漫画『進撃の巨人』に登場する黒人キャラクターのオニャンコポン © Hajime Isayama

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ル・モンド(フランス)

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Text by Laetitia Limmois

歴史的に黒人奴隷がいなかった日本で、黒人はどう描かれてきたのか? 日本の大衆文化に詳しい仏紙「ル・モンド」記者がマンガの黒人キャラクターに着目し、その変遷をたどる。

日本のマンガが世界で西洋のコミックと同じように読まれるようになってから数十年。マンガの読者が世界各地で増えたのに応じて、マンガの登場人物も世界各地に出自を持つようになった。

『ONE PIECE』や『NARUTO─ナルト─』、『ジョジョの奇妙な冒険』など近年の人気作品を見ればわかるが、黒人の登場人物が物語の中心に位置することも珍しくない。こうした黒人キャラクターは適切に描かれている場合がほとんどだが、過去には、非常に侮辱的な絵、ときには人種差別的な絵があったことも事実だ。

日本のマンガのなかで、民族の描かれ方はどう変わってきたのだろうか。それを理解するためにはまず、日本が外国とどんな関係を築いてきたのかという歴史を知る必要がある。

鎖国時代の黒人イメージ


日本は歴史的に孤立を選んできた国だ。江戸時代(17〜19世紀)、外国人の入国はほとんど許されなかった。17世紀前半に徳川家の一族がキリスト教の浸透を懸念して、鎖国と呼ばれる政策を実施したのだ。貿易に関連する例外的な事例をのぞくと、2世紀を越える期間、日本人は日本を離れられず、外国人は許可なく日本に入れなかった。

その頃の日本人が見たことのあった黒い肌の人間といえば、南蛮船に乗るアフリカや南アジアの従者だけだったため、黒い肌の人間は支配を受ける者だというイメージが定着した。日本の美術品で黒人が被支配者として描かれたのはそれが理由だ。

現代日本の大衆文化史が専門のリヨン第3大学の講師ジュリアン・ブヴァールは言う。

「日本人は奴隷制や植民地支配などをとおして、民族間に非対称な関係があるのを見てとり、西洋が世界を支配しているという見方をするようになりました。そんな見方のもとで、日本人は初めてアフリカ人やアフリカにルーツを持つ人々と出会ったのです」
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