2024年4月に、東京オフィスを開設した際の記者会見に出席するOpenAIのブラッド・ライトキャップCOO(右)。背景にはCEOのサム・アルトマンからのビデオメッセージが流れている Photo: REUTERS/Kim Kyung-Hoon

2024年4月に、東京オフィスを開設した際の記者会見に出席するOpenAIのブラッド・ライトキャップCOO(右)。背景にはCEOのサム・アルトマンからのビデオメッセージが流れている Photo: REUTERS/Kim Kyung-Hoon

画像ギャラリー
フィナンシャル・タイムズ(英国)ほか

フィナンシャル・タイムズ(英国)ほか

Text by Kana Inagaki and David Keohane

日本政府は海外の生成AI関連企業の誘致に力を入れており、企業側も日本市場を好意的に見ている。だが、著作権侵害に対する政府の無防備な対応によって、国内のクリエイターが大きな被害を受けていると英紙「フィナンシャル・タイムズ」は警鐘を鳴らす。

2年前、生成AI(人工知能)で作られた画像やアニメ動画がSNS上に出回りはじめたとき、イラストレーターの木目百二(もくめももじ)は、「このままだと、日本の創作文化が崩壊してしまう」と絶望した。

「イラストレーターの仕事もなくなってしまうと思いました」と語る木目は、東京在住の21歳だ。イラストレーター、漫画家、ミュージシャンとして活動している。

「私たちに未来はないと感じています」と彼は言う。

同じ頃、メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグやOpenAIのサム・アルトマンといったグローバルテック業界の経営者らが続々と東京を訪れ、岸田文雄首相と面会した。

高齢化と慢性的な労働力不足に直面する日本は、AI企業にとって巨大な可能性を秘めた魅力的な市場だ。2024年4月、OpenAIはアジア初となる拠点を東京に構えた。

自前の大手AI企業を持たない日本に、一部のテック企業は熱視線を注ぐ。日本の現行の著作権法では、無断で画像などのデータをAIモデルの学習のために商業利用しても罪に問われない。専門家からは法の不備を指摘する声も上がる。


東京大学教授で、内閣府の「AI戦略会議」の座長を務める松尾豊は言う。

「AI企業は、多くの理由で日本に引き寄せられています。人口が減少傾向にあり、国内企業の多くがデジタル化を促進しているため、AIの活用に積極的です。さまざまなコンテンツを機械学習に活用しても著作権侵害に問われない点も、魅力的だと言えます」

岸田首相は「影の側面」への対策を叫ぶが…

残り: 2772文字 / 全文 : 3678文字
無料会員になると記事のつづきが読めます。

さらに有料会員になると、すべての記事が読み放題!

無料登録で「特典」を利用しよう

無料会員に登録すると、毎月2本まで

プレミアム会員限定記事が読めます。

プレミアム会員について詳しく見る

オススメのプレミアム記事

読者のコメント 0
コメントを投稿するには会員登録が必要です。
クーリエのプレミアム会員になろう クーリエのプレミアム会員になろう
フィナンシャル・タイムズ(英国)ほか

フィナンシャル・タイムズ(英国)ほか

おすすめの記事

loading

表示するデータはありません。

注目の特集はこちら

loading
    • {{ item.type }}
    • UPDATE

    {{ item.title }}

    {{ item.update_date }}更新 [{{ item.count }}記事]

表示するデータはありません。