却下された論文の向上に査読が与える影響(文献紹介)

2021年1月8日、Accountability in Research誌に米国・テキサス大学オースティン校のTom J. Crijns氏らによる共著論文“The effect of peer review on the improvement of rejected manuscripts”が掲載されました。本文は有料ですが、要旨(Abstract)は公開されています。

論文では、却下された論文が別の学術雑誌で出版される際に、与えられた査読コメントが論文の改善に利用されているかについて調査しています。調査にあたっては、とある整形外科学のトップジャーナルの2012年の250報の論文の却下通知を無作為に抽出し、実行可能な査読者からの提案を特定しています。PubMedとGoogle Scholarで検索し、投稿時の論文と出版された論文を比較することによって、査読者からの各提案が反映されているか判定しています。

調査では、却下された論文のうち80%が2018年7月までに他のジャーナルで出版されたと報告しています。609件の実行可能な査読者からの提案のうち、出版された論文で解決されたものは205件(34%)であると述べています。

この結果は、論文が却下された後、著者は査読者からのアドバイスをしばしば無視することを示唆しているとしています。著者は、査読プロセスをあらゆるメディアでの有用で正確な知識の普及を最適化するプロセスではなく、学術雑誌固有のものと見なしていることが指摘されています。学術雑誌は査読結果を他の雑誌と共有できるよう、単一の原稿管理サイトを使用した協働の可能性について述べています。

Crijns, Tom J.; Ottenhoff, Janna S. E.; Ring, David. The effect of peer review on the improvement of rejected manuscripts. Accountability in Research. 2021. https://doi.org/10.1080/08989621.2020.1869547

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