オリガルヒの一人として知られるアリシェフ・ウスマノフ Photo: Mikhail Svetlov / Getty Image

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トマ・ピケティ

トマ・ピケティ

Text by Thomas Piketty From Le Monde

世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者で、フランスの経済学者であるトマ・ピケティによる好評連載。今月はロシアによるウクライナ侵攻に対して、欧米諸国がいますぐ起こすべき行動について。
欧州に戦争が戻ってきた。それも壮烈無慙な戦争である。人口4500万人の国に、人口が3倍、軍備が8倍の隣国が攻め入ったのだ。

遠目には、いまの状況が1870年から1945年の間に3度繰り返されたフランスとドイツの国境紛争と比較できるのではないかと考える人もいるに違いない。クリミアとドンバスは自国のものだと言うロシアが、アルザスとモゼルを自国のものだと言っていたドイツと重なるところがあるからだ。

だが、両者には根本的な違いがある。今回の戦争のほうが、人口でも、軍備でも、はるかに不均衡が目立つのだ(1870年、1914年、1940年の時点での人口はドイツがフランスより60%多かった)。加えてウクライナの当局は、係争地の住民の権利を尊重し、係争地の主権の帰属について協議する用意があることを示してきた。

原理原則を言うならば、このようなデリケートな問題は、できるだけ民主的で、落ち着いたプロセスで進めるべきだろう。問題はロシアが国境紛争を口実に侵攻を始め、ウクライナ全土を破壊し、ウクライナという国家の存在すらなくそうとしているかのように振る舞っていることだ。その意味では、今回の侵攻は1870〜1871年の普仏戦争や1914〜1918年の第一次世界大戦よりも、第二次世界大戦時のドイツの侵攻に近い。

この深刻な状況への西側諸国の対応は、現時点ではまったく充分とはいえない。特筆したいのは、欧州諸国にはいますぐロシアからの天然ガスと石油の輸入を止められる手段があるということだ。
残り: 1964文字 / 全文 : 2704文字

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