たくさんの人がいる熱海駅
東京から新幹線で1時間弱。あっという間に熱海に到着した。改札を出てその人の多さにまず驚く。
新宿南口、じゃなくて熱海。すごい人だ!
温泉地といえば、静かなまちに旅館が両側に並び、そのなかを浴衣姿で下駄を鳴らし「今日はどの温泉に入ろうか」と吟味する、そんなイメージだった。
しかし熱海駅前には2本の通りからなる大きなアーケードあり、なかなかの賑わいを見せていた。
浅草? いやここは熱海だ。
浴衣で歩いている人はいなかった。それに、観光案内所の方に聞いた所、日帰り温泉をやっている所はまちのあちこちに散らばっているようである。
とりあえず近いところに向かうことに。
途中ベタに温泉まんじゅうを買ってみる。でもなんか、温泉地のイメージとちがう。
まるでそこは浅草だった。落ち着いた温泉地の饅頭ではなくて、浅草の仲見世で人形焼を買う気分だ。
旅情、あるかな?
自分で作れる温泉卵
しかしアーケードを抜けると、人の波も一気に落ち着き昭和の懐かしき時代を思わせる町並みに。目的地へと角を曲がると、もくもくと湯気がたっている場所を見つけた。
湯気がたつ所でなにかしてる。聞くと温泉卵を作れるらしい。いいよ、これが温泉地だよ!
急きょ近くのコンビニで卵を買ってきた。ザルに入れて蓋するだけ。
「半熟がいいなら8分だね」とやり方を教えてくれた女性は、夜中に100個くらいつくりに来たこともあるというツワモノだった。
ちなみにいつもは目の前のお店で生卵が売られていて、ここは列を成しているらしい。
待つこと8分。絶妙なとろみができた! うんまい。
コンビニで一緒に買ってきた塩をかけ、ほかほかの温泉卵をいただく。ただザルに乗せて待っただけだが格別である。
ひと風呂めは元旅館「日航亭 大湯」
温泉旅気分がようやく盛り上がってきた所で、目的地に到着。かつて家康をはじめ徳川家が御用達だったという熱海温泉。超楽しみである。
本日のひと風呂めは「日航亭 大湯」。1000円、源泉かけ流し。
2つある浴場は、日替わりで男女が入れ替わるらしい。私が入った方は小さめの半露天風呂と、20人くらい入れそうな大きいお風呂だった。こちらは窓から太陽の光がキラキラと差し込み明るい。
足を入れるとちょっとピリピリとする程度の熱さでちょうどいい湯だ。時間的なものか空いていたためノンビリつかることができた。
昔は旅館だったようで、休憩スペースがある。食事もとれる。
休憩所にはマッサージチェアの他に囲碁や将棋が置いてあるのがいい。こういう脱力スペース、ずっと残っていて欲しい光景だ。
かき集めよう、旅情
海へと向かう途中にある熱海銀座商店街。
ひと風呂浴びたらお腹がすいたので古い喫茶店で食事をとることにした。
待っている間、コスプレマニアのひろみちゃんと戦う。しかし麻雀のやり方がわからなくてすぐ負けた
たまたま入った喫茶店「パインツリー」は、テーブルが麻雀ゲームになっていた。単調なゲーム音楽がテーブルから流れていておもしろい。店内は割と広く、若者からお年寄りまで半分以上埋まっていた。
ハンバーグのホットサンド850円。外はカリカリ中はジューシー。マヨネーズとの相性が良い。
子供の時以来久々にホットサンドを食べた。他にも色々メニューはあるのに、あえてこういうのを選んでしまうのが温泉旅の醍醐味。旅情にひたりたくて、自分で懐かしさをかき集めてるようである。
ベタに射的もやる。10発で500円。
さらに旅情を深めるため、遊技場にも入ってみた。射的やスマートボールがある。
私はそれなりにテンションがあがり、当たると「やった!」などと声に出して喜んだ。
しかしお店のおばちゃんはなぜか終始、無反応。「コツとかあるのかなあ」などといくつか言葉のタマを打ってみるも、彼女に一度も当たる事なく事務的に景品を渡され店を出た。寂しいが、これも旅情か。
いらないと言えなかった景品。薄汚れている。
アベックが似合う海岸にやってきた。
日本のハワイでゆで卵。本当にこれうまい。
すぐ吹き飛ぶ旅情
奥にはヤシの木が並んでいて、砂浜は狭いながらに綺麗である。さすが日本のハワイ。しかし道路沿いに並ぶホテルや、山の傾斜に乱立するマンション群がなんとも人工的でせっかくかき集めた旅情が吹き飛んだ。
まあこれはこれで面白い眺めだけど。
周遊バスで山の上へ移動し熱海城へ(900円)。なんと観光用に作られた城である。
品が無いなと思いながらも乗ってしまう金のしゃちほこ。エレベーター内も金色だった。
熱海城からの大パノラマは、駅前の観光案内で聞いていた。熱海市街地はもちろん、海に浮かぶ初島もしっかり見える。しかもここ、足湯につかりながら眺めを楽しめることができるのだ。
熱海を一望。
今日のふた風呂目(温泉じゃないけど)。これは気持ちいい!
そしてなんと、地下のゲームセンターがぜんぶ無料!
江戸時代のコスプレをしたり、ひと通り城の中を楽しんだのだけど、驚いたのが地下一階にあるゲームセンターが全部無料だったこと。子供と行ったらなかなか帰れないこと必至だ。
しかし同じフロアには大人限定の春画コーナー、1階には無料マッサージ、と大人の欲にも対応している。なんだかノリが良すぎる、バブル時代の香りが残る城であった。
そして落ち着く起雲閣へ。
またまた旅情
バスで山を下り、大正時代に個人の別荘として建てられた「起雲閣」へ寄ってみることに。
のちに旅館として生まれ変わり、太宰治や志賀直哉、谷崎潤一郎など日本を代表する文豪たちに愛されたという場所である。
文豪気分が味わえる。残念ながら今は旅館として使われていない。
これがけっこうな広さで、ひと部屋ひと部屋内装のこだわりに感動する。また、廊下のところどころには生花が飾られ、いい香り。そういった所から今でも格式の高さが感じさせられた。その辺は熱海城とのギャップがすごい。
和洋取り入れた建築が見られてとても趣のある場所だった。
ローマ風の豪華な浴場があった。浸かりたかったなあ。
さて、気づけばもう夕暮れ時。最後にもうひと風呂浴びて帰ろう。と、ここで注意点。日帰り温泉は旅館でやっている事がおおく、宿泊客を優先するため早めに終了している所が多いみたいだ。
いくつか電話で探し、見つけたのは「大月ホテル和風館」だった。
大月ホテル和風館。1800円。見るからに高そうな宿だ。
こちらは着替える所も広々とし、アメニティも良い物がそろっていた。広めの内風呂の奥には樹齢300年の高野槙を使った露天風呂。そこまでの通路には竹が生えていたりしていてとても優雅であった。
あがってみると、お肌が温泉卵のようにツルツルになった気がするが気のせいだろうか。
最後は温泉卵をつまみに自販機で買った氷結を。このあとマッサージもして、旅の疲れは無し。これはいいわ。
熱海で板東英二
乱立する高層マンションや風俗店・秘宝館の存在など、オトナの為に作られた「人工的歓楽街」という一面がある一方で、歴史ある温泉や、文豪が愛したという起雲閣はとても良かった。熱海は歓楽街と旅情、その2つのギャップを楽しむ所かもしれない。
そしてこの旅で最も言いたいことは、温泉卵を食べながらの熱海はさらに満足度が高かったということだ。この日、板東英二ばりに6個も食べてしまった。