どうもそれが世間一般の評価らしい
以降、思い出しては色んな人に「家で豚足食べる?」と聞いてきた。しかし、答えは決まって、
「食べない。っていうか食べたことない。スーパーで売ってる?見たことない」
であった。
ホントかよ。
近所のスーパーで普通に売られている例。東京都江戸川区である。内臓肉のコーナーに置かれている。
「焼肉屋で食べた」とか「居酒屋で煮たのが出てきた」なんて話はあったが、家で食べる人は非常に少ない。
能動的にスーパーで買ったことがある人はほとんどいない。大体100人に1人くらいだろうか。
おかしい。どこでも売ってるのに。
みんな気づいてないだけで、野良猫や野良鳩と同じくらい、この世は豚足に満ちている。君等には豚足が見えてないのか!
このスーパーでは平台にズラッと並んでいた。需要があるんですよ!
そもそもなんで僕に豚足を食べる習慣があるのかというと、実家で夕食のおかずとして普通に出てきたからだ(千葉県の一般的な日本人家庭ですよ)。
多分あれは父の好物だったからだ。家ごとに違う謎の食文化は、ひも解くとその家の父親のせいだったりする。
それでちょいちょい食べていたので、家を出て以降も自分で買って食べていた。
こんな感じのパッケージで、大体300円くらい。
中身を出すとこんな感じ。ボイル済みで半分に切られている。
どう食べるのか?
そもそも、豚足を食べたことがないという人も多いらしい。となると当然、食べ方も味も分からないだろう。
仕方ないので、基本中の基本から説明したい。まさか豚足の食べ方を人に説明する日が来るとは思わなかった。
手で引きちぎる。
いきなりショッキングな説明をするが、豚足を素手で引きちぎる。関節部分に指を滑り込ませ、ゴキンと外せばバラバラになる。
バラバラにして、それを器にドカッと盛って食卓に出してもいいのだが、それだと食べにくい。
手づかみでかぶりつくと、手がベタベタのヌルヌルになるのだ。食べてるときに無言になるのはカニに似ているが、カニと違って脂のヌルヌルなのでたちが悪い。
そこで、僕は肉と骨をこの段階で分けちゃうことにしている。
骨と肉を分ける。ちょっとした『豚をさばく気分』を味わえて楽しい。
骨に沿って包丁を入れ、肉をそぎ落とす。こうしておくと箸で食べられるので手が汚れない。
豚足を食べる上での重要なライフハックなので覚えておいてほしい。
皿に盛りつけるとこうなる。
ほら、おいしそうでしょうが!
辛子酢味噌を付けて食べる
豚足の食べ方はいろいろあるが、そのまま食べるのがオーソドックスというか、まずは基本である。
たいてい辛子酢味噌が添付されているので、それをつけて食べるとよい。
これをこのままパクッといく。
辛子酢味噌の味はどことなく朝鮮系の味で、それが豚足によく合う。麦焼酎なんか合いそうな感じである。
通常、パック詰めされた豚足は下茹でされているので臭みなどもないし、脂っぽさもない。
個人的には、この味を知らないとかマジかよって感じである。
次のページではほかの食べ方を紹介します。
辛子酢味噌、絶妙に少ない問題
ところで、豚足についている辛子酢味噌だが、どうも量が少ない。
コレ。
1人で食べるにはまぁいいんだけど、複数人で食べると間違いなく足らなくなり、辛子酢味噌の乱が起きてしまう。
楽しいはずの豚足タイムが台無しである。
おいしいんだけど、すくねーのよ。
そこで、『味噌だれの素』である
利根川商店の『味噌だれの素』。こいつはいい。要は唐辛子が入った味噌で、いろんなタレのベースになる。
一瓶570円くらい。そこそこの値段するが、長持ちするのでコスパは良い。
冷ややっこにちょっと乗せると酒のアテにいい。
マヨネーズを混ぜるときゅうりなんかに合うし、そのままでもうまい(かなり辛い)。焼き鳥の『カシラ』につければ気分は東松山である(※)。
※…埼玉の東松山には、豚のカシラを焼き鳥みたいに焼いて辛い味噌をつけて食べる『焼き鳥』というややこしい食べ物がある。
スーパー等で見かけたら買いです。
味噌だれの素に、みりん、酢、砂糖、ごま油を適量加えて混ぜれば、豚足にピッタリの辛子酢味噌が出来上がる。
各材料の量は好みで。味噌だれの素がない場合は、味噌、豆板醤、ゴマ、おろしニンニクを混ぜれば近いものが出来ます。
これまでチビチビしかつかえなかった辛子酢味噌だが、自分で作れるとなるとケチる理由などない。たっぷりつけてもいいのだ。
豚足ルネサンスの到来である。
豚足好きなら夢の、辛子酢味噌付け放題。
炙り豚足辛子味噌掛け
豚足をそのまま食べるのもいいが、炙って温かいうちに食べるのもよい。
アルミホイルの上に並べ、グリルで焦げ目がつく程度に炙る。そこに焼き鳥のタレや辛子酢味噌を掛ける。
たまらんおいしさで、日本酒が絶対に必要。
ゼラチンが溶けて全体に柔らかくなり、焦げた部分が香ばしい。冷めるとゼラチンが固まって全体がつながるのも面白い。
おでんに入れるのもよい
沖縄のおでんには普通に豚足(テビチ)が入っていて、コンビニのおでんにも豚足があるのだとういう。
なので、ちょっとおでんをこさえて豚足を入れてみた。
絶対おすすめ、おでんに豚足。沖縄では定番らしい。逆に言えば、沖縄以外ではあまりおでんに豚足は入れないので、沖縄の人は本土でおでんを食べるときにショックを受けないように。
ホロッホロになるのだ、豚足が。煮込みすぎるとおそらくスープに溶けてしまうので、煮込むときはあまりぐつぐつさせず静かに超弱火で煮込むとよい。
もちろんスープにもコラーゲンが溶け込む。コクが増し、がんもなども汁を吸ってうまくなる。豚足シナジーである。
柚子胡椒で万全。
骨は煮込んでスープを取る
最初に肉を削いであまった骨。これをそのまま捨てるのはもったいない。煮込めばいいスープが出るのだ。
たっぷりの水で煮込む。今回はシャトルシェフ(断熱鍋)を使ってみた。
シャトルシェフで24時間煮込んだ状態。8時間ごとに火を入れて煮立たせた。
シャトルシェフで24時間煮込んで、さらに普通の鍋に移して1時間ほど中火で煮込んだ。
筋や軟骨はすっかり溶けて白濁スープになった。う、うまそう。
家庭で豚骨スープらしきものを作るのは、実は案外簡単。
一晩室温において置いたら固まった、それほどにゼラチンが濃いのだ。
プルップルのコラーゲンスープ。
このスープで作る豚骨ラーメンは絶品である。次のページにつづく。
いきなり完成、豚足豚骨ラーメン
ベースになってるのは、チルドの『行列のできる店のラーメン博多コクとんこつ 濃厚炊き出しスープ(日清食品チルド株式会社)』。行列のできる店のラーメンシリーズはだいたいハズレがない。
具は自分で用意しなくてはいけない。
スープの素を溶かすのに、通常はお湯を250ml使うのだがそれを豚足スープにする。すると、超濃厚なスープになるのだ。
トロトロのスープ。
優勝できる
そもそも濃厚を謳っているスープを豚足スープで作るのだ。ダブル濃厚。優勝間違いなしの濃さだ。
麺に絡みまくって、一口ごとにスープがぐいぐい減っていく。パワー系スープである。
非常においしゅうございました。
最終的に、骨はこうなる
豚足スープは1回や2回だけでなく、水を足して煮込むことで3,4回取れる。
徐々に薄くなるのだが、カップ麺を作るのに使ったり、創味シャンタンを混ぜて中華風スープにしたり、色々な使い道がある。
そうして、関節の軟骨などすべてが溶け切ると、下の写真の様にきれいに骨だけが残るのだ。
豚足をここまで食べつくしたことがあるだろうか。
動物の骨格については素人なのでよくわからないが、かみあう骨を探すとなんとなく足っぽいものが出来てくる。
ここまで食べて、『食べきった』と言えるのだ。
そのまま食べてよし、焼いてよし、煮込んでよし、食べ終わったらスープを取り、最後は骨のパズルで遊ぶ。
豚足ってなんて素晴らしい食べ物なんだろう。
食べたことない皆様におかれましても、今後積極的に豚足を食べることをお勧めいたします。
スーパーの精肉担当各位におかれましては、今すぐ豚足をいつもの倍量発注してください!
トントントンソク
豚は鳴き声以外全部食べられるんだっけ。その視点からいけば足なんてまさに食べられる部分の直球ど真ん中である。だって肉だし。
だが、聞くところによるとスーパーで豚足を売ってるかどうかって、地域差の問題でもあるらしい。東京都江戸川区のスーパーでは普通に売ってるけど、他の場所ではどうですか?
これは猫足(ニャンソク)。たまに「美味そうだなぁ」って思ったりもする。
なお、上野のアメ横で売ってるのは知ってるので教えてくれなくて大丈夫です。