特集 2018年7月13日

御朱印に約100万かけた人に話を聞いた

どの趣味にもその道を極めたすごい人はいる。

今回、御朱印に約100万円、正確には90万ぐらいかけた方の話を聞くことができた。私自身も神社や御朱印が好きなので興味深々だ。
生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

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御朱印をはじめたばかりの頃(2年前)
私は神社や御朱印が好きで、当サイトでもいくつか神社や御朱印に関する記事を書いている。「集めてみたら御朱印は楽しかった
そんな感じなので、他の方の神社参拝事情とか、御朱印の話を聞くのも大好きだ。

今回、フリーのカメラマンをやっていて全国の神社を参拝し、つい先日神社の写真集も出したemyさんという方に話を聞くことができた。emyさんは御朱印に約100万かけている人物だ。ちなみに旅費とかは含まず、純粋に御朱印帳や御朱印といった御朱印まわりのもののみで約100万だという。

御朱印に約100万とはどういうことか

御朱印まわりで基本的にどれくらい初穂料がかかるかの説明です
これは神社参拝と御朱印を趣味にしている筆者の見解だが、参拝の際のお賽銭の小銭は含まない(私は11円か5円を入れることが多い。わざわざ11円にするのは遠縁=10円を避けるため。あくまでもジンクスなので1円無かったら10円入れちゃう)として、御朱印は300円もしくは500円が多いが1000円ぐらいするものもある。御朱印帳は1000~3000円ぐらいで両面なら46、片面なら23体御朱印をいただくことができる。

これらが何年、何十年と積み重なると、100万近くなるというのもわかる気がする。emyさんは四国をはじめ、聖地巡礼をめぐる「お遍路マイスター」である父親の影響で15年前にはじめた御朱印は現在30冊以上、参拝した神社は1000社にのぼる。ちなみに今回私も今までいただいた御朱印まわりをざっと計算したら13万越えていた。びっくりするからもう計算するのやめとこう。
長野・善光寺周辺だけで御朱印帳片面がまるまる埋まった
参拝するときには1社だけではなく周辺神社もいくつか参拝することが多いのだけど、今までで1回で御朱印に一番お金をかけたのは長野県の善光寺周辺をまわった時、その時は23の御朱印をいただいて10,000円を御朱印にかけた計算になる。
善光寺周辺で巡った寺院・神社
善光寺、善光寺大本願、善光寺大勧進、釈迦堂、淵之坊、西宮神社

10,000円のうちわけ
御朱印 8,300円
御朱印帳 1,700円
emyさんが約100万円分と、それだけのたくさんの御朱印をいただくようになった背景には、何回も参拝する神社もあるからというのもある。同じ神社でも、御朱印が書き手によって字が違うことも楽しみだとか近年では月替わりで御朱印のデザインを変える神社やお寺もあるので、そういうところは私も何度も足を運んでいる。あとは自分が住んでいる地域の神様、いわゆる氏神様を大切にするのってなんかいいものだ。ちなみに神社庁に電話すると調べてもらえる。

emyさんは何者か

御朱印に約100万をかけたemyさん。カメラを向けたら著書の「メガミサマノカタチ」もしっかりアピールしてきた
emyさんは何者かいうと写真家、鑑定士(カバラ数秘術、財布、家相など)、パワースポットツアーの企画やガイドや神社研究家としての側面も持つなど様々な肩書を持っている。女性誌などで占いの連載も持っている占い師でもある。カバラ数秘術ができるカメラマン、というだけでももう何者かわからない感じだが、カバラ数秘術との出合いは25歳の頃に仕事で滞在していたイギリスで近くに住んでいたユダヤ人に教わったのだという。それを譲り受けてemyさん流にアレンジして使用している。

父親の影響で一宮めぐりから神社参拝をスタートしたemyさん。一宮(いちのみや)というのはある地域の中で最も社格の高いとされている神社で日本全国にある。関東の方でいうと神奈川の寒川神社や茨城の鹿島神宮など。
神奈川県にある寒川神社。相模国一宮にあたる
emyさんは日本全国の一宮めぐりで10年ぐらいかかったそうだ。今は一宮めぐりを終えて自分の好きな神社を参拝しているという。肩書きが多すぎて何者か依然分かっていないが「神社が好き!」という熱い思いは伝わってくる。emyさんに限らず、神社好きな人って神社以外にもいろいろな分野にも興味を持って探究を続けている人が多いように思う。

emyさんの御朱印

全国の神社を参拝しているemyさんに、お気に入りだったり思い入れがあったりする御朱印を見せていただいた。
ハワイ出雲大社の御朱印帳
ハワイ出雲大社の御朱印。ハワイ出雲大社は私もいつか行ってみたい神社だ
ハワイ出雲大社の御朱印帳の表紙と中身。実はハワイにも島根県出雲大社の分社があるのだ。御朱印帳のデザインはハイビスカス、表紙を開くとハートが飛び込んでくる。

ちなみに完全に蛇足的な話になるけど神社や寺院でハートっぽい文様を見たことはないだろうか。これは実はいのししの目にちなんだ火災除けの文様で、猪目(いのめ)という。
伊勢神宮で見つけた猪目。小さいからはっきり確認できないけど下のやつも猪目っぽい
ハワイ出雲大社のハートも実は猪の目だったり……しないか。
宗像大社の御朱印
天孫降臨伝説も書かれている福岡の宗像大社の御朱印。宗像神社は陸地の辺津宮、沖合に浮かぶ大島の中津宮、玄界灘の孤島沖ノ島の沖津宮の三宮で構成された神社で、これは辺津宮のもの。文字がびっしりでかっこいい。
鶴岡・出羽三山神社の特別御朱印
山形県鶴岡市にある出羽三山神社。丑年丑月に創建された出羽三山にとって丑年丑月は『ご縁年』と呼ばれ特別な御朱印を頂くことができる。丑年丑月という特別感、見開きの迫力のある御朱印だ。
お守りと御朱印
emyさんの自分ルールで、御朱印をいただく時におみくじを引いて挟んでおくのだそう。御朱印には参拝日が入っているので、後でページを開き、その時に引いたおみくじを見返して「その時はこんな言葉頂いていたな」とお守り代わりにするのだとか。そういう人それぞれの神社や御朱印楽しみ方ルールを聞くことは楽しいし、真似してみたい気持ちになる。
2ページ目へ。ここから「神社好き」がひたすら会話しているだけ感が加速します。
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神社や御朱印の魅力

カバラ数秘術で誕生数を占ってくれているemyさん。私は6だったんだけどemyさんによると寒川神社とか、龍神や水神を祀る水に関係ある神社と相性が良いとのこと
ここからは「神社好きがひたすら会話してるだけ」感が加速していく。私の現在使っている御朱印帳を見せつつ話を伺った。
京都・貴船神社と御朱印
emy:貴船神社(京都)いいですよねー。私も貴船神社大好きなんですけど、江戸時代以来の秘儀の神事にたまたま参加させていただいたことがあります。その神事は江戸時代以来で今後何年後に行われるかわからないというものだったんですけど、そこに参加した宮司さんは「生きている時にこの神事に参加できて光栄です」と泣いていました。それが奥宮でやっていたんです。
貴船神社奥宮
井口:そういう神事に参加できる機会があるのすごいですね。

emy:最近の御朱印は私が精力的に集めていた時代とは全然違ってカラフルなんですねー。
そう、近年では朱以外にもたくさんの色を使っていたり、グラフィカルな御朱印を授与したりところも増えているのだ(茨城・素鵞神社)
emy:私はフリーでずっとカメラマンをやっていてロケで地方に行くので、立ち寄ったその土地土地で参拝したりしていますが沖縄以外は行きましたね。何故か沖縄は呼ばれなくて……。呼ばれないというかなんだろう、八重山諸島には行っているんですけど沖縄本島には行けてない。

井口:神社好きって縁を大事にするから「その神社に行く機会や機運があったこと」を「その神社に呼ばれる」って言いますよね。フリーのカメラマンと神社巡り、相性良さそうです。
emy:古事記とかも神社参拝はじめてから読みだしました。古事記だと神様の名前覚えるじゃないですか。神社に行くとどの神様が祀られているかわかるからさらに楽しくなる。そういうのがどんどんリミックスされていって、あっという間に“神社オタク”のレッテルを貼られました。

井口:わかります。この界隈は詳しい人や長く趣味にしている人が多いので、そういう方に教えてもらったり自分でも勉強したりで転がり落ちました。歴史上の人物や実在した人物が祀られていたりもするので、オタク的にはそれも楽しいです。今夢中になっている作品が歴史上の英雄とかがモチーフになる作品だったりすると余計に楽しい。
emy:日本は武将でも天皇でも、亡くなって神様になる人間が多いですからますます神様の存在って身近になりますよね。例えば1920年に建立された東京の明治神宮は明治天皇が祀られているわけですけど、大正天皇や昭和天皇は神社に祀られていないんです。そもそも、神社に祀られている天皇、というのがレアケースで初代天皇の神武天皇を祀る橿原神宮、天智天皇を祀る近江神宮、そして明治天皇を祀る明治神宮ぐらいなんです。
渋谷・明治神宮の鳥居
井口:へー! 知らなかった!! 歴史上の人物は探すと結構祀られていたりしますね。神奈川に多い神社なんですけど「白旗神社」という名を持つ神社は源頼朝や源義経といった源氏の武将が御祭神だったりしますね。

emy:三重県鈴鹿市にある椿大神社はパナソニックを一代で築いた松下幸之助が愛した神社で、境内には彼を祀った社もあります。

井口:えっ松下幸之助、善光寺にも寄進していましたよ。忠霊殿の前の大きい灯篭に名前が彫ってありました。一回来て寄進したそうです。すごい近代の人。
長野・善光寺の忠霊殿。ここの灯篭に……
“松下幸之助”の文字が!
emy:松下幸之助、熱心だったんですねー。
私が御朱印を始めたのは父親の影響もありますけど、神社に行く度に何か授与品が欲しくなるじゃないですか。お守りだと増えすぎるとどう扱っていいか分からなくなってしまう。御朱印は御朱印帳で管理することができてご利益を感じられる。


井口:そうなんですよね。お守りもかわいくて欲しくなるけど、持ちすぎるとごちゃっとなってしまう。

emy:あともうひとつ、宮司さんの話って面白いじゃないですか。宮司さんの話を聞いて勉強になることもありますし。参拝の仕方とかもそうですけど、知識のなかには宮司さん情報も多いですね。

井口:神職の方と御朱印きっかけで話しかけやすくなるのはありますね! 神社によっては社務所にいらっしゃらなくて電話したり、インターホンで呼び出すところも多いですよね。特に地方の神社でよくあるやつ。
御朱印はひとつひとつ書いていただくのが基本なので、聞きたいことだけ聞くのは申し訳ないので御朱印で話すきっかけが作れるのもうれしいです。とはいえ、御朱印対応自体にもわざわざ申し訳ないなーと思いつつインターホン鳴らしています。

emy:話を聞くとますます神社が面白くなっていきますよね。御朱印は神社や宮司さんとのコミュニケーションツールとしても機能しますね。そういうところも好きです。

神社沼へようこそ

話を伺って、最初「御朱印に約100万!?」と驚いたが話聞くと参拝を続けていれば全然無理な話ではないし、自分自身も何年か何十年後になるかわからないけど自然に到達していそうだと思った。神社は歴史も深いし、神社のある地域のことやその土地の文化知る上でも興味深いし魅力は底なし沼状態だ。みなさんも気軽に神社沼に入沼してほしいと思う。
街では意識すると至るところに神社や祠をお見かけすることができる。例えば、銭湯の前にも

取材協力してくれたemyさんが最近出された写真集はこちらの「メガミサマノカタチ」。恐らく日本初の、女神を祀る神社のみの写真集だ。
取材協力
emyさん(@megamisama0614)
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