。茹でブロッコリーは大丈夫だ。
パリ:
おお! これはもう、少しの違和感を除けばブロッコリーだ。
ナオ:
最初からこういうの頼んでおけばよかったんだわ。
パリ:
でもさ、こんなに苦労してやっとたどり着いたわりには、酒のつまみとしてストイックすぎませんか。
ナオ:
はは。「あえて味つけはしておりません」っていう。
パリ:
だけどわかってきた。冷奴頼むか。からすみとかじゃなかったわ。
ナオ:
そういうシンプルなのが向こうも調理しやすいと思いますよ。
パリ:
ね。って、あれ? すいませ〜ん、アヒージョ頼んでないんですけど〜!
ナオ:
はは。出た!ご存知、肉の練り込まれた豆腐。
パリ:
AIの世界では定番食材「肉豆腐」のアヒージョ!
ナオ:
オシャレな配置しとるわ。
パリ:
で、スパイスもなんも入れず、油で。
ナオ:
油でジュワーっとね。
パリ:
「冷えたらお召し上がりください」
ナオ:
「冷奴」ってそういうこと? まあ、食べるけど……。
パリ:
なんすかね〜この店。
ナオ:
こわいもの見たさで、どて焼きなんか注文してみたんですが。
ナオ:
まあこれは、料理としては美味しそうだな。
パリ:
でもさ、どて焼きに急にA5和牛使うなよ。
ナオ:
「この店はこれ系だわ!」みたいなのが一向にわからないんだよなー。
パリ:
なんだろう。あ、もつ煮込みは? これもいい肉使ってくるんじゃないですか?
ナオ:
そんな気がする。
パリ:
肉どうこうじゃない、カレーだよこれはもう。
ナオ:
はは。煮込んではいるけど。でも味は間違いないですよ。
パリ:
確かに、これとその前の2皿はすっげーうまそう!
ナオ:
サイコロステーキ、どうかなー! いいお肉使ってるかな?
パリ:
うわ〜。食べたい! この店のサイコロステーキはうまいよ絶対!
パリ:
おい! なめてんのか!
ナオ:
まじめにやれ!
パリ:
ステーキが妙にうまそうなのが腹立つ。
ナオ:
「どちらのお客様が召し上がるかをサイコロでお決めください」
パリ:
と言いながら、ちゃんとふた切れに分けてあるし。むかつくな〜……と言いつつ、これおもしろすぎるな。腹痛い。
ナオ:
はは。たぶんこの店の名物料理ですよ。
「お会計!」
パリ:
ね、もうこれ食べたら、最後にシメだけ頼んで帰りましょうか。
ナオ:
そうですね。それぞれ、こんなシメでっていうのを選びましょうか。
パリ:
焼きおにぎりかなぁ。
ナオ:
あー、よさそう! でも油断できないよ、バーニング系もあり得る。
パリ:
消えてなくなってる花火パターンね。でも頼んじゃいました!
パリ:
え〜と、これはむしろ焼く前?
ナオ:
はは。そんで、量が多いんだよな! ありがたいんだけどさ。
パリ:
でもまぁ、ぜんぜん食べられますねこれは。こんど、小さく丸くにぎったおにぎりをフライパンで焼くっていうレシピ試してみようかな。まさかのAIにヒントをもらってしまった。
ナオ:
いいですね。きっと美味しい。私はちょっと、さらっとお茶漬けで締めていいですか?
パリ:
いいっすね。さっぱりと。
ナオ:
お、来た来た。
パリ:
さっぱりしてねぇ〜。
ナオ:
境目どうなってんだ?
パリ:
お茶ってもっとごはんに染みるよ? お茶って知ってる?
ナオ:
っていうかこれは、ラー油飯?
パリ:
はは。正反対のもの持ってきた。これさ、AI、ふざけはじめてません? さっきまでは一生懸命さあったけど、もう、我々の底がわかられてしまったていうか。
ナオ:
厨房が遊びだしたっすね。
パリ:
はいどうぞ〜、トン。
ナオ:
ラー油ぶっかけ飯ですー!
パリ:
いやいや! お茶! 漬け! もう「お会計」して帰りましょう。
ナオ:
そうしましょう。
パリ:
はは。
パリ:
いや、「お会計」って言ったの!
ナオ:
ちょっとすみません! 「お会計」!
ナオ:
ギャフン。
パリ:
わはは! 発音が悪かった? いや、店員裏でクスクス笑ってるな。さっきのお茶漬けよりもうまそうだし。
ナオ:
もう最初からこれだけでいいぐらいのね。
パリ:
入って席に着くなり、「お会計〜!」って言うのが正解な店。
ナオ:
明日のお昼は「お会計」にするかなー。
パリ:
「お会計」、ごはん、野菜、肉のおかずがバランスいいんだよな、どっちも。
店のコンセプトが判明
ナオ:
いやー、この店、なんだかんだですごくおもしろかったじゃないですか?
パリ:
ね。楽しかった〜!
ナオ:
最後に店員さんたちと一緒に写真を撮りたいと思って。
パリ:
確かに!
ナオ:
「店員さん」って声をかけてみたんです。そしたら。
パリ:
え! こういう人たちがやってるお店だったの……?
ナオ:
そう! この方々が今日の美味しい料理の数々を。いやーありがとう!
パリ:
そうか。ニューヨークの、なんかそういうコンセプトの店だったのかな。