店から栃木県小山市の若駒酒造まで走る
今回走って訪問するのは栃木県小山市小薬にある若駒酒造。
後ででますが、蔵の建物も歴史を感じる佇まいです。
創業万延元年(1860年)。非常に歴史のある小さな蔵です。かつては1000石(1石は180リットル。1升瓶100本分)以上の日本酒を仕込んでいたそうです。現在は100石程度と少量仕込みとなっています。
走ったGPSのログはこのような結果となりました。
経営している店からスタートして環七から赤羽へ。荒川を渡り、岩槻海道を北上して浦和美園駅前を通過。4号線沿いを北上して小山市へ向かっています。
途中、所々で歩道が途切れて引き返したり、コンビニを探してさまよったりしています。
トレランやる人にはかなり便利だと思います。
GPSのログの結果によると、走行距離は89.1kmと出ていたので、ザックリ90kmのランニングとなります。
GPSアプリにはライター松本さんの作った登山用アプリ「
Geographica」を使用。登山用アプリですが、ログインとか要らず、バッテリー消費も軽く、色々な地図が使えてラン用にも便利でした
実はスタート前にどこかに帽子を落とし、やむなく帽子無しでスタート。かなり日焼けした。超長距離の時は、帽子は必携品。
では、出発です。17時半頃に店の前をスタート。
と、ここで蔵訪問時の心得その1。
以前、とある蔵の方から聞いた話ですが、突然蔵にやってきて見学させて欲しいと言う方が結構いるそうです。観光用の見学コースを設けていたり、沢山人のいる大きな蔵ならば対応も出来ます。しかし、多くの蔵は家族経営など、ギリギリの人数でやっています。
なによりも、蔵は観光スポットではありません。仕事場です。オフィスに突然やってきて、この仕事に興味があるから中見せてと言ってきた人がいたら普通断ります。
事前に見学できるのか。できるならばいつ訪問しても大丈夫かなど確認しましょう。
練馬区の江古田にある「
酒の秋山」。お世話になります。
今回は酒屋の店主の方に「搾りたてを汲みに行くが行きますか?」と誘われ、「じゃあ、走っていきます!」という流れで蔵に許可をいただきました。
とりあえず、それどういう事ですか?と不思議がられたそうですが、OK出たので今回のネタとなります。通常直接お願いしても搾りたてを汲ませてもらえることなんてまずありません。ありがとうございます。
意味などない!
では、アポもとったということで走っていきます。
18時20分頃。約5.7km地点、赤羽駅前通過!
19時20分頃。約12km地点、鳩ヶ谷駅前通過!
ちなみに、今回は同行者がいます。この手のネタの際には三脚を持って走り、自分を撮る際にはそれを使っています。同行者有りなので撮影が楽でした。
日本酒系変態ランナー加賀美さん。
こちらや、
こちらの記事でも同行してもらっています。毎度ありがとうございます。
それから、地図を見ればわかりますが、若駒酒造と最寄の駅は歩いて20分ほどです。「はぁ?それなら車じゃなくて電車で行けば試飲しても大丈夫だし。走る意味ワカンネ」みたいな事を言う人が必ずでてきます。
そう、意味などない!走りたいから走るだけ!こまけぇ事はいいんだよ!走ると楽しいんだよ!
という事で走ります。
21時10分頃。約21km地点、鳩ヶ谷駅前通過!
インターチェンジ付近は歩道が途切れるので迷いやすい。
23時10分頃。約32km地点、春日部市市境通過!
補給は基本コンビニですが、コンビニのおにぎりばかりだと飽きるので家から持ってきた塩にぎり。家の飯うまい。
日が変わり2時40分頃。約48.5km地点、茨城県五霞町町境通過!
5時頃。約60km地点、茨城県古河市柳橋の香取神社寄り道。
6時20分頃。約68km地点、栃木県小山市市境通過!
8時30分頃。約84km地点、栃木県小山市大字喜沢の思川温泉到着!
夜通し走り、小山市内の日帰り温泉施設に到着しました。蔵に行く前にここで汗を落としていきます。
と、ここで蔵訪問時の心得その2。
蔵の中には酒を作る為の色々な生き物がいます。麹菌や乳酸菌や酵母など。それを邪魔する余計な菌類は持ち込まないように気をつけましょう。
泥がたくさんついた靴はちゃんと落として。風邪をひいているなど体調不良の人も避けましょう。蔵によっては納豆など強い菌類を食べた人は不可という場合もあります。事前に確認してください。
別に汗をかいているのはいいのですが、帰りの事も考えるとここで汗を落としてサッパリしてから蔵へ向かいます。
歩いて行こう
温泉入ってサッパリ!ビールを飲みたいがここは我慢。
ここから6kmほどはゆっくり歩いて蔵へ向かいます。日本酒を搾る作業は午前中にやっているので、それには間に合います。
天気も上々。栃木はすっかり春ですな。
風呂上がりで喉も乾いたので道中のコンビニで軽く朝食をとります。
ビールの代わりはこれがいい。
通常なら走って風呂の後なので、世界一うまいといわれる走った後のビールと行きたいところですが、それはいけません。
ここで蔵訪問時の心得その3。
蔵は酒造りをしている方々の職場です。酒場ではありません。職場に飲酒して行くなんてのはありえない行為。二日酔いなんてのもあまりいいものではありません。
旅行先で近くに酒蔵があったから見学に行こうなんて場合も、こちらは旅行でも向こうは仕事中。売店でその蔵の酒を買うだけならともかく、見学の際は前日から体調を整えて向かいましょう。
ビールが飲みたいというものあるが、甘くないものでシュワシュワと喉を刺激されるだけでも結構満足できる。
蔵到着!
夜間走行中は気温が5度ぐらいまで下がりちょっと寒かったですが、日がのぼるとかなり暖かくなってきました。
地方は道が大体車仕様で、突然歩道が切れていて歩くのも走るのも困る。というか、歩いている人がほとんどいない。
歩くこと約1時間。10時50分頃とうとう若駒酒造に着きました。
酒汲むぜ!
途中で動画を撮って余裕のペースで走っていたため、予定よりも若干遅めの到着です。まだ搾りは終わっていなかったので間に合いました。
どの建物も歴史を感じます。
若駒酒造の蔵の建物は文化庁の登録有形文化財に指定されていて、ドラマ「JIN 仁」の撮影にも使われたそうです。
酒のいい香りがする。
佐瀬式の搾り機。現在主流の薮田式よりも圧がやさしくかかる。
こちらが若駒酒造で日本酒を搾っている搾り機。佐瀬式と言われる形のもので、発酵して出来た酒と酒粕が混ざっている「もろみ」を布の袋にひとつひとつ入れ、それを槽(ふね)と呼ばれる下の木枠に入れてゆっくりと上から圧をかけて搾ります。
量がしぼれず手間もかかりますが、この搾り機でしぼる方が、風味が損なわれにくいと言われています。
搾りたての日本酒。無濾過なので白く濁っている。
そして、搾った酒は下の槽口(ふなくち)から出てきます。これが搾りたての日本酒。無濾過なのでオリが入り白く濁っています。静かに置いておけばオリが下がり、澄んだ色になります。
ここから飲みたいところですがそれはダメ。
今回はここから直接瓶に日本酒を汲ませてもらいます。さて、どんな味なのか。
と、ここで蔵訪問時の心得その4。
蔵訪問心得その4
タンクのお酒は基本そのまま飲めません。
酒造内で働く以外の人は、蔵から出荷された(出荷の手続きがされた)もの以外、基本的に飲むことはできません。酒の税金に係わる法律は色々厳しく、出荷量が厳密に管理されています。
搾って瓶詰めにもされていないような日本酒を、蔵人以外が飲んでしまうと税金を払わず販売したと思われるかもしれません。
蔵にあるタンクの量が細かい数字なのは、どれだけ酒が造れるか一度水を入れて量っているからだそうです。
お猪口1杯ぐらい誤差にもならない程度の量なので分からないだろうなんて思われますが、そこはネット社会。噂では税務署も今はネットをしっかりチェックしているらしい。
「○○酒造でタンクから飲んでいます!」なんてSNSに写真と共にアップしたりすると、色々面倒な事になる可能性があります。くれぐれも酒造内での写真撮影は気をつけましょう。蔵の方にタンクの酒や、流れ出てきたのを飲みたいなんてお願いもやめましょう。
搾りたて日本酒。柑橘系の爽やかな甘さ。シュワッシュワだね。
ということで、搾って瓶に詰めたばかりの試飲用の酒を用意していただきました。
こいつはうまいな。
メロンのような、グレープフルーツのような甘い香り。爽やかな甘味と軽快な酸味。でもしっかりと米の旨味を感じる。搾りたてのピリピリとくる活性感も心地いい。実にうまい酒です。搾りたて以外にも、蔵の定番酒や熟成酒も試飲させていただきました。
と、ここで蔵訪問時の心得その5。
蔵訪問心得その5
飲み屋じゃないです。試飲は程々に。
試飲はあくまで試飲です。ガバガバ飲むものではありません。タダ酒だなんて言って飲みまくるのは論外。色、香り、味を見て、どんな造りの日本酒なのか蔵人に話を聞いてみましょう。
蔵の方はサービス精神旺盛な方が多いので、ついあれやこれや出してくれることが多いですが、そこは節度をもって。静かに酒を試しましょう。
瓶を落としたら多分下の酒は全部買い取り。緊張する。
では、いよいよ直接の瓶詰めです。直詰めと書かれた日本酒でも、注ぎ口から直接入れるのは時間がかかり効率が悪いのであまりやりません。ある程度の大きさの桶に一度ためてから瓶詰め用の機械を使って入れるのが普通です。
今回は槽口から直接汲ませてもらえました。最高にフレッシュな日本酒です。
2本瓶詰めして購入。
さあ。これを持って店に帰ろう(電車で)。と、言いたいところですがそれはできません。
と、ここで蔵訪問時の心得その6。
蔵訪問心得その6
蔵でその蔵の酒が買えるとは限らない。
酒を造るのには酒造免許が要りますが、酒を売るのには酒販の免許が必要です。酒造の免許があると酒販もできるそうで、蔵の方が蔵で直接酒を売ることはできます。しかし、酒屋や問屋に出荷するだけで小売りはしていない蔵も数多くあります。多くの場合蔵の近隣の酒屋で売っているのでそこで購入できます。取扱店を聞きましょう。
直ぐに電車で帰り酒屋に引き取りに行く。
今回詰めた日本酒は、搾りたて日本酒を汲む話に誘っていただいた酒屋から購入することになります。じゃあ、その人からこの場で買って、それを持って帰ればいいのではと思いますがそれはできません。
午前中に瓶に詰めて、その日の営業開始前には詰めた物を購入出来ました。ありがとうございます。
酒販の免許は売る場所が決められているので、好きな場所で売ることはできません。イベントなどでグラスに注いで売るのはいいですが(保健所の許可などが必要な場合があります)、瓶に入った物を売る場合は酒販の免許が必要になります。その際には、酒販の免許を既に持っている人が、イベントの会場がある場所の管轄の税務署に行って一時的な販売の免許を取る必要があります。
若駒酒造の柏瀬さん、酒の秋山の秋山さん。ご協力ありがとうございました!
時々、イベントでこのような手続きをとってないのではと思われる形で酒の販売を行っているのを見かけることがあります。発覚すると非常に厳しい対応をされるので注意が必要です。
酒類の販売にはくれぐれも気をつけましょう。
気軽に行ってください
色々書きましたが、基本的に蔵の方は見学に来てくれる事は大歓迎です。やはり飲んでもらわなくては、自分の蔵の酒を分かってもらうのは難しい。沢山の人にまずは体験してもらいたいと蔵の方は思っています。
交通の便も悪い所までわざわざ来てくれた方を蔵人は暖かく迎えてくれます。しかし、どんな世界でもやっていいこと悪い事があります。聞けば教えてくれます。事前に蔵に電話して確認しましょう。きっと優しく教えてくれるはずです。
走らなくてもいいので酒蔵に行きましょう!面白いですよ。汲んでその日に店に出した若駒は即無くなりました。通常の若駒も店では人気の日本酒。いい酒です。
半年ぶりぐらいのランでしたが足は筋肉痛など起こらず問題無し。突然90kmぐらい走っても大丈夫なランニングフォームに関しては
こちらの記事で。希望があれば指導にいきます。
取材協力
若駒酒造
〒323-0008 栃木県小山市小薬169-1
TEL 0285-37-0429
酒の秋山
〒176-0011 東京都練馬区豊玉上1-13-5
TEL 03-3992-9121
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