『1日外出録ハンチョウ』1巻感想。重版なのだが、その帯からしてちょっと笑える。「ククク‥へたっぴさ‥! 初版部数の決め方が‥!」とか書いてるし。
簡単なあらすじ?
『カイジ』シリーズのスピンオフとして『中間管理録 トネガワ』の次に生まれたもの(『アカギ』が『天』のスピンオフであったのとの落差は気にしない)で、トネガワと同じくカイジ世界の中でのギャグマンガ。
主役は、地下帝国ではチンチロ賭博を仕切り、456賽でカイジ達を騙し、苦しめた班長の大槻。その大槻が原則絶対監禁での強制労働を強いられる地下帝国で、地下帝国通貨、50万ペリカで得られる特権、「1日外出権」を使い、地上であらゆる場所での食べ歩きを行うという、大まかな区分けとしてはギャグ&B級グルメマンガ。
えっ?! カイジでは1990年代のはずなのに、何故タブレットが出て来たり、食べログがあったり、大塚愛の『さくらんぼ』(2004年)があったりするかって? こまけえことはいいんだよ!
B級メシが旨そう
一応食マンガでもあるけど、食知識にあまり突っ込んでいるわけではなく基本はギャグ。立ち食いそば屋でサラリーマンを見下しながらビールを飲んで愉悦に浸ったり、夜店で豪遊したり中華料理屋でオムレツライスの注文勝負に出たりする。本編でもある、大げさな比喩がギャグとして食表現で効果が出ているのがいい。
だけど、食ってるものもB級にもかかわらず旨そうに見える。この感覚、どこかで‥と思ったら、ああ、あれだ、カイジが地下帝国で焼き鳥とビールで豪遊(後に後悔)した時の、うまそうに食ってる様子で受けたのと同じだ。
『カイジ』本編からのセルフパロディ的ギャグ
トネガワでもあったが、カイジ本編に出て来た班長のキャラを生かしたギャグも多い。班長で印象的なのは、やはり台詞の「へたっぴ」(わりと多用されてる)。
やはりトネガワ同様黒服もギャグとして使われる。
ちなみに本編同様ところどころで班長の性格の悪さが発揮されているが(柿ピーアンリミテッドなど)本編で見せたよりだいぶギャグ寄り。一方半チャーハンサービスに感激したりと小市民的なところもあり。これも本編では悪役とされていた人物が見せるギャップからのギャグとして面白く成立している。
あと、巻末読み切りには、班長の部下として小悪党を演じた沼川の『1日個室録 ヌマカワ』も収録。窓を開けるとアンモナイト地層があるところで笑う。
班長大槻というキャラの巧さ
繰り返しになるが、この作品は本編では悪役の班長大槻が主人公。これはトネガワと同じ。しかしこの選定がうまいと思う。カイジには色々なキャラが出てくるし個性が際立っているが、けっこう読者に嫌われるクズも多い。しかし班長大槻、そして利根川の場合には、本編でその報いを受けているため、嫌われ度がやや下がっていて、こういうギャグで動かせるところが大きいと思う。
しかし利根川や班長(あと沼川)以外でスピンオフに向いているカイジのキャラっているかなあ。あとは登場するだけで読者の嫌悪感を誘うようなクズキャラくらいしかいないし(一条は動かすと本編に強く絡んできそうだし)。やれるとしたら、美心(元ギャンブラードゥーター)かやさしいおじさんくらい? って、なんか両方ともありそうな気がしてきた。