ES2022 と TypeScript 4.5 に入るプライベートフィールドのための in 演算子について

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2021年7月に行われた TC39 ミーティングで Ergonomic brand checks for Private Fields というプロポーザルが Stage 4 になりました。 このプロポーザルは、ES2022 に含まれる予定です。また、TypeScript 4.5 にも含まれる予定です。

この記事では、Ergonomic brand checks for Private Fields について解説します。

概要

Ergonomic brand checks for Private Fields は、in 演算子を使ったプライベートフィールドの有無の判定を可能にするプロポーザルです。

現在の in 演算子

in 演算子は、オブジェクトが特定の名前のプロパティを持っているかどうかを判定するための二項演算子です。 左辺にプロパティの名前、右辺にオブジェクトを受け取ります。

const obj = { prop1: 1 };
console.log("prop1" in obj); // true

新しい in 演算子

Ergonomic brand checks for Private Fields では、この in 演算子を拡張し、左辺に Private Identifier を取れるようになります。

Private Identifier は #foo のような形をした特別な識別子で、クラスのプライベートフィールドを表現するのに使われます。

たとえば、次のコードではクラス Foo は、#prop1 というプライベートフィールドを持ちます。 このとき #prop1 は Private Identifier です。

class Foo {
  #prop1;
}

拡張された in 演算子では、次のようにしてオブジェクトにプライベートフィールドが含まれるかどうかをチェックできます。

#prop1 in obj

しかし、プライベートフィールドはプライベートなので上記のコードはそのフィールドを持つクラスの中でのみ使うことができます。

つまり、次のようにクラスの外でプライベートフィールドに対して in を使うとエラーになります。

class Foo {
  #prop1;
}
console.log(#prop1 in new Foo());
// Uncaught SyntaxError: Private field '#prop1' must be declared in an enclosing class

しかし、次のようなコードはエラーになりません。メソッド foo はクラス Foo の中にあるので、Private Identifier である #foo を in 演算子の左辺として使うことができます。 そして、この foo の中で this は Foo のインスタンスであり、それには当然 #prop1 というプライベートプロパティが存在するので、#prop1 in this の結果は true になります。

class Foo {
  #prop1;
  foo() {
    return #prop1 in this;
  }
}
console.log(new Foo().foo()); // true

モチベーション

存在しないプライベートフィールドにアクセスすると、実行時エラーが発生します。

その挙動と try / catch を組み合わせて、次のようにしてオブジェクトのクラスを判定できます。

class Foo {
  #brand;
  static isFoo(obj) {
    try {
      obj.#brand;
      return true;
    } catch {
      return false;
    }
  }
}

obj.#brand にアクセスしたとき、obj が Foo のインスタンスでない場合、実行時エラーが発生し catch に入り false が返されます。 このようにして、あるオブジェクトがFooのインスタンスであるかを検証するスタティックメソッドを作れます。

ですが、このパターンは冗長です。in 演算子を使えばもっと短く書けます。

class Foo {
  #brand;
  static isFoo(obj) {
    return #brand in obj;
  }
}

これが、このプロポーザルの主なモチベーションです。

instanceof 演算子も基本的にはこの目的のために使えます。しかし instanceof 演算子はプロトタイプに依存するので、プロトタイプを書き換えることでその挙動を変更できます。

次の例では、 obj は Foo のインスタンスではありませんが、後からプロトタイプを書き換えているので obj instanceof Foo は true になっています。

class Foo {}
const foo = new Foo();
const obj = {};
Object.setPrototypeOf(obj, foo);
console.log(obj instanceof Foo); // true

また、Symbol.hasInstance を使って instanceof の挙動を変更することも可能です。

なので、より安全にオブジェクトのもとになったクラスを検証したい場合は in 演算子を使うと良いでしょう。

参考リンク

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