特集 2017年5月24日

“上京した”福岡県民あるある

福岡には本物がある
ひとはさまざまな理由で東京へやってくる。

東京へやってきてはじめて、それまで自分のすんでいた町の文化や風習の独特さにきづくことがおおい。

過去2回ほど、そんな“上京して”気づいた故郷の独特さをまとめてきた。
“上京した鳥取県民”あるある"
“上京した青森県民(津軽地方)あるある

今回、福岡県になんどか行く機会があったので、福岡県民の方に聞き取り調査を行い、“上京した”福岡県民のあるあるをまとめた。

※なお、あくまで、聴き取り調査をした範囲内での個人的な見解です。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

上京した福岡県民あるある その1
東京や横浜にいくと、「これは百道浜みたいやね」「ここは大名みたいなところか」などと思う(今は思わない)。
百道浜の百道タワー(左)、福岡タワー(右奥)
地元愛がつよすぎるがゆえに、東京のいろんな町を、地元の町におきかえて解釈しようとしてしまう。しかし、上京して時がたつにつれ、そんなこともあまり考えなくなるらしい。

ただ、この「地元の町、東京の町でたとえたら?」という考えかたは、その町の雰囲気がいっきにのみこめるので、その町を知らない人にとっては面白いのではないか。

ちなみに、この意見を寄せてくれたHさんの主観では、百道浜=お台場・横浜、大名=渋谷・代官山、中洲=新宿、大濠公園=代々木公園、北九州=町田とか川崎、でかい会場=福岡サンパレス(ドームは除く)ということらしい。
中洲=新宿というのは、西新宿とかではなく、歌舞伎町や二丁目といったあのあたりの雰囲気をイメージして言っているのだと思う。大名は、いわゆる裏原宿と呼ばれる、原宿あたりの雰囲気にも似ているような気がする。

西新や薬院は東京のどこに当たるのか、気になるところだ。
上京した福岡県民あるある その2
「日本の三大都市」は「東京・大阪・名古屋」と知って驚く。
三大都市とはいったいなんなのか?
地方いじり系のテレビ番組などでも度々取り上げられている「福岡のひとは日本三大都市を、東京、大阪、福岡と考えている」という問題。

これは、北九州市に住んだことがあるデイリーポータルZライターの地主くんに確認したところ「その通りだ」と証言していた。
北九州の人でもそう思うほどなので、もう、福岡県民の総意としてそうだと考えても差し支えないだろう。

そもそも、日本の三大都市とは、定義が明確に決まっているものではない。
ただなんとなく「日本の三大都市は東京・大阪・名古屋」と思っている人が多いというだけの話である。
だいたい、都である東京と、市である名古屋が同列になっているのも変だし、厳密に人口の多い市上位三位で言えば、横浜・大阪・名古屋になるわけで、福岡の人が考える三大都市が、東京・大阪・福岡というのも「そういう見かたもある」というだけのことで、間違いではないはずだ。
上京した福岡県民あるある その3
東京のバス停で人が列をつくって待っているのを見て驚く。
並んでない
福岡市民にバス(西鉄バス)の話をふると、様々な話が湯水のごとくでてくる。とくにバス好きでなくてもどんどんでてくる。
なかでも、バス停で待つときに並ばない。という声が多く、上京した福岡市民は、東京のバス停で利用者がきちんと整列する様子をみて驚愕し、さらに、バスの乗り方が、前乗り後ろ降りであることに衝撃を受けるという。
(もっとも、バスが「前乗り後ろ降り」であるのは、名古屋と東京ぐらいだから、実は東京のほうが特殊)

ただ、ぼくはバス停で並ばない福岡市民の気持ちもわからないでもない。

なぜなら、福岡のバス停は、行き先が違う複数のバスがひとつのバス停に停車するため、整列していても、前に並んでいる人が到着したそのバスに乗るとは限らないからだ。
前の人が、いま来たバスに乗るのか乗らないのか、ようすをうかがっているあいだに、後ろに並んでいたひとが自分を追い越してバスに乗ってしまうことだってある。

そのうえ、バスが縦列で停留所に停車することも多く、乗りたいバスが、自分の居る場所にピッタリ停まるわけではないため、結局、目的のバスの乗車口まで移動して乗らなければいけない。
整列して並ぶ意味があまりない
そもそも「バス停で並ぶのが正しい」という正義はいったい何なのだろう?
バス停で並ばなくても、それに合理的な理由があり、秩序が保たれているのであれば、特に問題は無いはずである。
福岡のひとたちは「バス停で並ばない」のではなく「バス停に並んでも無意味」という悟りをひらいているのだ。
上京した福岡県民あるある その4
福岡名物「とんこつラーメン、屋台、水炊き」というイメージに違和感。
福岡名物・屋台
上京した福岡県民は、東京で、福岡名物としてよく挙がる「とんこつラーメン、屋台、水炊き」に関して、いつも複雑な思いを抱く。

とんこつラーメンは、もちろんよく食べるものの、はっきりいって、日常的にはうどんのほうをよく食べる。
だいたい、とんこつラーメンは、戦後流行りはじめた食べ物だが、うどんにかんしては、博多にある承天寺という寺に「饂飩蕎麦発祥の地」の石碑があり、うどん発祥の博多・福岡こそがうどんの本場であり、こっちは鎌倉時代から食べてんだというひそかな自負がある。(うどんの発祥は諸説あります)
とんこつラーメンよりも、うどんのほうをよくたべる

屋台は、福岡名物であることには間違いないけれど、地元の人はそんな頻繁には行かない。普通に家でうどんとか食べることが多い。わざわざ屋台に行って焼きラーメンとかを毎日食べているわけではない。

水炊きや、ホルモン鍋にしてもそうで、近年ブームになり、ものすごく流行ったが、県外からの観光客をもてなすときに店に行くかな? ぐらいである。

なかには、上京してから初めて水炊きを食べて、そのうまさに感動したひともいるほどで、そんなに頻繁に食べるものではないという。

東京の人が「もんじゃ焼きなんか数年にいちど食べるか食べないかだよ」と思うのと同じ感覚である。
上京した福岡県民あるある その5
東京に来て「治安がいいなー」と思った。
東京は治安が良い
デイリーポータルZライターの地主くん曰く、カツアゲされる同級生をなんどもみたし、自転車はすぐ盗まれるし、廊下をバイクが走ったりする中学校に行きたくないので、わざわざ違う中学校に進学したほどなので、上京したときにまず『治安がいい』と感じた。上京する時、親に「東京は治安が悪いから気をつけろ」と忠告されたが、東京のほうが治安がよかった……らしい。
北九州出身のHさんも「住みにくいと感じたことは、いちどもなかったけれど、傘と自転車は盗まれるものだと思っていた」だそうだ。

ただし、これはあくまで、実際に住んでいた人の主観であることは付け加えておきたい。金塊強奪犯も逮捕されましたし、福岡県警はがんばっています。
上京した福岡県民あるある その6
そう言えば「銀チョコ」売ってないなーと気づく。そして「マンハッタン」は日本全国で売っているものだと思っていた。
福岡ではよく見かける「銀チョコ」、左上が中身
福岡の人が、上京してしばらくたってから「そういえば見かけないな……」と思う商品のひとつに「銀チョコ」がある。

「銀チョコ」は名称に「チョコ」とあるが、菓子パンである。ミルククリームを挟んだパンをチョコレートでコーティングした菓子パンだ。

他にも「ブラックモンブラン」(※1)「マンハッタン」(※2)など、福岡のコンビニでしか入手できないものは多々あるが、上に挙げたものは、なぜかすべてチョコレートでコーティングされているという特徴がある。福岡のひとはチョコレートでコーティングしたものが好きなんだろうか?
※1「ブラックモンブラン」佐賀の竹下製菓が製造販売しているアイス。バニラアイスに、チョコレートとクランチがコーティングされている。
※2「マンハッタン」福岡のリョーユーパンが製造販売しているパン。硬めのドーナツパンにチョコレートがコーティングされている。
「マンハッタン」(「ご当地パン『クリームボックス』が来ている」より)
上京した福岡県民あるある その7
スーパーで、生ホルモンとちゃんぽん麺も売ってないなーと思う。
ちゃんぽん麺
東京のスーパーに売ってないなー、と思う食材としては「生ホルモン」と「ちゃんぽん麺」がある。

東京のスーパーで売っているホルモンといえば、ボイルしてあるものがよく置いてあるけれど、牛モツのミックスの生ホルモンなどはまず売ってない。もちろん専門店に行けば置いてあるけれど、普通のスーパーではなかなかないのが現状だ。

ちゃんぽん麺は、生麺タイプものである。東京のスーパーでもたまに見かけることはあるけれど、福岡ほどどこでも売っている。ということはない。

これは、全国製麺共同組合連合会のサイトを調べてみると、ちゃんぽん麺は「長崎ちゃんぽん」として長崎県以外で製造する場合「名産、特産、本場、などの文言を使わず、長崎を表すようなイメージ、写真、文言を付けてはいけない」などの制限があるため、長崎県以外ではあまり製造されておらず、保存がきかない生麺タイプの麺は九州北部以外ではあまり流通しないのかもしれない。
上京した福岡県民あるある その8
醤油が甘くなくて衝撃を受ける。
「うまくち」というのが甘い醤油だぞということらしい
上京した福岡県民は、東京で醤油を味わった時に「甘くない!」と衝撃を受ける。九州の醤油は甘いのだ。
ごらんください「ぶどう糖果糖液糖」の糖が三つ並ぶさま、さらに、みりん、甘味料(甘草、ステビア)まで入っている。複雑すぎる甘み!
ただ、甘い醤油に関しては好みの差がはげしく、とくに甘い醤油を味わったことがない東日本の人に「こんな醤油じゃ食べられない」といわれると、すこし悲しい気持ちになる。
逆に、九州出身でも、甘い醤油が苦手なひとは、上京して味わった甘くない醤油のうまさに感激するという。
上京した福岡県民あるある その9
「空港まで地下鉄ですぐ」の感覚で失敗する。
福岡空港と博多駅、地下鉄で10分もかからない
福岡空港とJR博多駅の近さはすごい。市街地に突然巨大な空港が存在しており、JR博多駅から地下鉄で数分で到着してしまう。

そんな福岡空港は福岡市民の自慢でもあるのだが、上京したときに、羽田や成田をそんな感覚で捉えていると、うっかり飛行機に乗り遅れそうになってしまう。

羽田はまだしも、成田は、空港名に東京が付くくせに所在地は千葉県である。福岡で言うと、佐賀空港まで行くようなものである。

ちなみに、距離感覚のズレに関していうと、北九州出身のHさんは、上京するまで、津軽海峡の幅は、関門海峡ぐらいだと思っていたらしい。「海底トンネル通せる程度の幅だったらアレぐらいだろう」という、認識である。
上京した福岡県民あるある その10
東京は独身男性が多い。福岡は独身女性が多い。
若い女性が多い福岡
上京した福岡県民は、東京は福岡に比べて若い独身女性が少ない……と感じるらしい。

福岡には、九州各地から、進学や就職でかわいい女の子がぞくぞくと集まってくるという。

それは「東京には行かせられんが、福岡なら許す」という親御さんが多いからで、女の子も、わざわざ上京しようと思わない子が多く、結果、福岡に若い独身女性が集まることになる。

実際、人口統計を調べてみたところ、福岡市は人口156万2千のうち、女性が82万4千9百で、女性比率が52.7%である。東京が、50.6%であることを考えると、東京に比べ、福岡市は女性の比率が統計的にも高いといえる。
上京した福岡県民あるある その11
出会った人が「九州出身」とわかると、県が違っても連帯感を感じてしまう。
遠く離れた東京で「九州出身」という人に出会うと、なぜか感じてしまう連帯感。とくに、島として海にかこまれた地域であるがゆえにその傾向はつよいかもしれない。

実際に九州出身のデイリーポータルZライターの地主くんは、九州出身という学生は必ずおごるという。自身が住んだことのない熊本出身の学生もおごるという。

鳥取出身のぼくが、山口出身の学生を「同じ中国地方だから」という理由だけでおごれるかと思うと、ちょっと考えてしまう。

普段気づかない違いに気づく「上京」

以上、上京して感じる福岡県民あるあるをまとめてみた。

聞き取り調査にご協力頂いたみなさま、ありがとうございました!
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