先ごろおこなわれた株主総会で、Chat-GPTに思いついたアイデアを相談していると話した孫正義 Photo by Alessandro Di Ciommo/NurPhoto via Getty Images

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フィナンシャル・タイムズ(英国)

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Text by Leo Lewis

2023年6月におこなわれたソフトバンクグループ(SBG)の株主総会に、孫正義会長兼社長が登壇。2022年11月の決算記者会見以降に公の場から遠ざかっていた間、AI関連の「発明」に没頭していたと明かした。孫の投資家から発明家への転身はSBGにとって吉と出るのか、凶と出るのか。その影響は同グループにとどまらず、日本経済全体に及ぶと英紙は指摘する。

明け方のソフトバンクグループ(SBG)の会長兼社長室──孫正義(65)の「発明ホットライン」の担当者はくつろいでいた。

夜中に電話が鳴らなかったのは、ありがたかった。朝の引き継ぎまで、もう少しだ。だが彼は、孫の頭に「最高のアイデア」が浮かぶのは、まさにいまみたいなタイミングだと経験的に知っていた。

プルルルル! 電話が鳴る。

「自己認識型AI泡立て器ですか? 天才的なアイデアですね。さっそく特許申請にとりかかります」

プルルルル! また電話が鳴る。 

「GPTで鳴き声を自動生成するAIアヒル池ですか? 今夜は絶好調ですね!」

プルルルル! 3回目だ。 

「馬にひかせる粒子加速器ですか? なんらかのAIが仕込まれているのでしょうね。まだ早朝なのにハットトリック達成ですね!」

上記のやりとりは想像でしかないが、2023年6月21日のSBG株主総会に登壇した孫本人によれば、当たらずとも遠からずのようだ。世界で最も重要な投資家のひとりであるにもかかわらず、彼はこのとき自らを「人類の未来のアーキテクト(建築家) 」と呼び、発明にすべてを捧げていると語った。

孫が率いるSBGには、週7日24時間体制で稼働する発明ホットラインがあり、彼の頭からアイデアが浮かぶのと同時に特許申請ができるよう、常駐スタッフと特許申請の専門家が交代制で働いているという。

孫の発明は、彼がChat-GPTと深夜に交わした会話を基にしたAI関連のものや、子会社である英半導体設計大手「アーム(ARM)」との共同開発を想定したものが少なくないようだ。


この8ヵ月間で630件の発明をしたという孫は、年末までにその数を1000件にまで増やし、「新世紀のエジソン」になることを目指す。彼が生み出した発明のなかには、世界を変えうるものもあるだろう。だが、株主総会のときに孫本人が明るい口調で、そのほとんどが駄作だと認めた。

涙が止まらない日々

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