ラーメンは10分でできるはずだ!
家庭で美味しく食べるラーメンなら、それこそ10分もあればできるよねということで、『10分ラーメン選手権』というイベントを考えた。イベントと行っても、参加者は身近な友人である。
とりあえずやってみようと第1回大会を昨年やってみたところ、これがおもしろかった。ただ、ふんわりとしたルールだと10分をオーバーしたり、材料がちょっと購入しにくかったりする場合があったので、そのあたりのレギュレーションを整理して、第2回を開くことにしたのだ。
参加した精鋭8人の選手達。あくまで素人による遊びのイベントなので、プロの料理人は出場不可。
事前に連絡しておいた今回のレギュレーションは、以下の通りである。
■食材について
当日に会場(友人宅)近くのスーパーにて、みんなで買い物をする。
→そこで売っているものだけで作る。
→食材の持ち込みは原則禁止(醤油や油など絶対に売っているものはOK)。
→麺は共通の生地(総加水率40%)を使った自家製中華麺(140g)を使用。
■調理のルール
→ラーメンの定義は自由とする。
→制限時間は10分以内。
→コンロは2口で、調理と並行して麺も茹でる。
→麺を茹でるお湯は事前に沸かしておく。
→ ポットのお湯、電子レンジの使用は可。
→下ごしらえは禁止だが、計量まではOK。
→丼(皿)に盛るところまでで10分。ただし撮影用の盛り付け微調整はタイム外でも可。
→作る量は1人前とする。
■採点方法
→味(60点)、個性(20点)、簡単さ(20点)の合計100点で採点。
→複数の審査員が採点をして、その平均を得点とする。
→10分を1秒でも越えたら1分ごとに10点減点。
審査員は別にラーメンのプロとかではないこちらの4名。人間関係を無視した厳正なる審査をお願いした。あわせて写真撮影も
ぶち猫さん(顔を隠している方)に依頼。
第1回の様子はネットを検索しても出てこないので、気になる方は同人誌『
趣味の製麺7号』を買ってください。
スーパーに材料を買いに行こう
今回のレギュレーションには、会場となった友人宅の最寄りのスーパーに売っているものだけで作るという鉄の掟がある。
カルディコーヒーとか業務スーパーにしかないような食材は、一切使えないということだ。
食材調達に向かった某スーパー。
そして当たり前の話だが、買い物をするスーパーによって食材のラインナップは違ってくる。
競技参加者が事前に考えていたレシピが再現可能かどうかは、当日になってみないとわからない。もし必要なものが売ってなければ、即座に応用力が試されるという緊張感。勝負はもう始まっているのだ。
それに対して審査員チームは、優雅にクラフトビールを品定めしてカゴに入れていた。
不測の事態を避けるため、わざわざこの店で事前チェックをした用意周到なメンバーもいたようだ。
麺は事前に家庭用製麺機で用意しておく。ただ競技としては、もちろんスーパーで売っている生麺でも構わない。
麺の生地と量は共通としたが、微妙に太さを変えたり、縮れを加えたりといった加工はOKとした。
調理の順番は、厳正にあみだくじで決定。
エントリーナンバー1:玉置標本の『豆乳キムチラーメン』
あみだくじの結果、なんと私が一番手となった。言い出しっぺなので、おまえがまず手本をみせろということなのだろう。
私が10分をオーバーしたら、企画の根本が崩れそうで緊張する。
材料は、豆乳300cc、キムチ80g、ベーコン50g、シーフードミックス80g、ピザ用チーズ25g、鶏ガラスープの素5g、胡麻油大さじ2、青ネギ、胡椒。
取材で博多に行ってきたばかりなので、本当は豚骨風ヴィジュアルの牛乳スープをベースに、高菜と明太子を具にした『博多に行ってきましたラーメン』を作ろうと思ったのだが、スーパーに高菜がなくて路線変更。それに合わせて右往左往した結果がこれである。
作ったことはないけれど、きっと美味しくできるはず!
1:キムチとベーコンを胡麻油で炒める。
2:軽く水洗いしたシーフードミックスを1に加え、そこに豆乳を投入。
3: 鶏ガラスープの素で味をつけて、粒胡椒を削ってスープを仕上げる。
ここで事件が起こった。私の家の胡椒はグイグイと回転させることで削られるのだが、お借りした胡椒は電動式で、ボタンを押せばウィーンと削られるタイプ。それを知らずに回転させてしまい、バラバラとパーツが崩壊!
その結果、粒のままの胡椒が鍋の中にすべて落下。この事件が10分という制約があるなかで起こったのだ。そりゃ慌てるさ。
予想外のトラブルに見舞われつつも、どうにかスープを丼に移して茹でた麺を入れ、青ネギとチーズを乗せて9分58秒でギリギリ完成。ただし味見はしていない。
このドラマチックな展開は、芸術点があれば加点対象ではなかろうか。
青ネギとチーズを乗せたら完成!たぶんヘルシー!
審査員からの寸評はこちら。
・渋谷Bunkamuraの近くに出店してそう。
・キムチの辛さに豆乳とチーズが絶妙マッチ!
・いわゆるラーメン的ではないが、スープまで美味しい。
ちょっと変化球過ぎたかな。いろいろと反省点があるけれど、とりあえず困難を乗り越えて10分以内にできた俺、がんばった。
こうしてトップバッターという大役を無事にすませて、安心して酒を飲めるようになった。これ、先にやっちゃった方が残りの時間を楽しめるやつだ。
あくまで遊びの勝負とはいえ、参加者は胃がキリキリします。
ラーメンができたら審査員がまず試食して、その残りをみんなでいただく。点数は全員が終了するまで秘密にしてもらった。
エントリーナンバー2:ヨヨの『タイ風屋台ラーメン』
2番手は本日の会場を提供してくれたデザイナーのご夫婦から、ヨヨさんが参戦。
「タイの屋台で出てくるようなラーメンを、超簡単レシピで再現してみます!」
同人誌『趣味の製麺』のデザインから会場提供まで、大変お世話になっております。
材料はすべて適量で、ニンニク、ショウガ、鶏ガラスープの素、砂糖、ナンプラー、塩、胡椒、レモングラス、パクチー、サラダチキン、もやし、ニラ、長ネギ、レモン、胡麻油。
さすがは最寄りのスーパーを知り尽くしているだけあって、レモングラスやサラダチキンなど、売っているか微妙なラインを不足なく揃えてきた。
並んだ材料だけで、もうすでにうまそうだ。
1:ニンニクと生姜をみじん切りにして、胡麻油で炒めて香りを出す。
2:水500ccを入れて沸騰させ、鶏ガラスープの素、砂糖、ナンプラー、レモングラスを入れ、塩胡椒で味を調える。
3:茹でた麺(平打ち麺が好ましい)とスープを丼に入れ、トッピングのニラ、もやし、長ネギ、サラダチキンを盛り付け、レモンをぎゅっと絞って出来上がり。
調理時間は9分25秒。余裕を持ってタイの味が完成した。
中華麺用の生地なのに、薄くして切り出すことで東南アジアの麺っぽくなっている!
審査員からの寸評はこちら。
・本格的なタイ風麺が短時間でできたのは驚き。
・手軽でさっぱり、野菜たっぷりが嬉しい。
・食べるシチュエーションによって評価が分かれるかも。二日酔い明けにハマりそう。
「ちょっと味が薄かったかなー。時間には余裕があって焦らずできました。順番が早かったので、みんなが作るのを落ち着いて楽しく見られました。惜しむらくは、アシスタント業に専念していたため、みんなのラーメンの味見があまりできなかったことです」
エントリーナンバー3:マリエの『鶏そぼろ美酒ラーメン』
3番手は料理の腕には定評のあるマリエさん。事前になかなかメニューが決まらず、選手として参加するか最後まで迷っていたが、なにかひらめいたようである。
「日本酒をたっぷり使ったラーメンです。正攻法は避けて、旨味系の日本酒を使って作ります!」
落語と日本酒を愛するマリエさん。
材料は、オリーブオイル小さじ2、長ネギ20センチ、ショウガ1かけ、鶏ももひき肉90g、チキンスープ150cc、日本酒(今回は大七の純米生?)150cc、薄口醤油25cc、豆板醤小さじ 1/2、胡椒、粉山椒、柚子七味。
一杯のラーメンに日本酒を150ccも使うという大胆なレシピ。事前にあのスーパーをチェックして、日本酒の品ぞろえやチキンスープの存在を確認したそうだ。
ちなみに材料費に関するレギュレーションはないが、高級食材は『簡単さ』の評価に影響するかも。
1:長ネギ、ショウガをみじん切りにする。
2:鍋にオリーブオイルを入れ、中火で1を炒め、香りがでてきたら鶏ももひき肉を入れる。
3:ひき肉がほぐれて色が変わったら薄口醤油と豆板醤を入れ1分ほど炒め、日本酒、鶏がらスープを注ぎ、強火でアルコールを飛ばすようにしばらく煮る。
4:中華麺を茹で、器に入れる。
5:4に3を注ぎ、胡椒・粉山椒・柚子七味をかける。
タイムは9分00秒と、こちらも余裕でフィニッシュ。
体が芯から温まりそうな一杯が完成。
審査員からの寸評はこちら。
・お酒と鶏がとても香りよく美味!
・バランスが絶妙。酒飲みには受けが良さそう。
・見た目と異なり個性的な一杯。材料費が高いのが『簡単さ』でマイナスかな。
「昆布を入れ忘れました……」
エントリーナンバー4:小松ヌンチャクの『10分ラオシャン』
4番手はイベントで大量のカレーを振る舞うことも多い小松ヌンチャクさん。第1回大会で30分以上も調理時間を使うという伝説を残した男であり、この武勇伝は今なお突っ込まれ続けている。
「前回が時間超過失格だったので、絶対時間内に作れるメニューで挑みます! 平塚の老舗店『老郷(ラオシャン)』の酢湯麺を、スーパーの食材で作れないか挑戦してみました。再現度は高くないですが、酸っぱい湯麺の雰囲気は味わえると思います」
競技時間に縛られない男、小松ヌンチャクさん。
材料は、新玉ねぎ1/4個、塩蔵わかめ、メンマ、ラード中さじ1、純米酢中さじ1.5、塩中さじ1、白ワイン中さじ1、ビーフコンソメ1/3個、中華スープの素小さじ1、昆布出汁の素小さじ1、お好みでラー油。
シンプルな材料ながらも、ダシの要素が複雑に絡み合う一杯になりそうだ。
和洋中が混ざった不思議な組み合わせで、味がまったく想像できない。
1:丼にお湯を注ぎ、塩蔵わかめを戻す。
2:玉ねぎをみじん切りにする。
3:麺を茹で始める。
4:1のお湯を捨て、塩蔵わかめを切る。
5:丼にスープの材料を入れ、お湯を注ぐ。
6:麺が茹で上がったら5に入れ、具材を乗せて完成。
スープはお湯に調味料を溶かすだけという方式のため、タイムは8分30秒とたっぷり時間を余らせて完成。2回連続での大幅タイムオーバーを期待していたオーディエンスから、時間内で作ったことに対して強烈なブーイングが飛んでいた。きっと一生いわれるやつだ。
見た目はシンプルだが、果たしてその味は如何に。
審査員からの寸評はこちら。
・見ためシンプルなのに味が複雑で奥深い。かなり好み!
・シンプルな味わいで具材の味が際立つ。手順の簡単さも魅力的。
・ラー油などで味の変化をつけられるのがおもしろい。 ワカメがしょっぱいので減点。
「ルールに従って競技するって大事ですよね! 塩蔵わかめの塩抜きが不十分で、しょっぱくなってしまったのが反省点です」
エントリーナンバー5:のそ子の『誰でも簡単安心安定の麻婆豆腐麺』
5番手は二人の子供を育てているのそ子さん。意気込みのコメントにいろいろな思いが込められていた。主婦って大変。
「人類と企業の叡智である麻婆豆腐の素を使った、誰でも簡単、初心者でも忙しくてもやる気なくてもブレないレシピです。しかもご家庭で家族にレトルト及び素だけだとめんどいこといわれる昨今の風潮に対して、舞茸の出汁でオリジナリティを、玉葱の食感でアレンジ感を出す、全方位に向けて無敵のレシピです」
子どもが作ったエプロン着用で参戦した、ニードルフェルト作家ののそ子さん。浮かれているようだがビールを持つ手は震えていたそうだ。
材料は、豚挽き肉を好きなだけ、豆腐1/2丁、麻婆豆腐の素1食分、舞茸1/2株、玉葱1/4個、とろみが欲しければ片栗粉、好みで辣油や万能葱など。
『素』に万全の信頼を寄せたシンプルな材料。焦げつかすように炒めたニラを加えてもおいしいそうだ。
これがどのような麺料理になるのだろうか。
1:フライパンで挽き肉を炒める。
2:舞茸を刻み、玉葱は繊維を断つようにイチョウ切りにする(食感がよくなる)。
3:1に2を追加して火を通す。
4:3に麻婆豆腐の素と豆腐を投入し、ユルいようだったら水溶き片栗粉入れる。
5:麺を茹で、ザルにあけて水で洗ってぬめりをとる。
6:5を皿に載せて上から4をかけ、お好みで葱とラー油をかけて出来上がり。よく混ぜてお食べ。
途中でビールをグビグビと飲みながら、7分45秒で余裕の完成だ。
麻婆丼ならぬ麻婆麺。
審査員からの寸評はこちら。
・簡単、早い、うまい、ボリュームたっぷり。
・香りが豊か。途中で魅せたゆとりがかっこよかった。
・キノコの旨味を感じる。安心感のある家庭の味。
「麻婆豆腐はなるべく辛めにして、玉葱で甘みを出すと味わい深くなるのでおすすめ。正直5分でいけた。残り時間で洗い物すれば主婦として完璧だった。そして今日は人が作った料理をたくさん食べられて満足!」
エントリーナンバー6:ツジムラの『肉野菜つけ麺』
6番手は『付箋レシピ』という料理本も出されているプロダクトデザイナーのツジムラさん。趣味で居酒屋の一日料理長もやっちゃう本格派だ。
「身近な材料、作るのも簡単、そして家庭の日常食として充分に美味しいレシピを目指しました。あえて名前も普通です」
ナンプラーを出汁として使う男、ツジムラさん。のそ子さん以降、料理の途中でかっこよくビールを飲むというのがお約束になった。
材料は、キャベツ1~2枚(80g)、長ネギ10センチ、 ミニトマト3個、 豚バラ肉スライス2枚(50g)、サラダ油小さじ2。肉の下味として塩、胡椒、片栗粉。スープにナンプラー小さじ1.5、醤油小さじ1.5、みりん小さじ1.5、豆板醤小さじ0.5、おろしニンニク小さじ0.5、おろしショウガ小さじ0.5。
今大会で唯一、つけ麺スタイルでのエントリーだ。
メインの具材はショウガ焼き定食みたいな材料だ。
1:フライパンを中火にかけて油をひき、キャベツは2cm幅、長ネギは斜め1cm幅に切り、あまり動かさず焼き目がつくよう炒める。
2:豚バラは3~4cmの長さに切り、片面に塩・胡椒・片栗粉を振っておく。
3:麺を茹ではじめる。
4:フライパンに水200ccとスープの調味料を全て入れ、沸騰を保つ火加減に。
5:4に半分に切ったミニトマトを投入、さらに2を広げて上に並べ、蓋をして弱火にする。
6:麺の茹で加減を確認し、よければザルにあげて冷水で洗い、水気を切って器に盛る。
7:5のつけ汁を別の器に盛る。
10分ラーメンにしては複雑過ぎる工程に思えたが、そこはさすがの手際である。9分44秒で見事に完成させた。
試食中、これじゃ麺の量が全然足りないよとクレームが入るうまさだった。
審査員からの寸評はこちら。
・派手さはないが、家庭にあるものでここまでの味が出せるのはすごい。
・ トマトと豚のつゆが麺と絡んでおいしかった。でも再現できるかな……
・味のメリハリが素晴らしい。いくらでも食べられる。『味』の評価に満点以上をつけたい。
「自家製麺のラーメンを手軽にという趣旨の会なので、真似したくなる料理にしたいと考えました。焼いた野菜ってうまいよね」
エントリーナンバー7:山田技研の『2分でできる、塩昆布まぜそば』
7番手は家庭用製麺機の整備などでお世話になっている山田さん。麺から作る焼きそばなどの凝った料理は作っても、日々のおかずは作らないタイプの料理好きだ。
「自分のような料理の経験値が乏しい人でも、乾物を使って簡単に、おいしく作れるように考えました。単純ですが麺の味を引き立てるような味つけです」
指圧師の浪越徳治郎を髣髴とさせる堂々としたポーズの山田さん。
材料は、醤油大さじ1、みりん大さじ1、塩少々、味の素、乾燥にんにく、塩こんぶ、ごま油、新玉ねぎ(みじん切り)、胡椒。
ラーメンのスープは作らずに、茹でた麺に調味料を合わせるスタイル。すでに大会は終盤戦、かなり酔っぱらっているが大丈夫だろうか。2分で作れると言い張っているあたりが、実に酔っ払いらしい振る舞いである。
ナマモノは玉葱だけというシンプルさ。
1:醤油、みりん、塩、味の素を小鍋で熱して、たれを作る。
2:器に砕いた乾燥にんにくを入れ、1のたれを半分注ぎ、馴染ませておく。
3:2に茹でた麺を入れ、ごま油と残りのたれをかけて混ぜる。
4:塩こんぶを混ぜて、みじん切りにした玉ねぎを乗せて、胡椒をかけたらできあがり。
圧倒的なまでの簡単さ。若干ふらつきながらもタイムは6分19秒。これまでの最短記録を更新だが、時間が短ければ加点というルールはない。
彩りや栄養価を放棄した一皿。これをオカズにご飯が食べられる塩分濃度だが、これはこれでうまいと好評だった。
審査員からの寸評はこちら。
・ザ・男の料理。
・ 味濃い目で酒の肴系。酔っぱらっていても作れる簡単さは〇。
・めちゃシンプル。でも意外と美味しい!
「たれに塩を入れすぎて塩辛くなりすぎたため『麺がほしくなる(麺料理なのに)』『おにぎりの具にしたい』などのコメントをいただきました。今度おにぎりの具選手権があれば出場を考えます。あ、あと、全然2分でできませんでした」
エントリーナンバー8:マダラさんの『ミニマル無化調煮干し醤油ラーメン』
ラストは当サイトで
二郎や
家系、
天下一品の再現レシピを披露しているマダラさん。彼こそが第1回大会の優勝者である。
「10分という制限の中で、『既製品を使わずにスープを炊き、チャーシューも乗せたラーメンを作る』をコンセプトに考えました。また化学調味料を使わなくても戦えるところを見せるべく、無化調にもこだわっています。これ以上削るところがないというくらいミニマルな煮干し醤油ラーメンです!」
前回優勝者が最後に登場。審査員はもうお腹いっぱいというハンデをどう乗り切るか。
材料はチャーシューに豚バラ肉ブロック60g。薬味にネギ、玉ねぎ、カイワレ大根。スープはお湯500cc、煮干したくさん。香味油はラードをチューブで20cm、煮干し粉末大さじ1。タレは淡口醤油50cc、みりん20cc、水30cc。
会場がざわついた大量の煮干しをどう生かすのか。買い出ししたスーパーにラードが見当たらず、焦った顔で店員に尋ねている姿が印象的だった。
ミニマルというだけあって、実にシンプルな材料。
1:豚バラ肉は1.5cm厚程度に切り、小さいタッパーに敷き詰める。
2:淡口醤油、みりん、水を混ぜたタレを1に入れて、電子レンジの500Wで6分加熱(途中で表裏をひっくり返す)。そのまま余熱で豚バラ肉に火を通していく。
3:お湯が沸いている鍋に煮干しをヒタヒタに入れ、再度沸騰したら弱火をキープする。
4:小さいフライパンにラード、煮干し粉末を入れ火にかけ、ラードが溶けて煮干し粉末がジュクジュクしたら火を止める。
5:ネギは小口、玉ねぎは粗めのみじん切りにする。
6:丼に3のスープを注ぎ、お好みの濃さになるまでチャーシューのタレを入れる(煮干しの塩分でタレの量は要調整)。
7:茹でた麺をスープに泳がせたら、4の香味油を注ぐ。
8:チャーシュー、薬味を盛り付けて完成。
焦った様子を一切見せず、9分59秒と制限時間をしっかり使い切って完成。各工程を平行して進めることで、見事にラーメンらしいラーメンを作り上げた。
参加者の中で唯一、王道のラーメンで攻めてきた。
審査員からの寸評はこちら。
・無化調とは思えない味わい。10分でチャーシューまで作るアイデアに脱帽。
・ もう店のレベル。
・煮干しとラードで圧倒的な旨味でした。さすが前回王者!
「レシピは特別難しいこともなく、シンプルな材料でありながら、しっかりラーメンになってると思います。皆さんにもぜひ作っていただいて、ラーメンというのは何時間もガラを炊かなくても家庭で簡単に作れるんだということを知ってもらえたら何よりです」
結果発表!
全員の試技を終えて、得点表を回収して集計をおこなったら、さあ注目の結果発表だ。まずは部門賞の発表から。
ベストコンセプト賞は、『個性』の点数が高かったツジムラさん。そしてベストイージー賞は、『簡単さ』の点数からのそ子さん!
賞品は買ったけど使わなかった食材です。
ここからは総合得点による発表です。第3位は、意外にも時間内で作った小松ヌンチャクさん!得点は79.5点!
予想外の入賞に本気で喜ぶ小松さん。ちなみにプレゼンターは見た目がそれっぽいという理由だけで選んだ、ラーメン評論家っぽい友人。
続いて第2位は、味での評価も高かったツジムラさん!得点は85.2点!
ツジムラさんは2位。ということは優勝は……私かな。
そして栄光の優勝者は、『味』の評価で60点満点中57.25点というトップの点数を叩きだした、マダラさん!総合得点は86点!おめでとうございます!
見事に連覇を達成したマダラさんには、創味のめんつゆをプレゼント。
では優勝者インタビューをお届けします。
「ありがとうございます!!前回チャンプとして恥ずかしくないラーメンが作れたとは思いますが、まさか連覇とは……というのが正直な感想です。でも第3回があったらまた優勝してしまうかもしれません。敗北を知りたい……」
0.8点差で惜しくも敗れたツジムラさんも一言どうぞ。
「僕のは『家庭料理としての麺料理』で(もちろんそこを狙ったのですが)、マダラさんのは『ラーメン』でした。突き抜けた力強さに、これは負けた!と納得です」
みんなが家庭料理の延長線上から10分で可能なラーメンっぽいものを作る中、マダラさんだけが店で食べるラーメンをどうにか10分で実現させるという方法論の違い。この力強さに全員納得の優勝となった。
試食や選手交代の時間を含めて1人が約15分、8人なので約2時間。方向性の全く違うラーメンが毎回ちょっとずつ食べられるので、飲み会としてもとても楽しかった。
第2回10分ラーメン選手権、意外にも時間オーバーをする人が一人もおらず、すべてがおいしいというハイレベルな戦いとなった。審査する側もまた難しかったのではないだろうか。オリンピックの影響もあり、レギュレーションと採点基準を事前にしっかりと決めたことで、競技っぽさが増したのが成功の秘訣かな。
大会終了後、10分ラーメンにおける『個性』とはなにか、『簡単さ』の基準はどこかなど、審査方法に関して熱い議論が交わされた。次回は10分に加えて『夏に食べたい麺』とか、『原価300円以内』とか、さらなるテーマを設けてやってみたいと思う。
優勝したマダラさんが余興として作ったニュータンタン風ラーメン。これも10分以内に作っていたぞ。