生者は遺体に魅了され、それをさまざまな形で売買してきた歴史がある Photo: Heather Shimmin / Getty Images

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Text by Caroline Bennett and Alanna Cant

生者は死者の遺体に魅了され、尊重すべきそれらをときに「物」として扱ってきた。長く深い「遺体の売買やコレクション」の歴史に、いまこそ終止符を打つべきなのかもしれない。
The Conversation

遺体は「コレクション」していいのか


2024年10月初旬、オックスフォードシャー州テッツワースの競売会社「スワン」は、西アフリカの頭蓋骨や南米の干し首など、数点の遺体を出品した。ところが、オックスフォードのピットリバース博物館の代表者や先住民活動家がこれに異を唱えたため、数日も経たないうちに出品は取り下げられることになった。

ピットリバース博物館は考古学と人類学を専門としている。同博物館は脱植民地化プロセスの一環として、自らのコレクションから品物を返却してきた過去がある。

スワンによって出品を取り下げられた遺体(装飾された頭蓋骨が大部分を占めていた)は、植民地時代に収集されたものと思われる。推定価格は2000ポンドから2万5000ポンド(およそ38万~480万円)だった。

これらは、雑誌「プレイボーイ」の創刊者でいまは亡きヒュー・ヘフナーや、「ヘッドハンター」を自称する悪名高いカナダの古物商、ビリー・ジェイミーソンなどのコレクターが所有していたものだ。

出品されていたもののなかには、インドのナガ族、現在のナイジェリアとカメルーンにあたる地域に住むエコイ族、ソロモン諸島、ベニン、コンゴ、ナイジェリア、アマゾン、パプアニューギニアといった地域の部族の遺体が含まれていた。

英国の博物館や教育機関では、遺体を丁寧に扱うための専門的なガイドラインが採用されつつあるが、個人コレクションにはそういったものがいっさいない。個人コレクションの扱い方を法的に定めるのは難しいが、今回の出来事は「遺体の売買がいまだに許されてしかるべきなのか」という疑問を投げかけている。


遺体の売買を法的に禁じる国は少ない


遺体はこれまで長いあいだ、生きている人々を魅了してきた。遺体の収集、展示、使用の背景には、長く、しばしば暗い歴史がある。ヴィクトリア朝時代の人々はミイラが好きで、ミイラを粉砕して新たな塗料をつくったり、さまざまな病気に効く強壮剤などを作ったりしていた。
残り: 2351文字 / 全文 : 3403文字
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