特集 2012年10月19日

あの「ハトヤ」に行ってみた

ハトヤに来たらこういうポーズをとりたくなるよ!
パチンコ屋に入ったことがない。

タバコも吸ったことがないし、麻雀をやったこともない。

なにが言いたいのかというと、人生「知ってるけどやったことがない」ことばかりだ、ということだ。(「結婚したことがない」で終わらないように気をつけたい)

そこで、その「知ってるけどやったことがない」のひとつを実際体験してみようではないか、というのが今回の内容です。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:十五夜に体長2.5kmのウサギの絵を描いた

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「電話は4126」のあれ

その「知ってるけどやったことがない」はなにかというと、タイトルにあるようにハトヤに滞在してみる、ということだ。

あの温泉宿のハトヤだ。
冒頭のポーズで写真を撮るとこうなる。本館と新館を結ぶ渡り廊下だ。未来だ。いつか見た未来だ。ぼくはこの光景をハトヤ名物と認定したい。(大きな画像はこちら
『伊東に行くならハトヤ、電話は4126(よい風呂)』のテレビCMを覚えている人も多いと思う。Wikipediaの「ハトヤ」の項によれば、1961年からこのキャッチコピーでCMが放送され、現在も関東ローカルの一部だけで流れているそうだ。いまの20代の人は知らないかなもしかして。

子供のころさんざん見て「海底温泉」だの「三段逆スライド方式」(これについては上記Wikipedia参照)だのの単語とビジュアルはよく「知っている」が実際行ったことがない。
ロビー屋上から間近に見えた墨痕鮮やか「ハトヤ」の文字。かわいい。(大きな画像はこちら
おそらくパチンコ屋へは今後も行かないと思うが、ハトヤは行っておきたい。

正直、子供心に「っていってもなあ、なんか微妙だよなあ、ハトヤ…」って思っていた。が、それは間違っていた。すてきだよ!ハトヤ!

というか、大人になって、今の時代だから存分に楽しめるのかもしれないけど。

ハトヤへの道

伊東駅を降りて、見れば丘の向こうに「ハト…」の文字が!そして送迎バスもやってきた。この通りを「ハトヤ表参道」と呼ぼう。
前出のハトヤウェブサイトから宿泊予約ようとしたが、「けっこういいお値段だな…どうしよう…」と躊躇した。

というのも、この時点ではまだハトヤを見くびっていたから。きっと昭和テイストですり切れた温泉ホテルにすぎないと思っていたのだ。
向こうに見えると、ついついふらふらと歩いて行ってしまうヘキがある。思いのほか坂道でたいへんだった。
そんな「やっぱりたいしたことないのかもなあ…」と思いながらの出発であったが、ハトヤに到着してみればテンションは上がる。

なんといってもその外観がすてきだ!
お!あれは…!
おおおお!(大きな画像はこちら
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名物は渡り廊下に決定

この本体と調和してるんだかしてないんだかよく分からない渡り廊下デザイン!
本館から別館のほうを見やったところ。渡り廊下のくせに、この存在感はどうだ。
夜の渡り廊下。
下から。ぼくが将来マイ渡り廊下を持つことになる日が来たら、これを参考にしたい。
丘を登り歩いて辿り着いたハトヤでまず目に飛び込んできたのはこの渡り廊下だ。

なぜ、緑。なぜこの形。
以前工藤さんが「渡り廊下を渡り歩く」という記事で「人は渡り廊下を渡したがる生き物なのだ」という名言を記している。ここハトヤの渡り廊下はまさにその「渡り廊下欲」が形となって現れているものだと思う。われわれが思い描く「ザ・渡り廊下」の具現化。渡り廊下のマスターピースだ。

そう思うのはぼくだけではない

ロビーを見渡したところ。右側にある丸い穴に注目。
ここが、渡り廊下。人だかり。
ほかの宿泊客も、まずはここで写真を撮る。
そりゃあ撮るよね!(大きな画像はこちら
渡り廊下渡り廊下と渡り廊下にエキサイトするのはぼくだけではない。

本記事冒頭の写真と上の写真は渡り廊下の中のものだが、ご覧のようにうら若き女性たちもこの光景にうっとりだ。
渡り廊下のまんなからへんで左右を見渡したところ窓の形が未来だ。(大きな画像はこちら
なんといっても、この腰の位置まで一体となって立ち上がっているジュウタンがいい。「床と壁がシームレスに連続」っていうのは未来の証だ。

もちろん窓の形もいい。

そしてなにより感動したのは、ジュウタンのどこもすり切れていない点。

大人のいじわるな観察だが、こういう、言うなれば「レトロフューチャー」って、たいていメンテナンスが追いつかずに「フューチャーレトロ」(なんだそれ)になっちゃうものなんだけど、ハトヤはちゃんと「レトロフューチャー」だった。この記事の結論はこれだ。「現役ばりばりのレトロ、ハトヤダテじゃない」と。

で、これはもちろん渡り廊下だけじゃない。
この宴会場もすごかった!(大きな画像はこちら
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DPZのイベントもここでやればいいんじゃないかな

「シアター」という名の大宴会場。舞台から見たところ。ここでイベントやりたい。(大きな画像はこちら
温泉宿といえばディナーショーだ。ハトヤもその例外ではない。

ただ、いままで解説するのを忘れていたが、伊東には2つのハトヤがあって、いまも精力的にディナーショーを行っているのは海沿いにある比較的新しい「サンハトヤ」のほう(ちなみに「海底温泉」も残念ながらサンハトヤのほう)で、ぼくが泊まったのは通称「山バト」のオリジナル「ハトヤ」だった。

しかし、ここにもなんともすてきなショー会場がある。
その名も「シアター会場」。フォントとハトのマークもかわいい。
1階席と2階席とがある。そして天井の円い部分は、なんとゴンドラ!乗りたい!(大きな画像はこちら
2階から。次回のデイリーポータルZのイベントはここでどうでしょうか。(大きな画像はこちら
このほかにも、随所にいかにも「昭和のかっこいい空間」があって楽しい。
だいたいエントランスのファサードのこのギザギザもかっこいいし。
このいかにもな各種館内施設案内とそれをとりまく空間にぐっとくる。
この謎の照明器具デザインときたら!
このスペースもよかったなあー。(大きな画像はこちら
置かれているこのテーブルとイスがまたいい!ほしい!
このバーもいかにもな感じでかっこよかった(入ってないけど…)。湯上がりに浴衣で挑むのが正装というような感じの入り口アーチ。
そうそう、そしてもちろん、客室もすてきだった。
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ちゃんとした「デラックス」、それがハトヤ

なんかだんだん、なにがそんなにすてきだったのか、って伝わらなくなってる気がするぞ。

まあなんというか、さっきも言ったように「レトロなのにどこにもくたびれた感がない」っていう部分にぼくは感動したのだけれども。とりあえず頭の方の「渡り廊下すてき!」だけでも伝わってくれるとうれしい。

というか、ハトヤの回し者みたいになってるけどだいじょうぶかしら。

で、客室もちゃんと「レトロなのにどこにもくたびれた感がない」でとても感動した。結果として、変な言い方だけど「ちょうふつう!」って感じなのだ。
一見、まあふつうの部屋なんだけど、これが「ちゃんとしてる」んだよなー
このソファも「ちょうふつう!」だったし。
スリッパも豪華でもなんでもないんだけどちゃんと手入れされてる感じだし、なんといってもかわいいし(持って帰りたいのをこらえた)。
床の間にはハトの置物があるし。
「デラックス」っていう言葉はもう使われなくなっていると思うけど、その言葉がしっくりくるのがハトヤだと思った。最近の言葉だと「セレブ」っていうのがあるけど、そういう振り切った感じではなくて、微熱ぐらいの豪華感、でも味がある。それが「デラックス」なんだと思う。いまこの帯域の表現ってないよね。
小物の味わいもよかった。この箸袋のマークとか、海苔の入った復路のデザインとか。
この看板のハトとか。
ただ、このお土産物のネーミングはちょっとぎりぎりだと思った。

一度行ってみるといいと思う

なんかうまく伝わらなかった気もしますが、好奇心のある大人だったら、今あえて行ってみるといいと思うよ、ハトヤ。

あと、このハトヤ探訪については「八画文化会館(vol.2) 特集:HOTEL NEW ROMANTIC」にも寄稿しましたので、そちらもご覧いただければ。DPZライター仲間のダムの萩原さんとの「80年代バブルホテル」についての対談もありますよ。

【告知:写真展やります!】

工場、ジャンクション、団地、高架下建築などぼくがいままで撮ってきたものの写真展をやります!
ふざけたタイトルにしました「日本の美しい景観」。

2012年10月31日(水)~11月4日(日)に横浜「みなとみらいギャラリー」にて。詳しくはこちら
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