特集 2015年11月2日

サイゼリアみたいなインドカレー居酒屋

サイゼリアみたいなインド・ネパール料理屋のタンドリーフィッシュ(アジ)。全部最高。
東中野で友人と飲み屋を探していたら、偶然にも素晴らしい店に出会うことができた。

その店は本格的なカレーが中心のインド・ネパール料理屋なのだが、店舗がどうみても居酒屋の居抜き物件(一部メニューもそのまま)。そして値段設定はサイゼリアレベルなのだ。

いやあ、すごかった。あまり深く考えず、できればザーッと一気に読んでいただきたい。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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東中野で出会った『インドカレー ナン居酒屋』というパラダイス

どこで飲もうかと街をウロウロしながら探し回っている時間が好きだ。ネットで検索とかはしないで、たまたま通りがかった店を外観だけで判断し、値段や雰囲気を予想する自由。

この日も友人のパリッコさん(大衆酒場ベスト1000という連載をしている酒好き)達と3人で東中野をぶらつきながら、赤ちょうちんのぶら下がった居酒屋を前に「ここはキープにしましょう」とか言いつつ、もう飲み屋なんてないエリアまできたところで、ピンとくる店に出会った。

やっぱり焼きとんがいいねとか、軽く立ち飲みでいいんじゃないとか、いっそコンビニで飲もうよとかいっていて、なぜか『インドカレー ナン居酒屋』と書かれたタラキッチンという店である。
別にカレーが食べたいわけではないのだが、なぜかピンと来たのだ。
ナン居酒屋ってなんだろうと思いながら、とりあえず入店。

店は20席くらい。働いている方はインド人っぽいので本格的な店なのだろう(あとで聞いたらネパール人でした)。

内装もインドっぽさに溢れているが、どことなくインド料理屋を始める前にやっていたであろう居酒屋の気配が見え隠れする。

後々、この居抜きっぽさが店の隠し味となっていったのだ。
察するところ居酒屋の居抜き物件だろうという疑惑は、メニューを読むことで確信へと変わっていく。

居酒屋とネパールが融合したドリンクメニュー

とりあえずは飲み物を頼もうとドリンクメニューを眺める。ビール、ウイスキー、カクテルなどが幅広く並ぶ普通の居酒屋メニューのようだ。

本格的な外国料理の店で飲むと高くつきがちだが、ここならチェーン居酒屋と変わらなそうで安心する。

わざわざインド料理屋を選んでおいて普通でよかったっていうのも変な感想だが、なにはともあれ生ビール299円は嬉しい。

とりあえず生で!
生ビール299円、ハイボール290円という安心の値段設定。
あまり考えないで注文してから、もう少しメニューを眺める。

あ、やっぱり普通じゃなかった。
さりげなくネパールラム!
ラムといえば中南米のイメージだが、ネパールラムというのがあるのか。

さらに目線を下げてみると、アジアンリキュールカクテルというコーナーもあったが、そっちは全部ラッシーだ。その雑な解釈、嫌いじゃないぜ。
ラッシーがゲシュタルト崩壊していく。
飲む前からメニューを眺めているだけでもう楽しい。居酒屋メニューに溶け込んだ国際色の味わい深さで酒が飲める。うっかり「名犬ラッシーください」とか言いたくなる。
癖のある英語の書き方と、その流れを汲む右下の筆記体っぽい日本語が素晴らしい。
そば焼酎が雲海じゃなくて、だったんそば焼酎そむらす。もう最高だ。
店内の壁に貼られたドリンクメニューをみていると、どうやらインドよりもネパールの要素が強いようだ。

今まであまり接点のなかったネパールという国が、急に身近な国のように感じられた。ネパールにもそば焼酎があるなら好感度アップだな。
静かにテンションが上がっていくパリッコさん。内に秘めるタイプの酒好き。
しばらくして、ビールと共に運ばれてきたお通しが、まったく分からなかった。

クルンと丸まったパリパリの春巻きの皮みたいなものなのだが、これが予想以上にスパイシーでうまい。
中身はなにも入っていない。パリパリという言葉がどんな料理よりも似合う。
安いビールを飲みながらつまむ異国情緒あふれる知らない料理。この組み合わせこそ我々が求めていた東中野の飲み方だ。

野球でいったら記録よりも記憶に残る選手みたいな店だねと、同行のパリッコさんと小声で喜び合った。

サイゼリア風ネパール料理

さあ続いてはツマミのセレクションである。外国の料理はメニュー名だけだと内容がわからなくて困ることが多いけれど、ここは写真つきなのでわかりやすい。

わかりやすすぎて、もはや低価格のファミレスっぽくなっている。

もしもサイゼリアがイタリアンじゃなくてネパール料理屋だったら、こんな感じなんじゃなかろうか。
どこかのファミレスっぽいけれど、見知らぬメニューが並んでいる。
メニューをパラリとめくって、ピザもあるのかと思ったらバラエティナンだった。ハワイで食べるスパムおにぎりみたいなものだろうか。

パトゥーラやロティなど、よくわからないけれど本格派らしきメニューに並ぶピザナンというローカリゼーション。どっかにありそうだなと思ったメニューがここにはあるのだ。
ナンって、なんですかね(田中邦衛のモノマネで)。
おすすめサイドメニューは、マサラパパドにウインナーのアヒージョ。ウインナーをアヒージョにするセンスは好きです。
純然たる居酒屋メニューも混ざっている。たぬき豆腐なんて渋いね。天かすがタヌキっていう概念、ネパールにもあるのかな。
「イタリアンじゃないサイゼリア、僕はこういう店が欲しかったんですよ!」と、いとおしそうにメニューを眺めるパリッコさん。
ネパールの蒸し餃子モモと手羽先餃子が隣り合うのは、きっとこの店だけだろう。
たまに飛び出す無国籍料理。日本のネパール料理屋でタイ風のチャーハンで4か国制覇。これがTPPっていうことか。
これは迷うね。攻めあぐねるね。嬉しい悲鳴だね。

素直にネパール料理を攻めるべきか、あえての居酒屋メニュー縛りを楽しむか、いやいやネパールにはないであろうネパール料理(ピザナンとか)に重きを置くか。

必要以上にクネクネしながらつまみを注文。
サラダ感覚で食べるスパイシーな芋の煮っ転がし。
一品ずつ頼んだら鳥料理がかぶった。
スウィートチリソースをつけてたべるチーズ入りのモモ。肉汁が溢れだすのよ。
簡単に説明すると、どれもうまい。

本場の味をまったく知らないので、どこまでネパールの味なのかはわからないけれど、日本の東中野という場所で、居酒屋の居抜き物件を使って出せるベストエフォートがこれなんだと、納得できる料理の数々。

これはつい最近できた店だろうと思ったが、オープンしてからもう5年も経つそうだ。その間に増えたり減ったりしたメニューが知りたいぜ。
店員さんはネパール人3人とインド人1人。そして前の店舗はやっぱり居酒屋だったそうです。

アジが右を向いていても楽しい

もう何が楽しいんだかわかんないけど、何が出てきても楽しい。

ネパールラムのソーダ割りを頼んだら、グラスじゃなくてジョッキで出てきて楽しい。

タンドリーフィッシュというのを頼んだら、ふっくらと焼かれたスパイシーなアジが出てきて楽しい。

アジの頭が右を向いていて、それでこそ外国人が焼いたアジだよな、日本の作法とかを学んで左向きにしないでほしいよなと、よくわからない部分で盛り上がって、とにかく楽しい。
甘味があってグイグイと飲めるラムソーダ。
「なんでアジなんだろ?」「アジってうまいですからねー!」という内容のない会話でいただくタンドリーフィッシュ。
入店がちょっと遅かったので、そんなこんなでラストオーダーのお時間になった。

隣のテーブルでは作業着のお兄さんたちがカレーをもりもり食べている。そうだ、カレーも1つくらいは味を確かめたい。

壁をみれば本格的かつ良心的価格のカレーが並んでいるじゃないですか。ライスやナンは別料金だが、それにしても安い。松屋か。
メニュー左の数字が値段だと気が付かない程安い。
店員さんに人気のカレーを聞いて、自分だったら頼まないと全員が口をそろえたバターチキンカレーにガーリックナンをつけて注文。

甘い口当たりながら程よいスパイスを感じるコクのあるカレーに、みじん切りのガーリックがたっぷりと乗った熱々のナン。

さっきまでもうお腹いっぱいだとかいっていたけど、これならもっともっと食べられる。ラストオーダーじゃなかったら、もう一種類試していたことだろう。
呑みの締めにカレーとナンってはじめてだな。
ガーリックがたっぷりのナン、大陸でいったらパンゲアくらいでかいね!
3人で割り勘したら一人あたり1600円とかだった。インド人もびっくり。
そんなこんなで、ニヤニヤしながら店を出たのだった。

なんだか伝わりにくく共感されにくい楽しさのような気もしてきたが、僕は楽しかったのだ。

これで店の良さが伝わっただろうか

この日はデジカメを持ってきていなかったし(写真はスマフォ)、後日また訪れて取材し直そうかとも思ったのだが、ファーストインプレッションの衝撃をそのまま書いちゃうのがいいかなと、その場で取材申請をして一気に書いてしまった。

昼間から夜まで通しで営業しているそうなので、今度は14時くらいからじっくりと攻略したいと思う。
店名のタラは星という意味だそうです。あらあらロマンティック!
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