「あー、見たことある! でも買ったことないわー」
事前に、知り合い10人ほどに、七味もやしを知っているかを聞いてみた。
最初は誰もが「え、七味もやし?」となる。
しかし、魚肉ソーセージのようなパッケージに入った七味もやしの写真を見ると「あー、見たことある! でも、買ったことないわー」と言う。
買ったことないというひとの気持ちもわかる。ぼく自身、スーパーで見かけても、「開けるの面倒くさそうだな……」という思いが先に立ち、今まで一度も買ったことがなかった。
しかし、まわりに買って食べたことがあるひとが、これほどいない商品も珍しい。スーパーでよく見かけるのにである。
買って食べるしかない
というわけで、七味もやし界のさきがけとなるべく、実際に買って食べてみた。
近所のスーパーで購入 1個129円
キッチンバサミが必須のようだ
調味液でパンパンになった袋に穴を開ける……汁があらゆる方向にピューッと飛び出るであろうことは想像に難くない。
エプロン装着の上、深めの容器を準備して開封を行う。
中身は深めのタッパーにあけたいと思う
固唾を呑む、緊張の開封……
そんなに飛び散らないぞ!
デロデロデロー
確かに開けにくい。しかし、袋を持つ方の手にあまり力を入れず、添えるぐらいのきもちでそっと持って、ゆっくりはさみで切り込みを入れていけば、気になるほど汁が飛び散ることもない。
これは……
さっそくひとくち食べてみる。
鰹風味のピリ辛の調味液にしっかりつかってしんなりした豆もやし。ごま油の風味がよいアクセントになっている。
そしてなにより、もやしのシャキシャキした歯ごたえと、豆部分のコリッとした食感が絶妙で、なかなかうまい。
えーと、ナムルだな……
これはつまり、ナムルだ。ただ、ナムルよりも味がしっかりついていて、シャキシャキコリコリの食感が、ちょっとやみつきになる感がある。
なぜ今まで買わなかったのだろう。ビールのアテにもピッタリじゃないか?
まあ、こうなりますわな
あぁ、うまいなこれ
近所のコンビニでビールを買ってきた。
この日は風が強く、暖かいんだか寒いんだかよくわからない天気だったが、七味もやしのうまさは心にしみた。
ただ、見た目のダメさはすさまじい。
缶ビール一本で七味もやし一袋をたいらげてしまった……。
メーカーに気になることを聞いた
しかし、この商品、きになる箇所がいくつかある。
「岐阜県産」とはどういう意味なのか?
いちばん気になるのが「岐阜県産」というところだ。わざわざ岐阜県産をアピールするのはなぜなのか?
デイリーポータルZ編集の石川さんが、岐阜県出身なので聞いてみたところ、特に岐阜の名物と、いうわけでもないらしい。ただ、実家で何度か食べたことがある気がする……とのこと。
袋にお客様相談室の電話番号が書いてあったので電話して聞いてみた。
--御社の「七味もやし」初めて買って頂いたんですが、大変美味しかったです。
「ありがとうございます」
--ところで、パッケージに書いてある「岐阜県産」なんですが、これはこの七味もやしが岐阜の特産品ということなんでしょうか?
「いえ、そういうことではなく、この七味もやしを作っている工場が岐阜にございまして、もやしの栽培から加工まですべて岐阜の工場でしていますという意味で『岐阜県産』としております」
確かに、商品の下にそれらしきことが書いてある。
「もやしの発芽・栽培から加工まで一貫生産」だそうです
この手の調味液に浸したナムルのような惣菜は全国各地の食品工場で幾つかつくられているらしく、ぼくの家の近所のスーパーがたまたまこのメーカーのものを仕入れていた。ということらしい。
したがって、七味もやしが岐阜特産……というわけでもないようだ。
--正直に言いますと、パッケージがちょっと開けにくそうだなと思っていままで敬遠してたところがあるんですが……上手い開封の仕方ってあったりします?
「そうですね、やはり深めのボウルに、切り口を下にむけてゆっくり切っていただくしかないですね……」
--このパッケージで包装されているのはなにか理由があるんでしょうか?
「いや……とくにはないんですが……むかしからこうだったので、詳しいことはちょっとわからないですね」
この、豆もやしの惣菜は他のメーカーでも金具で両側がとめられたパッケージであることが多いが、なぜそうなのか……はちょっとわからなかった。今後も、調査は継続していきたい。
--そのまま食べるのも大変おいしかったのですが、メーカーの方のおすすめの食べ方はございますか?
「そうですねー、玉子焼きにいれて食べていただくというのがひとつございますね、もやしと調味液をすこしだけ入れていただいて……」
——あぁなるほど。もやしそのものに味が付いているので、淡白な味のものと合わせて食べるのはありですね。冷奴にのせて食べるのもよさそうですね……。
で、作った。
七味もやし入り玉子焼き
もやしが垂れてるけどきにしないで!
玉子焼きは、切り分けるさいもやしの繊維がきれいに切れず、形が崩れてしまうので、きれいに作りたいひとは、玉子に混ぜる前にもやしをすこし刻んだほうがいいかもしれない。
見た目が気にならないのであればそのままでも構わない。
しっかり味が付いているので、何もたさなくてもうまい。ただ、玉子焼きの味のうまさ以上に、食感がおもしろい。シャキシャキコリコリに加えて玉子のふわっとした食感がプラスされて、食べてて楽しいのだ。
さすがにメーカーがおすすめするだけある食べ方……。
冷奴は、キムチもやしをのせてみた
続いて、豆もやしのせ冷奴。
見た目のうまさは、さきほどの玉子焼きに比べると100点満点ではないだろうか?
実際の味はどうか?
酸っぱいな
豆腐なので、味がはっきりしてそうなキムチもやしの方をのせてみたのだが、キムチもやしの酸味が豆腐にあまり合わない……。
けっしてマズいわけではないのだが、こんなもんか。という感は否めない。
妻にも試食してもらったが「めんつゆをかけたい」と、元も子もないことを言い出した。
キムチもやしはそのまま食べる方がいいのかも……。
よく見るけど絶対かわないだろうなーってものを買いたい
スーパーには「これ、よく見かけるけど、買ったことないな」という商品がけっこうある。
以前より、そういう「絶対買わない商品をあえて買って試してみる」という活動を個人的にしているのだが、七味もやしは久々のヒットであった。
スーパーにおいてあるものはせいぜい数百円のものである。その数百円で知られざる世界を知ることができるのはかなりお得だ。
生活の醍醐味である。