重いお腹を抱え、立つのにも気合いが必要だった出産前。眠いし、だるいし、動きは鈍いし…。万全な体調とはいえませんでしたよね。臨月にもなると「そろそろ妊婦の体から解放されたーい!」と思った人もいることでしょう。
産後に体調不良を感じる人は多い。その原因は?
でもいざ出産を迎え、わが子の誕生に感動し、「お腹もやっと軽くなったわぁ♪」と思う間もなくやってくるのが、産後の体調不良です。
「きっと1ヵ月もすれば、だいぶ回復してるでしょ」という期待も外れ、あれ!?なんだかまだ体調がすぐれない…。
そう感じているママって意外と多いんです。
ママが実際に陥った産後の体調不良
ポータルサイト「goo」が200人のママに取ったアンケートによると、約90%のママが「産後トラブルがある」と回答。
出産を経験した女性にとって、産後の体調不良はあたり前のことなんですね。
しかもその原因の多くは、ママの意思だけでは防ぎにくいものばかり。
女性の体に備わった機能や、育児をがんばっているからこその行動が原因となっているからです。
具体的には、下記4つの原因が考えられます。
- ホルモンバランスの乱れ
- 出産時に受けた筋肉や関節へのダメージ
- 育児中の姿勢の悪さや筋肉の酷使
- 育児によるストレスや疲労
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホルモンバランスの乱れ
「ホルモンバランス」って、よく聞く言葉ですよね。でもホルモンって何なんでしょう?バランスが乱れるってどういうことなんでしょうか?
ホルモンとは、体の外部や内部からの刺激がきっかけとなり、各臓器で作られる化学合成物質のことです。ある特定の刺激が脳に伝わると、脳の視床下部という場所から命令が出て、各臓器でホルモンが分泌されます。分泌されたホルモンは血液に乗って運ばれ、それぞれの役目を果たします。
なかでも女性にとって、とても大切なホルモンがあります。
妊娠のために重要な役割を果たす「エストロゲン」と「プロゲステロン」というホルモンです。
女性ホルモンとも呼ばれています。ともに子宮を妊娠しやすい状態に整え、妊娠後は妊娠を継続させる役割があります。特にエストロゲンには、下記のような働きもあります。
エストロゲンの働き
- 老化防止
- 美肌効果
- 美乳効果
- コレステロールの増加防止
- 血管、骨、筋肉などの強化
- 自律神経の働きの促進
- 乳腺の発達
※自律神経:交感神経と副交感神経で成り立つ体の器官。発汗、消化、吸収、排せつなど、人間が無意識におこなう諸機能の働きを担っている。
エストロゲンとプロゲステロンは、赤ちゃんがお腹の中で成長するために必要なホルモンで、妊娠中は胎盤から大量に分泌されています。でも、出産によって胎盤が排出されるとともに、2つのホルモンも急激に減少します。
これは出産をすることで妊娠を継続する意味がなくなって今度は赤ちゃんを体内でなく体外で育てるために体が変化しなければいけないので起こっているのです。どういうことかというと、例えば妊娠中は出産後すぐに母乳与えられるよう体が準備をして乳腺を発達させます。このためにエストロゲンの分泌が増加しています。しかしこのエストロゲンは乳腺を発達させるのに母乳分泌を抑えてしまう働きも持っているのです。
そこで出産するとすぐに今度は母乳がたくさん出るようにエストロゲンの分泌が一気に低下するのです。これはほんの一例ですがこのホルモンの急激な増減が、出産後のトラブルを引きおこす「ホルモンバランスの乱れ」といわれるものです。
ホルモンバランスが乱れることにより、体の働きがうまく機能しなくなり、不調が引き起こされるようになります。
女性ホルモンは一生でティースプーン1杯程度しか分泌されないといわれていますが、女性の体に大きな影響を及ぼす物質です。
出産時に受けた筋肉や骨盤へのダメージ
妊娠して赤ちゃんが大きくなってくると、骨盤や骨盤底筋が最大限に引き伸ばされます。これらの臓器は膀胱や尿道、膣などを支えるのにとても重要。ゆるんでしまうと、膀胱などの臓器が正常の位置より下がってしまいます。
出産のダメージはとても大きくて緩んでしまった筋肉は内蔵をきちんと支えることができなくなってしまうのです。また、出産時にいきむことで肛門にも負担がかかります。これらのダメージが、下のトラブルを引き起こす原因です。例えば内臓が下がってしまい膀胱を圧迫するため尿道を締め付けられないので尿漏れがおきたり、酷く症状が出る人だと骨盤底筋が弱くなってしまったことで子宮脱に脱肛になる人もいます。
育児中の姿勢の悪さや筋肉の酷使
赤ちゃんの授乳やオムツ替え、お着替えなどをしているときは、どうしても前かがみになりがちです。また、赤ちゃんが泣き止まず、長時間抱っこをしなければいけないことだってありますよね。
そうした育児における姿勢の悪さや、普段使わない筋肉の酷使により、筋肉がこり固まり、痛みなどの症状へとつながります。
姿勢の悪さは、骨盤をゆがませる原因にもなります。
育児によるストレスや疲労
夜間授乳による睡眠不足や、グズる赤ちゃんへの対応、育児と家事の両立など、出産後はストレスや疲労がたまりがちです。こうしたストレスは2つの自律神経のうち、交感神経の働きを強くしてしまいます。交感神経は人間が活動的に動くために必要な働きをします。
でも、交感神経の働きが強すぎると、もう1つの自律神経である副交感神経の働きが鈍ります。副交感神経は体を回復させたり、リラックスさせたりする神経。
この副交感神経の働きが鈍ると、体が活動するばかりで回復が追い付かず、さまざまな不調を招く結果に。
さらに、自律神経の中枢は脳の視床下部に集まっています。視床下部はホルモンを分泌させる司令塔でもあり、自律神経のバランスの乱れが、ホルモンバランスの乱れも引き起こします。
産後に感じる体調不良の症状は?
では、産後に引き起こされる体調不良には、どんなものがあるのでしょうか。
ママの声を集めた情報サイト「ママこえ」でアンケートを取った結果、下記のような体調不良が上がっていました。
産後に感じる体調不良の症状は? | ||
---|---|---|
1位 | 脱毛 | 15% |
2位 | 腰痛/体型の崩れ | 14% |
3位 | 痔 | 9% |
4位 | 体重の増加 | 8% |
5位 | 乳輪トラブル/便秘 | 7% |
6位 | 体調がすぐれない/頭痛/うつ/むくみ | 5% |
※その他6%
また、8位の「体調がすぐれない」と「その他」の詳細を聞いてみたところ、下記のような声が見られました。
だるさ、疲れやすさ、イライラ、めまい、肩こり、腱鞘炎、尿漏れ、会陰痛。
それぞれの症状について、詳しく原因を見ていきましょう。
脱毛
原因:ホルモンバランスの乱れ
妊娠中に増える女性ホルモンの「エストロゲン」には「髪の毛の成長を促進し、髪の毛が生えている期間を延ばす」作用があります。出産によりエストロゲンは急激に減少するため、エストロゲンの効果で抜けなかった毛が、一気に抜けてしまう人がいるようです。産後2ヵ月頃から始まり、半年から1年をかけて元に戻るといわれています。
腰痛、肩こり、体型の崩れ、体重の増加
原因:出産時に受けた筋肉や骨盤へのダメージ、育児中の姿勢の悪さや筋肉の酷使、育児によるストレスや疲労
妊娠から出産にかけて開き切った骨盤は、産後、自然に戻ろうとします。でも、育児中の前かがみの姿勢や抱っこなどで骨盤がゆがんでしまうと、これらの症状の原因に。ストレスにより自律神経が乱れ、体の回復を担う副交感神経の働きが鈍るのも要因です。ストレスや疲れは過食にもつながってしまいますよね。
むくみ
原因:ホルモンバランスの乱れ
妊娠中に増える女性ホルモンは子宮膜を厚く保ち、妊娠中に必要な水分や栄養素を溜め込む働きをします。でも、女性ホルモンは産後に急減。それに伴い体内の水分量も減少し、授乳によりさらに水分が奪われます。そこへ体の防御機能が働き、過度に水分をためこもうとした結果、むくみが起きるといわれています。
痔、便秘、会陰痛
原因:ホルモンバランスの乱れ、出産時に受けた筋肉や骨盤へのダメージ
妊娠中は大きくなったお腹で肛門を閉じる部分が圧迫され、うっ血しやすくなります。それがイボ痔のもと。出産時にいきむことで、イボ痔が外に出てきてしまうこともあります。いきみは肛門が裂ける原因にもなりますよね。裂けなくても、出産時に会陰切開をする妊婦さんがほとんど。
会陰切開をするとキレ痔になりやすくなるといわれています。
痔や会陰痛があると、便意をもよおしても力が入れられず、便秘の原因に。ただでさえ妊娠中や授乳期は、ホルモンの影響や赤ちゃんへの補給のために水分不足になりがちです。水分不足は新陳代謝を弱めるので、便秘へとつながります。
頭痛、だるさ、疲れやすさ、めまい、イライラ、うつ
原因:ホルモンバランスの乱れ、育児によるストレスや疲労
産後は女性ホルモンであるエストロゲンが急減しますが、それに伴い脳内物質であるセロトニンも減少します。セロトニンが減少する際に脳の血管が広がるのですが、これが頭痛の原因になるといわれています。また、ホルモンバランスの乱れは精神面にも影響を及ぼすため、イライラやうつ症状を引き起こします。ストレスによる自律神経の乱れも、これらの症状の原因です。
尿漏れ
原因:出産時に受けた筋肉や骨盤へのダメージ、育児中の姿勢の悪さや筋肉の酷使
子宮や膀胱など、腹部の臓器を支えている骨盤底筋。骨盤底筋は妊娠や出産中に負担がかかり、ゆるんでしまいます。骨盤底筋がゆるむと、膀胱が下がり尿漏れの原因に。また、骨盤も膀胱などを正常の位置に保つために大切な役割をしています。そのため、骨盤が戻っていないのにウエストなどを締める下着をつけてしまうと、膀胱がさらに下がってしまうので要注意です。育児中の姿勢の悪さは骨盤のゆがみにもつながります。
産後に感じる体調不良への対策法をご紹介。
これまで体調不良の種類と原因についてご紹介してきました。ここからはママたちが実践した対処法やホームケアをご紹介します。
脱毛
抜け毛は6ヶ月~1年もすれば自然と治るようです。ママたちの声としても、特別な対策をせず、自然に治るのを待ったという意見がほとんどでした。
もし何か対策をするとしたら、下記がおすすめです。
髪の毛にいいとされる栄養素を食事で摂取する。
たんぱく質:髪の毛の成分となる。肉類、魚介類、卵、豆類、乳製品に多く含まれる。
ビタミン:たんぱく質の吸収や働きを高める。野菜や果物などに多く含まれる。
ミネラル:抜け毛の原因となる男性ホルモンの働きを抑え、髪の毛を育てる。肉類、魚介類、豆類、乳製品に多く含まれる。
育毛シャンプーで頭皮マッサージをおこなう
頭皮マッサージは、血流を促したり、頭皮を柔らかくしたり、詰まった皮脂汚れを押し出す効果があります。薄くなった部分だけではなく、頭全体を丁寧に揉みほぐすごとが重要です。また、耳の後ろから顎のラインのマッサージも血流を促すのに効果的なんだとか。
腰痛、肩こり、体型の崩れ、体重の増加
これらの症状は骨盤のゆがみが原因。
ママたちの間でも、骨盤ケアを中心にがんばったという声が多数ありました。育児中の姿勢も意識して正すようにすると、ゆがみ防止になりますよ。
むくみ
むくみを取るためには体の血行をよくすることが大切。マッサージやストレッチ、加圧ソックスには、血行をよくする効果があります。また、塩分の多い食事を取ると、体が水分を溜め込もうとしてしまいます。
そのため減塩に心がけましょう。カリウムには利尿作用があるので、積極的に取ることがおすすめです。パセリ、昆布の佃煮、アボガド、生のホウレン草などに多く含まれています。水分を取らないのは逆効果です。
痔、便秘、会陰痛
たいていの痔は市販薬を塗ることで治るといいます。ママの声にある「サニーナ」は、肛門周辺のかぶれや、ただれを防ぐお尻の洗浄剤です。肛門周辺を清潔に保つことも大切ですね。
また、痔の原因にもなる便秘は、新陳代謝をよくすることで解消されます。
新陳代謝を高めるためには水分を多く取ることが重要。老廃物の排出を促す食物繊維も積極的に取りましょう。食物繊維は穀物などの野菜に多く含まれています。会陰痛には休息が大事です。旦那さんやご両親に頼りましょう。
頭痛、だるさ、疲れやすさ、めまい、イライラ、うつ
これらの症状はストレスや疲れによる自律神経の乱れが原因。自律神経の乱れとは、回復やリラックス効果を担う副交感神経の働きが鈍くなった状態をいいます。
自律神経を整えるためには、ストレスや疲れを解消することが大切です。外出で気分転換をしたり、人に話を聞いてもらったり、隙間時間に睡眠を取るなどして、心と体の回復を心がけましょう。
尿漏れ
尿漏れの原因は骨盤のゆがみや骨盤底筋のゆるみが原因です。骨盤体操により、ゆがみを整えたり、骨盤底筋を意識して締めるストレッチを行ったりしましょう。また、骨盤がもとに戻りきらないうちに、ウエストを締める下着などをつけてしまうと、余計に膀胱などの臓器が下がってしまうことが。たるんだお腹は気になりますが、まずは骨盤ケアを優先するのがおすすめです。
身近な専門家を頼ろう。産後は体質も変化するので過信は厳禁!
上記の項ではホームケアについてお伝えしました。この項では専門家を頼るケアについてご紹介します。
脱毛
美容師さんは髪の毛のプロ。行きつけの美容院に行って頭皮マッサージを受けてみましょう。
育毛に効ヘアケア商品についてアドバイスをもらうのもいいかもしれません。また、国から認められている発毛治療の専門クリニックもあります。年々、育毛治療を受ける女性が増加しているようですよ。
腰痛、肩こり、体型の崩れ、体重の増加
このように整体、ヨガ教室、接骨院、鍼治療などに頼ったというママが多くいました。家で骨盤体操をおこなうのもいいですが、赤ちゃんがいると、なかなか思うように時間が取れないですよね。たまには子どもを旦那さんに預けて、体をいたわることも必要ですね。
むくみ
という声もある通り、産婦人科で薬を処方してもらうことができます。血行をよくするために、マッサージに通うのもいいですね。育児の気分転換にもなります。
痔、便秘、会陰痛
痔がなかなか治らない場合は、「肛門科」を受診しましょう。手術が必要な状態である可能性があります。肛門科というと抵抗がある人が多いかもしれません。でも、レディースデイを設置する病院や、女性医師とスタッフだけの病院もあるんだとか。診察時もタオルなどをかけて、患部だけを見るよう配慮されているようです。便秘や会陰痛があれば、まずは産婦人科を受診してください。便秘の場合は漢方薬などを処方してもらえるようです。
頭痛、だるさ、疲れやすさ、めまい、イライラ、うつ
リラックスを心がけてもこのような症状が改善されない場合、まずは「内科」を受診しましょう。内科で詳しい症状を話し、症状に合った専門の診療科を指示してもらうのが安心です。
尿漏れ
産後1~2ヵ月で自然に解消されるといわれています。もし2か月以上経っても改善されない場合は、「産婦人科」が「泌尿器科」を受診するのがおすすめです。薬を処方してもらえたり、場合によっては手術によって治療が可能です。
ノンストップで育児をしなければならないママにとって、自分の体調がすぐれないのは辛いものですよね。かわいい子どもを思うと、なんとか乗り切れちゃうかもしれませんが、少しでも自分をいたわる時間を作ってあげてくださいね!
<参考URL>
「gooベビー」
「すくコムNHKエデュケーショナル」
「自律神経失調症完璧ガイド」
「AGAanswer」
(文:miho.T)
3歳の女の子と0歳の男の子のアラサーママ。一般企業に勤めながらの兼業ライターです。現在育休中。興味があることは「より楽しく生きること」と「自己啓発」。子どもから大人まで、書くことによる「育“自”支援」を目指しています。