特集 2013年8月1日

神保町の古書店が薦めるカレー屋

果ての無い(悠久の)神保町の1日
世界一と言われる古書店の街、神保町。

神田古書店連盟に加入している数だけで、なんと158店舗。その数はさらに増えていっているという。

職場が近いので常々「全部周ってみたい」と思うのだがなかなか実行に移せない。…こうなったら気合を入れて、丸1日で全て周ってしまおうか。

あと、せっかく周るのだから何か聞いていこう。
(1日で古書店を周るのが目的の記事ですが、最後に神保町の美味しいカレー屋が分かります)
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

前の記事:地元の人頼りの旅in長野県松本

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1日で周るには1店舗につき4分

仕事の都合で週末しか空いていないので土曜に決行することにした。日曜は休みの所が多いためだ。土曜に休みの所もいくつかあるが仕方ない。

それと、158店の中には卸専門や事務所も含まれていた。それらを引くと、この日に周れる所は135店舗。
神保町の朝は9時から
一番最初に開く9時から、閉店し始める18時まで9時間歩いたとして1店につき4分。この4分には移動も休憩も含まれている。うわー、かなり厳しい。

ただ、隣接していたりビルの中にお店がたくさん入ってるとこもあるし、遅くまで開いているお店もある。それらを考慮すると行ける可能性がある気もする。

体力が残っていればの話だが…とにかくやってみよう。
最初に入った三茶書房の主人は親切
50分経過…おおお~!?

一店目で50分

最初のお店の店主はとても親切で、神保町の歴史や横のつながりなど興味深い話をしてくれた。さらに2階の書斎を見せてもらったりしていたら50分も経過していた。驚きだ。

さっそく予定は狂い始めているけれど、丁寧な対応をしてくれた事で古書店の店主=怖いという勝手なイメージがちょっと減ったのは嬉しい。

よしここから巻き返すぞ!
古書店マップの中でも離れている、水道橋近くの方から周った

せっかくだから質問していく

時間は無いが、ただ店内に入って出るだけではもったいない。そこで、「何冊くらい扱っているか」という簡単(と思っていた)な質問をする事にした。

最後に集計して、神保町にある本を並べたら東京から富士山まで行ける!とかいうよくある見せ方をしてみたい。そう思ったのだ。
毎回入るたびに緊張。奥の方に座る店主が全員怖そうに見える

質問の内容失敗

さっそく結論を言ってしまうが、周ったお店のほとんどの答えが「分からない」であった。何故かというと、店に並べているのは一部で、別に倉庫を持ってて数え切れないから。

それに日によっては数千冊という数の本が出入りするため把握はできないし、新書店と違って管理するメリットがないのだそうだ。それと点数と冊数という数え方があり、それによってだいぶ違うとも言われた。しらなかった…
3店め位からこの質問が失敗だった事に気づき始めた。話しかけるとっかかりとしては使えるとして、もう一つ有意義な質問をすることにしたい。

お薦めのカレー屋を聞いて周ろう(怖くない店主に)

神保町といえばカレー屋の多さでも有名…そうだ、店主お薦めのカレー屋を聞いて行こう。唐突ではあるが、数分で聞ける内容というのはこれ位しか浮かばなかったのだ。
11時半、一度目の休憩。おかしい、けっこう歩いたのに8店しか行けてない。(行ってみたら卸だったりまだ開いていなかったところ除く)
しかし古書店でいきなりカレー屋を聞くのはおかしい。それに今後活用するときの為に、どんな本を扱っているのかや雰囲気はちゃんと知っておきたい。まずは店内を一周だ。

そして先ほどの質問でとっかかりをつかみ、反応が怖くなかった店主にだけお薦めのカレー屋を聞いてみる事にした。
よく通るので見慣れてしまっているけど、外に本棚って珍しい光景だよな
古書センタービルには各階に2つずつ本屋が入っている。一気に稼げるぞ
なかには最初の質問からノーコメントという答えもあり、ソソクサと出る事もあったが、店主の方から古書店情報を教えてくれる事もあった。例えば以下のような感じだ。

神保町古書店情報

・この辺の古書店には実は親戚筋が多いので他の店に行ってウッカリ文句など言ってはいけない

・棚に「買わないなら触るな!」と書くほどの厳しさで伝説の古書店があった。(今はその店は無い。むしろ乱暴に扱わなければどんどん手に取ってくださいといってくれる店主が多かった)

・「いらっしゃいませ」とわざわざ言わない店が多い。無愛想なのではなく、お客さんが居やすいように

・神保町は「ジイさん達の原宿」だ。退職後に定期を買って通ってる人もいる

・奥さんに隠れてコッソリ買っている客が多い

・ディスプレーを褒められると嬉しい←とても綺麗なところがいくつもあった
15時過ぎ休憩。34店舗。足腰が痛い

近いはずなのにすごく遠い

そうやって新しいお店を開拓していく楽しさと、話しかける緊張が入り混じり、精神の疲労はジリジリ積もっていった。

地図上では大した距離進んでいないのだが、店内を一周しているので足腰にも疲労がたまっていく。
16:45頃休憩。44店舗。もう元気がなくなって耳も遠くなってきた
休みたくなるペースも加速していく。とにかく喉が渇き甘いものが欲しくなった。

敷居の高そうなお店が並ぶメイン通りがようやく終わったのが18時。ちょうど一番最初に入った三茶書房に戻ってきた。店主の優しい顔にホッとしてまた少し話こんでしまった。
敷居の高そうなお店とは例えばこういう所だ。難しそうな本が並んでる

目指せ6割

1店だけだが、以前何度か行ったことがあり顔見知りのお店もある。これまで周った感想を言うと、よく頑張ってる、6割目指せ!と励ましてくれた。

6割か。目標は高すぎても低すぎてもストレスが溜まるという。6割くらいを目指すのがいい、とちょうど最近なにかで読んだ。そうか、6割か。だいたい80店舗の計算だな。
重く、ひきずるような足取りだ。だんだん開いている店が無くなっていく…
もうギブアップ!19:30 半分にも満たない60店舗

60店舗に聞いて周った、古書店が選ぶカレー

もっと行きたかったのだが無理だった。

ポツンポツンと開いてる所はまだありそうだが、心は緊張で疲弊しきり、腰が痛くてもう歩きたくないと子供のように悲鳴をあげる始末だ。デパートで散々歩き回って疲れた経験はみなあるだろうが、その10.5時間分と考えれば近い。

そんなに疲れても60店しか行けなかった。いや1時間に約6店も行っているのだから凄いことだ。神保町の古書店の多さが異常なのだ。
苦労して調査した、神保町の古書店店主が薦めるカレー結果
雑誌やテレビでもよく取り上げられているそうだが、あのたくさんの本屋が詰まった古書センター2階にある「ボンディ」が一番人気だった。
この日も長蛇の列。今度行ってみよう

「新世界彩館」の中華風カレーをいただく

普通は1位にいくところ、あまりにも有名そうだったので聞いた中で気になったところに行く事にした。選んだのは、中華風カレーを出すというお店。
角煮が乗っかった中華風カレー。ボリュームも凄いし今までで一番美味しく感じた
ここは冷やし中華など美味しくて来た事があったが、カレーがあるとは初めて知った。中華屋さんなのにカレー、そして、店の奥さんが作ったのが評判でメニュー化したという柔軟さが面白い。

お腹がぺこぺこだったので角煮入りを頼んだ。これが甘めのカレーによく合う!肉も半熟卵もトロトロでたまらない。
ようやく出た笑顔。ほんとに美味しかった!
最初の質問は失敗するし、古書店制覇はできなかったし、足腰は痛むけど、最後に美味しいカレーとビールにありつけたので私は満足だ。

ムリしちゃダメ

改めて一日を振り返ると、古書店同士の横のつながりが面白かった。ディスプレーにこだわってて綺麗だな、と思ったお店同士が実はのれん分けした関係だった、とか。

すぐに出たくなるような怖いお店も正直あったけど、もっと話をしていたくなるお店もたくさんあった。

今度はムリせずゆっくりと周っていこうと思う。
カレー屋の前に疲れを取ろうと、地元の人が教えてくれた銭湯へ。でも腰痛は翌日まで持ち越し
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